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七章 ~12話 ナウカ正規軍1

用語説明w

ナノマシン集積統合システム2.0:人体内でナノマシン群を運用・活用するシステム。治癒力の向上、身体能力の強化が可能

装具メメント・モリ:手甲型の装具で、手刀型のナイフ、指先に鉤爪、硬質のナックルと前腕の装甲が特徴。自在に物質化が可能


モ魔:モバイル型呪文発動装置。巻物の魔法を発動できる


リィ:霊属性である東洋型ドラゴンの式神。空中浮遊と霊体化、そして巻物の魔法を発動することが可能


緊急の出撃要請が入った


「今回は戦闘です、気を引き締めて下さい」

マキ組長が警告する


「そのまま全面戦争に突入もあり得るぞ!」

ジョゼが資料を見ながら言う


俺達は、バタバタと準備をして廃校を後にした



俺はコウの運転する車に乗り、資料を読む


「何だって?」


「敵はナウカ正規軍らしい」


「何だって!? それじゃあ、本当にこのまま全面戦争かよ!」

途端に、コウが緊張した表情になる


確かに、ナウカ正規軍と戦うということは、ウルラ軍とナウカ・コクル連合軍の戦闘ということ

つまり、そのまま全面戦争となる可能性があるのだ


くそっ…、まだ忍術が完成していないのに!



現場はドミオール院のある集落から近い、ナオエ家の領内の一角のようだった


「まずいな…、ドミオール院が近い」


「何だって!?」


「一応、タルヤ達にメッセージだけ送っておく。チャンスがあればだが、助けに行くことも念頭に置こう」


「分かった。けど、勝手な行動もできないよな…」



俺達は、到着するとすぐに戦闘準備に入った

コウが、俺に防御魔法を使ってくれる


「どうやら、領境でお互いの斥候同士が撃ち合いになったそうです。この周辺の敵を殲滅、撤退に追い込みます」

マキ組長が指示を出す


人数は多くない

森の中で、お互いにゲリラ戦となる


だが、ここはウルラ領内

ウルラ軍も来ているため、俺達の方が圧倒的に数は多い


落ち着いて対処すれば良さそうだ



俺達はすぐにナウカ領との境へと進む

マキ組長は単独で周囲の状況を確認しに行った


しばらく進むと、人の気配を感じた


「…いるぞ、一人じゃない」


「え!?」

コウが驚いて振り返る


「ルイ、狙撃の準備をしておけ」


「わ、分かった」


「フォウル、ルイの近くの木に止まってろ。敵が近づいたら教えてくれ」


「ガウ」


俺はフォウルを残して、コウと共に気配を殺しながら回り込む



長い杖を持った男を発見、その向こうに二…、いや、三人の兵士がいる


「外部稼働ユニットだ。ルイ、狙えるか?」


「オッケーだ」


「コウ、俺達であの魔導師を仕留めるぞ。先頭にいるから、おそらく探知魔法の使い手だ」


「え、どうやってだよ!?」


コウの疑問はもっともだ

なぜなら、杖を持った魔導士と思われる兵士の姿が不自然に歪んでいる


風属性蜃気楼魔法

通称、スナイパー殺しの魔法を使って狙撃を封じているのだ



「俺が陽動する。防御魔法を消費させるから、アサルトライフルで()()()()()()()()()


「わ、分かった!」



俺は、念のため装具を物質化

静かに足を進める



リィ、範囲魔法の準備を


ヒャン!



絆の腕輪でリィに指示

俺が持つ勾玉からリィが体を半分だけ出し、巻物を咥えて範囲魔法(小)を発動



ダァーーーン!



魔導士の後ろに控えていた外部稼働ユニットをルイの弾丸が貫く


俺はすかさず自己生成爆弾のノームを魔導士に向って転がす

同時に、ハンドグレネードを直球で投げつける



「なっ…、ぐはっ!?」



ハンドグレネードが魔導士に直撃

だが、突然勢いを失った地面に落ちる


力学属性の防御魔法

飛んで来る物体の運動エネルギーを奪う補助魔法だ


だが、ハンドグレネードの爆発を防げるわけじゃない

そして、足元をノームが転がって行く


蜃気楼魔法の欠点は、近づかれると姿のブレが小さくなること

遠くからの狙撃は、その姿が大きくブレてしまい当たらないが、近づくとブレが小さくなるためこうやって当てられるようになる



ドッガァァァァァァン!

ゴッガァッッ!


ボボォォォーーーー!



二つの爆発とリィの火属性範囲魔法(小)によって、魔導士が吹き飛ぶ




ドガガガガガッ!


間髪入れずに、コウの連射が魔導士とその周辺を撃ち続ける



「ぐぁっ!」


その内の一発が当たったのか、魔導士が倒れた



「コウ、狙撃準備完了だ。後は任せろ」


「了解。ルイ、頼んだ」


魔導士の蜃気楼魔法が切れた

これで、ルイの狙撃を阻む要因は無い



狙撃時のルイの集中力は凄い

狙撃はただ人差し指を動かしているだけではない


相手の動き、風、障害物の位置を脳内でシミュレーションしながら、心を冷静に保ち続けている

芸術と呼ばれることもあるほど高等な動作を、息を潜めながらやっているのだ



ダァーン!



魔導士に駆け寄った兵士の一人の頭をルイの弾丸が撃ち抜いた

同時に、俺は後ろにいた兵士に狙いを付ける


木の陰から忍び寄り、ナイフで首を掻っ切る


あと一人、位置を把握して幹の後ろで待ち構える

変異体の五感は、木の向こう側にいる男の動作を正確に把握できる



「うおっ!?」


「…」



俺が銃化した左腕を向けていると、その前に男が姿を現した



ドンッ!


眉間を撃ち抜く



「…」


捕虜一名、魔導士タイプの斥候の拘束に成功した



うん、装具の感じはいい

ハンドグレネード、自己生成爆弾、ナイフを使う際にも特に邪魔にならない


後は、このアイテムを高速で使う技術を、忍術と呼べるレベルに昇華するだけだ



「ラーズ、至急こちらへ来てください!」

マキ組長の無線が入る


「マキ組長、どうしました?」


「正規軍の部隊を補足しました。逃がしたくないのですが、抵抗が激しいのです」


「了解、俺一人でいいですね?」


「大丈夫です、高速立体機動で来てください」

マキ組長の声には余裕が無いように聞こえた



俺は、マキ組長の指示を二人に伝える


「分かった、気を付けろよ!」

「頼んだ」


コウとルイに頷きを返しながら、俺は一気に森を疾走する



マキ組長のGPSが示す地点に一直線


一瞬だけ木の上に飛び上がり、触手と背中にナノマシン群の膜を張って滑空

ショートカット兼周囲の状況観察だ


何本か黒煙が上がっているのが見える

かなり広範囲に戦闘範囲が広がっていそうだ


木の上の移動は早くなるが、いつ狙撃されるか分かったもんじゃない

すぐに降りる



「マキ組長!」


「ラーズ、あちら方向にパワードアーマーを孤立させました。仕留めて下さい」


「了解!」


「かなり強いので気を付けて」


マキ組長に指示を貰い、すぐに動き出す



…マキ組長が、()()()()()だって?

それ、相当強いってことだぞ?



俺は、感覚に集中しながら森を進む


枝が折れている


足跡



こいつ、足跡をごまかす歩き方をしてやがるな


…いた!



細身の男がこちらに歩いてくる


そして、驚くことにもう戦闘態勢


俺の存在を補足している



…確かにこいつは強いな



ダダダッ!



俺は陸戦銃を発射


だが、男は片手で顔を庇いながら何かを投げつける



「うおっ!?」


くそっ、ハンドグレネードだ!



俺はエアジェットで大きく飛び退く


マキ組長はパワードアーマーと言っていたが、男が着ているのはレザージャケットのように見えた

だが、弾を弾いていたので防弾性能はある



森の中を縫うようにお互いが走る


男は、俺のホバーブーツよりは遅いようだが、かなり早く走る

しかも、無理に追わずにいい距離感をキープしてくる



ダダダッ!


ドッガァァァァン!



銃弾の応酬、ハンドグレネードを投げつけられる



距離が縮まった


男の反応が早い


お互いに近接戦闘に応じた



バシッ!


「なっ!?」



突然、男の横から木の枝がしなって飛んで来る

くそっ、即席のブービートラップだ!


隙を突かれた俺に、男のアサルトライフルが向けられる


俺は咄嗟に陸戦銃を手放し、流星錘アームから錘を発射

銃口に当てて逸らす



紐を掴んで錘を引き寄せ、ハンマーのように叩きつけ



ゴガッ!

シュッ!



男が銃を手放しナイフを投げつける



錘はガードされた

お互いに銃は手放した


男がナイフを握って踏み込む

俺はモ魔で巻物を読み込みながら、再度近接戦闘に応じる



左手のナイフがかち合う


装具で固めた右ストレート


男もナイフを握ったまま、縦拳を突き出す



面白い、パンチとパンチのぶつかり合いか


俺はナノマシンシステム2.0を瞬間的に発動、全力で突き込む


変異体とナノマシンシステムの合力を舐めるなよ?



お互い、腰の入ったパンチがぶつかり合う



ゴシャッ!


「…っ!?」



決着



「ぐあぁぁぁぁぁっ!?」


……砕けたのは、装具で固めた俺の拳と手首だった




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― 新着の感想 ―
[一言] こいつはびっくらこいた…変異体&ナノマシンで打ち合いで負けるとは…そういう方面に固めた忍術や特別なスーツなのかも知れないな…
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