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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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四章 ~30話 ナンパされるフィーナ

用語説明w

大崩壊:神らしきものの教団や龍神皇国の貴族が引き起こした人為的な大災害。約百万人に上ぼる犠牲者が出た

神らしきものの教団:現在の世界は神らしきものに滅ぼされるべきとの教義を持つカルト教団。テロ活動や人体実験など、世界各地で暗躍


フィーナ:ラーズの二歳下の恋人。龍神皇国騎士団にBランク騎士として就職している。魔法に特化した大魔導師

ピンク:カイザードラゴンの血を引く龍神皇国の貴族で、騎士見習い。カイザードラゴンのブレスを纏った特技スキルの威力は凄まじい


エマに止められて、今日のスパーリングはお開きになった


軍やあの施設で培ってきた俺の技術は、ロンを仕留められなかった

そして、タイトルマッチに王手をかけるロンの格闘技は俺を仕留められなかった


お互いに認め合っているからこそ、拮抗した実力を持つ自分が誇らしい

そして、勝てなくて悔しい

でも、楽しい


いろいろな感情が混じり合う


「ラーズ、お前手加減してただろ」


「手加減っていうか、打撃を軽く出してただけだよ。変異体のパワーだと、俺が有利すぎるだろ」


階級制を導入することによって、格闘技の技術は進歩した

体のスペックや力だけじゃなく、技術を使わざるを得ない土俵

だからこそ、格闘技は楽しいのだと思う


「うーん、それはちょっと考えるか。なぁ、また今度、実戦形式でやらないか?」


「…やりたいのか?」


「ああ、やりたい。やっぱり、お前とのスパーは楽しかったからな」

ロンがニヤリと笑う



大学時代


俺はロンとストリートファイトにも手を出していた

大学周辺の町は学生街で、若い学生が集まり、所々でストリートファイトが行われていた


俺達は仲間で親友だったが、卒業記念として最後に一度、真剣勝負をすることにした

俺とロンのストリートファイトだ


俺は竜人、ロンは武術をやることからドラゴンと呼ばれるカンフースターを連想して、それぞれドラゴンと呼ばれていた


俺とロンの真剣勝負はドラゴン対決と呼ばれ、ちょっとだけ話題になったんだ

…大学周辺のストリートファイト好きの間でだけだけど



「分かった、受けて立つ」


「試合も見に来いよ。チケット渡すから」


「いや、それが立場的にまだ無理かもしれないんだ」


「え?」



俺の立場は、(そら)の恵みの騒動で微妙だ

セフィ姉が俺の身請けをしてくれるまでは、あまり外出が出来ない

ロンやエマに迷惑がかかる可能性もある


それに大仲介プロジェクトの日程も迫っているはずだ



「そうなのか…」

ロンが残念そうに言う


「ただ、PVでちゃんと応援するからさ。頑張れよ」


「ああ、任せろ。気持ちよく勝ってやるからよ」


ロンの、この根拠のない自信

プレッシャーで負けそうな時に、強気に笑い飛ばす態度

いつも、頼もしく思っていたな



エマとロンは二人で帰っていった

さ、フィーナも待ってるし俺も帰るかな


「ご主人! ミィからメッセージだよ!」

データがメッセージを受信


「さっき別れたところなのに?」


メッセージは、『支局に戻って来い』とのこと

いったい何なんだよ…



支局に戻ると、ミィが待っていた


「ミィ、どうしたんだ?」


「ちょっと、こっちに来て」


ミィに連れられて来たのは、時間外れで客がほとんどいない食堂だった


「…座って」


ミィに言われて俺は腰を下ろす


「前回、ラーズが捕まえた賞金首がいたでしょ?」


「ああ、呪術師の奴だろ」


ミィが頷く

「あいつの取調べをした結果、神らしきものの教団からの依頼で動いていたことが分かったわ」


「…っ!?」


神らしきものの教団…!

…それは気になるな……


「…それで?」


「賞金首の仲間がいる拠点が分かったから、明日踏み込むわ。やれるでしょ?」


「俺達がやっていいのか? 普通は騎士団とか警察とかが…」


「騎士団長心得が許可してくれたわ。戦闘員が早急に制圧する、大事な事よ」


「分かった」

教団がらみなら、モチベーションはいつもより高い


「ラーズ」


「ん?」


「分かってると思うけど、殺すために行くんじゃない。できる限り生け捕りよ」


「分かってるって」


雇われた野郎から情報を引き出せないと意味がないからな



ミィも帰るというので、俺達は支局で別れた

フィーナに連絡したら、「待ち合わせしよ」と言って来た


待ち合わせ場所に向かって、町を歩いていく


道路、建物、車、マンホール、下水道、消火栓…

当たり前だが、誰かが作ったものであふれている


自然が遠い、そして死が遠い

…素晴らしい生活だ



大崩壊


全てを失ったあの日


仲間も、町も、住んでいたアパートも



全てを壊した元凶


龍神皇国の貴族ムタオロチ家は潰されて処刑


神らしきものの教団は、ウルからほぼ撤退となっている



…足りない


そんなものでは全然足りない


許さない許さない許さない


撤退だけなんて許さない



叩き潰す


一人残らず探し出す


殺す、消す、潰す、そして…



「あ…」


俺は自分のトリガーを自覚して、少し気を静める



落ち着け

こんな街中で、俺は何を考えてるんだ


教団という言葉に引っ張られ過ぎだ



「…ん?」


フィーナを発見

なんか、男が二人いるな


「ねぇ、ちょっとだけお茶しようよ」

「そこのカフェ、ケーキがおいしいんだよ」


「ごめんなさい。私、待ち合わせしてるんです」

フィーナが断っている


お前達、目の前の女は、一瞬でカフェごとお前らを消し炭にできる騎士だって知ってるのか?


「またまたー、さっきからそう言ってるけど全然来ないじゃん」

「来るまででいいから、行こうよ」


「…」

フィーナが黙っている


そろそろキレそうだな



「お待たせ」

俺は、男たちの後ろからフィーナに声をかける


「あ、ラーズ。遅いよ…」


「ごめんな。行こうか」


フィーナが俺の腕を取る

それを見て、男たちが諦めたようだ


「ちっ、ブスが男連れだからって調子に乗りやがって…」

「おい、やめろって」


負け惜しみで、男が捨て台詞を吐いた



「…あ?」

自然に口が動いた


その台詞に、自分でも驚くほどカチンと来る


この野郎…


「…っ!?」

男たちの動きが止まる


「今、何て言った?」


「い、い、いや、何も…」

「だから…、すまん、悪かった。もう帰るから!」

そう言って、男達がそそくさと立ち去って行く


スッゲームカついたわ…

ふざけんなよ?


「ラーズ、一般人相手に喧嘩しちゃダメだって」


「…そうだな。悪い、ちょっと腹が立ってさ」


「私のために怒ってくれたの?」


フィーナは、自分のために怒ってくれたラーズにドキッとしてしまったことを隠しながら言う


「だって、俺のフィーナに声かけるわ悪口まで言うわで、そりゃ腹立つって」


「…俺の?(小声)」


「どうした、フィーナ?」


「…何でもない」


「顔赤くないか?」


「…何でもないの!」

フィーナは、俺の腕を掴んで歩き出す


仕事終わりにフィーナと会う

あの充実していた軍時代を思い出す


頑張って仕事をして、フィーナと会って、そして寝る

次の日、また頑張れる、そんな生活


…一度崩れたら、同じ生活は絶対に取り戻せない



「ね、おかしいと思うんだけど」

フィーナがようやく俺の顔を見た


「何が?」


「何でラーズの方が忙しくなってるの? 退院したばっかりだっていうのに」


俺が明日も仕事になったことを言っているのだろう


「いや、フィーナだって雪山から帰って来たばかりだろ。セフィ姉が、フィーナは無理矢理にでも休ませなきゃダメだって言ってたぞ」


「遊園地のイルミネーションに行きたかったのに、一人で休んだって仕方ないよ。ラーズも休まないと遊びに行けないんだよ?」


「うーん、一人で行く…のも寂しいよな」


「一人遊園地とか罰ゲームだよ…」



俺達は、スーパーで総菜を買って帰る

二人で宅飲み、大学時代からよくやっていた


俺達は、戸籍上は兄妹となっていたため、大学入学を機にメゾン・サクラというアパートで一緒に住み始めた

共にシグノイアにあった、俺はトウデン大学、フィーナはハナノミヤ聖女子大学に通っていたからだ


フィーナは魔導法学系の学部と言っていた

騎士学園時代から魔法が得意だったため、向いていたのだろう


俺は考古学で先史文明を専攻し、龍神皇国にも発掘に来たことがある

あの時は、なぜかフィーナも発掘について来たな


俺は普通の大学、フィーナはお嬢様大学で、学校としての関りは全くなかったが、家に帰れば一緒に酒を飲み、どっちが家事をやるかで喧嘩して、また仲直りなんて生活をしていた


あの頃は、フィーナは二歳年下で未成年だったこともあり、そこまでバカ飲みはしていなかった

(シグノイアでは十八才から飲酒が解禁される)


だが、社会人になってからフィーナはめちゃくちゃ酒が強くなった

今では、俺は全く相手にならなくなってしまった


「ラーズ、仕事前はあんまり飲まないからつまんない」


「俺、仕事とか関係なくフィーナほど飲んだら死ねる自信がある」


「嗜む程度ですよ?」


「嗜むには個人差がありすぎます」


二人でピザや枝豆、刺身、いろいろ…

うむ、上手い


昔の冒険者たちに現代のつまみを渡したら泣いて喜ぶんじゃないだろうか?

現代の文明万歳


「そういえば、今度ピンクが会いに来たいって言ってたよ」


「おー、シグノイアに遊びに来た以来だな。元気だった?」


「元気だよ。カイザードラゴンのブレスを使えるから、まだ騎士見習いなのに前線で攻撃担当とかやらされるんだから」


「セフィ姉やフィーナもそうだったけど、才能っていいよなぁ…」


俺達は、楽しく酒を飲んだのだった

ちなみに、フィーナはまたワインを一本空けた



参考事項

ハナノミヤ聖女子大学

閑話5 クレハナの実家

神らしきものの教団の衰退

四章 ~15話 教団のその後

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― 新着の感想 ―
[一言] 男たちよ…ナンパした相手が悪かったなww(ง`▽´)╯ハッハッハ!!
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