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五章 ~10話 異世界6

用語説明w

龍神皇国:惑星ウルにある大国。二つの自治区が「大崩壊」に見舞われ、現在復興中


クレハナ:クレハナ:龍神皇国の北に位置する小国。フィーナの故郷で、後継者争いの内戦が激化している

ヨズヘイム:ペアと次元が重ねる異世界イグドラシルにある王国。転生技術や転移魔法陣などの魔導法学が発展している。三国戦争ラグナロクの真っ只中


ドレイクを狩って帰還


フレイヤの回復魔法の連続使用でなんとか歩けるまでに回復したが、思った以上に熱傷や骨折のダメージが酷かった

トリガー状態が解除されてから、激痛と寒気、吐き気でしばらく動けないほどだった


フラフラする…


「装備をよこせぇぇぇぇぇ!」


「うおわぁぁぁぁぁぁ!?」


戻ってくると、スサノヲとムチョスや職人達が殺到する


「嫌ぁぁぁぁぁぁっっっ!」


「さっさと脱げぇぇぇ!」


装備をひん剥かれる


「な、何なんだよ!?」


「あたし達が帰るまで、あと三泊四日しかないんだぞ。それで武器防具アクセサリーの全部を仕上げるんだ、時間がないんだ!」

スサノヲが言う


「おら、野郎共行くぞ! スサノヲも来い!」

ムチョスが怒鳴る


「分かった! じゃあな、ラーズ! 楽しみにしてろ!」


スサノヲも、追い剥ぎ職人達に付いていった



「…ラーズさん、打ち上げられた魚みたいになってますよー?」

フレイヤが転がされた俺を見下ろす


「うちの職人達は、実力と熱意をあわせ持っている。許してやってくれ」

アーノルドが頭をかいた


「…オレの装備のためにやってくれてるわけだからいいんだけどさ」


そういや、ドラゴンキラーの特性は完成したのか?

まぁいいや


フレイヤの補助魔法とローランドの助太刀があったとはいえ、ドレイクは強かった

あんなの、生体ナパーム発射砲台じゃねーか


…もう寝たい


「ラーズさん、もう一回、回復魔法をかけときましょー。…いつもあんな戦いかたしてるんですか?」


「あー、どうだろう。俺はCランクだから、やっぱり強いモンスター相手だと負傷はするね」


「ランクに関係なく、ブレスに飛び込むような戦い方を続けていたら、いつか死にますよー?」


「俺もそう思うぞ」

ローランドも頷く


「あー、うん、気を付ける。確かに被弾が多かったから…」


でも、俺にBランクみたいな安定した立ち回りはきつい

そもそも、Cランクの俺に防御と言う概念が成り立たないんだから


「いや、そうではなく、そもそもBランクに一人で…」


「おぉ、戻ったか」


ローランドが言いかけたとき、廊下先から声が聞こえた


「ヒルデ様、ただいま戻りましたー」

フレイヤが頭を下げる


「無事に戻って何よりだ、今日はゆっくり休め」


「はいー」


「それで、二人には明日からラーズの世話を頼みたい」


「世話ですか?」


「そうだ。フレイヤはラーズに装具の作りかたを、ローランドは剣の基礎を教えてほしい。時間があるときに、私がイグドラシルのヨズヘイム以外の場所を案内しよう」


「分かりましたー」


「ラーズに剣を教えるのですか?」

ローランドが尋ねる


「ああ。どうやら、ラーズは剣が苦手なようだ。ペアに帰るまでの時間潰しにちょうどいいだろう」


うぐっ…

剣に自信はないことを見透かされている


だって、騎士学園卒業してから近接武器なんて練習してないし!

銃と魔法があるのに剣で斬りかかるわけないし!




・・・・・・




それから、俺は使者としてまったりと過ごした


工房では、俺の装備品を仕上げるのに大騒ぎだ

スサノヲも、ヨズヘイムの職人の負けず意見を言い合っていた

充実してるな



俺は、静かな部屋を用意されてフレイヤから装具の作り方を指導される


「まず、腕輪に溜められた霊力と氣力を感じてくださいー」


「俺、チャクラ封印練っていう封印をしていて、霊力と氣力を感じられないんだ」


「感じられないんじゃないですよー。感じるためのセンサーが弱くなっているだけですねー」


「そ、そうなの?」


「はいー。腕輪に精力(じんりょく)を込めながら、変化を感じてくださいー。間接的に変化を感じれば、だんだん霊力と氣力のセンサーも鋭くなっていくはずです」


「や、やってみます」



そんな感じで、まずはセンサーを磨くことから始める

チャクラ封印練って、予想よりデメリットが多いんじゃないだろうか?



そして、ローランドは剣を教えてくれる

ヨズヘイムの騎士が使う、ヨズヘイム正統騎士剣術だ


「お子ちゃまがいっぱい!?」


「騎士団を目指す少年兵達だ」


少年兵は、十歳から十八才の子達らしい

ボリュガ・バウド騎士学園と同じ年代だ


「まずは、素振りや簡単な型を叩き込もう。その後で、俺と乱取りだ」


「よろしくお願いします」



俺は、騎士学園時代にセフィ姉のドルグネル流剣術を習っていた

あの頃を思い出して少し懐かしくなる


「ほう、全くの未経験ではないようだな」


「ここの少年兵と同じ年の頃には、俺も剣を使っていたんだ」


「そうだったのか。そういえば、重属剣を使っていたといっていたな」



少年兵の訓練が終わると、ローランドが剣を抜く


「さぁ、かかってこい。…剣を投げたり体術は禁止だからな」


「わかったよ」


まぁ、剣の練習ではなくなるもんな

武術の修行ではあるけど



「ラーズ、剣の重さを使うんだ。力で振るな」


「剣や刃物は、そういうふうにできていない。力むな」


アーノルドは、教え方が丁寧だ

騎士からのプライベートレッスン…、贅沢だ




・・・・・・




「ラーズ、出掛けるぞ」


ヒルデが唐突にやって来た


「え、どこに?」


「お前にイグドラシルを見せてやる」


ヒルデは魔法のじゅうたんを呼んでおり、俺達は乗り込んだ

運転手に行き先を告げると、一直線に向かって行く



「この大陸では、三つの国が争っている」

ヒルデが道中に説明してくれた



イグドラシルにおける戦争


ヨズヘイム、ヴァルヘイム、ニヴヘイムという三つの国が覇権をかけて戦っている

この戦争をラグナロクと呼称している


・ヨズヘイム

人間であるオーロラ女王が治める国


・ヴァルヘイム

天使の女王と悪魔の王が治める国

聖属性と魔属性の化身という相反する二人が王だ


・ニヴヘイム

巨人の王とアンデッドの女王が治める国

それぞれ、生命力の化身と死の化身という相反する二人が王だ


それぞれの国は王に差異があるだけで、住民層は変わらない

人族もいればアンデッド、ドラゴン、巨人、天使や悪魔、精霊、妖精、幻獣など、ペア以上に多様な住人がいる



「どこが有利とかはあるのか?」


「現在の戦力は拮抗している」


「ヒルデがフェンリルを連れて王様暗殺に行けばどうだ?」


ヒルデと使役対象の幻獣フェンリルは、セフィ姉と互角の戦いを繰り広げた

実力は申し分ないはずだ


「馬鹿を言うな。ヴァルヘイムもニヴヘイムも、王はSランク、下手をするとSSランクと言われている。一対一でも負ける」


「…っ!?」


そんな凄い存在が王さまなのかよ!?


「我々ヨズヘイムは戦力の上では有利だ。だが、王の力の差で拮抗してしまっているんだ」


「オーロラ女王は強くないのか?」


「女王様は普通の人間だ。采配や内政には才能があるがな」



暫くすると、大きなクレーターのような盆地が見えてきた


「ここは?」


「ヴァルヘイムとニヴヘイムの王がぶつかり合った場所だ」



とんでもない大爆発が起こったようだ


「…どっちが勝ったんだ?」


「引き分けだ。だが、我がヨズヘイムがあの力に立ち向かえば、何人死ぬか分からん。だからこそ、宇宙技術を求めたのだ」


「…」


龍神皇国には、宇宙戦艦をオーバーラップしたSランク戦闘員がいる


…この景色を見ていると、Sランク戦闘員を欲しているヒルデの気持ちが分かる

地形を変える戦闘力、それはヒルデやセフィ姉でも不可能だろう


「私はセフィリアの計画に乗った。それはヨズヘイムも龍神皇国も、そして私とセフィリアにも利があると判断したからだ」


「利って、大仲介プロジェクトのことだよな?」


「…ふふっ。セフィリアはお前にもかなり期待しているようだ。そして、私もお前に期待を持った。精進しろ」


「何、その含みのある言い方は? それに、俺はただの一般兵だからな」


「ただの一般兵に私を投げることなど不可能だ」


「…もしかして、ちょっと悔しがって、ひぃっ、何でもないです!」


長いクレイモアが居合抜きのように一瞬で引き抜かれ、俺の首に添えられていた

殺気が無い分、そして油断していた分、全く反応できなかった!

やっぱりヒルデはすげー! そしてこえー!


「…お前の戦い方は危険だ。恐怖を興奮でバーサーカーとなる。それは、人間性を壊したた機械だ、戦士ではない」


「トリガーの話か。気を付けるよ、自覚もあるし」



しばらくすると、魔法のじゅうたんはヨズヘイムの郊外にある集落まで来た


「この町は?」


「ここは魔竜族の集落だ」


「魔竜族って…」



魔竜族


龍神皇国の前身である龍神皇帝国の分裂を引き起こすきっかけとなった種族

褐色の肌の竜人が多く、魔界の魔竜バラウルの加護があるとされている


現在は、龍神皇国の西側の範囲内に黒色という独立国家を成立させている

魔竜族迫害の過去から、現在も多くの軋轢が存在しており、黒色は常にトラブルを抱える国となっている



「百年前、龍神皇帝国が分裂した際の大混乱時代に、転移魔法陣を使って魔竜族の一部が難民として渡って来たのだ」


「ヨズヘイムに魔竜族が…、知らなかったな」


「龍神皇国がイグドラシルとの交易を初期に始められた理由は魔竜族の転移技術のおかげだ」


「へー、俺は魔竜族の人とは関わったことなかったけど、凄い人たちなんだな」


「だが、魔竜族と龍神皇国は大きな問題を抱えている。セフィリアも頭を悩ますであろうな」

ヒルデが少しだけおかしそうな顔をする


セフィ姉は、国の運営に携わる人だからな

魔竜族の問題は、俺も歴史の授業で少しだけ習った



「さ、戻ろう」

ヒルデが指示を出して、魔法のじゅうたんが反転する



ヨズヘイムと龍神皇国

思った以上に繋がりがあったんだな…




次回で異世界編終了です

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