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閑話18 ピンクの修行

用語説明w

ピンク:カイザードラゴンの血を引く龍神皇国の貴族で、騎士見習い。カイザードラゴンのブレスを纏った特技(スキル)の威力は凄まじい


ヒルデ:異世界イグドラシルのスカウト部隊ヴァルキュリアの一人。ラーズを(そら)の恵みに持ち込んだ。使役対象は幻獣フェンリル


ミィ:龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象


ピンクが剣を構えた


全力の闘氣(オーラ)を纏い、身体能力を強化する特技(スキル)も併用している



カイザードラゴンの血を引くカエサリル家

ピンクはそのご令嬢だ


その才能は凄まじく、騎士団に入団したばかりの見習いであるにも関わらず、その攻撃力は並みの騎士を凌駕している

その特徴として、生まれながらに火属性に対する属性親和性を持っている


通常、人類は特定の属性親和性は持っていないのだが、稀に例外が生まれてくることがあるのだ


ピンクの場合は、カイザードラゴンの血縁と言う特性上、火属性の特技(スキル)を多く使えるため、属性親和性との相性はいい

だが、その反面、冷属性が弱点となってしまうため注意を要する



そんなピンクと相対している相手

それは、イグドラシルと呼ばれる異世界の騎士、その名は死の乙女ヒルデ


異世界にある王国、ヨズヘイムのスカウト機関であるヴァルキュリアの一員だ

ヒルデはクレイモアと呼ばれる長剣を構えてピンクを待ち受ける



「はぁっ!」


ピンクの凄まじい踏み込みと斬撃



ヒルデはそれを軽くいなして、斬り払う

そして、ピンク以上の踏み込みでクレイモアを叩きつける



ガッ!


「くっ…!」



ピンクは何とかガードして、もう一度剣を構え直す



そんな二人の姿を見守る二人の女性


「ほぉ…、意外にもちゃんと教えとるじゃないか」


「ヨズヘイムでは、騎士たちに剣を教えていたみたいよ」


「あんなぶっきらぼうなのに、教える事なんかできるのか?」


話しているのは、天叢雲(アマノムラクモ)カンナと金髪の龍神王セフィリアだ


「いざとなれば、また大魔法で止めなければいけないと思っていたのだがなぁ」


「…大魔法はそんなバンバン撃つものじゃないでしょう」

セフィリアがため息をつく



大魔法


魔法にはランクが存在する

投射魔法のランクの定義は難しいのだが、範囲魔法は範囲によって明確にランクが決められている


狭い順に、(小)、(中)、(大)だ

火属性であれば、火属性範囲魔法(小)などと表現する


(小)については、術者でなくともモバイル型魔法発動装置、通称モ魔で再現可能だ


そして、実力の高い魔術師は、稀に(大)を越える規模の魔法を習得する場合がある

また、範囲以外に特異な性能を持つ魔法も存在する


これらの特異な魔法は、差別化のために大魔法と呼ばれている



カンナの霊属性大魔法は「天叢雲」という名がつけられている

霊属性の魔力で巨大な霊剣を作り出し、叩きつけたり分裂させて振らせたりする威力が絶大な魔法だ

大魔法のレベルになると、固有の名前が付けられることも多いことも特徴だ


実はセフィリアも、竜言語魔法による水属性の大魔法が使えるのだが、それを知ったらラーズが「いや、あの人何なの!?」と言うことだろう


ちなみに、大魔法の更に上、個人の能力を超えた規模の魔法には極大魔法と言う名前が付けられる

あの大崩壊の際、国土級魔法陣でメテオを呼び寄せた極大力学属性魔法がその例だ



斬り合っていたピンクが動きを止める


「どうした、疲れたか?」

ヒルデが声をかける


「ヒルデさん、お願いがあります!」

ピンクが言う


「何だ?」


「一度だけ…、本気の一撃を見せて欲しいんです!」


「本気の?」


「ヒルデさんの、トランス・アドバンスを見てみたいんです!」


「…」



トランス・アドバンス


トランスとは、氣力を体に満たすことで劇的に身体能力を高める技だ

闘氣(オーラ)を使えない一般人が使えば、すぐに疲労困憊となってしまうほど消耗してしまうが、その効果は高い


しかし、トランスの本当の意味は、自身の存在の強化という技術だ

具体的には、このトランスには三段階のレベルが設定されている


レベル1 身体に氣力を満たした通常のトランス状態

レベル2 紋章やその他の力で身体を強化した状態

レベル3 トランス状態で、更に紋章やその他の力を使うレベル2と3を併用した状態


トランス・アドバンスとは、なんとこの上のレベル

つまり、レベル4に該当する状態だ


簡単に言うと、存在のグレードアップ状態

獣化、神格化した状態であり、憑依や変異、オーバーラップなどの方法で身体をレベルアップした状態だ


しかし、ただの獣化ではトランス・アドバンスとは言えず、それはただの特性

破格の性能を持っていなければならない


ちなみに、セフィリアは龍神王の血を引いており、龍化と呼ばれる龍の力を顕現する特性を持つ

これはセフィリアのトランス・アドバンスであり、ラーズが知ったら…(以下略)



「…一度だけだぞ?」

ヒルデが、自身を神格化する


神聖な闘氣(オーラ)を纏い、ヒルデの存在感が変わった

まるで、そこにいながら、この次元に立っていないかのような、そんな朧げな、そして巨大な存在感だ


「…っ!?」

ピンクがそれを見て、慌てて構え直す


生半可な力では受け切れないからだ



この変身に近い強化能力がなぜトランス・アドバンスと呼ばれるのか

それは、ことのトランス・アドバンスにトランスをそのまま導入することが可能だからだ


つまり、この状態でトランスのレベル1~3を発動することで、その能力を跳ね上がる

それは、Aランクへと足を踏み入れるほどの力だ


これはトランスレベルに踏襲して、トランス・アドバンスレベルと呼んでいる


ちなみに、ヤマトは神獣化した上でトランスを使っている

つまり、これがトランス・アドバンスのレベル1の状態だ

この力によって、ヤマトはB+ランクの評価を得ているのだ


ちなみに、トランス・アドバンスがトランスよりも優れているというわけではない


トランス・アドバンスは特殊な血統や能力、才能を有する

しかし、トランス・アドバンスを使えなくともトランスレベル3の能力は高く、トランスアドバンスのみの使い手よりも実力が高いことが多い


トランスレベル1~3の技術の内、身につけている数が多い程、実力が高いという意味となる




「な…っ!?」


ヒルデが驚いた顔をした



ピンクの体から翼と尻尾が生え、手足に甲殻のようなものが浮き出た


ピンクはカイザードラゴンの血を引く

竜化…、ピンクの場合は皇竜化と呼ばれる特殊な竜化を身につけている


これは、ヒルデと同じようにピンクがトランス・アドバンスを身につけていることを意味する



「行くぞ…!」


「はい!」



ヒルデが使う剛剣

これは身体能力が高く、特技(スキル)に特化したピンクと相性がいい

だからこそ、セフィリアはヒルデにピンクの指導を頼んだのだ



ヒルデが静から動へと一瞬で移行する



「…っ!?」


ドゴォッ………!!



脳天へと一直線に振り下ろされたクレイモア

フェイントも何もないその剣の速度に、ピンクの反応が遅れた


ピンクが一歩も動けないまま、その剣の切っ先は額の前で止まっていた




・・・・・・




「あ、ピンクー!」


「ミィさん!」


ミィが、差し入れの入ったバスケットを持ってやって来た


「あれ、訓練は終わったの?」


「うん、今日は終わりだって。…私の集中力が続かなくて怒られちゃったの」

ピンクがシュンとしている


ちょっとかわいい


「仕方ないわ。ヒルデと一騎打ちなんかしたら、集中力が削れるのは当り前よ」

セフィリアは、優しくピンクの頭を撫でる


「な、何で一騎打ちなんか? 訓練なんでしょ?」

ミィは言う


ピンクは、その攻撃力に似合わず、優しく明るく争いごとは嫌いなタイプだ

一騎打ちを好き好んでするとは思えない


「うん…。ラー兄がヒルデさんと一騎打ちしたって聞いたから…」


「ラーズが?」


「ヨズヘイムに行った時に、ヒルデさんを投げたんだって」


「…それって大仲介プロジェクトの時の話よね? あいつは国交のために行ったのに何をやってるのよ。でも、それで何でピンクまで一騎打ちを?」


「ラー兄、凄いなって…。闘氣(オーラ)を使えないラー兄がやったなら、私も挑戦しようって思って…。」

ピンクが恥ずかしそうに言う


「…ピンク、ラーズのことどう思ってるの?」


「え…? 私、ラー兄に憧れてるから…、かっこいいって…」


ピンクの恥ずかしそうな顔

これ、絶対に男を無邪気に落とすタイプだ


「…あいつのどこがいいの?」


「それは…、騎士学園の頃からずっと頑張ってたし。しかも、騎士を諦めたのに大崩壊の犯人を見つけたり、今では闘氣(オーラ)がないのにBランクのモンスターに勝っちゃうんだよ? 凄いと思……」


「ピンク、あいつは特別なの。憧れない方がいいわ」

ミィはピンクの熱のこもった言葉を遮って言う


戦いの後の、あいつのボロボロになった姿を見れば、どれだけ危険な戦いをしているのか一目でわかる

だが、今のピンクにそれを伝えるのは野暮ってものだろう


…訓練のモチベーションになるなら別にいいか


ミィは、考えるのを止めて差し入れのサンドイッチを取り出した



属性親和性 五章 ~11話 異世界7

トランス 閑話4 国境での秘匿作戦

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― 新着の感想 ―
[一言] ピンクもヤベベー‼︎だった‼︎
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