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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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四章 ~6話 立場

用語説明w

セフィリア:龍神皇国騎士団の団長心得。B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性

フィーナ:ラーズの二歳下の恋人。龍神皇国騎士団にBランク騎士として就職している。魔法に特化した大魔導師

ドース:クレハナのウルラ領の領主で、第二位の王位継承権を持つ。フィーナの実父

ヴァルキュリア:異世界イグドラシルのスカウト部隊。ラーズはヴァルキュリアの一人が(そら)の恵みに持ち込んだらしい


「フィーナ?」


「…」


「フィーナってば」


「…」


「何でずっと顔そらしてるんだよ」


「…どんな顔していいか分かんないの」


昨日、あれだけお互いにガン泣きしたのに?

グッチャグチャの泣き顔見せ合ったのに?



フィーナがずっと後ろを向いて座っている


後ろを見ながら、俺が大崩壊に巻き込まれて拉致された後のことを教えてくれた


俺が所属していた国、シグノイア

そして、隣国のハカル


この二国が、龍神皇国の貴族と神らしきものの教団によって引き起こされた大崩壊により国の機能を喪失

龍神皇国が支援に乗り出し、結果的に同国に組み込まれることとなった


現在は自治権を与えられ、シグノイア独立行政自治区、ハカル独立行政自治区となり、両国の国民の国籍は龍神皇国となった


結果的に、龍神皇国が二国を取り込んだこととなり、これを成し遂げたセフィリアが騎士団団長心得に抜擢

セフィリアのドルグネル家は、今や貴族の中でもナンバーツーとなっている


「そっか、セフィ姉が…」


「うん。偉くなっても、ずっとラーズを探してくれていたんだよ」

ようやく、フィーナがこっちを向いた


俺は、フィーナの手を取る


「え?」

フィーナが俺を見る


「ちょっと、こっちに来てくれない?」


「え? え?」


俺は、病室のベッドに座りながら、フィーナを抱き寄せる


「…」

「…」


会いたかった

帰って来た

安心する


「ラーズ…?」

フィーナがモゾモゾと動く


「安心するんだ…。こうすると、やっと帰って来たって実感が沸くんだ」


「うん…。私も…やっと帰って来たって…」

フィーナがまた涙ぐむ



昨日フィーナ達が帰った後、ベッドに横になった


目が覚めると、あの施設の個室


また、選別の放送が入る


訓練に呼ばれる


教官に切り刻まれ、拷問を受ける


ダンジョンに放り込まれ、モンスターとのサバイバル



フィーナは?


セフィ姉は?


全部夢だったのか?



「…っ!?」


俺は、絶望に恐れをなして飛び上がった



…夢だった


べっとりとした汗が滴っている


怖かった



…全く同じ夢を、一晩で三度も見た



俺は本当に助かったのか


解放されたのか


この恐怖はいつになったら消えるのか



「ラーズ、震えてる…?」


「え、うん…。フィーナを抱き締めてないと、全部夢みたいな気がして…。また、あの施設で目が覚めるような気がするんだ」


「ラーズ…」


フィーナが、体を預けてくる

思う存分、抱き締めていいということだろうか


俺は、遠慮なくフィーナの体温を感じする



カッカッカ…


「…っ!?」



廊下から靴の音が聞こえてきて、俺は慌ててフィーナを離す



ガチャッ…



セフィ姉が入って来た


「ラーズ、体調はどう?」


「うん、大丈夫。いつでも退院できる気がするよ」


「…それは無理よ。あなたの体は、呪いを除去したばかりだなんだから」


「え?」



呪い


魔属性による霊体への侵食現象、またはその原因だ

霊体の病気だったり、霊体の破壊現象だったり様々な症状がある



「ラーズの体には、許可なく指定範囲を出た場合に発動する呪いがかけられていた。心霊手術によって解呪はしたけれど、経過観察は必要よ」


「そんな呪いが…」


脱走対策をされていたのか

すぐに保護してもらえて助かった


「変異体の検査も必要だし、しばらくは入院ね。それと、ラーズの立場なんだけど…」

セフィ姉が、言いにくそうに話を続ける



俺の立場


(そら)の恵みや、その他の違法施設の被験体達に施された強制進化は不完全なものがほとんどだ

龍神皇国の技術レベルには全く届いていない


そんな中で、俺は完成変異体の可能性が高いらしい

龍神皇国の医師が精密検査を行って認定するとのこと


完成変異体は貴重な戦力となれる存在

更に大崩壊時の貢献者という付加価値も付いており、俺の所属を巡って貴族間の争奪戦が始まる可能性もある



「何で俺なんかの所属をもめるの? ただの一般兵だよ」


「あなたを確保したい貴族はたくさんいるのよ」



・大崩壊の時にムタオロチ家を断罪する証拠を集めたシグノイア防衛軍第1991小隊の生き残り

・完成変異体としてトップの実力だと、(そら)の恵みが認定していること

闘氣(オーラ)の経験者


…など、理由はいくつかあるが、特に闘氣(オーラ)の経験があるのが大きいらしい


変異体の真価は、Bランクになってから

闘氣(オーラ)を使えるようになれば、普通のBランクよりも高い戦闘力を得る可能性がある



「ラーズの処遇はどうなるの?」

フィーナが聞く


「私が預かることで話を進められそうよ。すでにいくつもの変異体施設を制圧してきているんだもの、文句は言わせないわ」



俺を探す仮定で、複数の違法変異体研究施設を制圧

多数の変異体因子の覚醒者を確保し、変異体関係の実験データを得た


今回制圧した(そら)の恵みの施設内の資料、確保した研究員、被験体も調査中

守衛者、作業員、Bランク戦闘員も全て拘束済みで、変異体に関する技術力の把握に努めている


そのおかげで、龍神皇国騎士団の変異体研究は一気に進んだ

それは全てセフィリアの手柄だ


更に今後を見据えて皇帝陛下と首相に対し、クレハナやカエサリル家など()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


現状、今回の変異体関係でセフィリアに文句を言える者は、皇帝直径の龍神王の家系と貴族ランク筆頭のカエサリル家くらいのものだろう



「セフィ姉、ラーズを守るためにめちゃめちゃお偉いさんを説得してくれたんだよ」

フィーナが言う


クレハナや貴族が、何で俺と関係あるんだ?

…なんか怖いんだけど


「…セフィ姉が世話してくれるなら嬉しい。もう、俺の帰る場所は無いから」


1991小隊は壊滅した

もう、シグノイアに戻る理由もない


「仕事の話だけじゃないわ。プライベートでも、私を通して以外は誰とも会わないで欲しいの。あなたの両親や友人ともよ」


「そ、そうなんだ…」


完成変異体の確保のために、安易に汚い手段を使う者がいないとも限らない

具体的には親族や友人の誘拐や脅迫などだ


「おじさまとおばさまには、ラーズが無事だったことは伝えてあるから安心しなさい」


「う、うん、分かった」


俺なんかの扱いでそんなに揉めるとは思わなかったな…

ま、セフィ姉に任せればいいか



「あ、ラーズ。私も話があるの」

今度はフィーナが言う


「何?」


「クレハナのお父さんのことなんだけど…」


「ドースさん?」



俺は、大崩壊後にハカル国内でドースさんと会った


その時、俺の体は変異体因子が暴走して左腕に変異が出ていた

ドースさんは、そんな俺の変異を見て、変異体の研究施設の名刺をくれたのだ



「…ラーズの運び込まれた、(そら)の恵みっていう施設、酷いところだったって…」


「あ、ああ…、まあ、そうだな」


殺し合いの強制

人体実験

拷問

殺しの強制

ダンジョンアタックの強制


よく…、よく脱出できたと思う


「言い訳にしかならないけど…。クレハナのお父さんは、その施設がそんな場所だって知らなかったんだって。だから、それを謝りたいって」


「ドースさんは直接謝罪したいって言ってたけど、ラーズの立場があるから待ってもらったわ」

セフィ姉が補足した


「今回、ラーズが見つかったことで話を聞いたの」



ドースさんの話


ドースさんは、ウルラ家の当主で王位継承権を持つクレハナの内戦の当事者だ

過去、クレハナでの内戦を有利に戦うため、龍神皇国の貴族と取引をして兵器の輸入を行っていた


…この取引には条件があった

それは、クレハナで神らしきものの教団が活動することを認めること


ドースさんは、特に問題は無いと判断してこの条件を飲んだ


その後、ウルラ領内に変異体の研究施設である(そら)の恵みが作られた

この時に得た名刺をラーズに渡したのだ



「確かに、ハカルでドースさんと会った時に名刺をもらったな」


「うん、クレハナのお父さんもそう言ってた」



…その後、シグノイアとハカルで大崩壊が起こり、画策した取引相手、貴族であったムタオロチ家が失脚

同時に神らしきものの教団本部とも手を切った


しかし、大崩壊後もドースさんと(そら)の恵みとの付き合いは続いていた

自分の領内に施設を作っていたのだから、それは当たり前なのかもしれない


その縁で、俺が運び込まれたことを知ったということだ


ただ、(そら)の恵みが神らしきものの教団出資であることや、非人道的な実験を繰り返していたという実態も知らなかったらしい



「そんな施設だと知ってたら紹介なんてしなかったって、申し訳ないって…」

フィーナが言う


「いや、ドースさんせいじゃ…。そういや、俺をあそこに連れて行ったのはヴァルキュリアだって聞いたぞ」



完全に忘れてた

俺をあの地獄に連れ込んだのはヴァルキュリアだ


異世界イグドラシルの騎士、ヴァルキュリア


俺は変異体因子が暴走して意識を失った

その時にヴァルキュリアが俺を連れ込んだと、施設の研究者が言っていた



「…ヴァルキュリアの件は、私が確認するわ」

黙ってフィーナの話を聞いていたセフィ姉が口を開く


「え?」


「勝手にラーズを持ち込んだ理由と、あなたの所有権について聞かなきゃいけないから」

セフィ姉が静かに言う


俺の所有権は、あの施設に持ち込んだヴァルキュリアにあるらしい


…金髪の龍神王が、異世界騎士のヴァルキュリアに説明を求める

まさか、対立する可能性も?


いったいどうなるんだろう


もちろん、当事者の俺としても説明は求めたい




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― 新着の感想 ―
[一言] ふっ...呪いか。 リィ先生、やっちまってくだせぇ!
[一言] 完成変異体でトップクラスの実力を持つラーズはロケランやC 4持ってたりするようなものなのかな?んでBランクが高性能戦車とかミサイル以上みたいな
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