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五章 ~18話 宇宙3

用語説明w

流星錘(りゅうせいすい):三メートルほどの紐の先に、細長い重りである錘が付いた武器。錘にはフックが付いており、引っかけることもできる

MEB:多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット


ユリウスが情報端末を操作しながら言う


「流星錘という武器の使い方を見せてもらえませんか?」


「分かりました」


俺は流星錘を取り出す



くるくる回して遠心力での投擲

長さを変えながらの振り回し、叩きつけ

錘を引き戻しながらの打撃、引っかけ



「こんな感じですね」


「はー、紐と重しだけで、複雑な動きができるんですね」


「銃には敵いませんが、対人戦闘ではなかなか有効です。そこまでかさばりませんし、ナイフよりも殺傷能力がある場合もあります」


「なるほど…」

ユリウスが考え込む


近接武器

銃や兵器が発達してくれば、当然に廃れていく武器だ



「例えば、紐の長さを変えられるようにしたら便利になりませんか? 巻き取り型とかにして」


「…!」


それは、凄く使い勝手がいいのでは?

短くもった時の余った紐は邪魔になるため、長さ調整が出来るなら最高だ


「先端の錘に爪を付けて、ある程度動かすこともできます」


「…開閉ができるのはいいですね」


「じゃ、ちょっと設計してみますね」

ユリウスが情報端末でデザインを開始


「ちょっと提案なんですが」


「はい、どんどん言って下さい」


「例えば腕に装着型なんてことも…」


「可能ですよ」


「モーターで紐を巻き取るなんてことは?」


「モーターが必要になるので、ちょっと大きくなりますが…」


「内側だと邪魔になるので、モーターを腕の外側に持っていけば?」


「では、こちらに…」


流星錘は、移動の補助としての側面もある

斥候の俺にとって、移動の補助とは火力以上に重要度が高い場合が多い


あれ、これって神武器じゃない?

しかも、現在進行形で作ってるし!




………




……







「よし、これでオッケーです。数時間でデザイン通りに仕上がるはずです」


「勝手に仕上がるって凄いですね」


「3Dプリンターとポリマーの合成技術ですね。完成までの間、工場をご案内しますよ」


「工場ですか?」


「はい。私達オール派の兵器ですね」


「それは楽しみです」


宇宙技術の兵器!

ぜひ見たいぞ




・・・・・・




ユリウスの運転する車で工場区画に向かっている


「ストラデ=イバリのエンジンは、水素を原料としているものがほとんどです」


「水素は手に入り安いんですか?」


「水の電気分解や第五惑星の大気から豊富に手に入ります。それに、水素を使う一番の理由は排気ガスですね」


そうか、ストラデ=イバリは海底の施設

密閉空間のため、排気ガスが無害な水となる水素を使っているんだな



工場区画の中心にある大きな白い建物の前に車が止まる


「ここが研究室と訓練施設になっています」

ユリウスの案内で中に進む


「うおぉぉっ!?」


中には、銃器、戦車、MEB、ロボット、ドローン…

科学って感じの兵器が並んでいた


「ラーズさん、何から見ますか?」


「え、えーと…」



俺は軍に所属していた

そして、現在もセフィ姉の私兵として戦いを生業としている


…何が言いたいかというと、めっちゃ興味がある


見たい!

全部見たい!



「…とりあえず、MEBが見たいです!」


「分かりました、こちらへ。MEBがお好きなんですか?」



俺は軍時代、わざわざMEBを運用する部隊を希望した

乗り込み型ロボットにロマンを感じていたからだ


そして、リロの経験蓄積データディスクのために自分のMEBまで買ってしまった

俺がストラデ=イバリに来ている間は使えないためピンクに貸しているが、やはり憧れがある


宇宙産のMEBなんて、みたいに決まってるだろ!



「…と、いうわけなんですよ」


「ラーズさん。それは、ムラムラしますよね!」


「はい?」


「自分の機体が手に入って、使うこともできないなんて! そんな…!」


む、ムラムラ…?

相手は機械だよ?

ちょっとキモいよ?


「しかも、オーバーラップ機能付きなんです。持って来て、ストラデ=イバリの技術でバージョンアップしてもらえば良かった」


「個人でオーバーラップ機能付きを購入とは凄いですね。でも、それだと宇宙戦艦を持って帰れませんよ?」


「へ?」


「オーバーラップは、一人一つしか使えませんからね」



オーバーラップ機能とは、空間属性魔法を使って作り出した亜空間を人体に重ねて合わせて封印する

この亜空間に兵器を封印することで、いつでも呼び出すことができる


この兵器とは、戦車、ゴーレム、MEB、宇宙戦艦と多岐に渡るが、共通することは大きいこと

小さい兵器は手で持てばいいのでオーバーラップする必要な無い


大きな兵器を、全体、又は一部分だけ呼び出して使える、これがオーバーラップの特色だ

戦車の砲身を呼び出しての爆撃、MEBの腕、宇宙戦艦の超兵器…、これを個人が呼び出せるようになる


しかし、この亜空間は対象に一つしか重ねられない

つまり、宇宙戦艦だろうがMEBだろうが戦闘機だろうがゴーレムだろうが、重ねられるオーバーラップ用亜空間は一人一つ

俺は大仲介プロジェクトとして宇宙戦艦をオーバーラップして持ち帰る必要があるため、MEBを持って来ていたら持ち帰れなくなってしまうということだ


残念…




ゴシャッ!


ギギィッ!


ギャリギャリギャリ!



「お、やってますね」


大画面のモニターの中でMEBが殴り合っている

金属音と衝突音が響いている


「あれは新人のパイロットなんです」


「ん…?」


よく見ると、モニターのMEBはCGのようだ

本物じゃないのかよ!


「訓練用のシミュレーションシステムですよ。ラーズさんもやってみますか?」


「いえ、俺はMEBの操作方法をやっと覚えた程度で、歩かせるくらいしかできないんですよ」


軍時代も、隊舎で何度かMEBを歩かせたな

懐かしい…


「このシミュレーションは、体の動きをトレースするパワードアーマーに近い感覚です。体の動きに合わせて動く直感的な操作だから大丈夫ですよ」


「そうなんですか?」


「ええ、ぜひ体験してみてください」


そう言って、ユリウスに小さな部屋の中へ案内される

そして、武骨な外骨格のようなアタッチメントを装着させてもらう


終わると、ヘッドギアタイプのモニターにVRで風景が映し出された

どうやら、MEBのカメラから映し出された映像のようだ


目の前には別のMEBが立っている

どうやら、訓練用のシミュレーションシステムで模擬戦をするということらしい


「ラーズさん、相手は訓練生がやります。気軽に試してみてください」


「分かりました、お願いします」


シミュレーションとは言え、MEBというロボットを操縦できるのはワクワクする

思いきって胸を借りよう



「始め!」


ユリウスの声が響き、目の前のMEBが動き出した



俺が左腕を突き出すと、画面の先にMEBの腕が突きだされる

その動きは完全に俺と連動していて、タイムラグはほとんどない


目の前のMEBが右パンチ


左腕でパーリング、同時に右ストレートを打ちこむ



ゴガッ!



MEB手の甲につけられた、金属のナックルガードが相手にめり込む

ロボットのマニュピレーターは繊細で壊れやすいため、打撃用のガードが着いているのだ


だが、重量があるMEBはパンチじゃ止められない



そこから組合になる


四つに組み、右に引いて相手を崩す


だが、相手のMEBが左足を踏み込んで転倒を回避



オートバランサー優秀だな!


いや、パイロットが凄いのか!?


だが、狙いはこっちだぁぁぁ!



腰を捻って両足でMEBを一瞬持ち上げる


右に寄っていたMEBを左回転で投げる!



ゴッシャァッッ!


相手のMEBが肩から地面に直撃



大腰だ

MEBの自重で肩がひしゃげて、おそらく腰椎も変形、もう動けないだろう



「そこまでーー!」


衝撃で相手MEBの動きが止まり、ユリウスが止めた




しばらくすると、相手のMEBを操縦していた若い男性とユリウスがシミュレータから出てきた


「ありがとうございました。MEBの視界と動きがリアルで面白かったですね」


「………」

相手の男性が、俺を驚いた目で見つめる


え、何ですか?


「ラーズさん、MEBの操縦経験は本当に無いんですか?」


「ええ、無いですけど」


「お、俺、MEBで投げられたのなんか初めてです! ど、どうやってやったんですか!?」

若い男性が食い付くように言う


「え? このシミュレータは俺の動きと同期してるから、操縦というよりも単に柔道やレスリングの技術だけど」


「柔道…?」


「まさか、柔道を知らない?」


「…ラーズさん、もし良ければ彼らにMEBの操縦を教えて貰えないでしょうか?」

ユリウスが言う


「俺がですか? 別に大したことじゃないんでいいですけど…」


いろいろ装備品を作って貰ってるしな

お礼も兼ねて少し教えてみるか


「ありがとうございます。実は、三日後に彼らの新人対抗試合が迫ってまして、時間がないんです」


「三日か…。そして、彼ら?」


ユリウスが呼ぶと、若い男女が出てきた


「ラーズさんの相手をしたのがダヌイ、こちらがアンドリ、そして紅一点のメリス。私が指導している三人なんです」


全員、金髪の竜人だ

ストラデ=イバリは竜人が多い気がするな


「あ、あの! 俺達、士官学校の落ちこぼれで!」

アンドリが言う


「私達、見返したくて…。でも、全然上手くなれなくて。MEB、上手くなりたいんです!」


「よ、よろしくお願いします!」

ダヌイが頭を下げる


ほぉ…、落ちこぼれか

まるで騎士学園時代の自分を見ているようだ


「少しだけ教えてあげようと思ったけど、気が変わった」


「え!?」

断られると思ったのか、三人の表情が強張る


「三日間で俺の技術を叩き込む。死ぬ気でついてこい」


「は、はい!」


こうして、超短期集中訓練が始まった


ヨズヘイムでもそうだったけど、俺は大仲介プロジェクトで一体何をやってるんだろうか?



本日から、書き溜めが続く限り毎日投稿に戻します

投稿時間はランダムになりそうです

よろしくお願いします!

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[一言] 宇宙に行って教官になっちった‼︎⁉︎(」*'ω')」(/ *'ω')/
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