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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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閑話11 ボリュガ・バウド騎士学園の思い出

用語説明w

フィーナ:ラーズの二歳下の恋人。龍神皇国騎士団にBランク騎士として就職している。魔法に特化した大魔導師


フォウル:肩乗りサイズの雷竜。不可逆の竜呪を受けており、巨大化してサンダーブレスを一回だけ吐ける


フィーナは悩んでいた


実力が足りない

私は弱い


それを痛感したから



セフィ姉は強かった

知ってはいたけど、それは知っていた気になっていただけだ

予想よりはるかに強かった


そして、異世界騎士ヴァルキュリアのヒルデ

死の乙女の二つ名は伊達じゃなかった


近接戦闘、遠距離、中距離への対応

全く歯が立たず、しかも強力な使役対象、幻獣フェンリルという隠し玉



騎士団の中で、若手のトップの一人だと持てはやされていた

一般兵の人達からは、フィーナさんと組むと安心できると慕われた


私の大魔導士としての技能

攻撃魔法、補助魔法、回復魔法を使い分ける多機能型

パーティや部隊の実力を引き上げるのに、私ほどの特性を持つ者はいないという自負がある


だが、少し…、いや、かなり調子に乗っていたと言わざるを得ない

いつからか、自分自身の戦闘力を上げることを怠っていた

それとこれとは別、というわけだ



「…」


そして、もう一つ不安なことがある

それは昔から感じていたこと



()()()()()()()()()()()



ボリュガ・バウド騎士学園時代


学生は、自分の技能によって職業(クラス)なんてものを決められる


近接攻撃と防御ができるなら戦士

近接攻撃型ならばアタッカー

物理防御型ならばガードナー

攻撃魔法が得意ならば魔導士

回復魔法が得意ならヒーラー…などなど



これは、その生徒はどんな技能を持っているのかを表す記号のようなもので、大昔の冒険者時代の名残らしい


騎士学園では、学年が進むと学園内にあるダンジョンに潜るようになる

本当のモンスターがいる危険な場所で、実戦を経験するためだ


私は、ラーズ、ヤマト、ミィ姉と四人でパーティを組んでいた


ヤマトは戦士で、近接攻撃と防御を両立するスタイルだ

パーティには、前衛がヤマト一人しかいないにも関わらず、その実力で安定性をがっちり上げてくれた


ミィ姉は商人、後衛からボウガンなどの投射攻撃を使うスタイルだが、その真価は交渉だった

宝箱の所有権、戦闘が競合した場合のモンスター素材の分配、そしてアイテムの購入と素材の売却

規約やルールを把握して有利な条件で取引をまとめてくれたおかげで、消費アイテムなどを他よりも多く手に入れることができた


私は賢者

攻撃魔法と補助魔法、回復魔法を使いこなす後衛特化型だった


…そして、ラーズがうちのパーティのキーマンだ


ラーズの職業は、最初は魔法剣士だった

魔法と近接攻撃を使う良く言えば器用、悪く言えば器用貧乏なスタイルだ

魔法も近接攻撃も専門職には勝てない反面、柔軟性と汎用性を持つ


私たちのパーティは四人という少数編成


時に前衛、時に後衛、仲間が襲われないように、後ろを取られないように、風を纏って一瞬だけ急加速できるドラゴンエッグという技で、目まぐるしく動き回るラーズ


ラーズの柔軟な動きは陣形が崩れることを防止し、崩れても立て直しを可能とした

四人中、戦闘に特化しているのは私とヤマトだけなのにも関わらず、パーティに安定感をもたらしていた



それなのに、ラーズへの同級生の評価は低かった

ヤマトの近接火力、私の範囲魔法は学園でも目立っていた

ミィ姉の交渉術は、他のクラスメイトや素材を買い入れる購買部のおじさんに恐れられていた


でも、ラーズはずっとお荷物と言われ続けた

パーティに寄生しているだけ、何もしていないのにダンジョンを進めていいよなと陰口を叩かれていた


…もちろん私達は、ラーズのおかげでヤマトや私が思いっきり攻撃をぶっ放せて、パーティがうまく回っていることを分かっていた

それでも、自分で火力を出せないラーズはずっと気にしていた



ボリュガ・バウド騎士学園では、毎年学年ごとに個人総合闘武大会が開かれる

学年全員がトーナメント方式で一対一の戦いをしていく大会だ


騎士の実力は戦闘力だけではない

それでも、騎士として戦闘の実力は必要だ


ラーズは補助タイプのため、毎年、初戦か二回戦で敗れていた


ラーズは、寄生と呼ばれるないためにずっと頑張っていた

それなのに結果が出ない


悔しそうに、もう無理だ! とか言いながら、結局頑張っていたラーズ

ちょっとキュンって来た



…そして紆余曲折あり、ラーズはついに一皮むけた

何と転職を経験したのだ


ラーズは魔法戦士から()()になった

転職とは、自分のスタイルを変えること

だから簡単にはできないし、あまり推奨はされない


でも、ラーズの場合は上位互換の職業にランクアップした感じだった

勇者とは、魔法と近接攻撃を使うことは魔法戦士と変わらない


しかし、勇者となるためには一つ条件がある

それが重属剣の習得だ


重属剣とは、闘氣(オーラ)と魔法、特技(スキル)を重ねることで高威力の攻撃を叩きつける魔法剣の一種

超高火力だが燃費が悪すぎる、いわゆる超必殺技だ

この重属剣以外は、魔法戦士と変わらない



龍神皇国の前身である龍神皇帝国

この大国の初代皇帝は、魔王を倒し、戦乱を治めたことで国を興した


初代皇帝の職業(クラス)は、現代の分類上では勇者であり、重属剣の使い手であったと言われている

超低燃費高威力、極めれば魔王にさえも届き得る技、高リスクハイリターンの博打技、それが重属剣なのだ


この一撃必殺の重属剣とフォウルのサンダーブレス

フロアボスさえ一撃確殺できる二つの火力で、私たちのパーティは学園記録に迫る階層まで到達して見せた


しかもラーズは、最終学年での個人総合闘武大会の準決勝で、なんとヤマトを下した

そして、ついに重属剣で優勝を勝ち取ったのだ

名実共に、騎士になれる実力を示して見せた



フィーナは、昔を思い出しながらカタログを見ている


「やっぱり杖かな…」


新しい武器を増やす

それが、一番手っ取り早く実力を引き上げる方法かな?


羽衣の魔玉に加えて、魔導士の杖を持つ

二つの魔法強化機能で魔法の構成速度、威力を底上げする



…才能には、いくつかの種類があると思う

私やヤマトみたいに、自分のスタイルを確立して何でもそつなくこなせる

自分の能力をうまく回せるタイプ


そして、ラーズやミィ姉のように、何かに特化して振り切れるタイプだ


パーティを組んでいたとはいえ、同じ学園の同級生

時に、ライバルとなるときだってある

私やヤマトは、ラーズやミィ姉にいつも脅威や頼もしさを感じていた


自分の考え付いたアイデアをとことん試してみる

たまに、とんでもないことを思いつき、それを突き詰める


結果、極悪な交渉術や重属剣なんて規格外の技術が出来上がったりする

それが、時にはヤマトという学年最強の戦士を一対一で打ち破ったりするのだ



ラーズが騎士の道を諦めた時

一般大学に進学すると言ってきた時

チャクラ封印練をすると言い出した時

闘氣(オーラ)も魔法も特技(スキル)も捨てると言った時


全然理解できなかった


ラーズは、安定感が欲しい

私やヤマトのように、普通に戦える強さが欲しいと言っていた


個人総合闘武大会では、毎回博打を打って賭けに勝っただけだと

でも、私からしたら、ラーズのストイックさや発想力が羨ましかった


そして今では、平気でダンジョンを制覇したりBランク戦闘員を闘氣(オーラ)も無しに倒すようになった

その、とんでもない技量は私にも分かる


学園時代に感じた恐怖


()()()()()()()


その努力に、発想に、それが爆発した時の結果に

結局、お互いに無いものねだりなんだ



ラーズは、セフィ姉と一緒に戦える男になることが目標だと言っていた

ずっと憧れだったと


その気持ちも分かる

あの人は完璧超人過ぎる


でも、私にだって夢はある


ラーズと一緒に戦うのは私

置いて行かれたくない、私も強くなる必要がある



まずは新しい武器の選定と調達

杖だけじゃなく、近接武器も考える必要があるかもしれない


そして、仙人としての人体強化の完成

…あまり考えたくないけど、忍術も視野に入れる必要もあるかもしれない



「…ダメだ、やっぱりラーズの病室で考えようっと」


深刻な悩みを、ストレスを分散させながら考えられるのはフィーナの良い所だ



フィーナは、出かける前にシャワーを浴びに行った



参照事項

チャクラ封印練、騎士学園

二章~30話 チャクラ封印練

セフィ姉への憧れ

三章~16話 ダンジョンアタック三回目2

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