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六章 ~39話 発掘作戦4

用語説明w

自己生成爆弾:宇宙技術を使った四種類の爆弾の超小規模生産工場。材料とエネルギーを確保できれば、使用後に勝手に新しい爆弾を生成してくれる

ウンディーネ…粘着性のあるゲル状爆弾

サラマンダー…液体型焼夷弾

ジン…蜂のような羽根で跳ぶ小型ミサイル

ノーム…転がることである程度の追尾性を持つ球形手榴弾


データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AIで倉デバイスやドローンを制御。戦闘用端末である外部稼働ユニットのデータ2と並行稼働している


「ラーズ、行きますよ。心と目的をしっかり持ちなさい」


「………はい!」


マキ組長には、俺がマサカドのプレッシャーで足が竦んだことがしっかりとバレていたらしい



クソが…


絶対に許せねぇ


自分自身も、ビビらせたあいつも許せない!



俺は1991を構え直す



大崩壊の、あの光景を思い出せ


怒りで心を満たせ


自分の命が残って得た物は何だ?



…どうしようもない喪失感と、潰されそうなほどの後悔だけだ!


命を惜しむな


一つの武器としろ



「…先に出ます!」


ボッ!



俺は骸骨野郎に突っ込む



ドガガガッ


銃化した左腕で射撃しながら横に回る



「データ2、拘束の魔法弾を当てろ。検証を始める」


「ご主人、了解だよ!」

「続いて報告だよ! 対象:マサカドから精神属性の魔力を検知、何かの作用を確認!」

データ2に続いて、データの報告


何だって?

何かの作用だと?



「ほぉ…、やるじゃないか。折れた心を立て直すとはな」

マサカドが人知れずに呟く


だが、特に興味も無かったのか、反転して後ろを向く


「ナウカが勝った時、お前達ウルラ軍と忍び共は皆殺しだ。プアカオ、全面戦争の露払いとしてこいつらを血祭りにあげろ」


そう言って、マサカドは剣を収めて去って行った

同時に、ナウカ軍も遠巻きに見物を決め込んだ


骸骨野郎はBランクではない

一般兵は一般兵同士で、Bランク以上であるミィもマサカドも手を出すなということか



鬼憑きとは、降霊対象と契約して自らに降ろすことで超人的な力を得る

その対象の特性を利用できるため、降ろした対象によって得られる特性に差が出る


マサカドの交霊対象は名もなき鬼神


この鬼神は、人を、生命をひたすら刈り取る存在

その特性として、恐怖や畏怖の感情を揺さぶる精神属性の魔力を放出している

つまり、周囲の人間や感情を持つ生物にとって、必要以上の恐怖心を植え付ける作用があるのだ



俺は、意図的にトリガーを全開


更に、大崩壊の記憶をあえて呼び起こす


理不尽に殺された仲間達の姿が、俺の中にくすぶっていた怒りの炎を燃え上がらせる



恐怖だと?


恐怖とは生存本能、俺は自分の命を惜しんだということだ


あれだけの後悔と失意、それこそが俺の畏怖するもの


あの感情を払拭できるなら、死んだって構わないはずだ



それなのに、恐怖だと?


許さない


許さない


許さない


俺自身の命を惜しむなんて、そんなことは絶対に許せない!



背中に巨大骸骨、がしゃどくろを浮かばせた男は、骨のようなものを実在化

身体を骨のようなもので覆う


その肩には、不釣り合いなほど巨大な両腕を生やしている



ドガガガッ!


俺の射撃を、骸骨野郎が巨大な骨の手のひらで止める



骨の硬度が高い、おそらく鎧のように纏った骨も同じだろう

厄介だ


だが、残念ながらこいつは素人のようだ



ゴガガガガッ!


地面を削りながら、巨大な腕での薙ぎ払い



飛び越えて、飛行能力で鋭角に降下

骸骨野郎の目前に陣取る



ゴゴンッ!


変異体の筋力をナノマシンシステム2.0で強化したワン・ツー

骸骨野郎が衝撃で仰け反る



「ご主人! 拘束の魔法弾の効果を確認だよ! 軟化の魔法弾に移行するよ!」

データからの報告


俺はモ魔で、風属性範囲魔法(小)を読み込む



ブォンッ!


もう一度、巨大な腕が振り回される



長いリーチは、接近されると不利になる

懐にいれば余裕をもって避けられる


俺は自己生成爆弾を取り出す

まだ使っていなかった爆弾、サラマンダーだ



ボボォォォォ――ーーーッ!


「ぐあぁぁっ!?」



激しい燃焼を始めるサラマンダー

これは焼夷弾の一種だ


身体を炎に巻かれて、焦っている骸骨野郎


俺は、読み込み終わった風属性範囲魔法(小)、竜巻魔法をモ魔で発動する

高い防御力の奴には魔法、それがセオリーだ



ブオォォォォッ!


「ぐわあぁぁぁぁっ!!」



竜巻が巻き起こり、炎に巻かれた骸骨野郎を切り刻む

正確には、鎧の中の体を気圧差で引き裂いている


霊力や魔力を消費して鬼付きの力を発動している以上、魔法防御はそこまで高くはなさそうだ



よし、最後の検証だ

俺は、解呪の魔石を小型杖にはめる


交霊術は、何らかの魔法、もしくは霊力を使った術式だ

それならば、解呪の魔石で鬼付き術を破壊、解除ができるかもしれない


…トリガーが発動しているのに冷静だ

それは、あのマサカドを見てしまったから


あいつとはいつか戦わなきゃいけない時が来る

情報が必要だ


恐怖云々の前に、あいつは強すぎる

B+ランクを敵にする、これは絶望的な賭けだ



俺は解呪の魔法弾を髑髏野郎に当てる


シュゥゥゥゥ…



しかし、鬼憑きの力は消えない

残念ながら、強制的に解除させることはできないか



「ぐぎゃぁぁぁぁぁっ!!!!」


「何っ!?」



突然、叫び始める髑髏野郎


俺が警戒した瞬間…



ゴシャァッ!!


「ごふっ…なっ…!?」



巨大な腕で殴られる

背中から生えた腕ではない、自らの腕を突然巨大化させやがった


今までにない変化で、反応しきれなかった


「ギュオォォォォ!」


その体は、腕だけでなく身体も大きくなっていく

まるで、その体をがしゃどくろそのものに変化しようとしているかのようだ



巨大なパンチを1991でいなす



ドゴォッ!

ゴガッ!


「ぐはっ…!!」



突然巨大化した大きな四本の腕での連続パンチのラッシュ

いなしきれずに被弾、1991が飛び、俺の体もピンボールのように吹き飛ばされる


脳が揺れて、景色が歪む



想定外の変化


やられた


今日は何回やられれば気が済むんだ



…ふざけるな! その骨を叩き砕いてやる!


怒りが足りねぇ! 殺意が足りねぇ!


気合いを入れろっっ!!



全ての力を拳に込める


砕きつぶしてやる!



「うおぉぉぉっ!!」



トラウマを刺激された


俺は、一体何に怒っているのだろうか?


何に焦っているのだろうか?



ゴガッ!


オーバーハンドで拳を振り切る



こいつは、あくまでも一般兵


闘氣(オーラ)使っているわけではない



ゴギィッ!


「ぐはっ…!」



髑髏野郎の動きが速い


違う、こいつはもう妖怪がしゃどくろに変わった


乗っ取られたのか?



ゴキィッ!


「ぐぅっ…!」



がしゃどくろに変わってから、動きが変わった


本能のまま、骨となった腕を叩きつける


避けきれない


だが…



ゴガァッ!


大振りのパンチに、丁寧にカウンターのパンチを叩き込む



同時に、頭を持って崩す


ウンディーネを貼り付け離脱


更にノームを転がす



ドッガァァァァァン!


爆発で骨が砕ける




こいつを叩き潰す


目の前の敵を蹂躙する


そんな力が欲しい



ドゴォッ!



右拳の感触が変わった


がしゃどくろとなった髑髏野郎の頬骨が砕ける感覚


骨の強度が下がったか?



その時、骸骨野郎に忍び寄る影



ザシュッ…


「かはっ…」



俺が更に追撃に移ろうとした時、後ろからマキ組長が骸骨野郎の喉を掻っ切った



「…え?」


「…もう少し見ていたかったのですが、時間切れです。またトラブルが発生しました」

マキ組長が冷静に言う


「はぁ…はぁ…、ト、トラブル…?」


「スタンピートの危険があります」


「…スタンピート!?」




・・・・・・




…マサカドが骸骨野郎を置いて去った時


「な、何なのよ…、化け物じゃない、あいつ!」

ミィが、地面にへなへなと座り込んむ


「…さ、被害状況を確認して発掘継続の判断をしましょう。まずは、あの男の処理ですね」


しかし、マキ組長は冷静だった

骸骨野郎と俺の戦闘を見つめる


「…ま、ま、まずいぞ! 来てくれ!」

その時、バビロンさんの声がインカムで聞こえた


「こ、今度は何よ!?」

ミィが叫ぶ


「あの化け物、王の蟲の幼虫を斬ってしまっている! ス、スタンピートが起こるぞ!」


「はぁっ!?」




・・・・・・




がしゃどくろの打撃に俺は付き合った

その為、強烈な打撃を受けてダメージが酷い


スサノヲに直してもらったばかりのヴァヴェルがまたひしゃげてしまった

…これ、絶対に怒られるな



「…恐怖に駆られたことに意識を持って行かれていましたが、払拭できましたか?」

マキ組長が、俺の応急処置をしながら言う


「え?」


「非効率な殴り合いでしたが、恐怖に駆られた体験は対処を誤ると今後に引きずります。後の影響を考えて黙認しました」


「…」


俺は、冷静だと思っていた

だが、あれ?

なんで俺はあの髑髏野郎と殴り合ったんだ?


全然冷静じゃなかった

恐怖に負けた怒りを、ただぶつけていただけだった


…俺ってアホなのだろうか?



「殻を破るには、時に非効率なことも有効です。完全習得が楽しみですね」


「完全習得?」


何の話?


「…気が付いてないのですか? その、両手のものに」


「?」


俺は、自分の腕を見る


「…なっ! 何これ!?」


俺の両腕には、手甲のように殻みたいなものが付いていた

拳を包むように、そして前腕から肘までもを覆うような形


これって…


「ラーズが練習を続けていた装具ではないのですか?」


「…っ!?」


「それは置いておいて、時間がありません。バビロンさんの所に行きますよ」

マキ組長が、固まっている俺を急かす



俺達が駆けつけると、そこには一メートルくらいで背中に目が複数あるダンゴムシ、特徴的な角が折れた子供の王の蟲が転がっていた


まずいことに、その腹からは体液が流れ出していた


鬼憑き 閑話8 クサナギ家

王の蟲 閑話15 フィーナの忍術修行


明日、六章完結です!

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― 新着の感想 ―
[一言] スタンビートかぁ…ナウカの方行かねえかなぁw
[一言] この前の話から思ってたけど、「王の虫」って、ナウシカの「王蟲 オーム」のオマージュですよね? スタンピードとか完全にラストシーンのクライマックス部分ですし。
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