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閑話2 セフィリアのお仕事

用語説明w

龍神皇国:惑星ウルにある大国。二つの自治区が「大崩壊」に見舞われ、現在復興中


セフィリア:龍神皇国騎士団の団長心得。B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性


龍神皇国の北西



セフィリアは単独での任務についていた



討伐対象、ドラゴンゾンビ

ドラゴンのアンデッド

その実力は、死体となったドラゴンに依存する

元の属性を引き継ぐ場合と、魔属性に変わる場合がある

ドラゴンだけあって、強力な戦闘力を持つ場合が多い


セフィリアは、現在龍神皇国騎士団の団長心得

現在は副団長としての立場と権限を持っているが、心得が付いているように、将来的に団長になることが確定しているということだ


本来なら一人で任務につくなどあり得ない

だが、今回の討伐対象問題があった


ドラゴンゾンビとなったドラゴンは、「水竜・明鏡」

二つ名を持つ竜王ランクの東洋型水竜種だ



この世には絶対に手を出してはいけないと言われる存在が三つある


それは、竜と巨人、そして国だ


食物連鎖の頂点、竜

星から力を得る、惑星の化身である巨人

そして、集団の形成により食物連鎖をぶち壊した、人類の組織という概念の最高峰である国


人類やモンスター、精霊やアンデッド、ある程度以上の知能を持つ者たちに共通する認識だ



そして竜とは、全生態系の頂点に君臨する生物


多種多様な種がいるが、成長度と能力によってそれぞれ六つのランクがある


成長度の頂点が(エンシェント)竜、能力の頂点が(マスター)竜、古極竜(エンシェントマスタードラゴン)ともなれば、神や魔神と同レベルの存在だ



竜は、体の作りがトカゲタイプなら西洋型、蛇タイプなら東洋型に分けられる

更に、竜の宝珠を作り出すタイプの宝珠型、それ以外の多頭タイプなど分類が難しいものが異形型と、体の構造によって大きく四つの型に分類されている


四つの型に分けられ、更に前足の構造で振竜や飛竜、水竜といった種に分類されていくのだ

ちなみに水竜種とは、前足がヒレになっている水性型のドラゴンを指す


竜王ランクのドラゴンは強い

それがセフィリアに白羽の矢が立った()()()()()()




「………」


目の前に佇むドラゴンゾンビは、その虚ろな眼窩をセフィリアに向ける


「…」


セフィリアも無言で純白の双剣を構えた


身に付けた真紅の甲冑は、日の光を反射して紅に輝いている

この装備は龍神皇国王家伝わる伝説級の装備で、四百年前の勇者が使っていたと言われる甲冑、「紅龍の怒り」だ


そして、闘氣(オーラ)を発動、武器と防具、自身の身体を包み、その強度を飛躍的にアップ

闘氣(オーラ)を纏うことで、初めてただの人間が竜王ランクのドラゴンゾンビと戦う資格を得られるのだ


もっとも、セフィリアはただの人間ではない

龍神王の血を引き、更に仙人として霊体を神格化することに成功している騎士だ



フオォォォ…



セフィリアの額に龍族の強化紋章が輝く

この紋章に蓄積されたエネルギーを使って、仲間や使役対象、自己の技を強化する紋章だ


同時に、セフィリアの両腕に翼が出現する

よく見ると、細い刃が前腕に沿って肘方向に出現、前腕と刃の間に羽根が敷き詰められて翼を構成している


これはセフィリアの装具、「ジハード」だ



装具


人間は、肉体、霊体、精神の三重構造で体を構成しており、それぞれに氣力、霊力、精力(じんりょく)を持っている

この霊・氣・精の三つの要素を同時に扱うとどうなるか?


それは、擬似的な人体と同じ構成となり、物質化する

装具とは、霊・氣・精の要素を混ぜ合わせ、イメージした形に物質化したものなのだ


訓練次第で好きな形にすることができ、ナイフや刀などの武器、鎧や盾などの防具、熟練が必要になるが杖や銃の機能を持った装具も実現が可能だ


中には、もう一対の腕、翼、第三の目、尻尾などを装具で再現し、実際に神経を通して動かすなんてことを実現した者もいる


セフィリアも同様に、両腕に翼を形作る装具を作り出しているのだ


この装具は、本人の意思でいつでも自由に物質化し、また消すことが出きる



セフィリアは、血統、人体強化、紋章、装具

そして、伝説級の装備を持つ龍神皇国でもトップクラスの実力を持っている


これでもかという高スペックだが、実はもう一つ特徴を持っている


それが、セフィリアの眼だ

セフィリアの眼の色はどちらも青色なのだが、右目の青い色が少しだけ濃くなっている


この色の眼は珍しく、「龍眼」と呼ばれている

特に何か力があるわけではないのだが、セフィリアの美貌と相まって、その美しい龍眼は有名だ




バシューーーーーー!



ドラゴンゾンビが、高圧の水ブレスを口から噴射


水属性だけでなく、アンデッドとなったことによる魔属性をも帯びたブレスだ

魔属性は霊体に対する毒でもある呪いを引き起こす



セフィリアは、腕の翼で浮力を発生させながら優雅に避ける

同時に、腕を振るって羽根を三枚射出



ドパドバドッパァァァァァン!



着弾したドラゴンゾンビの腐った部位が破裂

前足のヒレ、胸、角をそれぞれ吹き飛ばした


セフィリアの装具による羽根の狙撃は強力だ

だが、ドラゴンゾンビの巨体に大穴を空ける威力はさすがにおかしい


これは龍族の強化紋章を使い、技の威力を強化しているのだ



「………!!」


言葉を失ったドラゴンゾンビは、倒れかけながらも踏み留まって暗い眼窩をセフィリアに向ける



ボコボコボコ…



ドラゴンゾンビの黒い影、正確には魔属性の魔力がアンデッドを大地から引きずり出す


竜王ランクの明鏡の配下であったドラゴン達の死体のようだ



これで、セフィリアはドラゴンゾンビと三十体近い配下のアンデッドを相手にしなければいけなくなった



「ヴィマナ、範囲発動を」


「イエス、マスター」



上空で控えていたセフィリアの使役対象、生きたアイテムであるヴィマナが重力属性効果を発動

ドラゴンゾンビを中心に重力増加効果を付与する


ドラゴンゾンビと配下のアンデッドの体が三倍程度に重くなる

それだけで、配下のアンデッドは動けなくなった



セフィリアが純白の双剣の一本を構えて呪文を詠唱


龍族の紋章で強化された水属性範囲魔法(大)が発動した



ドドドドドドドーーーーー!



魔法陣から発生した大量の水が、配下のゾンビを押し流す

高台になっている丘の上に残ったのはドラゴンゾンビだけだ


ヴィマナは命令を待つまでもなく、すぐに重力効果の範囲を狭める


配下のゾンビを全て含んでいた範囲からドラゴンゾンビのみへと効果範囲を絞る

密度が上がった重力属性効果によってドラゴンゾンビへの重力は十倍近くに跳ね上がった



「ーーーーーっ!?」



さすがのドラゴンゾンビも大地に押さえつけられる

悶えるも、重力効果によって立ち上がることができない


「…誇り高き水竜、明鏡よ。願わくば、また大海にて生まれ変わらんことを…」


セフィリアは、一度ドラゴンゾンビに対して顔の前で剣を垂直に立てる

ドラゴンは龍神皇国において、良き友人であり尊敬の対象だ


特に竜王ランクとなれば、人語を解し、言葉を交わすことができる

このような別れ方は、セフィリアにとっても不本意なのだ



…セフィリアは双剣を構える

龍族の紋章の力を双剣に与え、聖属性特技(スキル)を発動


双剣を縦と横に同時に振り、斬撃を十字に発生させる




ドッーーーーーーーズッバァァァァァァァン!!




ドラゴンゾンビの体が十字に切断

光の粒子となって消滅した




………




……







討伐を終えたセフィリアの視線の先には、一つのダンジョンがあった


龍神皇国の前身である龍神皇帝国

かつての大国ができるきっかけとなった、魔王が出現した場所であり、名もなきダンジョンと呼ばれている


ダンジョンが滅びて四百年経っているが、セフィリアは何かの力を感じている



…魔属性の力


その影響で、この周囲にアンデッド化するモンスターが増えている


だが、まさか竜王ランクのドラゴンまでが…



このダンジョンは立ち入りが禁止されており、付近のこのエリアも立ち入り制限地区となっている

刺激することで、ダンジョンから何が飛び出すか分からないからだ


それが、セフィリアが派遣されたもう一つの理由

何があってもセフィリア一人なら対処できるという信頼感故だ


…しかし、その心配は杞憂に終わったようだ


特に何も起こらない



セフィリアはしばらく残心を残した後、踵を返した


「ヴィマナ、お疲れ様。帰ります」


「了解、結果は報告済みです。マスター、お疲れ様でした」


セフィリアはヴィマナに頷きを返す



「…さて、ラーズの調査結果はどうかしら?」


セフィリアは、警戒しながらもこの地を離れる



ラーズの行方はまだ見つかっていない




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― 新着の感想 ―
[一言] さすがセフィリア!強すぎやww セフィリアはもしこれから強者が(インフレとまではいかなくても)結構現れたとしても劣らなさそう
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