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六章 ~33話 VS忍者

用語説明w

シグノイア純正陸戦銃:アサルトライフルと砲の二連装銃

自己生成爆弾:宇宙技術を使った四種類の爆弾の超小規模生産工場。材料とエネルギーを確保できれば、使用後に勝手に新しい爆弾を生成してくれる。

ウンディーネ…粘着性のあるゲル状爆弾

サラマンダー…液体型焼夷弾

ジン…蜂のような羽根で跳ぶ小型ミサイル

ノーム…転がることである程度の追尾性を持つ球形手榴弾


緊急の出撃要請が入った

俺達は、バタバタと準備して出撃する


今回の要請は戦場ではなかった


「町中ですか?」


「今回の敵は忍者だ。…ウルラの裏切り者だな」

ジョゼが、タブレット式の情報端末を見ながら言う



現場に行くと、既にウルラ軍の兵士たちがビルを包囲していた


「ルイは対面のビルから監視と狙撃、コウは裏口に回りなさい。私とラーズで潜入します」


「了解」


俺は左腕を銃化し、小型杖を握る

背中側に陸戦銃をサードハンドで保持、右腕には流星錘アームから錘を垂らして握る


「…ラーズ。今回阻止することは情報を持ち帰られることです」


「ここで仕留めるということですね?」


「その通りです。どんな攻撃が飛んで来るか分かりません、注意してください」


俺は一階からビルに侵入、マキ組長は壁を登って上階から侵入する



中は静かだった


誰もいないのか、人影はない


俺は廊下を歩いて行く


同時に、感覚に集中する



「ちっ…」


丁字路にワイヤートラップが仕掛けられている



ワイヤーを踏まないように、角からデータのアバターをのぞかせる


「敵影はないよ!」


「了解」



いくつかのトラップをやり過ごし、処理して進む


二階、三階…

今のところ敵との遭遇はない


データが進行状況をジョゼに送信

マキ組長の進行状況と共に、お互いが分かるようになっている



「…」

目の前の部屋から人の気配


二人か…?



ドガァッ!


深呼吸して、ドアを蹴り破る



「…っ!?」


部屋の中には、テーブルの上に置かれた椅子

この上に、男の子が立っていた



そして、その首にはロープが巻かれている


男の子が椅子から落ちたらどうなるか

当然、強制首吊りだ



ドガガガガガッ!


「くっ!?」



一瞬、目を奪われて、奥のソファーの後ろに潜んでいた男に先手を取られた


出口に飛び込んで廊下に戻り、自己生成爆弾のジンを発射



フィーン!


飛んでいく、蜂の羽根が付いた爆弾



同時に、銃化した左腕の銃口を男の子の首に繋がった紐の付け根に向ける


ガガガガッ!


ロープを切れば、とりあえずは安心だ


知らない人間をリスクを負って助けるほど、俺はお人よしでもないし、実力があるわけではない


…だが、子供は無条件に助けたくなる

それが人間ってものなのかもしれない

そんな心理を突いた、卑劣なトラップだ



ゴガッ!


「何っ!?」



気配に振り返ると、壁を叩き壊して男が突っ込んで来た



背中にモーターを背負うタイプの、軽量型パワードアーマーだ

腕力を補助する動力のようで、とんでもない力を出した


後ろに跳びながらバク転


俺が左腕を向けると同時に、男がサブマシンガンを向ける



ドガガガガッ

ガガガガッ



お互いに横に飛びながら弾幕を張る


転がりながら、俺はノームを転がす



「なっ…!?」


ドッガァァァァン!



敵の方向に転がる自動追尾ハンドグレネードだ


このチャンスに俺はホバーブーツで一気に飛び込み、浮かせていた陸戦銃を向ける



ガシュッ!


「…っ!!」



装填していた散弾が男を襲う


同時に、男の手から炎が噴き出した



ボボォォーーーッ!



俺はギリギリで飛行能力を真下に発動

床に頭から突っ込み、前転からスライディングするように炎を避けた



「…」


散弾を受けて、頭を撃ち抜かれた男を調べる



どうやら、男の炎は遁術の一種だったようだ

サブマシンガンと、軽量型パワードアーマー、そして遁術


忍びと言う人種は、生き残るために全ての手段を使う

そして、傭兵と違うのは火力だけに特化していないことだ



俺は、紐を切った男の子の所に行く

男の子は泣いていたが、ちゃんと生きていた


「大丈夫? ここへは連れてこられたの?」


「…変なおじちゃんに、突然ここに連れてこられて…」


「…っ!?」



その時、気が付いた


男の子から、火薬の臭いがする

そして、電子部品の臭いもだ


俺は男の子から距離を取って、後ろに跳ぶ………!



ドッガァァァァン!!


「…!!」



男の子が、正確には男の子の服の下に付けられていたであろう爆弾が爆発した




………




……







「………ズ…」



「…ーズ…」



「ヒャー……ーン……!」



無線が何か言っている


絆の腕輪で、リィの声が聞こえる



「う…」


俺は…


生きているのか…?



「ラーズ! 無事か!?」


無線から、ジョゼの焦った声が聞こえた


「あー、こちらラーズ。無事です」


「良かった、爆発音がしたから焦ったぞ! 怪我は?」


俺は、手足を確認

うん、動く


首、胴、大丈夫

その時、肩に血が付いていることに気が付いた


触っても痛くない

違うな、俺の顔から垂れている血か?


「ご主人! 右耳から出血しているよ!」

データのアバターが俺を観察してくれた


どうやら、直近の爆発で鼓膜が破れたらしい

だが、変異体とナノマシンシステムの治癒力で、すでに聴力は戻っている



「ダメージは無い。このまま、上階へ向かう」


「分かった、気を付けろ」


俺は、改めて爆発した部屋を見る



男の子だったものの残骸が散らばる部屋


「クソ野郎が…」


俺は、散弾を受けて倒れた男に左腕を向ける



ガンッ!


念のため頭を撃ち抜き、俺は先へと進んだ



「ラーズ。もう一人、忍びが下へ逃げました。注意して下さい」


「了解しました」



上からも激しい銃声や爆発音、攻撃魔法の音が聞こえる

マキ組長が戦っているのだろう



「…っ!!」


ドガッ!



突然、拳大の石が飛んできた

頭を振って避けながら、銃化した左腕で撃ち返す



ドガガガッ!


ゴッ!



飛び込んで来た相手から何かが飛んできて、右肩に直撃する


何だ?

爪くらいの大きさの石みたいだ


そして、その石は直撃すると崩れて消えてしまった

これは…


「遁術か…」


「ほぅ…、いきなり遁術という言葉が出るということは、お前も忍びか?」


「まだ、忍術も使えない見習いだけどな」


男の右手の甲に、模様が浮かび上がっている

遁術の術式だ


輪力を土属性として発動させ、小さな小石を作り出す、ただそれだけの遁術

その為、比較的小さい術式だ



男は左手に魔術師用の杖を持って、壁の向こうに隠れる

攻撃魔法と遁術を使うスタイルのようだ



ゴッ


ガッ


バキッ



男は、遁術で作り出した小石を親指で撃ち出していく

…これは指弾だ


デコピンの要領で弾く技術だが、極めれば骨を叩き折れる威力を出せる

そして、銃と違って発射音せず、遁術を利用することで石を得ることも容易だ


更に…



シャキキーーーーン!


「くっ…!」



冷属性範囲魔法(小)を壁の向こうから発動させてくる


だが、やられっぱなしじゃない

角に向って、俺はハンドグレネードを投げつける



ドッガァァァァン!



同時に、飛び出して来た男

指弾と銃を撃ち合いながら、俺はバックステップ


その時、男が腰に付けた布を掴んで振りかぶる


くそっ、あれは簡易な投石器だ

大きめの石を遁術で作り出して、準備していたのだ


投擲は、直近から投げつけられると凶悪だ

威力もあるし避けにくい


だが…



ボォンッ!


「ぐぎゃあぁぁぁぁっ!?」



男が着地した場所が爆発

俺が置いておいた、自己生成爆弾のウンディーネを踏んだのだ


ジンとノームは使い切ってしまい自己生成中だが、ウンディーネとサラマンダーはまだ残っていた

使い道はいろいろあるってことだ



片足が吹き飛んだ男を殴りつけて失神させる

その後、足を縛り付けて止血、捕虜とした



「…」


血生臭さが充満した空間



懐かしさを感じる


あの施設での、ステージ2を思い出す


殺されるという恐怖

心を壊されるという恐怖

そして、殺しに慣れてしまう恐怖


ここには、あそこと同じ空気が流れている

唯一の違いは、自分の意志でここにいるかどうかだ



「…マキ組長!」


「ラーズ、無事でしたか。生け捕りとはお手柄ですね」


マキ組長が微笑む

その体は、返り血が滴っていた


「マキ組長の方は?」


「全員、死んでしまいました。やはり、生け捕りは難しいですね」


「俺もたまたまですけど…」


こうして、初めての対忍者戦闘が終わった

忍者は敵に回すと厄介な相手だ


何をするか分からない、どんな手を隠し持っているのかが分からない

それは、とてつもないストレスだった



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