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六章 ~28話 鬼憑き1

用語説明w

流星錘(りゅうせいすい)アーム:紐の先に、重りである錘が付いた武器。紐は前腕に装着した本体のポリマーモーターで巻き取り可能


真・大剣1991:ジェットの推進力、超震動装置の切れ味、パイルバンカー機構、ドラゴンキラー特性を持つ大剣、更に蒼い強化紋章で硬度を高められる


「…何やってたんだよ、お前」

ヤマトに呆れた顔をされる


「…言い訳になりそうだが、いいか?」


「どう考えても言い訳にしかならないだろ」



タルヤに抱き付かれていたところを、そんなタイミングってある? と言いたいほどのタイミングで、フィーナがやって来た



間違いなく見られた


…そして、無言でフィーナが帰ってしまった



俺は、ヤマトに経緯を説明した


「なるほどなー。それで、どうするんだ?」


「いや、何が?」


「だから、付き合うのかって」


「いや、俺はフィーナと付き合ってるんだけど!?」


「じゃあ、すぐにフィーナに説明しろよ」


「とりあえず、メッセージと電話は全無視」


「…」


何で?

俺が悪いの?


「はぁ…。どうすりゃいいんだよ…」


「とりあえず、タルヤへはさっさと言った方がいいんじゃないか?」


とりあえず、緊急事態と言うことでタルヤへの返答は保留した

仕方ないよね?


「でも、今のタルヤの状態じゃ、すぐに断りたくないんだよな。フィーナ、後で説明したら分かってくれるかな…」


「…結構、分が悪い勝負な気がするぞ? 俺の目撃状況じゃ、あちゃー…って感じだった」


「…もう、死んじゃいたい……」



その時、ドミオール院からコウが出てくるのが見えた


「ラーズ、要請が入ったって。帰ろう」


「え!? …あぁ、分かった」


ちょうどいい、タルヤには会わずに帰ろう


「そういや、ヤマトとフィーナは何でここに?」


「ドミオール院の周辺の配給状況を調べたら、ナオエ家がかなりの物資を横領していることが分かったんだ。是正措置を命じて、ついでに顔を出しに来たんだ」


「そうだったのか」


これで、少しは物資がドミオール院にも回って来るといいな



俺はヤマトと別れて、コウと廃校に戻る


「ラーズ、またナウカの魔人がいるらしい。気を付けろよ」


「…そうか、分かった」


父さんとドミオール院を襲ったマサカドと同じ、鬼憑きの術を使う魔人


前回は、グレーターデーモンやレッサーデーモンを呼び出す召喚士だった

今回はどんな能力を持っているのか…




・・・・・・




バタバタと出撃準備を終え、俺達はすぐに戦場へと向かう

メンバーはマキ組長と俺、コウとルイだ


「…また、孤児院へ行ったんですか?」


「はい。少しだけ手伝ってきました」


「何度も言いますが、私は反対です。この時代、孤児院など襲われて当然ですし、そのことでショックを受けるかもしれません」


「はい…」


「その時に、戦いを投げ出さないよう心の準備をしておいて下さい」

そう言って、マキ組長は車に乗り込んでしまう


言っていることは間違いないが、冷徹だ

だが、ドミオール院を今更投げ出すなんてことはできない




…戦場では、すでに戦闘音が響いていた


かなりの音だ



「マキ組、待っていたぞ! グレーターデーモンを止めたその実力を見込んで頼みがある!」

司令官と思われる男が、必死の形相で走って来た


依頼内容は、ズバリ魔人の足止め

敵部隊自体は小規模であり殲滅が可能だが、魔人一人のために火力で押されているらしい


鬼憑きの術ってそんなにすごいのか?

グレーターデーモンのように、空を飛ぶ機動力でもなければそんなことは不可能な気がするんだけどな


「すでにBランクを要請した。到着まで時間はかからないはずだ」


「分かりました、私達四人で出ます。その他の敵部隊を可能な限り早く殲滅してください」


「もちろんだ、そっちは任せてくれ!」


任務は決まった

俺達は無言で出撃する


「ラーズ」


「はい?」


「今回もトリガーを完全に開放、そして、興奮作用を感じてみて下さい」


「え…、いや、それは…。俺、トリガーで暴走したことがあるんですよ」


「何事も試してみないと分かりません。私は、暴走状態のあなたごときに遅れは取りませんし、今回は敵の横槍の可能性も少ない。いい機会です」


「は、はぁ…」



戦場には、大きく穴を穿たれた装甲戦車や引きちぎられた兵士()()()()()が散乱していた

不用意に近づけないため、味方が遠巻きに撃っているが、仕留めることは出来なさそうだ


そして、戦場を席巻している鬼憑きの術を使う魔人は魚人の男だった

全ての腕に剣を握っている


…全ての、という表現は、腕の数が通常と違うからだ


鬼憑きの術の影響だろうが、魔人の腕の数は四本

そして、背中には何かの像がうっすらと浮かんでいる


「戦士タイプの鬼憑きですか。どこかの魔神でも憑依させているのですかね?」

コウが言う


「…前回の召喚士とは違って、近接タイプは戦闘力があります。気を引き締めましょう」


魔人…、鬼憑きの術を使うナウカの強化兵で様々な能力を持つ

ヘルマンも、ナウカの魔人には気を付けろとか言っていた


「鬼憑きとは、異界の何らかの存在を自らに降ろす術です。特に闘氣(オーラ)使いは並みのBランクを凌駕する戦闘力ですから気を付けてください」


「そんなとんでもない術って!? 何か弱点は?」


「発動時間に制限があるはずです。しかし、あと数分で…、とはいかないでしょう」


「…」


「ルイは位置を変えながら狙撃を、コウは遠距離を維持して私達に補助魔法を。私とラーズで交互に攻めます」


「「「了解!」」」



「フォウル、リィは空中で待機。リィは俺達が四本腕から離れたら攻撃を」


「ヒャン」「ガウ」

二匹の返答が絆の腕輪に届く


データ2と竜牙兵はコウと共に行動する


俺達は、それぞれ散りながら四本腕に接近

あえて姿を見せ、俺達が相手をするということをアピール


逃がさないために、堂々と前に進み出る

他へ行ったら、魔人が逃げたと印象付けられるようにするためだ



「…!」


無言で一本の剣を振り上げる四本腕



ズバァッ!


「うおぉぉぉっ!?」



斬撃が地面を裂く

ギリギリ、コウを掠めてその先まで地面の裂け目が通った


な、何の力が働いたら斬撃が飛ぶんだ!?



コウがロケットランチャーを発射

そのロケット弾に追従して、俺がホバーブーツで突っ込む


四つの斬撃が、俺に向かう

正確には殺意が俺に向き、その後から斬撃が飛んで来る



ワン


ツー


スリー


フォー



連撃を躱して、四本腕に肉薄

銃化した左腕で顔付近を射撃、一瞬視界を奪う


「…!」


勢いを維持して右の上の腕を掴み、そのまま回転

マキ組長の言う、常人には不可能な身体能力


言い換えれば、通常は想定しないアクロバティックな技

想定していない、だからこそ隙を突ける技



ドガァッ!!


「…!」



エアジェットの勢いと捻じるような回転に、四本腕の体が浮く

そのまま地面にダイブ!


本来なら肩関節が外れて肘関節を極め折るはずだが、当然のように闘氣(オーラ)で防がれた

だが、そのまま剣を一本奪って離脱する



次の瞬間、今度はマキ組長が肉薄


あの長い銃のストックを地面に突き、超貫通砲を発射



ドガァッ!


「…!」



同時に、データが呼び出していた1991を担いで俺が飛び込む

横殴りのジェット斬り



ゴォッ ズガァッ!!


「…! …!」



マキ組長の超貫通砲で穿たれた左胸の穴を、1991で更に広げてやった



ドシュッ!


そして、更にもう一度マキ組長の追撃

回転して遠心力を付けた鎌を、正確に傷口にぶっ刺す


そして、すぐに離れる



「………!」


激昂する四本腕



だが、大きく開けた口からは叫び声が聞こえない

あいつ、声が出ないのか?



「す、すげぇ…」

コウの呟きが聞こえる


「ルイ、コウ! 何をやっているのです! 早く追撃を!」



ガァンッ!


ボシュッ ボシュッ ボシュッ!



ルイの狙撃

そして、コウが走りながら土属性土壁の魔法弾を小型杖で撃っていく



「このまま行きましょう」


「…早く、Bランク来てくれませんかね」


マキ組長とのペアは心強いが、一つもミスできない戦いは精神的にきつい


「巨大なマンモスが現生人類に狩られた理由を知っていますか?」


「え? えーと…」


突然だな!?

巨大なマンモスを人類が狩れた理由…

頭が良かったから?


「それは、集団で囲んだからです。そして、巨大なマンモスはその集団から逃げる術を持たなかった」


「なるほど…」


「魔人は強力ですが、攻撃が当たらない私達にとって、その攻撃力は無意味。しっかり囲んで足止め、そしてお父さんの仇を討ちましょう」


「…了解です」



父さんを攻撃したのはマサカド

こいつは、マサカドと同じ鬼憑きの術を使う魔人だ


ちょうどいい、こいつで対魔人戦闘をいろいろ試す



コウが、十個ほどの土壁を作ってくれた

四本腕も、ゆっくりと俺達の方に近づいてくる


さぁ、殴り合いだ



魔人 六章 ~22話 鬼憑きとの遭遇

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