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五章 ~16話 宇宙1

用語説明w

変異体:遺伝子工学をメインとした人体強化術。極地戦、飢餓、疲労、病気、怪我に耐える強化兵を作り出すが、完成率が著しく低い。三種類のタイプがある


ナノマシン集積統合システム2.0:人体内でナノマシン群を運用・活用するシステム。治癒力の向上、身体能力の強化が可能



「………」



ぼーっとする


ぼやけていた視界が、次第にクリアになって行く



「バイタル、脳波、共に正常です。解凍は正常に完了しました」


声が聞こえた方向に顔を向ける

検査用と思われる機器を操作しながら、白衣を着た者が数名立っていた



「…」


俺はゆっくりと体を起こす


冷凍保存(コールドスリープ)用のカプセルの蓋が閉まってからの記憶がない

ここは…


「さすが護衛の方ですね。意識の覚醒がとても速かったです」

「珍しい…、あなたは本当に完成変異体なのですね」

「ここは宇宙拠点ストラデ=イバリです。長旅お疲れさまでした」


白衣を着た者たちが口々に言葉を投げかけて来る

寝起きで頭が働いていないから勘弁してほしい


「…無事に着いたんですね?」


「ええ、到着です。お連れのお二人も、しばらくすれば目を覚ましますよ」


「護衛のラーズと言います」


俺は、ゆっくりと起き上がる

うん、身体に異常は無さそうだ



「私は、ストラデ=イバリの科学技官であるユリウスです。一週間後、私が龍神皇国にご一緒させて頂きますのでよろしくお願いします」


「ああ、そうなんですね。こちらこそよろしくお願いします」


外交官のヘリンがストラデ=イバリに残り、代わりにユリウスと龍神皇国に戻るということか

ちなみに、ユリウスは金髪の竜人男性だ



「さ、目が覚めたばかりでお疲れでしょう。こちらでお茶でも召し上がって下さい」


「…ありがとうございます」


出された紅茶を飲む

驚くことに、ストラデ=イバリで飲む紅茶はペアと変わらない味だった


「おいしい…、宇宙に出て紅茶が飲めるなんて不思議な感じがします」


「ははっ…、ペアの紅茶の種子を使った植物工場を作っているんです。他の食物も育てていますよ」

ユリウスが笑った


ストラデ=イバリとは、元は竜の一族であり、己の竜の肉体、科学技術、魔導法学技術を結集し、一族を連れてペアを離れたと聞いている

だが、ユリウスを含めてここの人達は普通の人間に思える



「私達は、ストラデ=イバリで生まれ育っていますがペアと同じ普通の人間です」

ユリウスが話してくれた


ストラデ=イバリを作った竜の一族がペアを離れる際、宝珠型のドラゴンが数匹の竜と百人近い人間を体内に封印した

そして、数年という宇宙空間の旅を経て、この第五惑星の第二衛星に到達、宇宙拠点を作り上げたらしい


当初は酸素がなく、極寒の環境のために生物が生きることはできない

そこで、酸素の代わりに衛星の霊力や氣力を吸収して生命を維持、拠点を完成させて酸素や水を確保する設備を作り上げた


この第二衛星には水が豊富に存在することがペアでの調査で分かっていた

そのため、施設さえ完成すれば水の電気分解で酸素を作り出すことができ、人が生きられる環境が作られる


その後は、ガス惑星である第五惑星の直近という地の利を生かし、豊富な重水素を使って核融合を行ってエネルギーを生産、現在は衛星表面の一割に達するほど施設の規模を拡張、独自に宇宙技術まで完成させている



「セフィリア様は息災ですか?」

ユリウスが俺の対面に座った


「ええ、元気ですよ。ただ、俺の情報は一年前の情報なんですよね?」


全く自覚はないが、俺は冷凍保存(コールドスリープ)されて、一年かけてここに到達しているはずだ


「そうですね。お二人が目を覚ましたら龍神皇国と通信を行います。その後、我が指導者とお会いして頂きます」


「分かりました」



第三惑星であるペアからの距離は約七億キロメートルだ


俺達の乗った宇宙船は、軌道エレベーターでペアを脱出

その後、ペアと第四惑星の重力を使ってスイングバイで加速、一年間かけてストラデ=イバリへとたどり着いた


「今回の大仲介プロジェクトによって、私たちの生活は激的に変わる可能性があります。このようなお話を頂き、セフィリア様には感謝してもしきれません」


「私はただの護衛ですのであまり話を聞かないようにしていたのですが…。こちらでは、魔導法学技術は有益なのですね」


「もちろんです。空間魔法という低コストで空間を捻じ曲げる技術を得られれば、この拠点からペアにワープゲートを作ることも夢ではありません」


「ワープゲートですか…!」


ストラデ=イバリへの行き来に、宇宙船を使わなくてよくなる?

そう考えると、時差も生まれないし、お互いの技術のやり取りもできる

凄いプロジェクトだな


「そうなんです。ただ、ワープゲートは出発地点と到着地点の建造がどうしても必要になります。セフィリア様が到着地点の建造と、私達ストラデ=イバリに開放する居住区を龍神皇国に用意して下さると約束して頂きました」


「そ、それは凄い話ですね」


…ん?

また、なんか凄い話が持ち上がって来たぞ?

セフィ姉、何でこれを俺に話してくれなかったんだ?


「ああ、興奮して申し訳ありません。これはセフィリア様と私達オール派との内々の密約でした。ラーズさんには話していいと言われていましたので、つい」


内々の密約って何!?

国家レベルの密約を個人に聞かせるんじゃねーよ!


だが、それよりも…


「…オール派?」


「はい。ストラデ=イバリも規模が大きくなり、一枚岩ではなくなってしまいました。現在は、私達オール派と、対外政策の打ち切りを主張するワン派に分かれている状態です」


「オール派とワン派…」


全部と一つ?

絶対に歩み寄れない思想な気がするけど



オール派

ペアとの交流を重視し、ペアの技術、文化を取り入れてストラデ=イバリの閉鎖主義を打破しようとする派閥

現在は多数派


ワン派

ペアとの交流を最低限に止め、ストラデ=イバリの技術と文化の向上を訴える派閥

ペアから流入する新たな危険、トラブルを防止するリスク管理に重点を置いている

現在は少数派



「どちらかが正解というわけではないと思います。ただ、ペアに依存するような交流はストラデ=イバリの弱体化を引き起こしますし、閉鎖的過ぎれば発展が遅れます。簡単に言うと、そのちょうどいい立ち位置を模索中ですね」


「なるほど…」


「…警備には万全を期していますが、今回の大仲介プロジェクトによってワン派が過激な行動を起こす可能性もあります。滞在中は私たちの側を離れないようにお願いしますね」


「過激な行動ですか?」


「ストラデ=イバリでは、何度かクーデターを狙った事件が発生しております。思想はどうあれ、一般市民に対して攻撃を加えたテロリストは絶対に許せません。安全は保障いたしますので安心してくださいね」


「はい…」



星が違えど、テロリストの行動は同じだ

思想の実現のため…、理想の社会の実現のため…


()()()()()()()()()()


普通の悪人や犯罪者と違って、彼らは自分の行動を悪いと思っていない

俺がシグノイアで戦っていた時、大崩壊を引き起こした神らしきものの教団の信者もそうだったんだろうな



…気が付くと、俺達は話に夢中になっていた


「ラーズさんは変異体なんですよね?」


「そうですね。ストラデ=イバリにも変異体はいるんですか?」


「いえ、臨床例が少なすぎて…。それに、ラーズさんはナノマシン集積統合システムもお持ちだとか」


「え、ええ、そうですね」


「あ、あの! ペアのナノマシン技術をぜひ見せていただけないでしょうか!?」


「え、その、セフィね…セフィリアに確認取らないと…」



話し込んでいると、白衣の竜人女性が近づいて来た


「皆様、異常なく目を覚まされましたよ」


その後ろには、外交官のヘリンとヨズヘイムの魔導技官フレイヤがついてきていた


「おはよう」


「ラーズさん、もう目が覚めてたんですかー」


「俺は早かったみたいだよ。フレイヤはまだ眠そうだね」


「コチコチに凍ってたからか、まだぼやーっとしてますねー」


そう言って、フレイヤがよろよろと座り込む


「ご挨拶遅れました、外交官のヘリンです。本日より、龍神皇国の在外公館に常駐させていただきます」


「ヘリン様。あなたの代わりにペアに行く、科学技官のユリウスといいます」


「「よろしくお願いします」」


ヘリンとフレイヤがユリウスと挨拶を交わした



「それでは、全員が目覚めましたので龍神皇国への通信を行いますね。その後、我らが指導者にお会いして頂きます」


ユリウスが、その後の流れを説明してくれた




次は閑話です



いつも読んで頂きありがとうございます

思ったより書き溜めが出来たので、年末から毎日投稿に戻そうかと考えております


またストック無くなったら、二日、三日、不定期の投稿になる可能性もありますが…汗

よろしくお願いします

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― 新着の感想 ―
[一言] 通信が楽しみであると同時に少し不安でもあるな〜
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