表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/394

五章 ~4話 大仲介プロジェクト前夜

用語説明w

ヨズヘイム:ペアと次元が重ねる異世界イグドラシルにある王国。転生技術や転移魔法陣などの魔導法学が発展している。三国戦争ラグナロクの真っ只中

ストラデ=イバリ:ペアのある太陽系の第五惑星にある第二衛星に作られた宇宙拠点。核融合や宇宙技術など独自の科学文明が発達している


フィーナ:ラーズの二歳下の恋人。龍神皇国騎士団にBランク騎士として就職している。魔法に特化した大魔導師


ロンの腕十字を完璧に極められた

…本気でやって、その上を行かれた


現実感が無く、茫然自失してしまっている自分がいる



大学卒業間際

俺はロンと本気で殴り合った


喧嘩ではない、純粋な試し合い

つまり試合だ


大学四年間の集大成

空手部に入り、いろいろな格闘技を齧り、ストリートファイトにも手を出した

そこそこ戦えると思っていた


そして、一番身近な存在がロン

俺とロンはどっちが強いのか

ずっと避けて来たけど、卒業前に確かめておかなければいけない


…結果はダブルノックアウト

お互い膝が笑って、続けられなくなったのだ



「…俺の勝ち越しだ。ラーズが戻って来たらまたやろうぜ」


「絶対だからな」


今回は完全に俺の負け

言い訳もできない


これで一敗一分か

悔しい


「タイトルマッチ、掴み取れよ」


「もちろん。結果を楽しみに戻って来い」


「帰って来たら二年経ってるのか…、差が開いちゃうな」


「チャンピオンになっている俺をしっかり敬えよ」


「肩書関係なく、俺は格闘技でロンに負けたくないんだよ」


「…俺もだよ。恥ずかしいこと言いやがって」

妙に嬉しそうに、ロンがブツブツ言っている


「ラーズ、気を付けて…」


「うん、エマもロンと仲良くね」


少し赤くなりながら、エマはロンと帰って行った



片付けをして、俺はシャワーを浴びる

この後、スサノヲと待ち合わせをしているのだ


近くのオープンカフェに行くとスサノヲが来ていて、その横に獣人男性が座っていた


「ラーズ!」


「お、お前、クシナダ!」


こいつはクシナダ

元ハカル兵で、大崩壊の時の俺の戦友

刀鍛冶で、刀による近接攻撃やデバフ系の魔法と特技(スキル)を使う


今は、スサノヲと付き合って同棲中らしい

俺の1991をきっかけで付き合ったらしいので、俺がキューピッドみたいなもんだ



「元気そうだな。スサノヲから話は聞いて心配してたんだ」


「クシナダも元気そうだな。スサノヲとも順調そうじゃん」


「まあな。今はスサノヲの工房を一緒にやってるよ」


「こいつ、がさつなヤンキー風味が強いから大変だろ?」


「そこがかわいいんじゃないか」


「おぉ…」


振り向くと、ハンマーを投げつけようとした格好のままスサノヲが真っ赤になって固まっていた

そして、止めようとしていたミィとフィーナまでふにゃふにゃになっていた


「え、どうした?」


「クシナダって男らしい…」

「かっこいいわよねー」


いきなりクシナダの評価が鰻上りだ


「え? 何が?」

クシナダが女性陣を見回す


「男の俺が惚れそうなくらいかっこいいこと言ったのに、本人が無自覚だと?」


「ロリのスサノヲに無自覚のクシナダ…、属性が多すぎるわね」


俺とミィが頷きあう


「属性については私も同意するけど、早く話を始めようよ…」

フィーナが促して、俺達は席に着いた



今日の議題は、大仲介プロジェクトとしての流れの確認だ

俺とスサノヲが当事者となる



大仲介プロジェクトの流れ


・最初に、召喚魔法と空間属性魔法陣によって異世界イグドラシルにあるヨズヘイムヘ行く

・行くのは俺と龍神皇国の外交官、そしてまさかのスサノヲの三人

・外交官は向こうに残り、俺とスサノヲがヨズヘイムの使者を二人連れて戻ってくる

・空間属性転移魔法陣を持ち帰って来る


・次に、宇宙船(三人乗り)で宇宙拠点ストラデ=イバりへ

・行くのは俺とヨズヘイムの使者一人と龍神皇国の外交官の三人

・外交官は向こうに残り、ヨズヘイムの使者と、ストラデ=イバリの使者を連れて帰って来る

・この三人がオーバーラップして、宇宙戦艦を三機持ち帰って来る



今回の大仲介プロジェクトによって、ヨズヘイムとストラデ=イバリに龍神皇国外交官が駐留することになる

龍神皇国の歴史としては大きな一歩であり、今後ヨズヘイムやストラデ=イバリとの国交◯周年! とかは、大仲介プロジェクトが基準となる可能性もある


まぁ、以前から国交自体はあったのだが、今回その親密度が一気に上がるということだ



「改めて考えると緊張する…」


「あたしは楽しみだぜ? イグドラシルの魔導法学技術の一端が見学できるわけだからな」

スサノヲが目を輝かせる


「国の代表の技術者として行くんだろ? あまり悪目立ちするなよな」

それを嗜めるクシナダ


いいカップルだ



「宇宙戦艦を三機持って帰って来るのか、凄いな」


「転移魔法陣システムも凄いけどな」


「異文化交流すぎて目がチカチカする」


「カオスだよね…」


俺達は、多様性の象徴である大仲介プロジェクトにゆいて話し込んだのだった




・・・・・・




マンションに帰って来た


大仲介プロジェクト前、最後にフィーナと過ごす夜だ


「異世界に一週間行った後、宇宙に二年間かぁ、長いなぁ…」

フィーナがため息を付く


「俺からしたら宇宙に一週間行く感覚だけど、こっちでは二年間経っているんだもんな」


宇宙拠点であるストラデ=イバリまでは宇宙船で片道一年、往復で二年かかる

その間は冷凍保存(コールドスリープ)されるため代謝が完全に止まる


あの施設でタルヤが受けた冷凍保存を、まさか俺が受けることになるとは…

帰ったらタルヤの解凍と、ヘルマンの息子の捜索が終わってるといいな



「そうだよ。私とラーズが同い年になっちゃうんだよ?」


「…っ!? そ、そうか…! それは考えてなかった、フィーナだけが年を取るのか…!」


フィーナは騎士学園では飛び級していたので同級生だったが、俺の二歳下だ

その差が埋まって同い年になるのか…!


「…言い方が嫌。ラーズだけが年を取らないんだよ」

フィーナがむくれる


「本当に妹じゃなくなっちゃうな」


「だから、戸籍上なだけで私は妹じゃありません」


「え、俺達、兄妹として仲良くやってきたじゃん。大学の四年間」


「ラーズが勝手に妹扱いしたんでしょ、私は違うもん」


何をむくれてるんだ?


俺達は、大学時代を兄妹として過ごしながら同居

そして、就職してからもそれは続いた

結局、いろいろあって付き合うことになり、今に至っている



「そういえば、大学の部活の先輩が彼女と別れたんだって。ロンが言ってた」


「私、会ったことある人かな?」


「あると思うよ、ゴドー先輩って人。凄い仲の良いカップルだったからビックリしたよ。文化とか育ちが違いすぎるとうまくいかないのかな…」


「人にもよると思うけど」


「…俺達はさ、幼なじみだし、兄妹歴まであるし、ずっと一緒に住んできたしさ。大丈夫だよな?」


「…いきなり何言ってるの? 付き合いが長すぎると、慣れすぎて女として見れないって男の人もいるみたいだよ」

フィーナが、少し赤くなって顔をプイッと背ける


「それは女性も同じじゃないの?」


「私達って、言うほど付き合ってる期間長くないよね。ラーズが行方不明だったし」


「新鮮な気持ちでお願いします」


「バカ…」


フィーナとハグ

しばらく会えないのが寂しくなってきた



ピピピ…


「ご主人、お母さんから電話だよ!」

データが着信を教えてくれる


「え、何だろ? 繋げて」

データが電話を繋げる



「もしもし、ラーズ…?」


「うん、どうしたの?」


「セフィリアちゃんが、遠くに行く前に電話をしていいって教えてくれたのよ」


「そうだったんだ。…ごめんね、心配かけて」


「本当に心配したわ。でも、それは親だからいいの」


「え?」


「私もお父さんも、あなたが無事だったからいい。ただ…」


「ただ、何?」


「…フィーナのことをお願いね」


「は? いや、何を? できることはもちろんやるけど」


「…何も聞いてないの?」


「え、うん、特には。フィーナ、いるけど換わろうか?」


「いいわ、後で電話するから。ラーズ、大仕事を頼まれたんでしょ? しっかりね」


「ああ、頑張るよ」



母さんからの、よくわからん電話を切る


「お母さん、何だって?」

フィーナがチーズを噛りながら聞いてくる


「何か、フィーナのことを頼まれたんだけど。あと、大仕事頑張れって」


「あ…」


「何か聞いてる? 後でフィーナに電話するって言ってたけど」



フィーナが、少し目を伏せる


「…私、言ったの。ラーズと付き合ったって」


「あー…」


そういや、まだ言ってなかったっけ

大崩壊と拉致で、それどころじゃなかったもんな


「ごめんね、勝手に…」


「いや、いいよ。ちゃんと言うべきことだったし。父さんと母さんは何だって?」


「二人が納得するならいいって。別れたとしても、二人は私達の子供よって」


「いきなり別れたらって…」


「頑張って、お互いに好きな人をゲットしなさいって…」


「両親公認なら、頑張んなきゃな」


「うん、じゃあ、はい」


「ん?」


「はい」

両手を広げるフィーナ


「はい…」

抱き締める俺




………




……







「…ね、ラーズ」


「ん?」


「もし、私がいなくなったらどうする?」


「絶対、嫌だよ」


「そう? んー…」



大仲介プロジェクト前夜


俺達は幸せな気持ちで眠りに落ちていった



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] これは⁈⁈!!(⊃ Д)⊃≡゜ ゜ウワァァァァ!!!脳がァァァァァ‼︎ラーズ帰って来た後……フラグダァァァァァこんなの‼︎こんなの‼︎心配かけたくないから言わないやつやーん‼︎‼︎ しかも会…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ