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六章 ~38話 発掘作戦3

用語説明w

魔導法学の三大基本作用力:精神の力である精力(じんりょく)、肉体の氣脈の力である氣力、霊体の力である霊力のこと


魔力:精力(じんりょく)と霊力の合力で魔法の源の力

輪力:霊力と氣力の合力で特技(スキル)の源の力

闘力:氣力と精力(じんりょく)の合力で闘氣(オーラ)の源の力


ウルラ軍が撤退を始めた

これは命令ではなく、自主的に撤退を始めたのだ


だが、誰も責める者はいない

なぜなら、ナウカ軍の力が圧倒的だったからだ



「ウルラ軍で発掘隊の保護を! 機材を持って下がりなさい!」

ミィもすぐに撤退を選択した


神らしきものの教団の兵士もナウカ軍に攻撃されている

あの調子じゃ、すぐに全滅させられそうだ


ナウカ軍は、軽装甲車両五台と二十人ほどの歩兵で構成されていた


戦車を失ったとはいえ、スワイプ軍曹率いるウルラ軍は一個小隊で三十人以上はいる

ナウカ軍は領境を視察するための部隊のようで小規模だ



「なっ!? あ、あれは…!」


だが、その内の一人が問題だった


俺は、ナウカ軍の先頭に立って悠々と歩いている一人の仮面をかぶった戦闘員の姿を見て固まる



「…マ、マサカド……!?」

風の道化師が呟く



そう、間違いない

あの仮面がマサカドだ


俺の父さんが襲われたときと同じ

マサカド自身が領境を調査していたのだ



「下がりなさい! こちらは皇国騎士団のミィ! 当方に敵意無し! なぜ攻撃を仕掛けたのか、説明を求める!」

ミィが拡声器で抗議を行う


「ピー…ガガッ…」

ナウカ軍の攻撃が止み、向こうも拡声器のスイッチを入れたようだ


「ウルラ軍の姿を確認した! 領境で何をしている? 皇国は内戦に関与しないという条約を破棄する気か!?」


「こちらは、この地の遺跡の学術調査を行っている! 発掘調査の機材しか持っていない! ウルラ軍は、盗賊とモンスター対策の警備よ! 装備を見れば、侵略ではないことは分かったはず!」


「戦闘音が聞こえた! 何と戦っている?」


「盗賊に襲われたため、自衛のための戦闘を行っただけよ! ナウカ軍に攻撃される理由はない! そちらこそ、皇国と事を構えるつもりか!?」


「…そちらに数名が向かう、確認させろ」


「了解した」



しばらくすると、一台の軽装甲車両向かってくる

マサカドが近づいてくる


俺は、静かに拳を握りしめる


一般人のジャーナリストである父さんと、ドミオール院の集落を攻撃しやがった殺戮者

…状況によっては、この場でやってやる



俺は神らしきものの教団の一般兵たちと、その前に立つ風の道化師に合図を送る

風の道化師も頷いた


合図の理由はもちろん、「しばらく停戦」だ

この状況でナウカ軍に攻撃されたら、間違いなくどちらも全滅する


奇妙な緊張感を持った時間が流れ始めた



「ラーズ、感情を抑えて下さい。マサカドの強さは別格です。闘氣(オーラ)を持たない私達では相手になりません」


「は、はい…」

マキ組長が、警戒心を表情で表す


何度かBランクを倒しているマキ組長がそんなことを言うなんて

マサカドってそんなに強いのか?


俺は、状況によってはマサカドにフル機構攻撃を叩き込もうと思っていた

父さんやドミオール院を襲った野郎は許せない


それに、ナウカ軍の主力の一人を潰せれば、それはウルラにとって大きな利益だ

打算でもある




「えっ…!?」


軽装甲車両を降りて来て、仮面をははずす


なんと、マサカドはなんと女だった

巫女装束のような服装、長い黒髪が特徴的なノーマンだ



マサカド


B+ランクの戦闘員であり、ナウカの鬼憑きの術を使う魔人

仙人としての人体強化を終えており、その戦闘力は普通のBランクと一線を画す



「…貴様らは何者だ?」

マサカドはミィの姿を確認すると、風の道化師に向って言う


「私達は神らしきものの教団よ。この遺跡は、教団にとっても考古学にとっても…」


「神らしきものの教団だと? ドースがクレハナに招き入れた邪教ではないか。大崩壊の後にクレハナでは活動禁止になっているはずだ」


「私達は、教団の活動で来ているわけでは…」


「ドースの撒いた腐った種が、未だにクレハナにはびこっている。嘆かわしいことだ」

そう言って、マサカドが剣を抜く


「…なっ!?」

全く話をする気が無いマサカドの様子に、風の道化師が大鎌を構えた



…俺達としては、願ったり叶ったりだ

ナウカと教団が潰し合うならそれでいい

好きにやって、可能なら共倒れになってくれ



マサカドの肩から、新たに腕が二本生えてくる

前回戦った魔人と同じだ

腕四本が魔人のスタンダードなのか?


マサカドは、元からある二本の腕で一本の大剣を持つ

そして、新しい二本の腕で、それぞれ短い棒の両端に飾りがついたものを持っている


あれは金剛杵(こんごうしょ)、ヴァジュラとも呼ばれる武器だ

打撃武器としても使えるが、あれは仏具であり、霊力との親和性が高い


その為、霊力を使った攻撃、除霊、交霊術などの際に使われる

鬼憑きは霊力を使った術ということなのだろう



ゴォッ!


「くっ!?」



とんでもない踏み込みでマサカドが飛び込む

そして、凄まじい膂力で風の道化師に大剣を叩きつける



「かはっ………!!」


大鎌の柄でガードしたはずの風の道化師が、ふらついて後ろに後ずさる



…今、何かを感じた

止められた大剣から、斬撃のようなものを()()()()()



「…霊力による斬撃ですね。あの道化師の霊体を切り裂いたのでしょう」

マキ組長が、小声で言う


ガードできない斬撃!?

そんなの反則じゃねーか!


しかも、単純なスピードや力が段違いだ

Bランクである風の道化師を、まるで子ども扱いしている



「民衆の弱みに付け込む洗脳宗教め、反吐が出る」

そして、力を込めるマサカド



…ゾクッ……


「…っ!?」



突然、身体を寒気が襲う

な、何だ、このプレッシャーは…?


これは、アレだ

あの施設で、トラビスから感じていたプレッシャーに近い


自分よりも格上の生物

闘氣(オーラ)の存在感は、そう言うプレッシャーを与えてくる


だが、俺は今更闘氣(オーラ)にビビったりはしない

こいつのプレッシャーの大きさは、そんなものじゃない



マサカドが、ゆっくりと大剣を振り上げる


「死ね」


「ま、待っ…!」


霊体のダメージで動けない風の道化師に対して、無慈悲に大剣を振り下ろされる



「…っ!!」


ズバァッ…!



風の道化師の体が飛ぶ

但し、飛んだのは上半身の一部だけだ


その体は、肩から反対側のわき腹まで斜めに切り離れていた


血反吐を吐いて、痙攣する風の道化師

マサカドは、その様子を興味無さそうに見下ろす


そして、おもむろに教団の兵士たちの方を向いた



ズガァッ!


ゴシャッ!


ガガァッ!



マサカドは斬撃を飛ばし、兵士たちを惨殺していく

丘から下って逃げて行く兵士たちを自らが追い、逃がさずに仕留めて行く


森から出てきていた虫型モンスターも、その例外ではなかった

森では、無差別に斬撃が飛び交った



めちゃくちゃだった


あの風の道化師に対してさえ、力だけで圧倒的だった



「こ、これがB+ランク…」

でたらめな強さに、俺はつい口走る


「あれが、仙人となったBランクです」

マキ組長が言う



…怖い


その姿を見て感じた、率直な意見だ



B+ランクのプレッシャーに膝が震える


足が前に出ない



動きが見えないほど速い、圧倒的な身体能力


本能が感じる、格上としてのプレッシャー


まるで、蛇と蛙の関係のようだ



…これは勝てない


今までの経験が、結論を弾き出す



マサカドが、あの風の道化師を瞬殺した実力を目の当たりにしたからか

心の底から湧き出る、本能的な恐怖が俺の心臓を鷲掴みにする


変異体と同じ完成度を持つ人体強化術である仙人

人体強化術を完成した者が闘氣(オーラ)を纏うと、ここまでの格を持つものなのか…!


…今まで、B+ランクと言う存在に敵として出会ったことは無かった


それが、こんなにも体を震えさせるとは

これが、セフィ姉のいる世界なのか



「…」


マサカドが、俺達にも剣を向ける



それを見て、瞬間的に俺の足が竦んだ



…待て、俺はあいつを恐れているのか?


あいつは父さんを攻撃した仇だぞ?


何で体が動かないんだ!?



「…」


その俺の前に、すっと立つ細い背中

マキ組長が、無言でマサカドに対して二丁鎌を構えた



「…っ!?」


凄いな…、この人はいつも通りだ

平常心、そして不動心でいられる、それは強さだ


戦ったら明らかに殺されるという、希望が無い状況

それは、とてつもない恐怖だ



「ギリッ………!」


歯を食いしばる



俺はマキ組長の背中を見て、心の中で自分をぶん殴る


マキ組長に比べて、今の俺はなんだ?

身体が恐怖で動かないだと?

そんなこと、許されるわけがない


あの施設で、シンヤにやられていた時のことを思い出す


恐怖と後悔に負けて、俺は記憶から逃げた

俺は弱かった、それが未だに許せない


…自分が許せない、こんなんじゃ教団を潰すなんて不可能だ



「お前達はウルラの者だな?」


「私達は、皇国の騎士の依頼で動いています」

マキ組長が言う


「ふん、知ったことか。敵同士、領境で接触して交戦となってしまうことは当然に起こり得る。…プアカオ、お前がやれ」


「はっ!」

マサカドの言葉に、一人の男が前に出る



その男も巫女装束のような袴をはいている

その後ろに、巨大な骸骨の像が浮かんだ


「…がしゃどくろ」

マキ組長が言う


強大な骸骨の妖怪

あの男は、あの妖怪の力を自分に降ろして使うのか



「待ちなさい! 私達に手を出すなら皇国への攻撃と見なします! …それだけの覚悟をしてからやりなさい!」

そう言って、ミィは闘氣(オーラ)を纏ってスーラと共に構えた


「黙るがいい、皇国の騎士よ。領境でウルラとナウカの兵が交戦することは仕方がないことだ。これは一般兵である部下が独断でウルラ兵と戦っただけ、部外者は黙っていろ」

そのミィに対して、マサカドはプレッシャーをかける


もしミィが動いたら、その報復としてマサカドが動くという意味か


…つまり、あの骸骨野郎は俺達で対処する必要があるということだ


父さん 六章 ~25話 重傷者

シンヤ 一章~29話 シンヤとの決着1

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― 新着の感想 ―
[一言] 妖怪の力を降ろすのか!てっきりスタンド的なものかと思ってたww妖怪の力を使う相手は初めてだろうしどうなるかな…?
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