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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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四章 ~29話 ロンとの再会

用語説明w

ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシン群を運用・活用するシステム。治癒力が向上する


エマ:元1991小隊の医療担当隊員。医師免許を持ち回復魔法も使える


ミィがセフィリアを振り返る


「どう? あんなに簡単に一般兵がCランクモンスターを倒しちゃうの。しかも単独で」


「ええ、そうね…」

セフィリアも考え込む


「Cランクモンスターって、一般兵なら部隊で対応、戦車を使って倒すレベルだよ? …しかも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


ミィが言っていること


ラーズは、特殊な攻撃をしていない

例えば、1991のパイルバンカー機構のような強力な攻撃

魔法弾で拘束してロケットランチャーの連発

そんな、凄い火力を出したとかではない


ただ攻撃を避けて、銃弾を撃ち込んで、魔法弾を当てて、霊札を腹の中で爆発させただけ

だが、Cランクはそんな一般兵の普通の攻撃で倒せるようなモンスターではない

見ていたはずなのに、ミィにはその理由が分からないのだ


「武の呼吸ね」


「え?」

ミィが聞き返す


「ラーズは、(かん)の動きの初動を呼んで、適切に攻撃を躱す。的確に攻撃を当てる。リスクの負いどころが分かっている」


「リスク…」


「最小限の動きでリスクを負い、最大限のチャンスを作り出す。…腕を上げたわね」


「うーん…。私にはよく分からないんだけど、あいつ普通に勝っちゃうのよ」


「もっとラーズの戦い方を見たいわ。また見に来なくちゃ」


「…セフィ姉、仕事は大丈夫なの?」




ミィが(かん)の素材を回収する手配をしてくれている


「こいつの目、素材になりそうだっから攻撃しなかったんだけど、価値あるの?」


「素材のことまで考えて討伐してたのね。(かん)の眼球は魔法媒体の素材になるかわ」

セフィ姉が微笑みながら教えてくれる


「やっぱりそうなんだ。弾丸撃ち込まなくてよかった…」


「ラーズ、強くなったわね」


「まぁ、これでも貴重な変異体だからね。身体能力や壊れにくさは上がってるよ」


「ふふっ…。同じ変異体でも、あんなに簡単に(かん)は倒せないわよ」


「え? …でも、セフィ姉やミィからしたら余裕でしょ? 俺なんか全然だよ」


俺達は、やって来た回収業者の方へ向かう


「…闘氣(オーラ)が使えるようになったら、どれほど強くなるのかしらね……」


セフィ姉の呟きは、風にかき消されて俺には届かなかった




・・・・・・




騎士団のファブル地区南支局に戻る途中、病院で降ろしてもらう

エマに検査をするからと呼ばれたのだ


「それじゃ、エマにちゃんと見てもらってね」


「分かった。セフィ姉、わざわざ見に来てくれてありがとう」


「また、時間作って見に来るから」


そう言って、セフィ姉とミィは騎士団本部に向った



「検査は異常なし…」


俺はエマの診察を受ける


「よかった。特に気になる所もないよ」


「ナノマシン群の含有量もかなり増えてきてる…。順調…」


「お、そうなの? 早く2.0が復活するといいんだけどね」


変異体の体をナノマシン群で補強する、ナノマシンシステム2.0

そのくらい強化されるんだろ


変異体の筋力だけで、Cランクモンスターの(かん)にダメージを与えられたんだ

期待してしまうな



「ラーズ…」


「ん? どうしたの」


エマがおずおずと口を開く


「ロン君が会いたいって…、その…まだ会っちゃダメって知ってるんだけど…」


「ああ、俺も会いたいよ。最後に会ったの、大崩壊前にエマが研修に行く時だからね」


ロンは俺の大学時代の同級生

一緒に格闘技をやって来た親友だ


軍時代に、合コンで俺とばったり再会したのだが、この時にエマと出会って現在は付き合っているらしい


「その…、今…病院にいるんだけど…」


「え? いるの? …どこ?」


「ロビーに…。でも、目立ったら…」


「分かってるって。ちょっと会うだけだからさ」



エマとロビーに行くと、懐かしい姿が目に入った

向こうも立ち上がる


「…ロンっ!!」


「おっ…お前…!」


しばらくの沈黙


「本当に生きてたんだな…。エマに聞いてはいたんだけどさ」


「なんとか戻ってこれたよ」


「ああ、よかったな。本当によかった」

ロンは俺の肩に手を置く


俺の無事を喜んでくれる友人、とてもありがたい存在だ

俺はそこまで社交的ではないため、友人と呼べる存在は少ない



食堂に移動して、三人で昼食だ


「へー、シグノイアで消防士をやってるのか」


「ああ。俺は龍神皇国で採用されたんだけど、シグノイアが皇国に組み込まれたから異動願いを出したんだ」


ロンも俺も、出身は龍神皇国だ

だが、大学がシグノイア国立トウデン大学だったため、シグノイア内で下宿して通っていた


大学卒業後に、ロンは龍神皇国で、俺はシグノイアの防衛軍に就職したのだ


「エマもシグノイアの病院で働いてるんでしょ?」


「ええ…、復興を少しでも手伝いたくて…」


エマは大崩壊後にシグノイアに戻り、医師として働いた

今ではシグノイア内でそれぞれ家を借り、エマは龍神皇国のこの病院まで電車で通っている


三人で、この二年間のこと、大崩壊の時のことを聞いた

話は尽きない


だが、ロンが立ち上がる


「ラーズ、頼みがあるんだ」


「え、何?」


「俺とスパークリングをしてほしい」


「スパー?」


俺とロンは大学で格闘技に打ち込んでいた

俺は空手やキックボクシング、ロンは形意拳などの武術をベースとしており、お互いスタイルが違うが、仲間でライバルだった


一緒に試合もしたし、ストリートファイトの大会にも出た

懐かしいな



「…俺は龍神皇国の格闘技団体、マジ(マンジ)に所属してるんだ」


「格闘技は続けてたのか、プロでやってるって凄いな。…団体名、ふざけすぎじゃないか?」


「ちゃんとした団体なんだけどな」


「そうなんだ」


「…それで、再来月にタイトルマッチがかかった試合があるんだよ」

ロンが話を戻す


「凄いな。勝てばタイトル挑戦か」


「ああ、絶対に勝ちたい。だから、ラーズとスパーがしたい」


「…俺の意味が分からないけど、いいよ。やろうか」


「待って…。ラーズ…騒ぎになったらまた…」


だが、エマのストップがが入る

俺は確かに目立っちゃいけない立場だ


「それならエマも来てよ。怪我しても治療できるし、目立ったら止められるし」


「え…でも…」


「エマ、俺からも頼むよ。ラーズとやれば、大学時代のギラギラした感覚が取り戻せるかもしれないんだ」


「あ…え…」


ロンにも頼まれ、結局エマも流された




近くの市営体育館の武道場


下が畳のため、投げられても危なくない

バネも入っているため安全だ


「怪我しないように…」

エマが心配そうに言う


俺達は頷いて、ロンが持ってきていたヘッドギア、オープンフィンガーグローブ、マウスピースを付ける


「ルールは?」


「普通のMMAで、頭突きと肘ありだ」


「頭突きもかよ、珍しいな」



俺達は、互いに構えを取る

ロンは足を前後に広げたフットワーク重視、俺は少し腰を落としたアップライトだ


格闘技は金的という急所を守らなくていいため、構えが多様化する



ロンが前後のステップ


俺はどっしりと構えながらパンチと飛び込みのフェイント



ロンがロー


俺が飛び込んで、互いに首を取り合いながら四つに組む


ロンが膝


片足になった瞬間に崩し


踏ん張られて肘を受ける


大外刈りで倒す!



痛ぇ…

ヘッドギアが無いとKOだったかも


だが、ロンが仰向け、俺が横から抑え込むサイドポジションを取った


左拳をロンの顔にコツコツ落としながら関節を狙う



「がぁっ!」


ロンが海老の動きで脱出を試みる



させるか!


右の拳を顔面に思いっきり振り下ろす


寸止めだが、額で受けられてガードポジションに戻される



「なっ…」


俺の上体に飛び付くように足をかけられて、三角締め


まずい…!


頭から足の間に捻り込むように肩を突っ込んで回避


サブミッションの追撃を警戒してロンを押しながら離れ、踏みつけを狙う…


だが、ロンの立ち上がる動きが速かった



「やるな…、ブランクあるくせに俺とやりあうとは」

ロンが言う


「格闘技は俺も使ってたんだぞ?」


だが、ロンは強い

大崩壊前にスパーをやった時とは比べ物にならない



…ワクワクする


スポーツや芸術、仕事でも、上達に必要なことは何だろうか?


…それは、尊敬という感情だと思う


素晴らしい技は心を踊らせる

その感情こそが尊敬であり、自分もやりたいというモチベーションとなる


そして尊敬するためには、その技術と発想の良さを素直に認める必要がある


この尊敬と謙虚さこそ、武術やスポーツ、芸術で学ぶべきことであり、人生のどんな局面でも応用できる技術ではないだろうか



ロンのパンチの連打を前蹴りで止めてミドルを返す


ロンが頭を振って、タックルのモーションからロシアンフック


半歩踏み出して、ロンの肘と俺の崩拳がぶつかり合う



「ははっ…!」


「ふっ…!」



やるな…!

お互いに笑みがこぼれる


殺し合いじゃない、力の試し合い


()()()




…ヒュルル~…ヒュル~…



どこからか物悲しい歌が聞こえてくる


何だろう……穏やかな、静かな、落ち着く…



我に返ると、エマがテレパスを乗せて歌を歌っていた


エマはサイキッカーであり、聞いた者の感情を揺さぶる歌を歌う

鎮静作用のある失意の曲だったようだ


「興奮しすぎ…、もう終わり…」


エマに言われて周りを見回すと、俺達のスパーの見物人が集まってきていた

どうやら、ヒートアップしすぎたらしい


俺達は、慌ててスパーを切り上げ、シャワー室にと向かったのだった




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― 新着の感想 ―
[一言] ロンも強っww 格闘技団体マジ卍とは…一体誰が考えたんだwww
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