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五章 ~5話 異世界1

用語説明w

ヨズヘイム:ペアと次元が重ねる異世界イグドラシルにある王国。転生技術や転移魔法陣などの魔導法学が発展している。三国戦争ラグナロクの真っ只中


ヒルデ:異世界イグドラシルのスカウト部隊ヴァルキュリアの一人。ラーズを(そら)の恵みに持ち込んだ。使役対象は幻獣フェンリル

ヴァルキュリア:異世界イグドラシルからペアに派遣されるスカウト部隊


「フォウル、行ってくるな」


「ガウ…」


ついに大仲介プロジェクトの日


「ラーズ、行ってらっしゃい」


国の代表として、立派なスーツを着た俺をフィーナとフォウルが見送る


「うん、行ってくるよ」


「一週間後か、長いなー。今日、クエスト入れられちゃって出発の儀式も見に行かれないし」


「フィーナも気を付けてな。怪我しないように」


「うん…」


玄関を出る前に、ぎゅっとしてチュッチュしておいた

うむ、元気が出たぞ




龍神皇国中央区


龍宮殿


セフィ姉が出迎えてくれた


「ラーズ、カッコいいわ」


「うん…、セフィ姉は相変わらず綺麗だ」


貴族であり、騎士団団長心得という国の重鎮

赤いドレスを完璧に着こなし、気品と優雅さを纏っている


エリートとしての英才教育は伊達じゃない

美しすぎる…



「ラーズは外交官を連れていくだけ。ただのお使い感覚で気楽にやってね?」


「お使いって規模じゃありませんけど!?」


国を上げて異世界へ

今後の外交を左右するお使いだ


ただ、交渉は全て外交官がやる

俺は本当に護衛を兼ねた付き添いだけみたいなので、気楽っちゃ気楽か


ちなみに護衛をCランクである俺がやっているのには理由がある

それは、この大仲介プロジェクトは親交のためであり敵意が一切あってはならない


Bランク以上の戦闘員は兵器扱いであり、万が一この兵器が他国で暴れたら被害が出る

だからこそ、護衛をCランク以下しか出さないということが敵対心が無いという意味となるのだ


当然、相手の国にもBランク以上の戦闘員はいるわけで、向こうが裏切ったら外交官共々殺されなさいという意味でもある



「ラーズ!」


「おう、スサノヲ。よろしくな」


「無理だよ、あたしは勉強することが多すぎるから」


「お前は社交辞令を踏みにじるのか」


スサノヲは職人達と話していた

向こうで見た技術を、戻ってきたらプレゼンするらしい


とんでもない情報量をもって帰るんだろうな

スサノヲの、興味に対する意欲は凄いから



「ラーズ、スサノヲ、紹介するわ。今回、イグドラシルのヨズヘイムヘ行く、外交官のナジムよ」


セフィ姉がパリッとしたスーツのノーマンの男性を連れてきた

威厳のある初老の男性で、優しい目をしている


「当日まで顔合わせが出来ずに申し訳ない。ヨズヘイムヘの同行、よろしく」


「こちらこそ、よろしくお願いします。ラーズです」

「スサノヲです」


…スサノヲが敬語だと!?

大仲介プロジェクトの初日に槍が降るとかやめてく…


「ぶっ飛ばすぞ?」


「何でだよ!?」


「お前、自分の目と表情がどれだけおしゃべりなのか知らないだろ?」


「………うん」


え、俺ってそんなに表情に出てるの?



「ラーズ、スサノヲ、根回しは完璧よ。リラックスして異世界を楽しんできてね」


「うん」「はい」


俺とスサノヲがセフィ姉に頷く

セフィ姉の完璧は、本当に完璧という信頼感がある


ここまで来たら異世界旅行を楽しもう

勉強にもなるし



「二人とも、変なことしないでよね? 全部がセフィ姉の恥になるんだから」

ミィが騎士団の正装、白い甲冑を着ている


「分かってるって」



その後、外務大臣のありがたい長話を聞き、なんやかんやと出発式をやり、俺達は地下へと移動する


「長かったな…」


「国家的プロジェクトだから仕方ないのよ」


セフィ姉が、微笑みながら一緒に来てくれた


「おぉっ、これが異世界への転送魔法陣か!」


スサノヲが、地下十階の床に描かれた大きな魔法陣を見て硬直する



異世界への道、つまり次元を越えるためには複数の属性を使う


まずは時空間属性

時間と空間、物体の運動量を司る属性だ


だが、この属性だけでは異世界には行けない

なぜなら、異世界はペアの存在する世界と重なっているからだ


三次元空間の座標で考えた場合、ペアの座標を(0,0,0)とすると、イグドラシルの座標も(0,0,0)だ


どういう意味か?

三次元座標に続く、もう一つの座標が必要になるのだ


世界の重なりとは、魔界、冥界、天界、霊界などへと繋がっている

そして、近しい世界として半次元だけずれた幽界がある


この()()()とは、次元のズレであり、空間的な広がりとは違う


魔導法学では、全ての基準は魂であると考える


肉体とは、魂と物質方向にズレて重なった質量

霊体とは、魂と霊質方向にズレて重なった質量

それぞれが魂に引かれ、その力を氣力、霊力と定義している


つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()となる


逆に、物質の力が強い方向に次元をずらすならば、氣属性の力が必要となるのだ



「凄い魔法陣だね」


「イグドラシルは、ペアよりも霊質が上の世界。これは、時空間属性と霊属性を組み合わせた転送魔法陣なの。これも国家レベルの技術ね」


「…スサノヲ、行く前から興奮し過ぎじゃないか?」


スサノヲが、さっきからはぁはぁ言ってる


「こんな魔法陣を見せて貰えるなんて…、大仲介プロジェクトありがとう!」


「帰りは物質が上のペアに帰って来るから、時空間属性と氣属性を組み合わせた転送魔法陣を使うのでしょうね」

セフィ姉が魔法陣を指す


「そっか、それぞれの世界でエネルギー的な違いがあるから、同じ条件、同じ魔法陣での行き来は出来ないのか…」


「そっちも見たい!」

スサノヲの興奮が止まらない


「いや、帰るんだから見られるだろ」



魔法陣の前まで来ると、魔導師の技術者が前に進み出る


「ナジム外交官、ラーズ護衛官、スサノヲ技術職員で間違いないですね?」


「ええ、その通りです」

セフィ姉が頷く


俺とスサノヲ、そんな役職になってたのか


「では、三人とも魔法陣の中にお進み下さい」


魔法陣の上には透明なガラスのような板が敷かれていて、俺達はその上を歩く


「では、転送を始めます。プロジェクトリーダーセフィリア様、開始の許可をお願いします」


「はい」

セフィ姉が魔法陣の縁に立つ



「龍神皇国の未来のため、皆さんの任務の完遂を期待します。…これより転送を始めてください」


「転送開始!」

「術式始動!」


セフィ姉の気品に満ちた言葉によって、技術者達が動き始めた


電力を魔力に変換


始動の術式を魔導師が発動


人の能力とコンピューター、各種計測器が動き出し、一つの機能を作り出す



フオォォォォ………


光り出す魔法陣




すなわち、次元超越

異世界への転送



オォォォ………




セフィ姉の姿が霞む




「………?」


…気が付くと魔法陣の周囲の景色が変わっていた




・・・・・・




魔法陣の光が収まると、目の前には一人の騎士と数人の従者が立っていた


「ようこそ、ヨズヘイムヘ」


騎士が凛としたよく通る声で出迎える


「龍神皇国外交官のナジムです。お招き頂きありがとうございます」

ナジムが挨拶


俺達も続けて頭を下げる


ついに異世界

大仲介プロジェクトの開始、龍神皇国の代表として外交の始まりだ


やべーーーーっす、今更ながらめっちゃ緊張してきた

俺達は影だ、ナジムについて動く影となるんだ


騎士が先導し、俺達は通路を進む


俺が存在感を消すことを意識し始めたとき、廊下で一人の騎士が近づいてきた



「久しいな、小僧」


「ラーズだよ。いい加減に覚えてくれって、ヒルデ」


その騎士はヴァルキュリアの一人、死の乙女ヒルデだった


Cランクである理由 四章 ~22話 データ 参照


次回は閑話です

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― 新着の感想 ―
[良い点] ↓の返信です。 返信ありがとうございました。下の内容と小説を読み直して何となく理解できました。 (1)モノには物質と霊質という性質?がある(これが次元の差のこと?) (2)物質に片寄って…
[良い点] いつも楽しく読ませてもらってます。 [気になる点] ペア→イグドラシルが気質方向なのに、イグドラシル→ペアが物質方向ってことは気質=物質となってしまうと思うのですが、どうなってるんでしょう…
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