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五章 ~7話 異世界3

用語説明w

ヨズヘイム:ペアと次元が重なる異世界イグドラシルにある王国。転生技術や転移魔法陣などの魔導法学が発展している。三国戦争ラグナロクの真っ只中


ヒルデ:異世界イグドラシルのスカウト部隊ヴァルキュリアの一人。ラーズを(そら)の恵みに持ち込んだ。使役対象は幻獣フェンリル


真剣を持って来た騎士を、ヒルデが止める


「アーノルド。この二人はペアからの使者だ、さすがに許可できない」


「ヒルデ様…!」


悔しそうに俯く騎士

ちょっとかわいそう


「いいよ、ヒルデ。やるよ」


「ラーズ、お前…」

ヒルデが俺を見る


「ラーズ、大丈夫かよ。さすがに危ないんじゃないか?」

スサノヲも、少し心配そうだ


「技術交流は盛り上がってなんぼだろ? お互いの意地がぶつかり合ってこそ、技術は進歩するんだからさ」


「…わかった。お互いに怪我がないようにやれ」

ヒルデが頷いた



このアーノルドという騎士は好感が持てる


悔しくても、俺を堕としたりしない

純粋に、もう一度チャンスが欲しいと頭を下げた


この素直さに報いないとかありえないだろ



「感謝する」

アーノルドがロングソードを構えた


俺も頷き、ショートソードを持って構えを取る



武の呼吸


相手の挙動を読み、自分の挙動を消す



アーノルドの肘が動く

ロングソードを反して、柔らかく素早い動きで剣先が俺の首を薙ぐ



ガキィッッ!


「…っ!?」



俺は瞬間的に、ショートソードを剣先に思いっきり叩きつける

アーノルドのロングソードが大きく弾かれた


技には相性がある


強力な攻撃には受け流す柔らかい動き

そして、剣先を走らせる柔らかく早い動きには、強い力で叩き落す


どちらにしろ、俺に動きを見切られている以上、アーノルド君に勝ち目はない



叩きつけると同時に踏み込んで、手首、胸、喉への寸止め三連突き


仰け反って動きが止まったところを、タックルの要領で突進

アーノルドの胴を支点にしてバックを取り、ショートソードを首に添えた


「ま、まいった…!」

アーノルドは、潔く負けを認めた



「ラーズ、やった!」

スサノヲとハイタッチ


「うむ、見事だ」


「ヒルデ。俺、装具は刃物にするよ。どんな状況でも、刃物はやっぱり必須だ」


「そうか」

ヒルデが、そう言いながらクレイモアを騎士から受け取った


「え?」


「せっかくヨズヘイムに来たんだ。最後に、本当の剣術を味わっていけ」


「…っ!!」


ヒルデが構える



「うおぉぉぉっ! ヒルデ様の戦いが見られるぞ!」

「ペアの意地を見せろよ!」

「死の乙女はバケモンだからな、ビビるなよ!」



周りの騎士も盛り上がる


ヒルデは、あのセフィ姉と互角に戦った異世界の騎士だ

そして、今回は闘氣(オーラ)無し


…俺は、どれだけ強くなったんだろうか

それを、確かめられるのかもしれない



「…」


ショートソードを構える



やはり、プレッシャーが違う


実戦の空気

あの施設のステージ2を思い出す


ヒルデは人を斬り慣れている

俺の体を切り裂くクレイモアを想像できてしまう



右手でショートソードを使い牽制


クレイモアが動く



ドヒュッッ!


「…っ!!」



高速突き…

からの振り下ろしだ!



ガキィッッ!!



踏み込んで距離を潰して受ける

力が入らない距離ならショートソードでも受けられる


鍔迫り合い


ここは俺の距離だ!



ヒルデが剣を押し込み、俺の胸に叩きつける


衝撃で呼吸が止まる

骨が軋む


だが、ここは俺の距離だって言ってんだろ!



ヒルデの両手首を掴んで反転


袖釣り込み腰!



ドガッ!


「なっ…!?」



ヒルデを地面に叩きつけ、同時にクレイモアの柄を掴む

右の正拳を叩き込むか、関節を狙うか…


だが、ヒルデはすんなりとクレイモアから手を離す


「…まいった。私の負けだ」


「は?」


ヒルデは、ゆっくりと立ち上がる


え、終わり?

やめちゃうの?


「トリッガードラゴン、すまなかった。お前を見くびったことを謝罪する」


そのヒルデの言葉に、


「えぇっ、そんなヒルデ様!」

「まさか、何言ってるんですか!?」

「まだ終わっていませんでしたよ!」


騎士たちが騒ぐ


「もう一度、今度は私の剣を見せる。それで無礼を許してくれ」


「…よく分からないけど、分かった」


俺はクレイモアをヒルデに返す


私の剣って何?

実は真の実力を…、とかそういうこと?


ぷぷっ…と、笑ってやろうかと思ったが、俺は大人だ

ヒルデの構えに対して、俺も構える



「…っ!?」


そして、すぐに感じる違和感



先ほどとは違う、重い…、そして鋭い殺気


ゾクリと冷たいものが体を貫く


トリガーが強制的に入るのを感じる



な、なんだ!?



ヒルデが動く


ゆっくりとした動きだ


クレイモアの振り上げから…



「…っ!?」


ブオォォォォッ!!!



振り下ろされたクレイモアが、俺の鎖骨を叩き割って止められる

その直後、吹き飛ばされた空気が俺の肌を震わせた


「あ…」


な、何だ…、今の攻撃は何だ…!?

ゆっくりと振り上げるのは見えていた


だが、振り下ろしの挙動が分からなかった

剣速も早すぎて反応できなかった


こ、これがヒルデの剛剣…!

セ、セフィ姉はこんな剣とやり合っていたのか!?



「トリッガードラゴン、お前は強かった。剣を覚えたら、またやろう」


そう言って、ヒルデはクレイモアを置いた




・・・・・・




その後、鎖骨を回復魔法で治療してもらい、俺達は騎士団の建物の中にある工房に案内された

武器防具の鍛冶職人達が集まっており、ここがスサノヲの目的地だった


親方は、典型的なドワーフの職人だ

長いひげ、低い背、筋骨隆々の職人、ムチョスだ



「…」


俺は、さっそく技術交流を始めたスサノヲを眺める



剣を覚えたら、か


ヒルデの剣

本気だったら体が二つに別れていた


俺は武器術に自信がない

だからこそ平気で武器を投げつけられるし、流星錘という自由度の高い武器を選んだ


それをヒルデに見破られた


俺は騎士学園以来、剣なんてやってない

近接武器でモンスターと戦うなんて、一般兵にはあり得ないからな…



「うおぉぉぉっ!? このアクセサリーもスピリッツ化だと!」

「何だよ、この武器!」

「これ、逆鱗じゃねーかぁぁぁぁぁ!」


職人達の大騒ぎで、俺は敗北の悔しさから顔を上げる

スサノヲが、俺の1991とヴァヴェル、絆の腕輪を職人達に見せていた


「うるさいな、何してるんだよ」


「あたしの作品を見せていたのさ」

スサノヲが振り返る


いや、絆の腕輪はお前の作品じゃねーだろうが


「お前、どんな戦場を渡り歩いてきたんだよ!?」

「武器、防具、アクセサリーと全部がスピリッツ化してるなんて!?」

「お前、Cランクだろ? やっぱり獲物はCランクモンスターなのか?」


職人達が俺に詰め寄る


「え? Bランクモンスターとか、Bランク戦闘員、劣化Bランクやデスペアとか…、いろんなのと戦った…」



「デスペア!?」

「Bランクの戦闘員って、闘氣(オーラ)か!?」

「劣化Bランクって?」

「Bランクモンスターと戦ってるのかよ!」



「この1991は、闘氣(オーラ)をぶち抜くために作った武器なんだよ」

スサノヲが説明する


「全部一人で戦ったわけじゃないぞ? 劣化Bランクっていうのは…」



「おい、ちょっとやってみてくれよ!」

「どうやって闘氣(オーラ)をぶち抜くんだ!?」

「外! 外行くぞ!」


質問したくせに、俺の回答を無視して職人たちが俺とスサノヲを連れ出す


「え、え? どうする、スサノヲ」


「フル機構攻撃、見せてやってくれよ。ここで技術を貰う対価だ!」


「お前がそう言うなら…」



外は中庭のようになっていた

そして、試し斬り用の丸太やかかしが乱雑に置かれている


「これを使ってくれ」



俺の前に、大きめの丸太が立てられた


俺は1991を構える


「フル機構攻撃は、五つの要素を同時に叩き込むんだ。刃体の硬度、穂先の超振動機能、霊的構造、ロケットブースター、そしてパイルバンカー機構だ」

スサノヲが説明している


見られながらやるの、めっちゃ緊張するんだけど


いや、いつも通りにやろう

集中、平常心


1991を振り上げてロケットブースターのジェット

パイルバンカーをオン!



ゴゥッ ズッガァァァァァン!!



丸太を真っ二つにし、1991が地面にめり込んだ



「うおぉぉぉぉっっ!?」

「あの丸太、地獄に生息する超硬度のザックームの木だぞ!?」

「本当に刃体がせり出した!」


興奮したムチョスが、アーノルドを振り返る


「おい、アーノルド! お前、闘氣(オーラ)でちょっと受けてみろよ!」


「は!?」


「おお、いいじゃねーか!」

「アーノルド、受けろ! ペアの代表にヨズヘイム魂を見せてやれ!」


無茶ぶり・無責任な声が飛ぶ


「…さすがに、盾は使わせてもらうぞ?」

アーノルドは、迷いながらも結局盾を構えた


あんた、ノリいいな


「実は、フル機構攻撃にはバージョンアップがあるんだ」


スサノヲが、俺に特殊薬莢を渡す

そして、魔力で1991の魔玉にインストールされた蒼い強化紋章を発動させる


「蒼い強化紋章で刃体の硬質化、火薬量を増やした特殊薬莢でパイルバンカーの威力アップ、そしてラーズのサイキック・ボムで破壊力アップだ!」


「うおぉぉぉっっ! ペアの矛 VS イグドラシルの盾だ!!」

「どっちに賭ける!?」

「アーノルド、根性と気合と勢いだぁぁぁぁっ!」


イグドラシルにも矛盾って言葉があるのか?



アーノルドが闘氣(オーラ)を発動したのを見て、俺は精力(じんりょく)を穂先に圧縮する


…正直、俺の全力フル機構攻撃が闘氣(オーラ)に対してどれほど通じるのか、興味はあるし試してみたい



「…行くぞ」


「来い!」



俺は突きの構えを取る


俺の全力、最大火力


フル機構突きをアーノルドの盾に………!




ゴゥッッ ガァァァァァァァァンッッッ!!




………




……











スピリッツ装備 四章 ~35話 ドゥン2 参照

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― 新着の感想 ―
[一言] さてはおめぇ、スキルだな? え、次回死人でない...?
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