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五章 ~19話 宇宙4

用語説明w

ストラデ=イバリ:ペアのある太陽系の第五惑星にある第二衛星に作られた宇宙拠点。核融合や宇宙技術など独自の科学文明が発達している


MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット


「よし、これより訓練を始める!」


「はい!」「はい!」「はい!」

三人が整列する


うむ、いい返事だ


「よし、まずは着替えだ!」


「え!? 着替えですか?」

三人が驚く


「MEBの操縦の前に、お前達に二足歩行の構造とメカニズムを叩き込む」


「二足歩行…?」



宇宙拠点に柔道着はないようなので、ユリウスに破れにくい服を頼んだ


「まずは、MEB格闘の基本パターンを教える。ダヌイ、構えろ」


「はい!」


俺とダヌイが、それぞれアップライトに構える


ダヌイの構えはなかなか堂に入っている

ここのMEBは、自分の体とシンクロして動くモーションシンクロニティシステムだ


さっきのダヌイのMEBは打撃がメインだった

ダヌイ自身も、それなりに打撃を身に付けているということだ


「乱取りだ、かかってこい」


「行きます!」


ダヌイがパンチを繰り出す



パーリング


パーリング



「なっ!?」


距離を潰して、後ろ首に手を回す

首相撲から崩して倒す



「次、アンドリ!」


「はい!」



アンドリは、ダヌイよりも背が低い

頭を下げて突進、頭突きから左右のフックを振って来る



打ち終わりにボディ


「がはっ…!」



動きが止まったアンドリに、支釣込足(ささえつりこみあし)

体が浮き、大の字に倒す



「最後、メリス!」


「はい!」



メリスは女性だ

パワーは無さそうだが、ボクシングっぽい構えできれいなパンチを打つ


筋力が劣るために威力はないが、キレはある



「…っ!?」


パンチをはたき落として、抱きつくように組む



右に振ってからの大外刈り

簡単にメリス体が宙を舞った




「…だいたい、三人の実力は分かった。足りないのは、単純に発想と技術だ」


「発想と技術ですか?」

メリスが言う


「そうだ。三人とも、殴るという技術はそれなりにできる。だが、組まれてからの技術を不自然なほど持っていない。何でだ?」


「それは…、MEBは本来、銃火器を使って戦闘します。その後、不意に接近戦となった時に、殴りつけるなどで応戦しますから…」


「うん、その通り。だが、その接近戦になった時に組の技術があれば、敵を確殺できる。…お前達に、ペアのMEB操縦技術の最高峰の一つを見せよう」


「ペアの最高峰…!?」

三人が目を見開く


「データ、リロの戦闘シーンの映像は残ってるか?」


「ご主人、残ってるよ!」


データが、青い塗装を施したMEBの映像をモニターに映し出す


「これは、俺の戦友が操るMEBだ。俺が知る限り、これ以上の操縦技術は無い。しかも、モーションをシンクロするタイプじゃなく、操縦は複雑だ」



青いMEBの相手は、巨大な猿型のモンスター

肩口を掴んで、内股で投げる

そして、パイルバンカーで止め


次は、熊型のモンスター

掴んでからの足払い、倒してからのパイルバンカー


その次は、大きなライオンにヤギの頭が付いたモンスター

襲いかかって来たところを、潜り込んでの背負い投げ



「す、凄い…!」

「ペアには、MEBと同じ大きさの生物が…!?」

「…MEBで、どうやってあんな動きを?」


うむ、そうやって刺激を受けろ

その刺激がモチベーションを生むのだ


素晴らしい技の持ち主はリロ

MEBの天才的なパイロットだった



「見た通りだ。相手の体勢を崩せる、これは武器を持っていれば一瞬で決着が付く状況だ」


こっちが武器を持っていて、相手が倒れている

この圧倒的有利な状況を作り出せるのが投げだ


「は、はい!」


「打撃の応酬の最中に、必ず距離が潰れ組み合うタイミングが来る。そこをチャンスに変える訓練を行う!」


「はい!」


ストラデ=イバリのMEB格闘術は、打撃に片寄っているようだ


それなら対策は簡単、打撃を潰して崩す

これだけを三日間、ひたすら叩き込む


打撃と投げは等価、片寄ったら弱点ができる

後は対策するだけだ




………




「おら、どうした!」


「は、はい…」



ドタッ…


バタッ…



「簡単に転ぶな、腰を落とせ! お前達の動きがそのままMEBの動きになるんだぞ!」


「はい…!」




……




「ストレートで止まるな、掴める距離だろ!」


「うあぁぁっ!」


「離すな、押し込め!」


「あぁぁぁっ!」


「自分から下がるな! 技を出せ!」


「らあぁぁぁぁ!」







「はぁ…はぁ…」


「三人とも、よく頑張った。見違えるようだぞ」


「はぁ…はぁ…」



一日目が終了した




・・・・・・




ユリウスがやって来た


「ラーズさん、三人はどうですか?」


「この三日間で見違えるようですよ。付け焼き刃ではありますけどね」


あれからすでに三日

宇宙の新兵達に、ペアの技術を叩き込んだ


「ひっ…、鬼…」なんて、言葉が聞こえた気がしたが無視する

ちゃんとお前らの体力と集中力を見てやってるってのに


…お前らに俺の師匠達を見せてやりたい


ホバーブーツの師匠は、悪霊ひしめく洞窟に突入させる

暗殺者の先生は、マフィアのアジトに単独突入させる


世の中には、本当にヤベー奴らがいるんだぞ?



「それは素晴らしいですね。明日の試合が楽しみです」


そう言いながら、ユリウスが手に持っていた黒い箱をテーブルに置く


「これは?」


「ラーズさんの要望通りの物が完成しました。名付けて流星錘アームです」


それは、前腕がはまる大きさの筒だった



流星錘アーム


前腕に取り付けられる流星錘で、手首の内側に錘が取り付けられている

アームのポリマーモーターにより、錘の発射、巻き取りが可能

更に錘には爪が付いており、任意に飛び出したり引っ込めたりができる


アームは装着者と電気的に神経接続しているため、体の一部のような使い勝手を実現したストラデ=イバリのポリマー技術の産物だ



「す、凄い!」

俺は早速右の前腕に装着してみる


腕を動かすように意識を向けると、錘の爪がワキワキと動く


「あの装甲に撃ってみて下さい」

ユリウスが示す先にはMEBの前腕装甲が立て掛けられている


俺は右腕を向けて、意識を向ける



バシュッ!

ガン!



錘が装甲にめり込む

そして、今度はモーターで紐を巻き取る


シュルルルッ…!


紐がアームに吸い込まれ、錘が戻ってくる


うん、便利だな



今度は、右腕を振って錘を投擲

引き戻す


これもいい

これ、めちゃくちゃ使えるぞ?


近接武器が銃に負ける?

違う、現代の武器になれていないだけだ


アイデアと技術で、近接武器も生まれ変わる

銃とは使い処が違うだけだ




…三人の訓練は大詰め

明日はもう試合当日、最後の追い込みだ


「腕だけを使うな! 腰と足の動力を使わないと崩すこともできないぞ!」



ゴシャッ!


ドガァッ!



「だから真後ろに引くなって言ってるだろ! パンチを受けても、前に出て距離を潰せ!」



ガガッッ!


ガキッ!



「直線に動くな、左右のステップだ! 回り込め!」



ゴッガァァァ!


ドギャッ!




「よし、MEB訓練は終わりだ! 道着を着て、身体で動きを確認しろ」


「はい!」


「おらぁっ!」


「やぁっ!」



三人が組み合う


パンチを繰り出し、投げを狙う

俺が格闘をする場合は、必ず蹴りや膝を挟む


だが、MEBでの蹴りは、特殊な動作プログラムを組まない限り不可能

そして、重量があるMEBは、倒れただけで機体にダメージを受るため片足になるリスクが高い


そのため、MEB格闘は両足をつけた状態が基本

パンチとタックル、投げの組み合わせで戦うことになる


「投げは崩しが全てだ! いきなり投げようとしたって無理だ」


脇を刺して崩す

そして、反対に投げる!



「きゃぁっ!?」


ドタァッ!



「重力を使え! 下に引きずり倒せ!」



「うわぁっ!」


ビタァッ!



「格闘の要素は、自分の力、相手の力、そして重力だ! 動きを予想して合わせろ!」



「うおっ!?」


バシッ!



三人には受け身を教えていない

三日間しか練習時間が無いため、投げとパンチ以外は教える時間が無かったのだ


試合が終わったら、自分で練習できるように受け身を教えないとな

受け身ができないと、頭打ったり骨を折ったりと大怪我をする


投げの事故は命に関わるため、受け身は必須だ




「…よし、今日までよく頑張った。出来ることは全てやった、勝ち負けは考えずに全力をぶつけてこい」


「「「はい!」」」

三人が元気よく返事する


その目には、自信の火が灯っている

たった三日とはいえ、自分の努力は裏切らない


そして、実力の向上は自分で実感出来る

継続しなければ意味はないが、短期集中の良さではある


この三人は、本当にいわゆる落ちこぼれだった


過去の試合を見たが、正面から突っ込むだけ

そして、焦ってパンチを連打するだけ

勝負所で下がってしまい、押し切られてしまう


自信を無くし、モチベーションが下がる悪循環

どうすればいいか?


簡単だ、俺が学んだことをそのまま伝える

俺も負け犬だったからこそ伝えられる


具体的には、()()()()()()()()()()()



…さぁ、お披露目だ





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