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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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四章 ~25話 賞金首

用語説明w

ドラゴンタイプ:身体能力とサイキック、五感が強化されたバランスタイプの変異体。背中から一対の触手が生えた身体拡張が特徴


巻物:使い切りの呪文紙で魔法が一つ封印されている

モ魔:モバイル型呪文発動装置。巻物の魔法を発動できる

魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる


ミィにジロッと睨まれる


「私言ったよね、目立たないでって。自分が貴重な変異体だって自覚あるの?」


「いや、悪かったけどさ。どっちかと言うと、ミィと組んでるから目立ったって感じだったぞ?」



騎士団に所属する一般兵のティトと軽く力試しをした


たが、普段は銃や魔法を使うティトと、あの施設で近接武器による殺し合いを経験した俺

勝負になるわけもなく、何度もナイフを寸止めにしてやったら、エマが呼んできたミィに怒られた


「…さ、さすがミィさんと組むだけはありますね。完敗です」

ティトが頭を下げる


「こいつ、戦闘能力についてはちょっと頭おかしいから。気にしないで」

ミィがティトに言う


いや、酷くない?


「それで、ティトだっけ。私がこいつと組んでるのは訳有だから、この試合のことも全部秘密にしてくれる?」


「え? あ、わ、分かりました!」


「ありがとう、くれぐれもよろしくね。さ、行くわよ、ラーズ」

そう言って、ミィが俺の腕を引っ張って行く


「ちょ、おい。悪かったって」


駐車場まで戻ると、ミィが俺に向き直った


「変異体の技術は国家機密レベル。しかもラーズは、違法施設で変異体になったゴリゴリの訳有り。更に、違法施設を壊滅させて所有権のない変異体の大放出で、皇国内でも扱いで揉めている。…何か言うことは?」


「…ゴメンナサイ。軽率でした」


「特にラーズは、完成変異体として実戦投入可能だって皇国が認定してるのよ? セフィ姉がラーズを確保して、自分の権限内の所属にするためにいろいろ手を尽くしてるんだから余計なことしないでよ」


「そ、そっか…。分かった、もうしません」


俺が思っていたよりも、俺の立場って複雑なのか

俺の意思に反して勝手に所属を決めるなんて…、とは思うが、軍事的に価値のある対象を自由にするはずもないか


セフィ姉が俺の処遇を勝ち取ってくれるまでおとなしくしよう



「それで、次の仕事が入ったんだけど行ける?」

ミィが車に乗り込みながら言う


「次の仕事? 大丈夫だけど急だな」


「エマが契約している里山に賞金首が逃げ込んだらしいの。警察とバウンティハンターも向かってるけど、ここから近いから私たちも向かいましょう」


ちょうど、エマが支局から出て来るのが見えた

そのまま車の後部座席に乗り込む


「エマも行くの?」


「あの里山は、私詳しいから…」


「ラーズ、エマの安全確保も任務だからね」


「…了解」


賞金首とは、何らかの犯罪を犯して逃走した者

バウンティハンターギルドはほぼ全ての国に支局を持っており、国を跨いで手配されることになる


今回の賞金首は呪術師らしい



エマが契約している里山は丘陵地帯の一部だった

広い雑木林になっている


俺とミィ、エマは騎士団とバウンティハンターギルドに確保任務に参加することを伝えて、里山に入った


俺は先頭に立ちながら、エマに里山の状況を聞く


「この里山はキノコや山菜が取れるから…、いろいろな昆虫もいるし、薬剤研究に…」

エマは歩きなれているようで、非戦闘員でありながら俺達に送れずについてくる


「エマの指示で人を雇って素材を集めたりもするのよ。エマの素材は、すぐ完売しちゃう大人気商品なんだから」

ミィがそれを売りさばいているらしい


「ミィは変わらないな…」


騎士学園時代、ミィの職業は商人だった

戦闘能力よりも、ダンジョンで手に入れた宝箱の売却、他のパーティとバッティングした場合のアイテムの所有権の主張などの交渉が得意だった


経済力とは、戦闘力を超える力を出す場合が多々ある

騎士団になくてはならない存在なのは間違いない



「…止まって。足跡だ」


新しい足跡、周囲には折れた枝、人が歩いた形跡を発見


「何やってるのよ?」


ミィが、足跡に鼻を近づけている俺を見下ろす


「変異体のドラゴンタイプは五感が鋭いんだ。賞金首の臭いを覚えておこうと思ってさ」


「臭いで判別がつくの…?」

エマが俺の顔を覗き込んでくる


近いな…

エマは医師免許や薬剤師の資格を持ち、回復魔法も使える治療のエキスパートだ

内気なくせに、知識系の興味に対しては結構ぐいぐい来るんだよな


「まだ新しいから、緊張感を表す少し酸っぱい臭いも分かるよ」


「探知魔法よりも便利ね」

ミィは、里山に入った時から探知魔法を使ってくれている


だが、感知範囲は俺の方が広そうだ



「…いた。データ、ドローンをあいつにバレないように飛ばせるか?」


「ご主人、了解だよ!」


データが、上空を大回りさせて周囲の地形を確認

そのままドローンを俺達と賞金首を挟んで反対側に向かわせる


「エマ、このあたりの地形は?」


「こっちが下がっていて…、この先は急斜面で上がれない…」


お互いの仮想モニターに地図を表示させて周囲の地形を確認する


「ミィ、エマと一緒に坂の下辺りで待ち伏せしてくれ」


「それはいいけど…、一人でやるの?」


「リハビリも兼ねてさ」


俺は、魔石装填型携帯用小型杖とモ魔を確認する


俺自身は魔法が使えないが、魔法を使うための手段は存在する

大きく分ければ、使い切の巻物と魔石に封印された魔法を使う方法だ


巻物とは範囲魔法(小)が封印されている呪文紙で、モバイル型魔法発動装置、通称モ魔で読み込んで発動する


そして魔石とは、使い切りの単発魔法が封印された石だ

小型杖に装填して使い、三つの魔石が装填できる



すでに、ドラゴンタイプである俺の五感は呪術師を捉えた

後は捕まえるだけだ


呪術とは、呪いを使って相手を殺傷する術、若しくは、その呪いに対抗する術だ

呪は霊体に対する毒のように作用するが、大きな違いに遠隔作用がある


縁を持ち、精神的な繋がりができると、空間をこえて遠隔からの攻撃が可能となり、その場合は相手を特定出来ないと防御が難しくなる

(分からなくても、カウンター呪術での反撃が可能な場合もある)


つまり、初対面の俺に対してすぐに呪術が殺傷能力を持つとは考えにくい

しかし、呪術師は攻撃魔法を習得していることが多くく、警戒は必要だ



モ魔で風属性範囲魔法(小)の竜巻魔法を読み込む

大気を高速で回転させることで、対象の足止め、極端な気圧差による引き裂きを起こす魔法だ



「…っ!?」


不意に、俺の第七感が反応する



…これは霊波だ

しまった、呪術師の探知に引っかかったか


ちなみに第七感とは、精力(じんりょく)、霊力、氣力の感知

第八感とは、魔力、闘力、輪力の感知のことだ



「何者だ!」

呪術師が叫ぶ


呪術師は、黒いローブを羽織ったエルフの男だった

手に持つ長い杖には魔法強化機能がある


「抵抗しなければ危害は加えない。お前を拘束する」

俺は姿を見せて小型杖を向ける


「ふざけるな!」

呪術師が杖を俺に向ける



オォォォ…



嘆きのようにも聞こえる、黒い球が打ち出される

魔属性投射魔法だ


躱すと更に、魔属性範囲魔法(小)の魔法陣が俺の足元に展開される



このままでは、魔法陣から魔属性魔法が噴き出て俺は巻き込まれる

だが範囲魔法は、魔法陣で魔法を構成している



ヒュンッ


ボシュー……



解呪の魔石を装填して小型杖を足元に振る

解呪の魔法弾が範囲魔法の魔法陣の中心に着弾して魔法構成を破壊、範囲魔法は不発に終わった


死の乙女ヒルデの見よう見まねだ


「なっ…!?」


呪術師が驚くと同時に、俺はもう一度小型杖を振る

二つ目の魔石は力学属性引き寄せの魔石



ビョオオォォォォォン!



呪術師の近くの樹木に着弾させると、一気に俺の体が引き寄せられる

途中で引き寄せ効果を切り、慣性で呪術師に肉薄


着地と同時にモ魔で読み込んでいた竜巻魔法を呪術師の真後ろに発動



ブオォォォォォォォッ!


「なっ、何を…!?」



自分の体に当たらず真後ろで立ち上がった竜巻に、意味が分からず動きを止める呪術師


攻撃魔法と銃弾の殺傷能力は等価だ

直撃させたら殺してしまう可能性が高い


だから…



「ぎゃあぁぁぁっ!」


俺は、呪術師の杖を持つ腕と胸倉を掴んで竜巻に押し付けてやった



背中を削られるくらいなら死なねーだろ?

痛みで心が折れるし、エマの回復魔法もあるし




「…えぐい捕まえ方するわね。エマ、お願い」

ミィが、エマを連れて近づいてきた


「動かないで…」

エマが回復魔法と回復薬で応急処置を行う



「お、お前、なんてことしやが…!」

治療を受けて余裕が戻って来たのか、呪術師がわめく


「俺は別に正義の味方じゃないからな」


俺は中腰になり、瞬間的に全力で力を込めて拳を突き出す


目の前の木に正拳突き



ゴガァッ!

バキバキ…、ズズーン…


「ひっ…!」



賞金首が、目の前の倒れた古木を見て悲鳴を上げる

お前、自分を棚に上げて文句とか言ってんじゃねーぞ?



ギュィィ…


全力で体を動かしたためか、体の奥で小さな音が響いた気がした



「自然破壊しないで…、森は簡単にバランスを崩す…」


「あ、ご、ごめん…」


珍しく少し怒った顔をしたエマに、俺は慌てて謝った





魔導法学 序章~2話 捜索

ヒルデ 四章 ~13話 ヴァルキュリア1

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― 新着の感想 ―
[一言] 今日は色々怒られるなぁww
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