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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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四章 ~35話 ドゥン2

用語説明w

ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシン群を運用・活用するシステム。治癒力が向上する


サイキック・ボム:精力(じんりょく)を圧縮し、テレキネシスとして発動させることで爆弾のような瞬間的な衝撃を作り出す


エマ:元1991小隊の医療担当隊員。医師免許を持ち回復魔法も使える

スサノヲ:見た目は赤ずきんをかぶった女の子。正体は、怪力の腕利き鍛冶職人でジャンク屋


塞がれた視界

目に前に迫る気配


俺は、モ魔で読み込んでいた風属性の竜巻魔法(小)を発動



ブオォォォォォッ!



突風が俺の正面で吹き荒れる

その風を遮る、巨大な何か


ドゥンが、竜巻魔法を無視して突っ込んで来る

風がドゥンの位置を教えてくれ、俺に迫っているのが分かる



ボッ!



エアジェット最大出力でのバックステップ

距離を取りながらも、小型杖を目の前にいるであろうドゥンに振る


俺は、騎士学園を卒業した

しかし、実力と才能の足りなさを痛感していた


だからこそ、騎士の資格を手放してでもチャクラ封印練を行った

そして、俺はBランクとは違う強さを求めて軍に入ったのだ


俺は力を得た


俺が得た、闘氣(オーラ)とは違う力

それは、身体操法と覚悟だ


最高効率で体を操作する

そして、必要な行為を躊躇なく実行する



Bランクモンスターは強い

人間など簡単に粉砕する攻撃力を持っている


だが、俺には1991がある

Bランクモンスターを傷つける牙を持っているのだ


軍で得た1991小隊の力、真・大剣1991

変異体のスタミナと身体能力

格闘技、戦闘技術、武術、兵法が融合した武の呼吸


全力で避けて、全力で当てる!

その手段が俺にはある!


俺がドゥンに当てた魔法弾は、力学属性引き寄せの魔石だ


魔法弾の引き寄せ効果が発動



ビョォォォォォン!!


「おあぁぁぁぁぁっ!」



引き寄せの魔法効果で、俺の体がドゥンめがけて突進



1991には、パイルバンカー機構の薬莢を込めるスロットが二つある

一つは刺突用、もう一つが斬撃用だ


1991の刃体、嘴のような特徴的な先端にテレキネシスを圧縮

思念感応核が導入された1991には、以前と比べ物にならないくらい精力(じんりょく)が吸い込まれていく


1991の超振動装置始動、霊的構造、硬化された刃体を、ロケットブースターで振り下ろす


パイルバンカー始動!

テレキネシス・ボム発動!


完全版フル機構斬りだ!!



ゴゥッ ズッガァァァァァァァン!


「ギャアァァァァァッ!」



目は見えないが、凄まじい衝撃と手応え

風が、音が、臭いが、位置を完璧に教えてくれた


「ご主人、回復薬で洗い流して!」

データが倉デバイスから回復薬を出してくれる


できるAIだな!


頭から回復薬をぶっかけて血を洗い流し、すぐに距離を取る



だが、ドゥンは動きを止めていなかった

顔の右側から首にかけて、ざっくりと抉れて大量出血


だが、怒りに燃えた右目は俺から視線を離さない



…こいつは強い


勝ち逃げなんて出来ない


総力戦だ



パイルバンカーの薬莢を替えるチャンスはない


フル機構攻撃は無理、大技はいらない


後は死ぬまで削り合うだけだ



「うおぉぉぉっ!」

「ゴアァァァァァァッ!」



トリガーが自然と入る


超集中、ゾーンと言うやつだ


殺意に意識を集中、その他の全てが意識から消える



俺とドゥンは、弱肉強食に身を投じた


叩きつけられる爪


躱しながらのジェット斬り



押さえつけと牙


飛行能力とエアジェットで脱出


カウンターで突き



吹き飛ばされる


叩きつける


抉る



すぐそこにある死


その先にある勝利



俺は人殺しだ


敵を殺し、仲間を見殺し、生き残ってきた


俺はなぜ生きているのか、それを見極める



こいつに勝てれば、俺は先に進んでいい


その資格があるのか


それを試す



負けたら死ぬ、そうあるべきだ


それが当たり前


世界の真理、あるべき姿だ




………




……







「はぁー…はぁー…」


…変異体の体が悲鳴をあげている



目の前には、ようやく動きを止めたドゥンが倒れていた


「ラーズ!」

セフィ姉とミィが降りてきた



何回1991を叩きつけたか分からない


陸戦銃、イズミF、グレネード

サードハンド、テレキネシス・ボム


もう攻撃方法は残っていなかった


何度も攻撃を受けたため、ヴァヴェルの損傷が激しい

骨折をヴァヴェル接骨機能が固定し、ナノマシン群が治療し続けた

そのため電力が枯渇してナノマシンシステムが停止寸前、回復薬、カプセルワームも尽きてしまっていた


もう少し長引いたら、倒れていたのは俺だった


出血と疲労でもう一歩も動けねぇ…


「ラーズ、凄かったわ。まさかBランクモンスターを一人で、しかも闘氣(オーラ)も無しで倒してしまうなんて」


「やっぱりおかしい…。何であんなに攻撃を避けられて、攻撃を当てられるの?」

ミィが首を捻る


挙動を見て、攻撃を予想して、その合間に攻撃を当てる…、言語化が難しいんだよな



あのまま騎士になっていたら、闘氣(オーラ)を使ってもドゥンの単独討伐は出来なかったかもしれない

…俺の闘氣(オーラ)は、同級生に比べても弱かったから


だが、闘氣(オーラ)を捨てることで得た武の呼吸

長時間、全力で動き続けられる体


Bランクモンスターが俺を敵と認める

そして、その敵意に答えられる

試せる、強くなる、上手くなる


デモトス先生、へルマン…

少しは、あの人達に近づけたのだろうか…?



ミィがドゥンの素材の回収業者を手配

セフィ姉は、達成感に浸りながら大の字で寝ている俺を心配そうに見つめる


「私がトリガーを見せてとお願いしたんだけど…。ラーズ、あんな戦い方は危険すぎる、引くことも考えないと」


「あー、トリガーのことなんか忘れてたよ…」


高揚感が去り、先程から疲労感が凄い



…戦うのをやめるのが怖い

戦わなければ、忘れてしまうかしれない恐怖


積み重ねてきた技術も、心に残る復讐の種火も、仲間達との宝物のような思い出も


忘れてしまえば、全て無くなる


あの施設で手を汚した理由

殺した理由も、生き抜いた理由も、全てが無くなるから


戦っても壊れたとしても、忘れるよりはいい

忘れ去っていたこと、あの施設のステージ1での生活


あの忘却の日々は、俺の新たな呪いとなった



足を止めるな


二度と忘れるな


忘れて自分だけ救われたいのか



…背中からそう言われている気がするから




・・・・・・




セフィリアは、静かに決心をした


ラーズの実戦に特化した技術

訓練だけでは到達出来ない高み

そして、自分を犠牲にしてでも戦いを止めないトリガー


この力は特別だ

Bランクで、ラーズほどの技量を持っている者は何人いるだろうか?


()()()()()()()()()()()()()()


…ラーズに渡すものがある


セフィリアは、静かに龍族の強化紋章を輝かせた




「セフィ姉」


「…どうしたの?」


珍しく物思いに耽っていたセフィ姉に声をかける


「お願いがあるんだけど…」


「どんなこと? 無理言ってトリガーを見せて貰ったから、何でもしてあげる」


何でもって…

ちょっといかがわしいことを想像する

やめろよ、俺


「騎士団の人で、サイキックで飛行能力持つ人っていないかな? ちょっとアドバイスが欲しいんだけど…」


「その触手の飛行能力ことね。分かった、頼んでおくわ」

セフィ姉が頷いてくれた



俺達は、騎士団のファブル地区南支局に戻る


セフィ姉が回復魔法を使ってくれようとしたが俺は断った


ナノマシンシステムで怪我を治すことで、細胞内のナノマシン群の保有量を増やす

軍時代にやった、ナノマシンシステムの育成方法だ


「ラーズ、大怪我…」


「見た目ほど大したことはないよ骨も折れてないし」


エマにナノマシン群の素材溶液を貰ってがぶ飲みする

ちょうどその時、歩いてきた赤ずきんを見かけた


「あれ、スサノヲ。どうしてここに?」


「騎士団に武器の納品だよ。それと、ヴァヴェルの修理が必要って聞いてな。うわっ、ボロボロじゃねーか!」


スサノヲは、見た目女の子、中身ヤンキーの武器と防具の職人

腕が良いから、騎士団にも納品しているのか


「Bランクモンスターと殴りあったからな。ついでに1991のメンテも頼むよ」

俺は倉デバイスから1991を取り出す


「Bランクって…、それにしてはでっかい損傷は無いな…」


「直撃は無かったからな、有ったら多分死んでるし。でも、何度かガッツリ吹き飛ばされたけどヴァヴェルと1991が守ってくれたよ」


並の防具だと、ドゥンの爪がかすっただけでもぶっ壊されるだろう


「言ってなかったと思うが、お前の装備はスピリッツ装備になっている。そのおかげだな」


「スピリッツ装備?」



スピリッツ装備


武器防具と持ち主に絆が生まれることで、その身体と一体化し、その性能を何倍にも引き上げる究極の装備

長年使い続け、共に死線を潜り抜けてきた装備品が覚醒することで成る


何年も使い続けられた道具に思念が溜まり、その精力(じんりょく)が霊力を引き寄せて妖怪化することがある

これを九十九神といい、スピリッツ装備とはこれに近く、装備自身が持ち主を守るという意思を持つ


職人が、いつか作り出すことを夢見る作品だ



「ヴァヴェル、1991、そしてあたしの作品じゃないけど絆の腕輪。この三つはスピリッツ装備として覚醒しているぞ」


「そ、そうなのか…!」


使い続けた自分の装備が覚醒だと!

めちゃくちゃ興奮するじゃねーかーーーー!


「だけど、まだ真のスピリッツ装備じゃないけどな」


「え、そうなの?」


「スピリッツって、魂ってことだろ。魂に纏わる力は精神の力だけじゃない」


精力(じんりょく)と…、氣力と霊力か」


「そうだ。氣力は宝貝(パオペイ)、霊力は徐霊アイテムが有名だな。…まだまだ、その装備は化けるぜ」


「…スサノヲ、まだまだよろしく頼むぜ」


「当たり前だ。あたしの作品を中途半端に放っぽりやがったらハンマーで頭潰してやるからな」


見た目可憐な女の子、中身サイコなヤンキー

頼りになる武器防具職人を、俺は残念な目で見るのだった





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