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五章 ~24話 宇宙産兵器

用語説明w

MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット


ピンク:カイザードラゴンの血を引く龍神皇国の貴族で、騎士見習い。カイザードラゴンのブレスを纏った特技スキルの威力は凄まじい


大仲介プロジェクトを終え、フィーナのマンションに戻って来た


一週間、異世界イグドラシルのヨズヘイムへ

戻って来て龍神皇国の竜宮殿で一泊

そしてまた一週間、宇宙拠点であるストラデ=イバリへ


環境変化がカオスすぎて、全然気が抜けねーんだよ!

次元越えて宇宙空間越えてって、どんだけ変化するんだよ!

振り切れすぎだろ!


…疲れた

もう疲れた


暫く引きこもる

絶対に引きこもる、もう決めた



「…ラーズ、お帰り」


「ただいま」


久しぶりのフィーナは、少し大人びていた

同い年のフィーナか、不思議な感じがする


俺達が大学に入ることが決まった時、フィーナはクレハナの王位継承権の影響で暗殺の危険性があった

その為、実父であるドースさんを説得して、俺の両親の養子となった


つまり、俺と兄妹になることになったのだが、その時フィーナは俺の姉になると言い出しやがった


フィーナは二年飛び級しており、年下だが俺とは同学年のクラスメイトだった

つまり、精神的には俺と同等と言いたかったらしい


だが、兄妹、姉弟とは生まれた順番に決まるという当たり前の定義を掲げて、俺は兄という立場を勝ち取ったのだ


それが、まさか同い年になる時が来るとは…

別に何か変わるわけではないが、まさかなぁ…



「何考えてるの?」

フィーナが聞いてくる


「フィーナと同い年になったことについてだよ」


二年という月日は、フィーナを少しだけ大人っぽくした



疲れが溜まっていたのか、一年間、冷凍保存(コールドスリープ)していたにも関わらず、眠くて仕方がない

今日は早々にベッドに入った


「…嫌?」


「別に何とも。でも、フィーナに俺が知らない二年間があるって、ちょっと嫌だな」


「二年間、長かったよ…。いろいろあったんだから」


「教えてよ」


「うん…。でも、その前にさ」


「ん?」


フィーナと目が合う


目が潤んでいる



会いたかった

俺は、たった一週間でも会いたかった


それが二年間か…


「フィーナ…」


「うん…」


抱きしめる



「ラーズ…、寂しかった」


「ごめんな、待たせて」


「仕事だから仕方ないよ。それに…」


「それに?」



フィーナに触れる


フィーナが重ねる



「…待つのは二度目だから。前に比べれば、帰って来る日が分かっていたから大丈夫だった」


「そっか。浮気してない? ちゃんと待っていてくれた?」


「当たり前でしょ。…確かめて見る?」


「…うん、確かめる」


「もっと、ぎゅってして…」




………




……







・・・・・・




次の日、フィーナは騎士団本部に出勤だった


「行ってらっしゃい」


「行ってきます。後でね」


「分かった」


フィーナが出るのを見送ると、俺もゆっくりと準備する


時間があるし、少しだけ練習をしておこう



俺は床に座り、ニーベルングの腕輪に精力(じんりょく)を込める

装具を作り出す前段階の訓練、チャクラ封印練で失った霊力と氣力のセンサーを取り戻す訓練だ


ストラデ=イバリに行っている間は、結局訓練が出来なかった

経験上分かるが、こういう感覚的な訓練は継続以外に上達の方法はない

筋トレと同じだ、少しのトレーニングを続けることが大切なのだ


精力(じんりょく)の注入が、何かに阻害される

この何かが霊力と氣力のはずだ、これを感じ取れ…!



「ご主人! 時間だよ!」

データがスケジュールを教えてくれる


「分かった、ありがとう」


この後、ユリウスとの待ち合わせをしているのだ

俺は着替えて、ユリウスのいる中央区に向かった



「ラーズさん、疲れは取れましたか?」


「ええ、何とか。ユリウスは大丈夫ですか?」


「ペアの寝具はとても寝心地がいいですね。ストラデ=イバリには無いものですよ」

ユリウスが笑う


そして、小さな四角い箱を取り出した


「これが渡したかったものです。ストラデ=イバリで渡しそびれてしまった爆弾です」


「爆弾…」



自己生成爆弾


ペアのポリマー技術を使った超小規模生産工場で、素材とエネルギーを確保すれば必要な製品を作り続ける

これは、ストラデ=イバリ産の爆弾を作れるらしい


使った後、時間がたてば勝手に補充される便利な小箱で、腰につけて使う



「作れる爆弾は四種類です。コードネームは、ウンディーネ、サラマンダー、ジン、ノームです」


「四大精霊の名前ですか?」


「そうです。一番有名な名前を使っています」


ユリウスが箱を開けると、中には四種類の穴があり、それぞれに爆弾がセットされていた



「一つ目はウンディーネです」


ウンディーネは、カプセルに入った粘液のような爆弾だ

この粘液は粘性があり、貼りついたり、伸ばしたりすることができる



二つ目、サラマンダー


サラマンダーは、小さいボールの中に入った液体だ

空気に触れると激しく燃焼するらしい



三つ目、ジン


人造脳を搭載した蜂に似た外見を持つ誘導弾タイプの爆弾

羽根を使って、ターゲットに向って突っ込んで行く小型ミサイルだ



四つ目、ノーム


丸いボール型のハンドグレネード

投げるだけでなく、ターゲットに向って転がって行くため多少の誘導性能を持つ



「す、すごい…。説明を聞いた限り、めちゃくちゃ使えるんですけど!」


「ラーズさんには本当にお世話になりましたから。セフィリア様も今後の協力を約束してくれましたし、少しでも力になれればと思いまして」


「ありがとうございます、ぜひ使わせて頂きます」


すげー、宇宙産の兵器だ

爆弾は、モンスターでも人間でも、森でも町でも使えるオールマイティーな兵器だ

有効活用させてもらう


考えてみたら、異世界産の装備と宇宙産の兵器を手に入れてしまった

大仲介プロジェクトの役得だが、凄くね?




この日の午後は、大仲介プロジェクトの遠征が成功したことを祝うパーティが開かれた


はっきり言って出たくはない

フィーナのマンションに引きこもるか、新しい爆弾を試しに行きたい


だが、俺やユリウス、フレイヤは主賓として出席することを厳命されたため逃げられない

俺はユリウスとパーティー会場である迎賓館に向かった



「ラーズ!」

会場には、フィーナやミィが来ていた


二人とも、パーティドレスを着ていて、いつもと雰囲気が違う


「早かったな。二人とも、ばっちり決めてていいじゃん」


「そうでしょ? たまには女子力出さないとね」

ミィが言う


女って、一瞬で魅力を上げるのは凄いと思う


「これ、新しく買ったんだよ。どう?」

フィーナは薄い緑のドレスだ


「お、おぉ…、めちゃめちゃ似合ってるよ」


フィーナは、幼少期に姫としての教育を受けている

社交界の作法、ドレスでの歩き方、立ち振る舞いはかなり堂に入っている


いつもと違う、人を引き付ける魅力にあふれている

フィーナってこんなにきれいだったんだな…


「ラーズ、フィーナに見とれてるんじゃないの?」

ミィがいたずらっぽく言ってくる


お前、そういういじりはやめろや!


「そう? 良かった」

フィーナもまんざらじゃないようで、笑いながら俺の腕を取って来た



その後、パーティーが始まった


フレイヤに声をかけようとしたら、たくさんの人に囲まれていた

ヨズヘイムから来た魔導法学技術者らしく、これからストラデ=イバリのワープゲート開通に向けて一緒にやっていくらしい



「ラー兄! お帰りなさい!」


「お、ピンク。無事に戻って来れたよ」


筆頭貴族であるカエサリル家だけあって、ピンクもパーティーに来ていた


「ラーズ君、大役お疲れ様」


「あ、カエサリル様…」


そして、ピンクのお母さん

前回は凄い偉い人だと知らずに接してしまった


「あら、気軽にキリエって呼んでよ。寂しいでしょ?」


「え? そ、それじゃあ、キリエさん。何とか帰ってきました」


キリエさんは相変わらず凄まじい色気だ

年増の巨乳、俺は年増とは魅力を表す言葉だと認識している


「やっと大役が終わったっていうのに、これからも忙しくなりそうね?」


「え?」


「あら、セフィリアさんから聞いてないの?」


「いえ、セフィ姉はずっと仕事に追われてて…」


「大仲介プロジェクトの責任者だからそれはそうね」


「何が忙しく…」


「セフィリアさんから聞いた方がいいわ。そして、それが終わったら、ピンクと契りを…」


「お母さん、言い方!」

ピンクが慌ててキリエさんを遮る


うん、この流れ、ヨズヘイムへ行く前にやったよね?

あんたらは二年前でも、俺にとっては二週間前の出来事だからね?


「あ、そ、そうだ、ラー兄。お願いがあるの」

話を変えるように、ピンクが言う


「何?」


「あの、借りているMEBのことなんだけど」


「ああ、どうしたの?」


「ラー兄が宇宙に行っていた二年間で、私、凄く使えるようになったの。だから…」


「…」


「だから、出来ればもう少し使わせて欲しいなって!」


「うーん…」


慣れてきて、使えるようになれば思い入れも沸くよな…

リロのディスクを使っていれば運動性能もいいだろうし


だけど、ストラデ=イバリでMEBを見て、正直俺も使いたくなったんだよな

だが…


「もう少しだけだぞ?」


「本当!? やったー、ラー兄、ありがとう!」

ピンクが抱き付いてくる


うむ、この妹キャラは相変わらずかわいい

世話を焼いてやりたくなるな


「しばらくは使う予定はないからいいけど、必要な時はすぐに返してくれよ。それと、出来るだけ早くピンクも自分のMEBを買ってくれ」


「うん、分かった!」



その後、俺はキリエさん達にフレイヤとユリウスを紹介したのだった





キリエ 五章 ~2話 大仲介プロジェクト発足式 参照


次回、五章最後となります

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