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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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四章 ~41話 フィーナとクエスト

用語説明w

真・大剣1991:ジェットの推進力、超震動装置の切れ味、パイルバンカー機構、ドラゴンキラー特性を持つ大剣、更に蒼い強化紋章で硬度を高められる

絆の腕輪:対象の一部を封印することでテレパス機能を作れるアクセサリー。リィと竜牙兵、フォウルとの思念通話が可能

ホバーブーツ:圧縮空気を放出して高速移動ができるブーツ


フィーナ:ラーズの二歳下の恋人。龍神皇国騎士団にBランク騎士として就職している。魔法に特化した大魔導師

データ:戦闘補助をこなすラーズの個人用AIで倉デバイスやドローンを制御。戦闘用端末である外部稼働ユニットのデータ2と並行稼働している

フォウル:肩乗りサイズの雷竜。不可逆の竜呪を受けており、巨大化してサンダーブレスを一回だけ吐ける


ピンクは仕事があるということで、早めに帰って行った


俺とフィーナは一緒にファブル地区南支局に向かう


「一緒に出勤っていいね」


「なんか新鮮だよな」


手とか繋いじゃうか…

でも、言葉にするの恥ずかしくね?


フィーナをチラッと見る


「ん?」

フィーナと目が合った


目を逸らして、指先をクイクイッと動かしてみる


「…」

「…」


フィーナが手を握ってくれる


うむ、いいぞ


「…言葉で言ってくれない?」

フィーナがまんざらでもない顔で言う


「ちょっと恥ずかしくて…」




支局に入って、クエストの手続きだ


「フィーナ様が、わざわざモンスターハンターと一緒にクエストですか…。珍しいですね」


「たまたまですよ。今日は近くなのですぐ戻ります」


冒険者ギルドの担当者に手続きをして、俺達はクエストに出発した


「ここからすぐの、立ち入り制限地区の森だよ」


「分かった。荷物を全然持ってないけどいいのか?」


移動はフィーナの運転する魔法の箒だ

空を飛べて早いのだが、荷物を乗せられないというデメリットがある


「今日は倉デバイスだけで充分だよ」


「モンスターは?」


「ベルゼブブだよ」



ベルゼブブ


魔界には同名の魔王がいると言われている、巨大なハエ型モンスター

大きいものはCランクにもなり、高速飛行が厄介なモンスターだ



「へー、高速飛行か。それなら俺にやらせてくれよ」


「え? 範囲魔法で落とさないと攻撃するのもきついよ?」


「ふっふっふ…、フィーナ。俺も飛行能力を持ってるんだ、実戦トライアンドエラーのいい機会だよ」


「うーん…、斥候だけお願いしたかったんだけどな」

フィーナが心配そうに言う


「優秀な大魔導師がいれば、俺でもいけるよ。補助魔法、期待してる」


「もー…しょうがないな。無理はしないでよ?」

えへへ…と、頷くフィーナ


ちょろさとはかわいさである



「フォウル、絆の腕輪で接続しよう」


「ガウ」


俺は、絆の腕輪にフォウルの魔力を入れさせる

絆の腕輪は俺のアクセサリーだ



アクセサリー


装備品には、武器、防具、アクセサリーの三種類のカテゴリーがある


武器は物質への依存度が高く、霊質の重要度が低い

杖以外は、物質が対象にぶつかったときの衝撃が威力を決める


防具は物質と霊質に依存する

物質の衝撃と魔法エネルギーに対する防御が性能を決め、水着やローブのような物質的な防御力が無いものでも、霊質を備えていて魔法防御力に優れている場合がある


そして、アクセサリーは霊質に依存する

腕輪や指輪、髪飾りやピアスなどの形状が多く、その霊質の構造によって各属性防御や特殊機能など、身に付けるだけで特殊な効果を得られるものが多い



絆の腕輪は、相手の一部、魔力や霊体等を封印することで念話が可能となるアクセサリーだ


俺の絆の腕輪はスピリッツ装備となって進化しており、フォウルの思念だけでなく視覚情報までもが受け取れるため簡易カメラのような使い方が出来る



「その腕輪、本当に便利だよね」

フィーナが言う


フォウルの視界を、絆の腕輪に魔力を込めたフィーナにも共有できるため、パーティ戦闘でも生かせるのだ



ブブブブ…


その時、遠くから微かに耳障りな羽音が聞こえた



音の方向を見ると…


「フィーナ、あれだろ」


遠くに黒い点が飛んでいるのが見える


「…やっぱり、変異体の五感ってすごいね」


フィーナは言いながら、箒をベルゼブブ方向に向けた




ブブブブ!



近づくと、羽音を大きくして俺達の方を向くベルゼブブ

二メートルほどの大きさのハエだ


…でっかい複眼が気持ち悪い



フィーナが箒を地上に向けると、俺達を餌と認識したのかベルゼブブが追ってきた


俺は倉デバイスから陸戦銃を取り出す


まずは機動力を削る

狙うは羽だ


動きの早いモンスターに1991は当てられない

先に銃弾で削る


「ラーズ、待って」


フィーナが、硬化魔法、耐魔力魔法、防御魔法をかけてくれる

一般兵にも補助魔法使いはいるのだが、フィーナの補助魔法は(中)だ

一般兵が使う(小)の十倍近い性能を誇る



…これだけガチガチに守られると、実戦でやる意味が薄くなる気もするな

まぁ、ありがたいけど


「フォウルはフィーナといてくれ。必要なときに呼ぶからサンダーブレスを」


「ガウ」


「ラーズ、絶対に無理はしないでね」


「分かってるって!」



俺は真後ろを追ってくるハエを見据える


「ほっ!」

地表近くを飛んでいるフィーナの箒から飛び降りる


同時に集中

殺意を一点に



ブブブブ!


高速で飛行するハエに肉薄、空中で銃口を向けながら触手をテレキネシスを発動



ビュオッ!

ドガガガガガガ!



ハエに突っ込む直前に推進力を上方向に

ハエを飛び越えながら、羽に向かって乱射する



ブブブブッ!



ハエは落ちずに俺を通りすぎた

だが、先から旋回して戻ってくるのが見える


よし、俺を襲ってくるなら好都合だ

俺はモ魔で火属性範囲魔法(小)の巻物を読み込み始める



俺は重心を下げる

ベルゼブブが地表近くを低空飛行、一直線に俺を狙ってくる



ボッ!


ホバーブーツのエアジェット



正面衝突のコースを突っ込む

軍時代の俺だと、推進力はホバーブーツしかなかった


だが、今の俺にはもう一つある!



触手に溜めていた精力(じんりょく)でテレキネシス飛翔!



ビュオォォッ


「ぐうぅぅぅっ!」



ホバーブーツの加速に飛行能力を被せることで、凄まじい速度が遠心力を生み出して俺の体を襲った


体が引きちぎれそうだ、制御ができねぇ!


吹き飛ぶような体勢のまま、無理矢理もう一度ベルゼブブを飛び越える

今度は陸戦銃に装填していた散弾を発射



ガシュッ!


ブブブブ!



面破壊で羽を破り、ベルゼブブが地面に落下

着地と同時に俺は反転、エアジェットでベルゼブブを追う


あ、危なかった!

変な方向に吹き飛んでいたらベルゼブブに正面衝突していたかもしれねぇ


ぶっつけ本番、よくない!

ダブル推進力、ここまで負荷が大きいとは思わなかった



「データ、1991を!」


「了解だよ!」



陸戦銃のアサルトライフルで、後ろ足を破壊


倉デバイスから1991を引き出す

同時に、モ魔で火属性範囲魔法(小)を発動



ボオォォォォッ!


ブブブブブブ!



ベルゼブブは魔法耐性が高めのようで、そこまで魔法ダメージは大きくなかった

だが、背中の羽はよく燃える


わずかに残った羽を震わせてベルゼブブが怒りを伝えてくる


機動力は奪った

さ、ここからが勝負だ



でかい敵にはでかい武器が有効だ

でかい武器は当てづらいが、機動力を潰したハエなら問題ない



ブブブブッ!


ベルゼブブが、前肢での押さえ付け狙う



本来、蝿は空中での活動が主だ

地上での動きは不自然な動き


…つまり、挙動がよく見えるということだ


ベルゼブブが前肢を上げた瞬間、1991のジェット斬り

複眼に横から叩きつける



ボッ ゴガッッ!



前肢が上がっていたため、倒れるようにバランスを崩すベルゼブブ

止めでフル機構付きを…


いや、待て

今日はフォウルのデビュー戦だった


俺は絆の腕輪でフォウルに呼び掛ける



フォウル、サンダーブレスで止めを頼む



フォウルから了解の思念が届くと、上空に待機していたフィーナの箒から小さな子竜が飛び降りた



そして、空中で巨大化した瞬間



バリバリバリーーーーーー!



凄まじい電撃がベルゼブブを直撃した




・・・・・・




ベルゼブブは全部で三匹いた

フィーナは残りの二匹を範囲魔法で焼き尽くす


このクエストは、Cランクモンスター複数体の高難易度クエストだったのだ



モンスター素材の回収業者を待ちながら、フィーナは一人で考えていた


Cランクとは、戦車と同じ戦闘力を持つということ

闘氣(オーラ)も持たない一般兵のラーズがCランクモンスターを安定して狩る

それは信じられないことだ


Cランクモンスターは、一般兵であればパーティ前提、更に魔法や砲撃等の火力が必須だ

歩兵一人で戦うようなモンスターではない


…戦いが始まると、ラーズの雰囲気が変わった


あれがトリガーというやつだろうか?



「どうした、フィーナ?」


「何でもないよ」


当の本人は、あっけらかんとしている

ベルゼブブを狩れることに、疑問を感じていないようだ


ラーズの実力が付いたことは認める

あの高速移動は、Bランクである私にも無理だ


でも、同時に刹那的にも感じる


自分を使って限界を試しているような

自分が壊れても、それはそれで仕方ないというような


「腹でも痛いのか?」


「違うよ、バカ」

フィーナはため息をつく


どこか、自分を軽視しているような

それが、たまらなく怖く感じた


「次々と、心配事も増えるんだから…」


「え?」


何も気が付いていないラーズに少しイラッとしながら、フィーナは帰る準備を始める



ちなみに、今回のベルゼブブの一匹が卵を持っていた

高級食材として売れるらしい


ハエの卵…、モンスターとはいえゲテモノだ

世の中の美食家達は凄いなぁと、フィーナはもう一度ため息をつくのだった




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― 新着の感想 ―
[良い点] 効果(中)でも10倍位あったのか!今まで小ばっかりだったから新鮮! ……効果(大)とか使えるのは魔王クラスになりそうで怖いねぇ [一言] フィーナの心配はわかるけど、ソイツもともと頭おかし…
[一言] 遠くの黒い点レベルの相手が発する音が聞こえるなら壁1、2枚程度隔てても聞き耳立てれそうやな( ¯ω¯ )フフフ…
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