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七章 ~15話 嫌な仕事

用語説明w

サードハンド:手を離した武器を、一つだけ落とさずに自分の体の側に保持して瞬時に持ち替えることができる補助型のテレキネシス。大型武器の補助動力としても使用


自己生成爆弾:宇宙技術を使った四種類の爆弾の超小規模生産工場。材料とエネルギーを確保できれば、使用後に勝手に新しい爆弾を生成してくれる。

ウンディーネ…粘着性のあるゲル状爆弾

サラマンダー…液体型焼夷弾

ジン…蜂のような羽根で跳ぶ小型ミサイル

ノーム…転がることである程度の追尾性を持つ球形手榴弾


コウ:マキ組の下忍、青髪の魚人男性。補助魔法である防御魔法、そして銃を使う


戦場に復帰する


神聖魔法のおかげで、休養時間が短くて済んだ

長くなれば勘が鈍るし、リハビリも必要になってくるため余計なリスクを増やしてしまう


戦闘の間隔を空けなくていいのは助かる



「ラーズ、すぐに復帰できてよかったな」


「聖女の神聖魔法って初めてだったよ。凄かったな」


コウと、部隊の最前線を歩く


穏やかな気候、晴れた空

ピクニック気分になりかけているが、今日はモンスター討伐のミッションだ


モンスター達は、人間の内戦などお構いなしで活動する

繁殖期なのは虫系モンスターだけではなく、亜人型と呼ばれるモンスターも同じだ



今日のターゲットはギルタブリル


半身半獣のモンスターで、人間の上半身が巨大なサソリから生えているかのような姿をしている

サソリと同じで猛毒の尻尾を持ち、雷属性との親和性を持つことから雷属性への耐性を持っている



今日のミッションは、マキ組長に突然頼まれたものだ


「ラーズ、腕の調子はどうですか?」


「おかげ様で、違和感は全くありません。いつでも出れますよ」


「それなら、申し訳ないのですが、朝になったらお願いしてもいいですか?」


「え?」


マキ組に突然来た要請

それは、皇国の応援部隊であるブルトニア家の騎士団と共に出撃して欲しいというものだった



「ブルトニア家の騎士団は評判が悪く、どこも依頼を受けてくれないらしいのです」


「そ、そうなんですか」


「町の近くに住み着いたモンスターの討伐なので、やらなくてはいけない仕事ではあります。それで、依頼者も困っていて」


「分かりました。神聖魔法の代金分、しっかり働きますよ」



そんな感じで、引き受けたのだ


だが、これは安請け合いだったのかと思い始めた

ブルトニア家の騎士団は、はっきり言って態度がおかしい


まず、斥候部隊である忍びの俺達からかなり距離をとり、座り込んで談笑している

どうやら、勝手にモンスターを探せということらしい


お前ら、何をしに来たんだと聞きたくなってきた



「すまねぇな、来てくれて助かったぜ」


頭をかいている、この男はゲイル

俺達と同じフウマの忍者であり、テロイ組という忍者衆に所属しているらしい


ブルトニア家の依頼を受けたはいいが、斥候ができる忍者も戦闘が出来る傭兵も集まらずに困ってマキ組に泣きついたのだ


「あんな態度で、そりゃあ誰もやりたがらないですよね」


「あいつら、最初から自分で戦う気なんかないんだよ」

コウが小さく舌打ちする


「…そうみたいだな」


「ま、愚痴を言っていてもしょうがない。さっさと見つけようぜ」


俺とコウが、斥候の仕事であるターゲットの発見のために歩き出した




「ラーズ、いたか?」

ゲイルからの無線


「発見した。リィとフォウルで空中から監視してる。今の所動く気配はないな」


「分かった、ブルトニア家に伝えるからそのまま監視を頼む」


俺達は、崖の下の岩場になっている場所でギルタブリルを発見した

上半身は人間と言うよりも類人猿に近く、その肌の大部分は蠍の甲殻で覆われている


控えめに言って結構キモイ


岩場には小さなギルタブリルの幼体がちょろちょろ動いている

敵から身を隠すために岩場で暮らしているようだ



「遅いなー、さっさと攻撃始めないと移動しちまうかもしれないぜ」

コウがため息をつく


発見までは斥候の仕事

後は、アタッカーである騎士が攻撃に移るのが一般的だ


斥候は、補助魔法や敵が集中しないように誘導、敵の隙を作り出す陽動が主な役割だ



しばらく待っていると、ゲイルがやって来た


「あれ、ゲイル、どうした?」


「…あれくらいのモンスターなら、お前たちで相手をしておけだってよ」

ゲイルが吐き捨てるように言う


「は?」

「あいつら、何ししに来たの?」

俺とコウが、さすがに呆気にとられる


「俺は決めたよ。ラーズ、コウ、悪いけど手伝ってくれ。ギルタブリルを俺達で狩って、さっさと帰る」

ゲイルが言う


さすがに堪忍袋の緒が切れたらしい


「分かった、アホらしいからさっさと帰ろう」

俺達は頷く



崖下のギルタブリル

都合よく、崩れそうな岩がある


「ギルタブリルは毒が怖い。俺がメインで戦うから、ラーズとコウは補助を頼む」


「ゲイル、あの岩の下に誘導して岩を落として潰そう。コウ、工作できるか?」


「分かった、準備できたら合図するよ」

そう言って、コウが俺とゲイルに防御魔法をかける


全員が斥候のプロである忍びだけあって、テキパキと方針を決める



さぁ、戦闘だ

俺とゲイルがギルタブリルに向う



ドッガァァァン!


ロケットランチャーをぶち込んで、右の足を一本吹き飛ばす



ブシューーー!


毒と思われる粘液をギルタブリルが尻尾から噴射



躱しながら、サードハンドで浮かせておいた陸戦銃を構え、グレネードを撃ちこむ



ハサミの連続攻撃



ザクッ


ザクッ


ザクッ!



「うおぉぉぉっ!?」


早くはないが、止まらない連続攻撃がひたすら追って来る


めっちゃ怖いんだけど!?

攻撃の隙が作れねぇ!



ザシュッ!


「キシャーーーー!」



突然、ゲイルが岩陰から飛び上がる

ギルタブリルの足を蹴って人間の上半身までたどり着き、小太刀で首を切り裂く


すぐに飛び降りながら、苦無をギルタブリルの人間の頭へ投げつける



だが、ギルタブリルは苦無を受けながらも大きなハサミをゲイルに叩きつけた



「ぐっ…!!」


ゴキッ… ミシミシ……!



嫌な音を立てながらゲイルが吹き飛ぶ



リィ! フォウル!


俺が絆の腕輪で叫ぶと、それぞれが動いてくれた



バチバチバチーーーーーー!


フォウルのサンダーブレスが直撃



リィがゲイルを受け止めて衝撃を軽減



「ラーズ、オッケーだ! こっちへ!」

コウが無線で叫ぶ



俺は、大岩の下へ向かって走る



ギルタブリルは、フォウルのサンダーブレスのダメージが無いかのように俺を追って来た


属性耐性ってスゲーな!

フォウルのブレスは、Bランクでもダメージを受けるんだぞ!?



ハンドグレネードを転がす


ハサミを避ける


自己生成爆弾のノームを転がす


同じくウンディーネを少し前に落とし、同時にロケットランチャーをロード



ホバーブーツで逃げながら、置き土産を次々と準備

同時に、モ魔で巻物を読み込む



ドガァッ!


ドッゴォォォォォン!


ボォーン!



背後で爆発音が響く


目標地点に到達!

生残ってやったぜ、ざまぁ!



「ゲイル!」


俺は叫びながら、モ魔で風属性範囲魔法(小)を発動



ゴオォォォォォォ!


竜巻魔法が俺の目の前に巻き起こり、瞬間的に突風が真上へと吹き上がる



すぐ後ろに迫って来ていたギルタブリル

俺はエアジェットで加速、リィと共にゲイルを掴んでジャンプ、飛行能力を真上へ



ブオォォォッ!


「うおぉぉぉっ!?」



ゲイルが驚いた声を出す


竜巻魔法の上昇気流を、俺は背中の触手に展開したナノマシン群の膜で受け止める

簡易翼グライダーだ


クソ貴族共への意地で討伐はやり遂げる



ゴッシャァァァァァァッーーーン!



コウが起爆して大音響と土埃を上げて大岩が落下、それをグライダーのように浮かび上がった俺とゲイルは眺めていた




俺達は、コウが待つ崖の上に着地

何とか討伐をやり遂げ、生き残ってやった


コウが確認したところ、ギルタブリルが変な液体を吹き出して潰れていた

ミッション終了だ


「やったな、ラーズ、コウ!」


「いや、ゲイル! すげー怪我じゃねーかよ!」

コウが慌ててカプセルワームを取り出す


「ギルタブリル、強かったですね…」

俺はゲイルに回復薬をぶっかけて、小型杖で聖属性回復の魔法弾を当てる


だが、強かったのはギルタブリルだけではない


俺は、一般兵になら簡単には負けないという自信があった

(もちろん、マキ組長は別格)


だが、ゲイルが潜伏していた、あの気配の消し方


…ゲイルは一流だ

忍びにも傭兵にも兵士にも、凄い奴ってのはいるもんだな



「おい、遅いぞ!」


ブルトニア家の騎士団の男が、傷だらけの俺に向って文句を言ってくる


「申し訳ありませんが、負傷者が多い。治療のために時間を取らせて頂きます」


「何を言っている! この先に鉱石竜の目撃情報があったのだ、治療なんかよりもさっさと斥候の仕事をしろ!」


「鉱石竜? これから狙うというのですか?」


鉱石竜とは、金属を主食とするドラゴンだ

その鱗は美しい光沢と高い硬度を持ち、貴族が纏う豪華な鎧や様々な素材として高値で取引される


はぁ…、ブルトニア家は、金儲けのためにこの依頼を受けやがったのか

付き合ってられないな


「分かったらさっさと出発しろ! 逃げられたらどうするんだ、ぐずぐずするな!」


「俺達の契約は町に危険を及ぼすギルタブリルの討伐です。鉱石竜は依頼に含まれていませんよ」


「一般兵ごときが生意気を言うな! 我らはウルラのために、わざわざクレハナに来てやっているのだぞ!」


「それなら、ウルラの王家に直接、兵を出すように頼んでください。現状、鉱石竜が町に被害を及ぼすとは聞いていませんし、こちらから刺激することで町が攻撃されることも考えられますから」


「貴様…、誰に口を効いて…」


「それじゃ、治療が終わったら帰ります。鉱石竜を追うなら気を付けて行かれて下さい。戻る場合は、町まではお供しますので教えてくださいねー」


「……! ………っ!」



騎士と取り巻きが何かを騒いでいたが、無視して俺は踵を返す


俺達は傭兵

金を対価に戦っている


プロを雇うなら相応の対価を出すべきだ

出さないなら聞く耳など持たない、時間の無駄だ


俺は治療を手伝うために、ゲイルとコウの所に戻った



ブルトニア家 六章 ~9話 へルマンとの約束

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― 新着の感想 ―
[良い点] 蠍人間だと⁉︎不味そうだな‼︎そして騎士団共は全面戦争になったらさらっと逃げてそう [気になる点] ラーズの 攻撃の隙が作れねぇ! の後の文章でクナイが苦無となってましたよ〜  
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