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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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四章 ~24話 懐刀

用語説明w

回復薬:聖属性を帯びた液体薬で、細胞に必要なエネルギーを与えて細胞を保護し代謝を活性化

カプセルワーム:ぷにぷにしたカプセルタイプの人工細胞の集合体で、傷を埋めて止血と殺菌が出来る


ミィ:龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象

エマ:元1991小隊の医療担当隊員。医師免許を持ち回復魔法も使える


ゴブリンの群れが逃げ出して、森の奥へと消えて行く

強個体であるホブゴブリンがいなくなった以上、強気で人里に近づくことはもうないだろう


「ラーズ、お疲れ」

ミィが降りて来た


「ああ、終わったよ。洞窟、一応潰しておくか?」


「そうね。スーラ、お願い」


「キュイ!」

ミィの肩に乗っていたオーシャンスライムのスーラが、元気に洞窟の中に入って行った


「スライムに洞窟が潰せ…」



ドドドドドドドーーーーーー!


「え?」



スーラが入ってすぐに洞窟が崩落、土砂の隙間からスーラが何事もなかったかのように這い出してきた


「スーラは大量の水を保持しているからね。粘性を減らした自分の体を土砂に染み込ませていって、プチ液状化現象みたいな状態を作れるのよ。後は勝手に天井やら壁やらが崩落するってわけ」


「液体の体って使い所あるなぁ…」


「キュイッ!」

スーラが胸を張ったように見えた



帰りの車はミィが運転だ


「それで、俺はセフィ姉に使ってもらえそうか?」


「…まぁ、合格にしておくけど。何でホブゴブリン相手に素手で行ったのよ?」


「変異体の身体能力の把握だよ。ホブゴブリンには力負けはしなさそうだった。素手でも充分にダメージを与えられる。だが、お互いに寝技は難しい。いい情報が手に入っただろ」


ミィという援護もいるし、ゆっくり確かめられる貴重な機会だ

ホブゴブリンに力負けしないとは、改めて普通の人間とは違う、変異体になったのだと実感ができた


「…寝技って、何で難しいの?」


「お互い、体重に対して腕力がありすぎる。人間同士だと体重で腕力を潰すことができるが、変異体レベルの腕力があれば体重を腕で跳ね除けることができる。要は、抑え込みが成立しないからだ」


「うん…、何言ってるのか分からない」


「分からないのに頷かないでくんない? 闘氣(オーラ)使わずに抑え込まれてみろ、すぐに理解できるから」


セフィ姉に個人的に雇われる私兵

セフィ姉に失望されたくない


俺の出来ることといえば、変異体の能力を生かすことくらいだろう

()()()()()()()()()()()



「…セフィ姉が個人的に雇う人ってさ、セフィ姉が本当に目をかけた人間なの」

ミィが運転しながら言う


「どんな人がいるんだ?」


「いろいろな場所でスカウトしてる。騎士にも個人的に繋がりを持っている人がいるし」


「騎士にもか…、誰?」


「私とフィーナ、そしてオリハね」


「オリハって、あのサイボーグの人だろ?」


「そう、騎士団の中でも本当に目をかけてくれて、セフィ姉のためにいろいろ動いている懐刀ってところね」


「セフィ姉の懐刀…、かっこいいな。ヤマトは?」


「ヤマトは戦闘力が高すぎて有名になっちゃって、クレハナの内戦対策に持っていかれちゃったのよ…。セフィ姉も残念がっていたわ」


「…ミィって、ヤマトと付き合ってるんだろ?」


「…そうよ」


「遠距離恋愛かわいそう」


「…ちょっと前まで、あんたの方が遠距離だったでしょ」


「実は頭の上を飛んでたんだぞ?」


「会えなきゃ同じでしょうが」


そりゃそうだ



遠くに騎士団のファブル地区南支局が見えて来た


「…とりあえず、これから私とラーズでいろいろと仕事をこなしていくから、その合間は自分の好きにしていいわ」


「そんな自由な感じでいいのか?」


一応、給料をもらう身なのに

俺店員、ミィは店長、セフィ姉はオーナー


「それだけセフィ姉がラーズに期待してるってことよ。将来への投資なんだから、ありがたく満喫しなさい」


「ああ、分かったよ…」



車が駐車場に止まった


「…頑張りすぎないでよね。私は、ラーズに一番必要なのは休息だと思ってる」

車を停めると、ミィが言う


「休息?」


「さっき、自分の出した殺気に気がついていないの? まだ、ラーズの心はあの施設にいるのかもしれないよ」


「…」


「休息は体を休ませることだけじゃない、心を休ませるってことなんだからね」


「…分かってるよ」




・・・・・・




支局の建物に入ると、ミィがクエスト成功の報告とモンスターハンターの資格申請をしに行ってくれた

俺がソファーでも探そうと見回すと、エマを見つけた


「ラーズ…」


「エマ、どうしてここに?」


「回復薬とカプセルワームの納品…、数が足りなくなったみたいで頼まれて…」


「そっか。モンスターとの戦いで回復薬とカプセルワームは必須だもんね」


軍時代の負傷率が、小隊で断トツ一位だった俺は、回復薬とカプセルワームの大切さが身に染みている

だが、その負傷率のおかげでナノマシン群による治癒が増えたため、ナノマシン群が細胞に入り込み、平均よりもかなり早くナノマシンシステム2.0を発現できたというメリットがあった


「ラーズにも会いたかった…。このナノマシン群の素材溶液を定期的に摂取して…」

エマが濁った液体が入ったパックをいくつか渡してくる


この液体の中にナノマシン群の素材が溶け込んでおり、経口摂取することでナノマシン群が体内に取り込んでくれる

早く、ナノマシンシステム2.0と2.1の機能を取り戻したいから、これはありがたい


「ありがとう、エマ」

俺は、素材溶液を倉デバイスに入れる


「あと、これ…、よかったら…」

エマが、今度は茶色い液体が入ったケースを取り出す


「あ、これって…」


「毒ジュース…」



毒ジュース


薄めた神経毒系の毒を溶かしたジュースで、定期的に飲むことで毒への抵抗力をつける

毒耐性なんて簡単に付くわけがなく、こういう地道な体質改善が必要なのだ



「懐かしいね。また飲み始めるよ」


「無くなったら言って…」

エマが恥ずかしそうに言う


エマって、軍時代から毒ジュース推しなんだよな

貰うけども



俺はエマにお礼を言って立ち上がる

すると、向こうから男が近づいてきた


「おう、あんた。一般兵のくせにミィさんと組んでるって奴だろ?」


「…組んでる? まぁ、ミィに仕事を回してもらうという意味ではそうなるのかな」


近づいてきたのは、騎士団の人間のようだ

茶色い外骨格型アーマーを着ている


「なぁ、よかったら少し試合をしないか?」


「試合?」


「ああ、銃や魔法は危ないから無しだが、近接武器や素手でさ。あのミィさんと組めるほどの一般兵の実力、同じ一般兵として気になってさ」


「別にいいけど…。それよりも、ミィと組むのって凄いことなのか?」


「は!? そりゃそうだよ。まず騎士と組むってのが凄いし、それがセフィリア様の懐刀の一人、クレジットクイーンのミィさんなんだぞ?」


「お、おぉ…、そんな感じなんだ」


ミィって、騎士学園の同級生のイメージしかなかったけど、騎士団の中だと有名人なんだな…


ちょうどいい、騎士団の一般兵の実力には興味がある



俺はエマに手を挙げて、支局の裏庭に向かった


「俺は一般兵のティトだ」


「ラーズだ、よろしく」


ティトは、ドワーフでがっちり体系だ

だが、他の人種の血が入っているのか、ドワーフらしからず身長は俺と変わらない


「なぁ、俺が勝ったら、俺のことをミィさんに推薦してくれないか?」

ティトがロングソードを抜く


「…それが狙いかよ」


「一般兵にだって、でっかい仕事のチャンスがあったっていいだろ。俺はドルグネル流剣術の心得もあるし、自信があるんだ」


なるほど、ティトは魔法や銃の使用が前提の一般兵にしては構えが堂に入っている


「分かった、いいよ」

俺は流星錘を取り出して構える



…ティトが、中段に構えたロングソードでじりじりと間合いを詰めて来る


俺は下手投げで錘を投げつける



「くっ…!?」


ギリギリでティトが躱す



すぐに錘を引き戻し、もう一度投擲


ガキィッ!


もう一度


ゴガッ!


もう一度


ガンッ!



…うむ、錘が跳ね返った勢いを使って引き戻し、また投擲

無限ループだ


怪我をしないようにアーマーを狙っているが、固い分かなり跳ね返って来る


「ちょっ、待てって! 何だよ、その武器! ずるいじゃねーか!」


「…そうか?」


ずるいの意味が分からないが、このままじゃ何の参考にもならない


だいたい、自分より射程で負けている相手に、射程圏内でじりじり動いてどうするんだ

そりゃ、的にしかならねーだろ



俺は流星錘をしまって、代わりにナイフを取り出す


「よし、行くぞ!」

ティトがロングソードを構え直す


ティトが、中段から間合いを詰める


動きを見る


動きが分かる


あ、動き出す



…こいつ、初動が丸わかりじゃねーか!


あの施設のステージ2の襲撃者、どこで雇ったかのか知らないが、あいつらは本当に熟練者だったんだな

近接武器を使い慣れている、そういう奴らだった



ティトの動き出す意思が体を動かす直前に、俺は飛び込んで前転する


自分が動く直前に俺に動かれたため、ティトは俺の動きに反応できなかった


しかも地面を前転、完全に想定外の動きだろう



「あっ…」


俺は、呆けているティトの内ももにナイフを寸止めした




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― 新着の感想 ―
[一言] おいおい、時と場合によるけど今はずるいって言うセリフかっこよくないぜww
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