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一章~16話 サイキック

用語説明w


ドラゴンタイプ:身体能力とサイキック、五感が強化されたバランスタイプの変異体。背中から一対の触手が生えた身体拡張が特徴


ギガントタイプ:身体能力に特化した変異体。平均身長2,5メートルほど、怪力や再生能力、皮膚の硬化、無尽蔵のスタミナ、高い免疫、消化能力を獲得


エスパータイプ:脳力に特化した変異体。サイキック能力とテレパスを含めた感覚器が発達し、脳を巨大化させるため額から上の頭骨が常人より伸びる


ゴーレムの砕けた腕が突き刺さり、腹に大穴が空くという大怪我を負った


治療のために、俺は医療カプセルに入ることになった


この医療カプセルは、回復溶液という聖属性を帯びた医療用の液体が満たされている

患者は酸素吸入器具を着けてこの溶液に完全に浸ることで、自身の自然治癒力の向上、回復溶液に含まれる回復薬の代謝向上効果、万能細胞の癒着による患部の補修が行われる


要は、大きな怪我が簡単に治ってしまうという医療器具だ

ちなみに回復薬は軍隊でも使われており、怪我の応急処置、疲労回復などに使われている聖属性の薬剤である


俺も、軍にいた頃は医療カプセルと回復薬に何度もお世話になった



…治療は一晩で終わり、また検査を受ける


腹の穴は綺麗に治っていた

さすがは、安心と信頼の医療カプセルさんだ


「よし、特に異常はない。通常の生活に戻っていいぞ」


研究者は検査を終えると、俺の左肩に何かの注射をして解放した



ここの施設は、基本は放任主義だ

選別や検査などを強制されるが、それ以外は消灯時間まで自由に過ごしていい


…本当は外に出る自由が欲しい

絶対無理だろうな、知ってるよ



俺は腹が減ったので食堂へ向かった


最近は食欲が戻ってきた

食事を欲するのは健康の証だ


ずっとベッドから起き上がれなかった、吐き気と頭痛と幻覚…

あの地獄のような体調を考えると、今が嘘みたいに感じる


普通に生活ができる、なんと素晴らしいことか


人間とは、喉元過ぎれば熱さを忘れる生き物だ

当たり前のありがたさってのは気がつきにくいもんだよな…


しかも今日は、久しぶりに頭痛がない

俺は気分良く食堂に入った



…そして、激しく後悔した


食堂に入って、いきなりシンヤと目が合ってしまったのだ



「…ノーマンに対して、薄汚ぇ亜人が目を合わせるな! 対等のつもりなのか?」


「いや、そんなこと…」



「口答えするんじゃねぇ!」


シンヤは激昂し、いきなり蹴りを入れてくる



ドガァッ!


「ぐはぁっ…!?」



この野郎…!


頭では、シンヤに対して怒りを感じる

だが、感情がついてこない


心の中で()()()()()()が立ち上がり、恐怖を撒き散らす

恐怖を使って頑なに戦いを拒否させ、その恐怖が俺の心を握り潰した



痛みと理不尽に対する悔しさ


そして、やり返せない自分への怒り


周囲の視線から感じる惨めさ



…誰も助けてくれない


俺のいた戦場ではそうだった



恐怖で体が動かなくなってから、俺は誰かに助けて欲しいと思うようになった


自分の力ではどうしようもないから



振り上げた拳が見える


避けないと


だが、やはり恐怖で硬直する



俺を殴る


このシンヤの意志が怖い


ゴーレムや獣のような攻撃とは違う…、()()()()()()()()()()()



ドボッ…!


拳が俺の腹にめり込み、体が浮く


文字通り、吹き飛ばされた



「ごふっ…がぁ…」


胃液が込み上げて、苦痛で転げ回る



シンヤが、俺の髪を掴んで引きずり起こす


「おい、今日の教育はこれで終わりにしてやるよ。あんまりやると、また守衛が来るからな」

シンヤがニヤリと口角を上げる


やっと終わったか…


ホッとした自分がいる


「…お前、今ホッとしただろう?」


「…っ!?」


シンヤに図星を突かれ、固まってしまう



ドガッ!


「がっ…!」



最後にもう一度ぶん殴られ、シンヤは去って行った


「シンヤ、やりすぎだって。また守衛にやられるぞ」


「だから、今日は手加減しただろうが」


取り巻きとの会話が、遠くに離れていった


そして、周囲からの声聞こえる


「あいつ、気が弱そうだな」

「俺達もあいつで遊ぶか?」

「シンヤがいないときならいいかもな」


俺がやられる姿を見て、他の奴らも俺を舐めて便乗してくる

弱いやつは徹底的にやられる


このままじゃまずい

どうすればいいんだ…




しばらくして、やっと俺は立ち上がる


乱れた椅子や机を直していると、


「大丈夫かよ?」

クレオが来ていて、手伝ってくれた


「ああ…」


「完全にターゲットになっちゃってるじゃないか」


「研究者の奴らが余計なこと言うから…」


研究者が、ステージ1を出られないシンヤに、俺の変異体としての完成度が高いとかなんとかを言ったらしい

それで、シンヤに完全に目を付けられた


…理不尽すぎる


だが、ボコボコにされた後でも腹が減っている

タフになった、さすが変異体という強化人間だけはある


「…俺も強化人間なんだよな?」


「いきなり何だ? 変異体なんだから当たり前だろ」


「いや、こんなにボコボコにされて飯が食えるって凄いなって思って」


「うん。ここに来る前より、体は明らかに頑丈になったよな。俺なんか、テレキネシスが使えるようになったし」


そう言うと、クレオはフォークを浮かせてくるくると回し始めた



サイキックには、テレキネシスとテレパスの二種類がある

クレオのようなエスパータイプは、サイキックの強化が特徴だ



「…凄いな。俺はここに来る前からテレキネシス使えたんだけど、クレオの方が全然上手い」


「ここに来る前って何してたんだ?」


「ああ、俺は…」



俺はシグノイアという国の防衛軍に所属していた

モンスター退治を主な任務とする国防軍で、隣国との戦争にも従事した


そんな任務の中で、戦場でのストレスが原因なのか、俺には弱いながらもサイキックが発現した

物を浮かす程度しかできないテレキネシスだったのだが、三本目の手として使ったりと意外と使い処は多い便利な能力だ


俺はこのテレキネシスをサードハンドと呼んでいた



「へー、軍人だったのか。でもラーズって、あんまり軍人っぽくないな。強そうにも見えないし」


「そりゃ、ギガントタイプの巨体を見慣れてたらエスパーやドラゴンタイプなんて貧弱に見えるだろうよ」


ギガントはでかい

でかさとは、物理的な強さだ


もちろん、エスパーやドラゴンタイプだって物理的な強さ以外の利点を持っているのだが、やはり腕力の強さは分かりやすい


「でも、サイキック能力って普通は珍しいんだろ? ここじゃ、ゴロゴロいるけどさ」


サイキッカーの数は少ない

サイキッカーの源の力である精力(じんりょく)を単独で使うことは、特別な才能がないと出来ないからだ


普通は精力(じんりょく)と霊力を合わせて魔力とし、魔法という形で使う

この場合、精力(じんりょく)や霊力を意識せず使っている感じだ


「俺がいた小隊は実験部隊でもあってさ。サイキックや変異体因子が目覚めるとかいう薬を飯に混ぜられてたんだ。それが原因かもしれない」


「へー、そんな薬があるなら凄いなじゃないか」


「でもサイキックも変異体因子も、小隊で目覚めたのは俺だけなんだよ。因果関係は分からないな」


「そっか、そんなうまくはいかないかぁ…」

クレオが納得する



「…そういえば、ここに来てからサイキックを使えてないな。頭痛がして、精力(じんりょく)が上手く扱えないというか」


今までは、頭痛が酷くサイキックどころじゃなかった


そもそも選別では素手で戦わされている

俺のテレキネシスは元から力が弱く、相手の体を持ち上げることもできないため、使う機会も無い


最近は頭痛がやっと治まってきた

そろそろテレキネシスの練習を始めてみるかな


でも、シンヤを先に何とかしないと…


「俺も脳の状態が不安定だったときは、サイキックがうまく使えなかったなぁ」

クレオが言う



俺達は、食事を終えてからも話を続ける

部屋に戻っても一人だし、この施設を出れない以上は、食堂、運動場、個室のどれかにしか行くことが出来ない


強制される選別という殺し合い

そのプレッシャーで、一人でいると気が滅入ってくる


俺の場合は、更にシンヤという悩みの種まである

たまには誰かと話したい、そして情報共有をしたい


そして、それはクレオも同じようだ


「クレオは、選別はどうなんだ?」


「俺は人間相手が多いかな」


「人間?」


「ああ。選別場に、迷路みたいな壁を作られてさ。ナイフを十本持たされて戦うんだ」


「武器をもらってるのか!?」


「エスパータイプの選別はみんなそうだよ」



選別


この施設では、研究者達が用意した相手と殺し合いの戦いをさせられる

数日に一回、この選別を強制され、このステージ1にいる間はずっと続くようだ


エスパータイプの身体能力は一般人に毛が生えた程度だ

だが、ギガント、ドラゴンタイプに比べて、サイキック能力に秀でている


更に、テレパスを使った索敵、テレキネシスを使った攻撃を駆使して選別を戦っているようだ



「魔法を使える奴は、全員魔封じの呪印を施されてるんだ。強制的にサイキックに頼るしかないんだよ」


「へー…俺なんか、素手でいろんな相手と戦わせられてるのに、武器があるのはいいよな」


「俺達エスパータイプは、ドラゴンタイプのラーズみたいな身体能力がないんだ。武器が無かったらすぐに殺されちゃうって」



しばらく談笑をして、俺達は個室へ戻ることにした



「…お前、シンヤから目をつけられない方法を考えないとまずいぞ」

帰り際にクレオが言ってくる


「ああ、うん…」


「今までシンヤのターゲットになった奴は、いつもボコボコにされて追い詰められたいったんだ。…結局、みんな選別で負けちゃったみたいで帰って来なかったんだよ」


「…」


シンヤは、当分俺をターゲットにするだろう


理由は簡単、舐められたからだ

このままやられ続けれ、俺は追い詰められてしまうかもしれない


俺はどうしたらいいのだろうか…


戦って勝てればいいんだけど、そんな簡単にはいかないことも分かっている





トラウマ払拭、次から本格的に始まります!

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― 新着の感想 ―
[一言] ぐぅぅぅぅぅぅ!黒いもやがなければ!心の方よ治ってくれー‼︎ そして今日も次の更新を楽しみにしてまーす!
[気になる点] ラーズのクヨクヨ期間長っ!! そろそろ払拭だよってなってから長い、、、 シンヤの強さが全然分からんので、前作を経たラーズがトラウマ弱体化受けているとはいえ、ここまで悪戦苦闘するものなの…
[気になる点] ラーズって今どれぐらい体が強くなってるんですか? 前作と比べて。
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