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七章 ~14話 反復練習

用語説明w

サードハンド:手を離した武器を、一つだけ落とさずに自分の体の側に保持して瞬時に持ち替えることができる補助型のテレキネシス。大型武器の補助動力としても使用


倉デバイス:仮想空間魔術を封入し、体積を無視して一定質量を収納できる


ジョゼ:黒髪のエルフ男性。情報担当と事務を行う非戦闘員、整備などもこなす

データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AIで倉デバイスやドローンを制御。戦闘用端末である外部稼働ユニットのデータ2と並行稼働している


…マキ組長や、他のエリアの戦いもすでに終わっていた


捕虜となったナウカ兵は応急処置を受けた後に連れて行かれた

火傷や爆発のダメージで重症、今後はナウカ軍の病院で治療を受けるらしい


そう言う俺自身もかなりの重症だ

右の前腕はハンドグレネードの爆発で吹き飛び、その他にも大小様々な傷を負っている


鎮痛剤を使ったとはいえ、メチャクチャ痛い



「全面戦争が間もなくなのに、何をやっているんですか…。この腕では、普通の治療では間に合いませんね」

マキ組長に呆れられてしまった


身体の一部を喪失した場合は再生医療を行うことになるが、培養時間がかかる上に、再生した組織が馴染むのにも時間がかかる

再生したからといって、すぐに前と同じように動かせるようにはならないのだ


「ど、どうすればいいですか?」


「お金で解決します」

そう言うと、マキ組長はどこかへ電話を始めた


しばらくすると、マキ組長が頷いた

「予約が取れました。ちょうどクレハナのウルラ領に来ていて運が良かったです」


「予約って…、誰が来ていたんですか?」


「話は後です。すぐに出発しますよ」

マキ組長が車に乗り込んだので、俺も後に続いた




「ちょっ、こ、ここって…!」


着いた場所はウルラ領の中枢、灰鳥(あすか)城だった

そして、フィーナの実家でもあり、現在の居住地でもある


「な、何でこんなところに?」


「ラーズの腕を治せる者がいるんですよ」

マキ組長が答える


俺はフィーナに会わないように祈り、ドキドキする鼓動を感じながらマキ組長に着いて行く

会いたくない…、でも、正直一目でいいから姿を見たい


はぁ…、何なんだよ俺は…


灰鳥(あすか)城の一階のフロアは病棟として使われているらしく、白衣を着た医者たちが歩き回っていた

内戦中であるためけが人は多く、その中でも身分が高く優先度の高い者が治療を受けているようだ



「あそこの部屋ですね」


マキ組長が指した先には、何かのエンブレムが飾られた部屋だった



…あのエンブレムはバルドル教か?

ヨズヘイムで見たな


ミィが発掘の資金を出させた宗教でもある


どうやら、あの部屋はバルドル教の教会となっているらしい


中に入ると、長く美しい白色に近い金髪を持つシスターがおり、俺達に微笑みかけた


「ようこそ、ご予約の方ですね?」


「はい、マキ組のラーズです。右腕の欠損の治療をお願いします」


「はい、ではこちらにお座りください」

シスターは、しばらく俺の右腕に手を当てて目を瞑る



…そして、しばらくすると口を開いた


「八百万ゴルド、頂きます」


「は?」


「分かりました」


「え!?」


マキ組長がPITで払い込むと、それを確認したシスターが頷いた


「確かに。では、右腕をこちらへ」


俺の右腕の千切れた部分にシスターが優しく手を添える


そして、小さく呪文を唱えると、シスターに神聖な魔力が集まっていく


…これは装具の副産物なのだが、最近、俺は氣力や霊力のセンサーが戻って来た

感じ取れるようになってきている


そして、同時に魔力や輪力も感じ取れるようになってきた

チャクラ封印練の前の状態に近づいてきたのだ


聖属性の仄かな光がシスターを包み、そして暖かい力が俺の右腕に注がれる

高次元生命体である神の力がシスターに顕現、シスターを介して俺の腕に作用しているのだ


これが神聖魔法というやつなのだろうか

神の力によって癒しの奇跡を起こすと言われる最上級回復魔法だ



「…っ!?」


その時、本当に奇跡が起こった


身体が伸びて行くという、初めての体験

俺の右腕が徐々に伸びながら、右手を形作って行く


数分後、俺の右手は古傷も含めてきれいに再生されてしまった


「す、すごい…!」


「これで終わりです。神の奇跡は、あなたと肉体の記憶を基に欠損部分を再生します。ですので、古傷もそのままというわけです」


「はぁ…、あ、ありがとうございました」


「あなたに神のご加護が有らんことを」


シスターがにっこりと微笑んだ




・・・・・・




マキ組の廃校に戻って来た

結局、マキ組長が大金を出してくれたおかげで俺の腕は完全に復活した


「これは組員への必要経費です」


「でも、八百万ゴルドなんて大金を…」


「恩を感じるなら仕事で返してください。それと、治った腕が万全か、動かして試しておいて下さい」


「は、はい。ありがとうございました」



バルドル教の聖女、その実力は本物だった


だが、銭ゲバにもほどがある

魔法一回で八百万ゴルドなんて、普通請求するか!?


だが、助けられたことも事実だ


神聖魔法によって再生した俺の右腕は、依然と変わらずに動く

これならリハビリの必要はない


それなら、やることは一つだ

俺はさっそく忍術である高速アイテム術の練習に入る



「ご主人! 改めて優先順位を決めること、そして仮想モニターにロード中のアイテムを表示させることを提案するよ!」


「そうだな。だが、問題は俺自身がどのアイテムを使うかを行き当たりばったりで決めていることかもしれない」


最初にやることは、データと倉デバイスのロードの順番についての擦り合わせだ


ナウカ兵との戦いで、何度かデータとアイテム選択がすれ違ってしまった

俺がやりたいことを断片的にでも伝え、データから今取り出せるアイテムを提案させる


これを繰り返すことで、データが俺の使うアイテムの傾向を把握させ、予測できるようにさせる

倉デバイスのロード時間がボトルネックとなり、このままではアイテムの使い分けの高速化は不可能だ



データとあーでもないこーでもないと話していると、ジョゼが戻って来た


「ラーズ、腕は大丈夫なのか?」


「うん、元に戻ったよ。神聖魔法って凄いんだな」


「高い金を払うだけはあるってことか。さっきから、AIと何を話しているんだ?」


「俺の忍術を考え中なんだよ」


俺は、高速アイテム術の概要をジョゼに話す



「…ふーん、面白いじゃないか。それならいいものがあるぜ」


「いいものって?」


「要は、ラーズの行動パターンとアイテムの種類、数を把握して効率的に選択するAI用のアルゴリズムが欲しいってことだろ?」


「まぁ、そうだね」


「そのためのピッタリのソフトがあるんだ、用意してやるよ」


「そんな用途が限定的ソフトなんてあるの?」


「俺も使っている、かなりメジャーなジャンルのソフトだ。楽しみにしておけ」


「ああ、分かった。頼むよ」


データのアイテム選別の効率化が進むなら大変助かる

今のデータだと、もう限界に近い


だが、アイテムの使い分け用のソフトって一体何?


…ジョゼは、自分のPITを見ながらはぁはぁ言い出した

PITにインストールしたソフトに、何でそんなに興奮するんだよ?



その後は、フォウル、リィ、データ2、竜牙兵と鬼ごっこをしながらアイテム術の訓練を行った


複数のアイテムをいつでも使えるようにスタンバイしておく

これが高速アイテム術の根幹技術だ


俺には、サイキックによる三本目の腕、サードハンドがある

これで、アイテムや武器を一つだけ体の側に浮かせて保持することが出来る


そして、サードハンドと並行してデータが倉デバイスを制御する

これを倉デバイス術と呼んでいる


倉デバイスからロードしたアイテムは、魔石やハンドグレネードのような小さなアイテムなら三つ、ロケットランチャーや陸戦銃のような大きい武器なら一つだけ、本体直近の空間から引き抜けるようにロードが可能だ


そして、俺の鎧であるヴァヴェルの腰に付けたベルトのサックには小型杖、アサルトライフルのマガジン、引き寄せの魔石のスピードローダーを入れている



イメージとしては、サードハンドとベルトのサックから優先して必要なアイテムを使って行き、使うと同時に倉デバイスから消費したアイテムをロード、隙を見て補充していくような感じだ


俺のアイテムを改めて列挙すると、マガジン、陸戦銃のグレネード弾、散弾、小型杖の各種魔石、モ魔の巻物、回復薬とカプセルワーム、ナイフ、ロケットランチャー、ハンドグレネード、霊札、更に自己生成爆弾…

かなりアイテムの種類が増え、どのアイテムも省略ができないため、やはり取り出しのための整理が必要だ



倉デバイスからサードハンドでアイテムを保持


サックからノールックでマガジンや魔石を抜いてからの装填


動きながら、走りながら、転がりながら、使う、投げる、持ち換える



リィに引き寄せの魔法弾を当てる、フォウルに回復薬を投げる、データ2と巻物の受け渡し、竜牙兵にロケットランチャーを持たせておく


今まで使い慣れて来たアイテムの、改めての効率化

反復練習することで、より動きが洗練されていく


技術とは、小さな気づき、地味な改変の繰り返しで向上していく


()()()()()使()()()、その予感がある

俺の足りなかったものを埋めるための技術だ


ようやくまとまって来たアイデアを突き詰めるべく、俺は反復練習を続けるのだった



バルドル教 六章 ~14話 ミィの依頼

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― 新着の感想 ―
[気になる点] チャクラ封印練の前の状態に近くなって来ているのは凄く良いデスネェ (*´Д` [一言] し、神聖魔法凄いッッ‼︎まるでピ◯コロさんのように腕が再生するなんて⁉︎まぁピッコ…おっとピ◯コ…
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