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七章 ~1話 忍者への道

用語説明w

ヴァヴェル:魔属性装備である外骨格型ウェアラブルアーマー。身体の状態チェックと内部触手による接骨機能、聖・風属性軽減効果、魔属性による認識阻害効果を持つ


スサノヲ:見た目は赤ずきんをかぶった女の子。正体は、怪力の腕利き鍛冶職人でジャンク屋


「お、お前…、いい加減にしろぉぉぉっ!!」



ゴガァッ!!


「ぐがっ!?」



スサノヲが、戻って来た俺をハンマーでぶん殴った


スサノヲは、赤ずきんを被った小柄な女の子に見えるが、腕は職人だけあったとんでもなく鍛えられている

俺の体は簡単に宙を舞った


「ま、待て! 死ぬっ、ハンマーは死んじゃうって!」


「何回ヴァヴェルをぶっ壊したら気が済むんだぁぁぁっ!? あたしが直したばっかりだろうが!」


「相手はナウカの鬼憑きだったんだぞ! 苦戦して当たり前だろ! むしろ、ヴァヴェルが無かったらとっくに殺されてるわ!」


「あ?」


「お前の腕が、黒竜の鱗と言う最高の素材で作り上げたヴァヴェルが俺を守ってくれたってことだろうが! 実際に俺はピンピンしてるんだぞ!?」


「…」


お、効いてきた

スサノヲの職人魂、これがキーワードだろう


「頼む、俺はお前の装備が無いと一歩だって戦場を歩けやしない。…ヴァヴェルを直してくれ。これは、お前にしかできないんだ」


「…し、しかたねぇなぁ……」


頭をポリポリ搔きながら、顔をそむける赤ずきん

うむ、チョロイな


だが、感謝してるし評価してるし信頼もしている



「とりあえず、ラーズ。お疲れ」


「ああ、ミィ。何とか生還したよ」


「…話はテントでしましょ。少し休みなよ」


そう言って、ミィが被害の無かったテントを示した



お茶を飲みながら、一服

ミィが状況を説明してくれた


ナウカ・コクル連合軍が、領境北側のナウカ領に戦力を集中し始めたことが判明

コクル領からも戦力を集めているようで、間違いなく全面戦争のための準備であるとのこと


つまり、ナウカ・コクル連合が、全面戦争に踏み切る準備を始めたということだ


「いよいよですね」

マキ組長が言う


「フィーナの話だと、勃発まではあと一か月ほどじゃないかって」


「…ミィ達はどうするんだ?」


「二週間ほど、超特急でここの発掘を突貫する。そして、風の道化師が言っていた壁画とやらを確認出来たら、また封印して立ち去るしかないわ」


「可能なら、その時に壁画や遺跡群の保護も行いましょう。鉄骨を組んだり、木材と布で遺跡を保護できれば、ある程度の衝撃にも耐えられる」

バビロンさんが言う


今後の方針として、ウルラ軍のスワイプ軍曹以下の警備を最少限に付けて発掘を続行

ミィが常駐して、この場所は皇国の騎士団の作業場所だとアピールする


そして、壁画を確認した段階、若しくは二週間が経った段階で遺跡を封印して撤収する



「あんた達、下手すると襲われて殺される可能性もある。それでもいいのね?」

ミィが、発掘作業員達を見る


「…真実の眼のために死ねるのなら本望です!」

バビロンさん以下、研究室の人間たちは力強く頷いた


発掘作業はスピード勝負となった



「マキ組は今後どうするんですか?」

俺はマキ組長を見る


「特に今までと変わりません。出撃要請が来れば出て、その他は自己研鑽ですね」


「よし、それじゃあマキ組の拠点に戻ろうぜ。早くヴァヴェルを直してやらなきゃいけないんだ」

スサノヲが言う


「分かったって。ミィ、今度差し入れを持ってくるよ。できることがあったら言ってくれ」


「ラーズは、自分が生き残ることに集中しなさい。クレハナの内戦は片手間では生き残れないんだから。それに、ここにはフィーナからの支援を貰うつもりだから、不用意に来ると顔を合わすことになるわよ?」


「…」


それは…、気まずいな

まぁ、それでも発掘の状況は気になるから、たまには顔を出したい




とりあえず、マキ組は撤収することになった


この現場では、ミィやバビロンさんが発掘作業の続行、ウルラ軍のスワイプ軍曹が警備で残る

何かあれば、すぐに応援を呼べるように態勢を整えた


「いやー疲れたな」

コウが運転しながら伸びをする


「私達は撤収しちゃって大丈夫なんですかね?」

ヤエがマキ組長に言う


「この発掘現場は、龍神皇国の騎士団が活動中というアピールが必要です。そのため、最低限のモンスター対策の警備しか置かないようにして、ナウカと戦う意志がないことをアピールするのです」


「でも、全面戦争が近いんですし、奴らが関係なく襲ってきたら…」


「ミィ様はBランクの騎士ですから、そう簡単にはやられないでしょう。そして、もしそれをやったなら、龍神皇国が正式にナウカと戦う理由を与えることになります。ナウカとしては、あくまで内戦という立場を貫く必要がありますから、それはできないでしょう」


「…だからこそ、マサカドは手を出さずに去って行ったんだろうしな」

ルイが頷いた


あの骸骨野郎と俺達の戦いは、あくまでもウルラとナウカの戦いと言う構図だった


ミィという存在がいなかったら、そして、龍神皇国の騎士団と言う後ろ盾が無かったら

俺達はマサカドに簡単に殺されていただろう


…マサカドは強かった


純粋な身体能力

速さ、強さ、耐久力、そして剣の腕

全てが強かった


そして、奴が放つ殺気

純粋な憎悪と憤怒

ウルラを根絶やしにしてやる、そう言う意志を感じた


更に、ドースさんが招いたという神らしきものの教団

あの教団への憎悪


マサカドが放出していたという精神属性の作用

おそらく、相手に無作為に恐怖を抱かせる力


あの能力と相まって、マサカドへの恐怖が格段に増大した



勝てない


それどころか、あいつに恐怖を感じてしまった


足が竦んでしまった



俺は、父さんの持っていたダマスカスナイフを眺める


…父さんは、あんな奴に武器も持たずに対峙したのか



「ラーズ?」


「はい?」


マキ組長に呼ばれ、俺は顔を上げる


「ちゃんと話を聞いておいてください。マキ組の方針として、しばらくは出撃よりも訓練に重きを置きます」


「訓練ですか?」


「はい。全面戦争では、マキ組も領境で参戦することになります。そこで生き残るための訓練です」


「はぁ…」


「そして、具体的な指示を与えます。ラーズは、その装具の完成と忍術を習得してください」


「装具と…、忍術?」


「そうです。一人前の忍者とは、独自の忍術を持ったものです。まずはどんな忍術にするのか、どうやって相手の隙を突くのか、自分で考えてみて下さい」


「は、はい。分かりました」


ついに忍術の習得か


俺は輪力が作れないため、遁術は使えない

必然的に特技(スキル)ではない忍術を考えることになる


どんな忍術がいいかな…



「…そう言えば、マキ組長」


「何ですか?」

マキ組長が俺を見る


「ナウカ軍の使う鬼憑きって、どんな術なんですか? 解呪の魔法弾も効果が無いですし術の効果が高すぎるし、謎です」


鬼憑きを使うナウカ軍

魔人と呼ばれるほどの戦闘力の高さは以上だった


あれだけの力を得られるのに、何のリスクもないというのはおかしい

反則もいい所だ


「鬼憑きとは、独自に契約した存在を自らに降ろす降霊術です。契約した存在の力が強ければ強いほど、使える力が大きくなります」


「降霊術…」



降霊術


何らかの存在を自らに憑依させる術であり、精霊と交信するシャーマニズム、死者を降ろすイタコ、雑霊に干渉するこっくりさん、更に実力の高い者であれば高位の神から予言を授かるなどということも可能である



「ナウカの鬼憑きは、本来は戦闘用の術ではありません。しかし、悪霊や鬼神、悪魔と契約して憑依させることで、ラーズが戦ってきたような力を得ることができるのです」


「憑依するだけで高位の存在の力を使いこなせるって、強すぎませんか?」


「もちろん、リスクもあります。感覚を取られたり寿命を奪われたり、酷い時だと魂を取られるとか。ナウカの鬼憑きたちは、全員が何らかのリスクを負って力を行使しているのは間違いありません」


「…」


やはり、大きなデメリットを持っていたか

力だけを無制限にくれる存在などありえない

当然、対価を要求されるはずである


ナウカの魔人達は、そこまでしてウルラを滅ぼそうとしているということだ



…マサカドは、いったい何を犠牲にしてあの力を得たのだろうか?


仙人として完成された闘氣(オーラ)使う、B+ランク

それは、セフィ姉と同じランクだ


寒気がするほどの恐怖

圧倒的な実力


…父さんの仇であるのにも関わらず、俺の足は前に出なかった



マサカドの怒り


ウルラに対する怒り

そして、神らしきものの教団への怒り


あの風の道化師を瞬殺した実力


次に戦場で会った時、一体どう対処すればいいのか想像もつかない



「そう言えば、あのピエロ女の死体が消えていましたね」


「…あの傷で生きていたんですか?」


「可能性はあります」



風の道化師もしぶとい奴だ


俺は、Bランク以上の敵の厄介さに絶望感を抱いてしまった






七章開始、よろしくお願いします!

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