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七章 ~5話 装具の構想

用語説明w

モ魔:モバイル型呪文発動装置。巻物の魔法を発動できる

魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる


ジョゼ:黒髪のエルフ男性。情報担当と事務を行う非戦闘員、整備などもこなす


「ヒャンヒャーン!」


「おわっ、何だよリィ! 邪魔すんなって」


「ヒャン?」


リィがうねうねと俺の体に巻き付いてくる

遊んで欲しいらしい


「フォウルはどうしたんだよ?」


「ヒャン!」


絆の腕輪で思念が送られてくる

どうやら、寝ていて遊んでくれないとのこと


…しょうがないな


だが、考えてみると、リィが戻って来てから、あまりちゃんと遊んでやったことが無い気がする

すぐにクレハナに来てしまったからだろうな



俺は、校庭の朝礼台に座って装具の生成を行っていた


ニーベルングの腕輪には、常に俺の体から放散される霊力と氣力が溜まっている

そのため、精力(じんりょく)を込めて混ぜ合わせれば、いつでも装具を物質化できるようになった


俺の装具は手甲型

あの施設で、ハンクが使っていたような形だ


拳を包み込むナックルガードと、前腕を肘まで覆う装甲を作り出す

これが大まかなイメージだ


そして、マキ組長が使っていた角指…、棘が付いた指輪を見て、俺も棘のような鋭い部位を取り入れてみようと考えているのだ


「…」


イメージを装具の生成時に反映させる

失敗したら、物質化を解除してまたやり直す


その繰り返しだ



「ほれっ!」


「ヒャーン!」


倉庫に会った古いバレーボールを投げると、リィが嬉しそうに追いかけて行く


リィは昔から体を動かすのが大好きだった

その割に気が弱い所もあって、犬などを見ると俺の所に逃げてくるなんてこともあった


シグノイアにいた頃は、フィーナと一緒にリィの散歩に行ってたな、懐かしい


…って、いやいや

すぐに楽しかった頃のことを考えるのは良くないぞ


「ヒャン?」


「ああ、ごめん。ほら、もう一回行くぞ、リィ」


「ヒャーン!」



リィとしばらく遊んでいると、校舎からジョゼが出て来た


「ラーズ、ここにいたのか」


「ジョゼ、どうした?」


「お前の外部稼働ユニットのメンテナンスが終わったぞ」


そう言って、データ2の機体を渡してくる


「お、ありがとう。データ2は攻撃も補助もできるから、動けなくなるときついんだよ。助かる」


データ2は、アサルトライフ、モ魔、小型杖を装備している小型の肉食恐竜型だ

対Bランク戦闘の時でさえ、小型杖の弱体化魔法弾で貢献してくれる


フォウルのサンダーブレスや、リィの霊属性ブレス、巻物を使った範囲魔法(小)などの攻撃と違って地味だが、強敵に対しては必須の働きをする縁の下の力持ちだ



「ヒャン!」


「リィ、遊ぶ?」


「ヒャンヒャン!」


データ2がリィと遊び始めたので、そのまま任せることにする

さ、気分転換も出来たし、装具の練習の続きをしよう



「それが装具って奴か?」

興味を持ったのか、ジョゼが俺の装具を覗き込んでくる


「ああ、そうだよ。手甲タイプのグローブ型にして、爪を付けて見ようと思ってるんだ」


「爪?」


「組んだ時に、頸動脈とかを狙える鋭い爪を付ければ暗器として使えるかなって。マキ組長の角指を見て思ったんだ」


「でも、爪を付けたら拳を握り辛くないか? ラーズは格闘術を使うんだろ?」


「…そうなんだよな。爪を小さくして邪魔にならないようにしようと思って練習してるんだ」


「猫みたいに、収納式にしたらどうだ? 必要な時に飛び出すように」


「…っ!!」


そ、その手があったか!



俺はジョゼのアイデアを元に、さっそく装具に猫の爪をイメージして作ってみる



ニョン


「………」



指の先に鉤爪のような小さい爪を跳び出させ、使わない時はひっこめる

多少歪だが、伸縮構造は思ったより簡単に作り出せた


「お、いいじゃないか。それなら、隙を見て急所をひっかくことができるんじゃないか?」


「ああ、後は形を整えてイメージを定着させれば…」


一度物質化を解除して、再度物質化


「…」

「…」


次は、爪が癒着して動かない

出来損ないの指先になってしまった


うん、何度も繰り返すしかないよな…



「二人とも、何してるんだ?」


「あ、コウ」


眠そうな顔をしてコウが校舎から出てくる


「ラーズの装具を見てたんだよ。なかなか面白くてな」

ジョゼが言う


「装具?」

コウが俺を見る


「ちょうどいい。ラーズ、コウと組手をしてみたらどうだ? 仕込みを知らない相手と戦ってみたら面白いじゃないか」


「あー…、そうだね。コウ、お願いしていいか?」


「よく分からないけど…。いいよ、分かった」



寝起きのコウがナイフを構える

俺は、装具を両腕に物質化した



ヒュンッ



コウのナイフを装具の手甲で受ける

やはり、防具があると刃物にも余裕をもって対応できる



ナイフを躱しながら、拳を突き込む



ドガッ!


「ぐがっ!?」



ナックルがコウの肩を直撃

コウが顔をしかめる


その瞬間、コウのナイフを持つ手を掴む



チクッ…


「え?」



手首に当てられた尖った感触にコウが焦る

その瞬間、左手の指先の爪を出して首を刈る



ヒュンッ!


ブシューーーッ!



コウの頸動脈から血が噴き出る………

もちろんイメージだ


「な、なんだよ、その手袋!?」

コウが驚いて言う


やはり、爪をひっこめておけば使う直前まで気づかれない

その結果、隙を見せて手首と首の動脈を切ることに成功した



「ジョゼ、収納式の爪はいい感じだよ。拳を握るのにも邪魔にならないし」


収納式の爪なら、武器を持つのも問題なさそうだ


「装具の形は決まったってことか?」


「うーん…、それはまだだよ。俺は、本当は刃物の装具にしようと思ってたんだ」


それなのに、マサカドにビビッて、その怒りで殴りつけたおかげでナックルガードのような形の装具が勝手に出来上がってしまった


そして、一度作り出せた装具は大きく姿が変えられないことが分かった

ある程度形を変化させることはできるので、結局ナックルガードを基本の形として試行錯誤している


「刃物か…、確かに武器と言えば刃物だよな」


「この手甲の形にどうやって刃物を入れるか悩んでるんだよ」


「装具を付けた状態で、普通にナイフを持つのじゃダメなのか?」

コウが尋ねる


「装具は、潜入工作などの武器を持ちこめない状態で活きる技術だからな。やはり刃物は強いから装具として作れるようにしておきたいんだ」


「複数の装具を作ることは?」


「…いや、将来的には分からないが、今はこの手甲型を中心とした形にしかできないんだ。よっぽど、殴りたいって意識したんだろうな」


がしゃどくろ野郎との戦闘で、突然物質化した装具

この形以外に変えられる気がしない


「そっか、上手くいかないもんだな」


「それに、今はアイテムや使う武器が多すぎて悩んでるんだ。これ以上武器を増やしても使いこなせないよ」


「ラーズは小型杖も増えたしな」

ジョゼが口を挟む


「利便性は上がったんだけどね」


「ラーズは、忍術を考えたり装具の形を考えたり大変だなー…」

そんな俺を、コウが他人事で言う


いいよなー、もう忍術を持ってる奴は


だが、誰しもが通る道なのだろう

どんな忍術にするか、まだ全然決められてないしどうするか…



俺は、ジョゼとコウに相談しながら装具と忍術を考るのだった



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