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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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四章 ~10話 狩り2

用語説明w

変異体:遺伝子工学をメインとした人体強化術。極地戦、飢餓、疲労、病気、怪我に耐える強化兵を作り出すが、完成率が著しく低い。三種類のタイプがある


イズミF:ボトルアクション式のスナイパーライフル。命中率が高く多くの弾種に対応している

魔石装填型小型杖:使いきり魔石の魔法を発動できる


俺は、ひたすら狙撃と逃走を繰り返している


携帯食料はとっくに無くなった

最低限しか持ってこなかったからだ


ネズミ、芋虫、芋、果実…

森の中は食べ物の宝庫だ

水も確保できる


食べ物は現地調達の予定だったため、代わりにライフル弾を大量に持ってきた

まだまだ残量に余裕はある



ガァン!


「ぐっ…!!」



トラビスの肩にヒット

闘氣(オーラ)でダメージ無し



ガァン!


「ぐはっ!」



足にヒット

衝撃で吹き飛ぶがダメージ無し



十分の仮眠

水分を取って、また追跡を開始する




森の近くの拠点で、セフィリア、フィーナ、ミィが、この狩りを見守っていた


「凄い、これが変異体の強さ…」

ミィが驚きを口にする


「Bランクの方が動きは速いはずなのに、全く捉えられないラーズが凄いわ」

セフィリアも言う


「…もう、()()()()()()

フィーナが呟く


ラーズが森に入ってから三日間が経過した

ラーズは定期的に狙撃を繰り返し、また姿を隠す


トラビスは一度もラーズを捉えられていない


常に狙われるているため、眠ることも許されず、食料も尽き、水分も満足に取れない

トラビスの疲労は目に見えて濃くなってきている



変異体の強化兵


高い免疫力、強力な消化機能、疲労に対する耐性

何を食べても腹を壊さず、短い仮眠でも体力を維持し、戦い続ける能力を持つ



対して、トラビスはBランクとはいえ、ベースは普通の人間

高い戦闘力を持っていても、食事や睡眠は必要だ

ラーズは、削り合いの持久戦に持ち込んだのだ


セフィリア、フィーナ、ミィでさえ、交代で休みながら戦いを見守っている

ラーズは、変異体の性能を正に見せつけているのだ




トラビスは、血走った目で周囲を見回している


「殺してやる…、被検体ごときが、俺に逆らうとどうなるか…教えてやる…」

しばらく水を飲んでいないため、声がかすれている


Bランクの自分相手に、わざわざ姿を見せて宣戦布告をしやがった

自分が勝つと、疑ってもいない目


ムカつくぜ


絶対に殺す

そして、奴を捕まえて人質にして逃げおおせてやる


トラビスは、捕まえさえすればCランクごとき敵ではないと思っている


怒りと執念で体を動かし、闘氣(オーラ)を維持している




俺は、地面に腹ばいになっている


「…」


木々の隙間からトラビスを観察



少しだけ体が震えてきている

脱水症状の兆候だ


たまに、何もない所でサーベルを振るっている

おそらく幻覚症状も出てきている


何度か、ライフル弾が体にめり込んだ

回復魔法で回復はされたが、いい兆候だ


闘氣(オーラ)とは、精力(じんりょく)と氣力の合力である闘力を使って発動する

精神の力と肉体の力を使った能力だ


そして、精神の力とは集中力に依存する

三日間も集中力を保てる人間などいない

つまり、闘氣(オーラ)の維持はそろそろ限界だということだ



ドォンッ!


「ぐあぁぁっ!!」



トラビスの腕に弾丸がめり込み、腕が変な方向に曲がる

よし、骨がいったな


もがきながら、トラビスは回復魔法を使う

骨折を治すならそれなりに魔力を使うはずだ


消耗もより激しくなる



ドォンッ!


「ぎゃあぁっ!」



倒れた足に狙撃がヒット

足にも弾丸がめり込んだ


頭や胸などの重要器官を優先して守っていたようで、手足の闘氣(オーラ)が薄くなっていた

出血が増えれば、更に消耗も増す



狙撃を繰り返す


闘氣(オーラ)が薄くなり、次々と弾丸が体に突き刺さっている

回復魔法も、魔力切れでうまく使えなくなっている



体に何発もの弾丸を打ち込むと、ついにトラビスの闘氣(オーラ)が完全に消えた

腹を撃ち抜いてやっても、もがくだけとなった


俺は、スナイパーライフルを倉デバイスにしまってトラビスに近づく


もう終わりか?

散々、俺達変異体を切り刻み、拷問し、死地に送り込んでいたのに情けないな



「貴様…、逃げ回…卑怯だぞ…!」

トラビスが体中から血を流し、怒りの表情で俺を睨む


「ドラゴンタイプは斥候の適性が高い。自分の戦い方をして何が悪い」


「だが、油断しすぎたな! 貴様など…、一撃が放てれば…!」


トラビスは、闘氣(オーラ)を一瞬だけ発し、身体能力を強化

凄まじい速さで突っ込みながらサーベルを振るう


ほぉ…、まだ動けるのか



俺は弱かった

心も、体も、そして技術面もだ


だが、俺は出会いに恵まれた


デモトス先生から、生き残る方法を教わった

ヘルマンから、武の呼吸を教わった

実戦での強さ、あの人達の技は俺の強さだ


尊敬、憧れ、そんな感情が糧となり、俺に武術の呼吸が息ずいた



トラビスの斬撃

闘氣(オーラ)での強さと速さ


だが、予想が出来ていたらどうだ?

初動を消していない

つまり、隙を突けていない



スッ… フワッ…


「なっ…!?」



トラビスの、サーベルを振るう手を取って流す

自分の勢いでバランスを崩し、前に吹き飛ぶ


合氣の投げ

相手と呼吸を合わせて力を利用する


プロボクサーと素人の喧嘩自慢が殴り合うとき、稀に素人のパンチが当たる時がある

それは、ボクサーの動きにはない、素人ならではの()()()()()()()が混じるからだ


俺はトラビスの斬撃の速さを知っている

動きも予想できる


だから、トラビスの想定外から技をかけることができる



「ぐっ…、貴様…」

トラビスがフラフラしながら立ち上がる


もしかして、最後の力だったのか?



俺は、携帯用小型杖を振って、拘束と軟化の魔法弾を当てる

トラビスは、避けることもできなかった



「…まさか、その程度なのか?」


「はぁはぁ… な、なんだと…?」

トラビスが俺を見る


「あんたは、俺達被検体を何人も殺してきた。それは強いからだろう?」


「あ、当たり前だ! 今から貴様をズタズタに…!」

トラビスが、もう一度サーベルを構えて闘氣(オーラ)を発動する


「…もし、あんたが俺に負けることがあれば、簡単に死ねると思うなよ?」


「何!?」


「俺達が受けた全てのことをあんたに味合わせる。死ぬことも許さない、何度でも回復して使い潰してやる。…ヘルマンにしたようにな」


俺は、ナイフを構えた




拠点で、騎士団の騎士たちが驚いている


「まさか、本当にCランクがBランクを倒すとは…」

「どうやって、Bランクの攻撃を避けているんだ?」

「一度も見つからずに隠れ続けたのも凄いぞ」



…だが


驚いている騎士たちを見て、奥に座っている男がめんどくさそうに口を開いた


「三日間もかけて、あんな流れのBランクを仕留めたって自慢にはならんだろう。全く、セフィリア様は何を考えておられるのか…」


「ですが、ブルトニア様。闘氣(オーラ)を使わずになど、普通は…」


「バカか。変異体など、使い捨ての駒だろうが。何日もかけて戦わせることしか能が無いんだぞ」

そう言って、立派な服を来た男は出て行った




俺は、倒れているトラビスを見下ろす


「…おい、まさか終わりなのか?」


「ぐはっ…バカな…。なぜ、俺の剣が…」


「あんた、実戦経験が無いだろ? そんなクソみたいな腕で、被検体の俺に勝てるわけがない」


「な、何だと!?」


「あんたは、闘氣(オーラ)を使って格下の俺達をいたぶっていただけだ。俺達は、武器の熟練者と殺し合い、ダンジョン内でモンスターと殺し合いながら生き残って来たんだ」


トラビスの動きは、サーベルの突き以外は大したことない

熟練度が足りなすぎる


「ぐ…、被検体ごときが馬鹿にするな!」


トラビスが起き上がって斬りかかって来る

だが、闘氣(オーラ)が発動していない


闘氣(オーラ)は、防御力や攻撃力、そして体の性能をも上げるため身体能力も上がる

つまり、闘氣(オーラ)が発動しない場合はサーベルの動きも遅くなってしまう


だが、闘氣(オーラ)の有無を無しにしても、ステージ2では見えなかったトラビスの動きが見える


…あの殺し合いを生き残った俺を舐めるな



すれ違いざまに、右手のナイフで手首を切断

二本指を右目に突き入れて眼球を抉り出す



グチャッ…


「…! ……!」



更に股間に膝を直撃、痛みで悶絶させる



トラビスには、本当に世話になった


ヘルマンは、適切な治療を受けさせられれば死ななくて済んだ

タルヤは、治療を受けさせてもらえずに冷凍保存

ガマルは直接殺された


縛り上げて、せめて痛みを経験させるべきだろうか?

そこに打算はあるのか…



俺が真剣に悩み始めた時、慌てた様子でセフィ姉とフィーナが空から降りて来た





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― 新着の感想 ―
[一言] ここここ、股間……‼︎ヤベェよ。そら失神するわw トラビス教官やれたけどどっかの人が言いよったようにこんなに長い持久戦は戦場とかでは無理よなぁどう評価が下されるかな…?
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