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七章 ~11話 忍術のイメージ

用語説明w

ルイ:マキ組の下忍、赤髪の獣人男性。スナイパー技能に長けている

ジョゼ:黒髪のエルフ男性。情報担当と事務を行う非戦闘員、整備などもこなす



ザザーーーーー

ビュオォォォーーーーーーー



嵐がやって来た


今日は、さすがに出撃要請もないだろう

俺はダラダラする準備を始める



「修行に行きます」


「…本気ですか?」

マキ組長の言葉に、俺達は動きを止める


リビングに使っている教室


ソファーが置いてあり、テーブルにはお菓子、ジュース

内戦の影響で、あまり出回らなくなった貴重品だ


ソファーには、ジョゼ、ヤエ、ルイ、コウ、そして俺


嵐のため、俺達は完全に気を抜いて絆を深め合っていた

具体的にはトランプで大貧民を行っていた


このゲームの名前が大貧民か大富豪かの論争から、それなら勝った方が決めようということで始まった真剣勝負だった



「嵐の中でしかできない訓練もあります。忍者という仕事に天候は関係ありません」


「…全員ですか?」


「今回、ヤエとジョゼは除外します」


「やった!」「ふぅ…」

ヤエがガッツポーズ、ジョゼが胸をなでおろす


「…」「…」「…」

戦闘員の俺たちは、黙って立ち上がった


マキ組長は冗談を言わない

そして、文句も抗議も聞かない


ドミオール院の件でそれは分かっている




・・・・・・




とある山奥


天候は完全に崩れ、風がゴォゴォと荒れ狂い、雨が真横から振ってると錯覚するほどだ



「ここから、川を下って五キロ先の村に潜入するという想定です」


「ここから…、川を下る?」


崖の下には、確かに川が流れている

だが、雨の影響で水かさが増し、とんでもない勢いとなっている


そもそも、この崖自体が二十メートル以上ある

川まで降りるのが一苦労…



「…っ!?」


俺は、嫌な気配を感じて振り返る



マキ組長が何かを転がした


パイナップル型の…ハンドグレネードだ!



「ラーズは、やはり忍者としての素養を身につけていますね。より、生存能力に磨きをかけて……」

マキ組長が、話しながら殺気でプレッシャーをかける



爆発を避けるためには、崖から飛び降りるしかない


こっちに来たら殺しますよ? と、二丁鎌で伝えてくる



「くっ…! 行くぞ、コウ、ルイ! 死ぬなよ!」


崖から跳び降りながら、近くの岩に力学属性引き寄せの魔法弾を当てる



ビョォォォォォン!



紐なしバンジーを強制されるなら、自分で紐の代わりを用意すれば…



ダダダダダッ!


「うおぉぉぉぉっ!?」



崖の上から、マキ組長がアサルトライフルを撃ち始める


ヤバい、遮蔽物の無い空中だと避けようがない!



引き寄せ効果を解除


流星錘アームを岩に引っかけてターザン


次の岩に飛び移り、どんどん降りて行く



コウとルイも、銃で狙われながらも何とか崖を降りている


くそっ、雨でぬれるは風が吹くわ、シャレになんねーぞ!



一気に崖下の川まで降りる


チラッと崖の上を見上げると…、マキ組長が何かを投げたのが分かった



ドッガァァァァン!


「ぐぁっ!?」



またハンドグレネードだ

強制的に川に飛び込ませる気らしい


「ぎゃぁぁぁっ!? がぼっ…、あぁぁぁぁ………!」


先に川に飛び込んだコウが、とんでもないスピードで水しぶきの向こうに消えたのがチラッと見えた



くそっ、行くしかない!


バッシャァァァァァァン!



水面に飛び込むと、耳障りな雨や川の濁流の音が止む

代わりに、とんでもない力が体を押し流していく



濁った水で前が見えない


それなら、視覚は閉じる



触覚


水の流れを感じ、身を任せる


水の流れの動きで、障害物の存在を感じる



ゴッッ


「ぐがっ!?」



流木がぶつかる


くそっ、流れてくるものまで分かるわけねーだろ!



らせん状の流れ


右に急カーブ



そして、加速する流れ


水の流れが速くなる…、加速には何か原因があるはず


一番可能性が高い原因は…、重力だろう


具体的には、この先の川が下っている………



「た、滝か!?」


バシュッ!



俺は水面に出て、流星錘を発射


岩を掴んで、ギリギリで体を止める


コウとルイは無事か…?



スパッ!


「え?」



突然、流星錘アームの紐が切れる



「修行なのに、ズルはいけません。目的地までさっさと泳いでください」


「ま、マキ組長!? あ………、うわあぁぁぁぁぁぁっ!!」



俺の体は一気に空中に放り出される

そして、重力によって滝つぼに引き寄せられていった




・・・・・・




ガチガチと歯が鳴っている


寒さで体が熱を必死に作っているのだ



焚火を囲み、廃墟のようなぼろ小屋の中で暖を取っている


三人とも何とか無事だった


「ひどい目に遭った…」


「コウ、目の上が腫れてきてるぞ」

ルイが回復薬を渡す


「ありがと。流木みたいのにぶつかったんだ」


「マキ組長、あの荒れ狂った川に流されてる俺達について来てたな…」

俺は、焚火に薪を追加しながら言う


「風遁風の道はスピードが出るからなー。マキ組長の身体能力なら余裕だろ」


「あの人も超人だよな…」


そんなこと、変異体の俺がホバーブーツ使ってもできる気しないんだけど


「今日の訓練は酷かったな…」


「ああ、死ぬかと思った」


コウとルイは、体力を使い切って寝ころんだままさっきから動けない


「これは何の訓練なんだ? 体術か?」


「忍術の訓練だよ。究極の忍術とは環境変化、川を決壊させて鉄砲水を発生させたときにどんな威力があるかを実体験させたんだ」

ルイが寝ころんだま答える


そうそう使える状況は無いが、もし鉄砲水に敵を巻き込めたら部隊ごと壊滅させられるだろう

環境変化か、確かに究極の忍術だ


自然の力は、人間の力をはるかに凌駕する

それを実感はできた


…だが、そもそも実感する必要あるか?



「三人とも、疲れてますね」

マキ組長が戻って来て、俺達の様子を見る


「いや、生きてることが凄いと思いますけど?」


「忍者の第一目標は生還。勝てぬ相手からは逃げ、持久戦、ゲリラ戦によって消耗を狙います。そのために、どんな環境でも生き抜く能力と技術、そして知識を得る必要があります」


「知識ですか…」


「例えば、 積乱雲の底から垂れ下がるようにできる円筒状または壁状の雲。壁雲と呼ばれますが、これは嵐や急激な雨の前兆です」


「壁雲…」


「そう言えば、ラーズの忍術はどんな形にするつもりなのですか?」


「一応、イメージは出来てきたんで、これから試行錯誤していこうかと思ってます」


装具が実戦レベルまで一応完成したから、次は忍術の開発だ

やらなきゃいけないことが多すぎるな


「全面戦争まで、もう時間がありません。内容を精査して、完成まで持っていきましょう。教えてください」


「えっ…、いや、まだ出来るかもわかりませんし…」


「それを判断します。できないこと、効果の低いものは、訓練しても無駄ですから」


「でも、ちょっと恥ずかしい…」


「…」

マキ組長が、無言で二丁鎌を取り出す


「わ、分かりました! 言います!」


「最初から素直に言って下さい。遊びじゃないんですよ?」


「はい…」



俺が考えていた忍術…


それは、複数のアイテムを瞬時に使い分ける技術だ


爆弾、魔石、ナイフ、モ魔、ロケットランチャー、陸戦銃やイズミF

これらを瞬時に使い分ける


データに制御を任せる倉デバイス術、そして三本目の手として機能するサイキック、サードハンドを併用したアイテムの保持と使用


名付けるなら、高速アイテム術と言ったところだろうか


最近は、アイテムの種類が増えたり、高速立体機動を行うことで、アイテムを落としたりパッと使えないことが増えてきた

この問題の解決にもなる



これは、ルイが手品の技法を使って瞬時に銃を持ち替えたのを見て思いついた


俺に必要なのは使い分けだ

これは、高機動中の戦闘力アップにも応用できると思ったのだ



「なるほど…」

マキ組長が頷く


「どうですか?」


くだらないって言われたらどうしよう

…一生懸命考えたんだけど


「凄く地味ですね」


「うぐっ!」


いや、地味だけど重要だろ!

アイテムの使い分けも、焦ると失敗するし難しいんだぞ!

次に何を使うのか、あらかじめ考えとかなきゃいけないし!


…軍時代も、よく地味って言われてた気がするな

ちょっと懐かしく感じてしまった


「ですが、いいと思います。忍者びとして、生存能力を上げるのにも役立ちそうです。さっそく、修行を始めて行きましょう」


「はい、分かりました」


よかった、とりあえず価値をは認めてもらえたようだ



「さ、そろそろ帰りましょう。コウ、ルイ、行きますよ」


「はい…、って、どうやって帰るんですか?」


車は、あの崖の上に止めっぱなしだ

まさか…


「もちろん、歩いてですよ」


「やっぱりか!」

「えぇっ!?」

「何キロ流されたのかわかったもんじゃ…」


「さっさと行きますよ」


マキ組長は、冷酷に言い放ち、踵を返した




………やっとのことで、廃校に帰って来た


「三人とも、お疲れ」

ジョゼが風呂を沸かしてくれていた


「今回の突然の修行、原因が分かったわよ」


「え?」

ヤエがニヤリとする


「マキ組長、自分がトランプに誘われなくて寂しかったんじゃないかな? ジョゼがトイレに行った時、マキ組長が私達がいた教室をチラ見してたのを見たんだって」


「マジかよ…」

「…次は絶対に誘おうな」


ルイとコウがうなだれる



マキ組長、拗ねてただけ?


い、一気に疲れが……




ルイの持ち替え 七章 ~7話 ルイの趣味

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― 新着の感想 ―
組長可愛いぞ、組長!
[一言] ここに来て人間らしいというか、可愛いらしいマキ組長が見れたww
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