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五章 ~21話 宇宙6

用語説明w

ホバーブーツ:圧縮空気を放出して高速移動ができるブーツ

流星錘(りゅうせいすい)アーム:紐の先に、重りである錘が付いた武器。紐は前腕に装着した本体のポリマーモーターで巻き取り可能

巻物:使い切りの呪文紙で魔法が一つ封印されている

モ魔:モバイル型呪文発動装置。巻物の魔法を発動できる

魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる


ストラデ=イバリの戦闘は凄まじかった


「外部稼働ユニット部隊だ!」



外部稼働ユニット


簡単に言うとロボットのことだが、その中でもAI制御の自律性を持つロボットのことを意味することが多、陸戦型やドローンタイプ、人型など多種多様

俺の使役対象であるデータ2も外部稼働ユニットだ



前から、キャタピラーの上にMEBの上半身を置いたようなロボットの軍団が進行してくる



ドガガガガガガッッッ!

ッゴォォォン……!



それぞれがガトリング砲や迫撃砲を装備しており、すさまじい火力をばらまく

更に、鉄板を合わせた装甲を持ち容易に撃ち抜けない


だが…



キュンッ

ドッガァァァァァァン!


キュンッ

ゴガァァァァァァァン!



その重装甲ロボット集団が、次々と巨大な銃で撃ち抜かれて行く


「な、何ですか、あの超貫通力は!?」


「あれは、オール派が誇るレールガンだ」


ヴァイツが言う



レールガン


弾丸を電力で加速して撃ち出す銃

その速度は火薬を使う実弾兵器を大幅に超え、貫通力も比例して上がっている



俺も貢献しなくては


ボッ!


俺はホバーブーツのエアジェットで背後からロボットに接近

同時にモ魔で雷属性の巻物を読み込む



バチバチバチーーー!


ズズーン…



銃装甲ロボットの体内で雷属性の範囲魔法(小)が発動

回路や電子部品に電流が走りショート、焼き切ったことで機能を止める


範囲魔法は、任意の位置に物理現象を引き起こす

当然、発動位置を装甲内に設定することもでき、結果は御覧の通りだ


だが、装甲に魔法防御を施されている場合や、魂を持つ存在が中にいる場合などはそう簡単にはいかない

魔法発動地点を体内に設定しようとすると、魔法耐性の力で発動地点を押し出してしまうからだ

逆に言えば、魔法耐性のないロボットのよ0うな存在にとって、範囲魔法は必殺の牙となってしまうのだ


モ魔と巻物を持ってきておいてよかったぜ



「…ちっ、レールガン撃ち方止めー!」

ヴァイツが大声で叫び、その指示が無線で周知される


前から、人型ではあるが、ブヨブヨしたゼリーのような、粘土のような集団が歩いてくる


「ポリマーゲルを主成分とした有機高分子ロボットだ」


ヴァイツが言いながら向かっていくため、俺も慌てて後を追いかける



キュンッ


キュンッ



何発かレールガンが発射されるが、ゲルの柔らかい体を貫通してもすぐに穴が塞がってしまう

おそらくゲルの制御装置が体のどこかにあって、そこを破壊しないと壊せないのだろう

レールガン対策用の兵器ってことか


数は百体ほど


すでに、ヴァイツを始めとするオール派の兵士たちがゲルロボットとの戦闘を始めている



バシュッ!

ヴォンッッ!



ヴァイツはオーバーラップされたMEBの腕を展開、武装されたレーザー兵器でゲルロボットを切断、更にプラズマの光球を放出して焼き尽くしていく


すげー!

宇宙戦艦と直結されたMEBの武装がとんでもねーぞ!

本気を出せばストラデ=イバリ内の区画を損傷させるから、威力は抑えているはずなのにアレだぞ!?



…俺も負けていられない


左腕に魔石装填型小型杖、力学属性引き寄せの魔石を装填

右手に流星錘アームを装着

ホバーブーツと背中の触手を使った飛行能力

そして、1991を持つ


何をするのか?

掴みかけている、身体操作のお試しだ


()()()()()()、この戦闘で完成させてやる



ギュイィィィン……


ナノマシンシステム2.0を発動

変異体の身体能力も併用する



ボッ!


エアジェットで突っ込む



一番近いゲルロボットが反応してこっちに銃口を向ける


触手からテレキネシスの推進力を発動

急激に身体方向を下に向けるが、スピードは落とさない


地面直前を足で蹴って、地面を這うようにして突っ込む



ゴゥッ ズバァァッ!



1991のジェット切り上げ

ゲルロボットを切り裂く


空中で触手の推進力、同時に引き寄せの魔法弾を次のゲルロボットに打ち込む



ビョォォォォォォン!


「ぐぅぅっ!」



引き寄せられる力を途中で解除、地面をエアジェットで疾走

速度を落とさずにゲルロボットを袈裟切り



バシュッ!


流星錘アームで錘を撃ち出して地面に着弾させる



飛行能力で空中に上昇

錘に繋がる紐で円運動に変換


1991の斬り下ろし


続いて、引き寄せの魔法弾で高速移動


エアジェット


飛行能力


流星錘を使っての軌道修正、同時にゲルロボットの引き倒し


1991のロケットブースターを使った推進力



連続して、異なる推進力を使ってのランダムな方向変換

強化された体幹のおかげで、遠心力や慣性に耐えられる

これにより、三次元的な動きを駆使した攻撃、離脱、突進が可能となった


更に、トリガ―が発動


集中力が研ぎ澄まされる

脳のクロック数を上げ続ける

高速移動中も、周囲の状況をできる限り把握する



「な、何だあの動きは…!?」

「人間技じゃない、サイボーグでも無理だろ!」

「何体倒したんだ、目で追いきれないぞ!」



ストラデ=イバリの兵士たちが騒いでいる


これは、変異体となったことで完成した俺独自の技術

…名付けて、「高速立体機動」だ



ズザザザッ!



地面を削りながら着地

問題の亜光速荷電粒子砲と思われる大砲の周囲のゲルロボットは破壊した



「はぁ…はぁ…」


くそっ、スタミナがもたねぇ

だが、高速立体機動、いいじゃないか! 手ごたえあるぞ!



「よし、あいつが首謀者だな」


「えっ!?」


だが、ヴァイツは俺の高速立体機動に負けずにぴったりとついて来やがった

こいつはただの火力頼りのサイボーグじゃない

生身の肉体以上に義体を使いこなしている、とんでもない戦士のようだ



今回のテロの首謀者である、ワン派の兵士たちに動揺が走っている

この周囲のゲルロボットを、実質たった二人に掃討されたからだ


ゲルロボットを集めて守りを厚くしたはずなのに、今は逆に俺達に包囲されている

ショックは大きいだろう


「貴様らペアの犬どもが! ストラデ=イバリの誇りは無いのか!?」

ワン派の兵士が叫ぶ


どうやら、あいつがテロの代表のようだ


「ラーズ、あいつの注意を引きつけろ」


「…え? り、了解」


いや、俺がこの場所で一番共通の話題持ってないんだけど!?

惑星が違うんだよ!?


だが、言われたら仕方がない

俺が亜光速荷電粒子砲の前に進む


「何だお前は! 近づいたらこいつをぶっぱなすぞ!」

代表が叫ぶ


「落ち着け、俺はペアの使者だ! なぜストラデ=イバリの仲間内で戦っているんだ!?」


「ペアのだと! そうか、お前が…」

ワン派の兵士たちが一斉に俺を見る


あれ、図らずとも注意を引きつけてしまった


「ストラデ=イバリは独立を保ち、文化と思想を守らなければならない! ペアには迎合しない!」


「ペアが迎合を迫ったなんて聞いたことが無い。それに、自分の国民を犠牲にするような手段が、ストラデ=イバリでは許容されるのか?」


複数の区画が吹き飛ぶって、どれだけ被害が出るか分かってるのかよ

下手すると万単位の犠牲者が出るんだぞ?


「ペアの人間に何が分かる! 崇高な目的のためには、多少の犠牲は…」



ゾクッ…


「…あ?」



代表者の言葉に、俺の思考が塗り替わる

…これはトリガーだ


高揚感を伴う浅いトリガーではない

深い殺意を伴う、本当の意味の思考のトリガーだ


「…っ!?」


代表者の動きが止まる

惑星は違えど、殺気に対する反応は同じらしい


「…その犠牲となるものは、お前の判断に賛同しているのか? していないなら、目的を伴った殺人でしかない」


「な、なんだと?」


「ワン派と言ったか? あんたらこそ、ペアと交流するべきだ」


「どういう意味だ!?」


「…ペアでも、これと同じようなテロや大量虐殺が起こっている。その惨状を見てみればいい」


「…っ!?」


「俺の国で、二年前に大崩壊という人為的な大災害が起こった。何万人もの人間が死んだ。その死に触れれば、あんたの選んだ手段が絶対に肯定できないことが分かる」


大崩壊、直接犠牲になったのは、非戦闘員である一般人だった

俺は、地震で潰されて死別した親子を思い出す


「ス、ストラデ=イバリとお前達は違う! 知ったことを言うな!」

代表者が叫ぶ


「…ペアの知識を入れないと、ストラデ=イバリは負けるぞ?」


「何だと!?」


「ストラデ=イバリのMEB技術は素晴らしかった。だが、実戦経験が足りていない」


「MEB?」


「俺は、落ちこぼれと呼ばれたMEBパイロットにペアの操作技術を教えた。そうしたら、優秀なパイロットとの試合で勝つ事が出来たんだ」


「…」


「その技術の名前は、柔道やレスリングと言う。ペアでは、子供でも知っているスポーツだ。俺からすれば、そんなことも知らないストラデ=イバリは猿山の猿にしか見えない」


「ば、馬鹿にするなぁぁっ!」


「…ストラデ=イバリの独立性を確保するためにペアの技術を知るべきだと言っている。その上で取り入れるかを考えればいい。比較対象を持たない片寄った技術、知識、思想なんて、ハンドルのない車と同じだ。正しい方向に進めるわけがない!」


「…!」


(そら)の恵み、あの施設がまさに典型だ

外の知識を入れず、反対意見を持たず、結果として試行錯誤の精度が低い

被検体を使い潰しただけだ


「ストラデ=イバリの住人も、その技術も圧倒的だ。だが、ペアの技術だって素晴らしい。切磋琢磨しなければ、置いて行かれるだけ…」


俺がワン派に話していると、黒い影が亜光速荷電粒子砲に近づいた



「…っ!?」



そして、一瞬のうちに機関部を破壊

ワン派の兵士を叩きのめしていく


あまりに効率的なヴァイツの動きに、俺は目を奪われてしまった



明日、宇宙編最後です


本年はお付き合い頂きありがとうございました

まもなく五章が終わり、この小説も折り返しとなります

来年もよろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
[一言] キャタピラーの上にMEBの上半身を置いたようなロボット こ…これは‼︎ガンタンク風なロボットなのか⁈ 確かに「高速立体機動」は遠心力とかを利用してるからそれに耐える事で体に色々負担が掛かっ…
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