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七章 ~23話 戦場2・追撃

用語説明w

変異体:遺伝子工学をメインとした人体強化術。極地戦、飢餓、疲労、病気、怪我に耐える強化兵を作り出すが、完成率が著しく低い。三種類のタイプがある


ホバーブーツ:圧縮空気を放出して高速移動ができるブーツ

流星錘(りゅうせいすい)アーム:紐の先に、重りである錘が付いた武器。紐は前腕に装着した本体のポリマーモーターで巻き取り可能


コウ:マキ組の下忍、青髪の魚人男性。補助魔法である防御魔法、そして銃を使う

ルイ:マキ組の下忍、赤髪の獣人男性。スナイパー技能に長けている


ゲイルが魔人を仕留め、マキ組長も魔人を仕留めていた


俺達は連合軍を追って領境からナウカ領へと侵攻

戦地は森の中へと移って行った


「ラーズ、俺達は東側の部隊に合流する。死ぬなよ」


「分かった。ゲイルもな」


ゲイルを見送り、ルイと合流

コウと共に俺達も進む



プルル…


マキ組長からの電話が来た


「ラーズ、無事ですか?」


「マキ組長、全員無事です。魔人を一体仕留めました」


「こちらも一体です。しかし、もう一体魔人が控えているはず、注意してください」


「分かりました。本部の指示で、このまま戦線を押し上げます」


「…おそらくですが、そう上手くは行かないようです」


「え?」



ドッガァァァァン!

ズガァァァッッ!



爆発音が響き、破壊音が続く


「どうやら、このエリアにマサカドが現れたようです」


「なっ…!?」


「ウルラ軍の方針では、漆黒の戦姫フィーナ姫を当てるとのこと。到着まで死なないように」


「り、了解…!」



マキ組長との会話を聞いていたコウとルイの顔が引きつる

俺達三人の警戒レベルが数段階上がった


「嫌な感じだな…」

コウが見渡す


「どうしたんだ?」


「ラーズが必死に止めたスタンピートの時と、状況が似てるよ」


周囲には、繁殖期である虫系モンスターの姿が多い

運が悪いと、また変に刺激を与えてスタンピートを誘発なんて恐れもあり得る


「そこは運だよな…」


だが、悩んでも意味がないことは、時間の無駄



「ラーズ、聞こえるか?」


「ジョゼか、どうした?」


インカムからジョゼの通信が入る


「友軍の攻撃で三人目の魔人を押している。このまま北上して友軍と合流、魔人の討伐に参加してくれ」


「了解」


マサカドが合流する前に、出来れば魔人を倒してしまいたい

Bランクじゃありませんように!



しばらく進むと、激しい戦闘音が聞こえてくる

同時に、無線が錯綜している


「ぎゃあぁぁぁぁっ!?」

「範囲魔法だ、避けろーーー!」

「弾幕を切らすな、足を止めろー!」


友軍には弓使いの部隊がいるらしく、範囲魔法を付加した矢を放つ


範囲魔法を直接放つと、術者から限定された距離にしか発動できないが、矢という魔法媒体物に付加することで遠距離の地点に範囲魔法を発動できる

但し、矢に込められる魔力量が決まっているため、直接発動するよりも威力が落ちる



「凄いな、弓使い達が敵部隊を押し込んでる」

ルイが呟く


「俺達も合流しよう。本部に俺達の参戦を伝えてくれ」


「了解」

コウが頷く


「データ、ドローンを飛ばせ。データ2、出ろ。このまま俺を先行して、敵の位置を伝えてくれ」


「了解だよ!」「了解だよ!」

データとデータ2が同時に応える



「ラーズ、三人目の魔人は魔法使いらしい。火属性範囲魔法(大)を確認だってよ」

コウが言う


「分かった、気を付けよう。ルイ、後方からついて来て、敵を確認したら潜伏場所を探せ」


「了解」


外部稼働ユニットのデータ2を先頭に、俺とコウが続く



黒焦げた兵士たちの死体、おそらく魔人の魔法に巻き込まれた友軍だろう


今後は、友軍の魔法を付加した矢で吹き飛んだ兵士達、服装からしてナウカ軍だ


このエリアは死体の数が多い、かなり激しい戦闘が繰り返されて一進一退を繰り返したようだ



「ピッ…、前方、敵歩兵三!」

データ2の警告


「俺が出る、二人は待機を」


俺はヴァヴェルの認識阻害効果を発動

ホバーブーツのエアジェットで加速し、飛行能力で木の枝の高さまで上がる


そのまま、木の枝を跳びながら移動


敵歩兵に接近



人間は、上方向へ注意が向きにくい

アニメや漫画で木の枝を跳び回る忍者の描写、あれは人間の特性を理解した理にかなった移動方法だ



「…なっ!?」


上から降って来た俺に、一人が驚く



装具の手刀で首を切り裂く


次、近くにいた兵士にナイフを突き立てる


その次、振り向いた兵士に流星錘



「…クリア。こっちへ来てくれ」

俺はコウとルイを無線で呼ぶ


銃を使わない制圧は、音が少なくていい

リスクを減らせるってことだ



あぁ…、あの施設を思い出す


死にたくないから殺す、そして前へ進む


俺達は死ねない、だから、殺すことをは仕方がない


恐怖と目的が、俺達の行動を正当化する



「…近いぞ」


更に進むと、敵MEBと戦車を発見、おそらく魔人がいる部隊だ



「よし、ルイは狙撃を」


俺とコウは、攻撃のために侵攻



ボシューーー

ボシューーーー



二人でロケットランチャーを発射、MEBと戦車を狙う



ドッガァァァン!


着弾、MEBが衝撃で倒れたのを確認



弾幕がこっちにも向く


俺達は木の陰に身を隠しながら大回りに回る



コウの防御魔法がある分、安心感がある

やはり補助魔法は戦場での命綱だ



「あ、ラーズ! 戦車が動いてるぞ!」


「くそっ、装甲で受けられたか!」


ロケットランチャーが直撃したにも関わらず、戦車が動きを止めていない


しかも、装甲が剝がれるような壊れ方をしている

爆発反応装甲だ



爆発反応装甲


着弾の瞬間、二枚の装甲の間に挟んだ爆発性物質を爆発させて浮き上がらせることで衝撃を分散させる

戦車本体を守ることができ、また、使用後に再度新しい爆発反応装甲を取り付けることもできるため経済的だ



ドォーン!


ドォーーーン!



戦車からの砲撃がこちらを向く



爆発音


震える空気


巻き上がる土煙



「うおぉぉぉっ!? ラーズ、やべーーーよ!!」


「いや、俺達の方に攻撃が向くということは…!」



必死に砲撃から身を隠す


その時…



ドッガァァァァン!


友軍からの爆破魔法の乗った弓が落ちてくる



戦車が大破


このチャンスに、友軍が一斉射撃で敵軍に向ってくる



「あ…」


その時、魔力構成を感じた

この大きな魔力、魔人の範囲魔法(大)だろう



「コウ!」


「えぇっ!?」



エアジェットと飛行能力による全力疾走

コウを抱きかかえて一気に離脱!



ゴゴォーーーーーッ!


広範囲に凄まじい熱量が集まる

燃え上がる樹木、火属性範囲魔法(大)だ



「ぎゃあぁぁっっ!!」

「ぐわーーーっ!」


こちら側にいた味方が何人か巻き込まれる




凄まじい火力

大火炎がこの戦場を焼く


巻き込まれた苦悶の声も、すぐに聞こえなくなる

…あの火力じゃ、もう助からない



くそっ…、危なかった!

危なくさっきの友軍の黒焦げ死体の仲間入りするところだ


だが、魔人にとって、俺達を狙ったこの魔法は悪手だ

おかげで、友軍の勢いを止める手段を失った


範囲が広いだけあって、そんなにすぐに範囲魔法(大)は連発できない



ダダダダッ!

バチバチーーーー!

シャキキーーーーン!



友軍の銃弾、雷属性や冷属性の範囲魔法が炸裂


更に、ルイの狙撃や魔法付加の矢が降り注ぐ


最後は、どこかの忍びが遁術と思われる攻撃で魔人を打ち取った



気が付くと、抱えていたコウがぐったりとしていた


「お、おい! コウ!?」


俺は、コウを静かに地面に寝かせて肩をゆする

どうした、まさか被弾したのか!?


だが、外見上けがは無い


「う、うーん……」

しばらくすると、コウが目を覚ます


「大丈夫か?」


「あ…、ラーズ…。お前、いつもこんな動きをしてたのか…」


「何が?」


「あんな急加速されたから、加速度で意識を失ったんだよ!」


「あー、ブラックアウトを起こしたのか」


高速立体機動は、変異体 + ナノマシンシステム2.0を必要とする機動力だ

咄嗟に出したのだが、普通の人間であるコウは耐えられなかったようだ


今度から、助ける時は気を付けないといけない

その余裕があれば、だが



「おい、気を付けろ! 西側から侵攻……!」


無線から緊迫した声が聞こえる


「マサカドだ! 早いぞ!」



…このエリアを制圧したと思ったら、もうラスボスが攻めて来た


ナウカ・コクル連合軍も戦力を惜しみ無く投入している


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