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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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四章 ~4話 施設の終わりは突然に

用語説明w

フィーナ:ラーズの二歳下の恋人。龍神皇国騎士団にBランク騎士として就職している。魔法に特化した大魔導師

ミィ:龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象


トラビス教官:(そら)の恵みの教官でBランク戦闘員。被験体を商品と割り切っている


大気圏外の衛星軌道


違法変異体研究施設 (そら)の恵み

通称「上」と呼ばれる宇宙空間に浮かぶ宇宙ステーションを龍神皇国騎士団が包囲していた


宇宙船と兵士たちが、惑星ウルを周回しながら直接包囲している

速度が同じため、相対的に制止している状態だ



クレハナにある、地上施設とダンジョンをを持つ通称「下」と呼ばれる地上施設は制圧済み


直接「上」を包囲する部隊と、「下」から空間属性魔法陣によるワープゲートで侵入する部隊とで制圧する布陣だ



「こちら本部。(そら)の恵みの組織自体は降伏した。ワープゲートと入口のコントロールを奪取した。直ちに宇宙ステーション内の制圧を開始しろ」


「上部隊、了解」


黒髪の大魔導師フィーナが答える


フィーナは現在、宇宙空間に浮いている

だが、他の一般兵と違って宇宙服を着ていない



風属性魔法


気体に対して作用する属性であり、魔力を消費して気体を操作する

魔力から気体を作り出すことは難しいという性質を持つ属性だ


土属性は魔力で固体を生成し、逆に自然界の固体を操作することは難しいという性質だ



「上」を包囲するBランクの騎士達は、風属性魔法を使って地上の大気を身体の周囲に保持する魔法を使用しているのだ



「メインゲートを解放する。なお、宇宙ステーション内の構成員とは連絡が取れていない。抵抗、証拠隠滅の可能性もあることから注意されたし」


「了解。ワープゲート魔法陣の奪取を優先目標とする」


フィーナがメインゲートに進むとゲートが開き、その後ろに兵士数人が続いた

中に入るとメインゲートが閉まり、宇宙ステーション内の空気が流れ込む


気圧を同じになると、宇宙ステーションに入るためのゲートが開く

フィーナは風属性魔法を解除して先へ進んだ



宇宙ステーション内の地図は(そら)の恵み本社から入手済みだ

一般兵は作戦通りにそれぞれの場所に向かった


「抵抗するな! 投降すれば、保護して地上へと送り届ける!」


宇宙ステーション内の被験体を次々に保護


ステージ3の区画


ステージ2の区画


ステージ1の区画


病棟区画…



そして、メインコントロールに入り宇宙ステーションの全ての権限を取得


「下」へと繋がる空間属性魔法で作るワープゲートも確保

被験体、逮捕した研究者や守衛達全員を連れ出す


「下」からの連絡が入ってはいたようで抵抗らしい抵抗は無く、全員が素直に投稿した



フィーナはステージ3の区画を進む

クレジットクイーンのミィから、「下」へのワープゲート、そして受け入れ準備が完了との連絡を受けている



「…っ!?」


フィーナが足を止めた



訓練場の先にあった部屋は、パーティションで区切られた部屋だ

そこには、椅子に拘束された被験体達が置き去りにされていた


ある者は指を切られ、ある者は皮膚を焼かれ、ある者は肉を削られる

拷問を受けていたような傷だ



「酷い…」

フィーナは呟く


だが、命の別状はなさそうだ

フィーナはさっと怪我の状況を確認して、後続の一般兵に引き継ぐ


フィーナの任務は、宇宙ステーション内にいると思われるBランク戦闘員の確保だ

一般兵や被験体に被害を出さないためにも、同じくBランクの騎士であるフィーナが行う必要がある


「…フィーナ、現在地は?」


「ミィ姉? ステージ3の区画を進行中だよ」


「オッケー、向かうね」


「ワープゲートは?」


「開通済み。転送可能なタイミングで被験体と物資の搬送を開始するわ」


空間属性魔法のワープゲートは、任意の距離を短縮する

つまり、「上」である宇宙ステーションと「下」である地上施設の距離が特定距離にある短時間しか開通できない


だからこそ、「上」から「下」に行く場合は自由落下を使っていたのだ



ミィからの無線に答えながら、フィーナは更に先へ進んでいく

しかし、すぐに足を止めた


ポッドを射出するエントランスから、闘氣(オーラ)の気配を感じたからだ


「止まれ! 何者だ!?」


サーベルを突きつけながら男が立っている


フィーナは知る由もないが、この男の名はトラビス

ここの教官であり、実質の首魁であるBランク戦闘員だ


更に、他にもBランクであろう教官が二人いる


「三人…」

フィーナは、羽衣の先端に付いた魔玉に手を添える


それを見て、教官達が闘氣(オーラ)を強めた



トラビスは歯噛みする


一週間前に大失態を演じた


この施設で初めて、Bランクの実力が必要なダンジョンを制覇した被験体が現れた

(そら)の恵みの育成方針が正しかったのだと証明して見せたのだ


トラビスは有頂天だった

しかも、ギガント、エスパー、ドラゴンの三タイプの完成形が同時に生まれたのだ


早速、(そら)の恵み本部に報告し、買い手も付いた

信じられないくらいの高値が付き、この施設の拡張も決まった


トラビスの地位は安泰と思われた

絶頂だった


それなのに…


目をかけていたギガントから、ドラゴンが逃走するという情報を得た

逃がすわけにはいかない

この施設の存在を漏らすわけにはいかないからだ


ドラゴンが乗るポッドをロックオンしておき、本当に飛び出したら撃ち殺すつもりで、本社の許可も取った


…しかし、ドラゴンのポッドから飛び出したのはギガントとエスパーだった

ロックオンしていたため、二人とも撃墜してしまった


そして、ドラゴンはギガントのポッドから脱出、大気圏に突入してしまった

脱出させないために、ポッドに乗った被験体は強制的に寝かせていたはずなのに、なぜ…?


貴重な変異体の完成形を全て失った

トラビスの失態だと本社からは糾弾され、立場を失った


そして今日、突然本社や「下」からの連絡が途絶えて宇宙ステーションの操作権限を奪われた

そして降伏勧告の後、謎の戦力が乗り込んできたのだ


完全に訓練された部隊だった

あっという間に全区画が制圧され、残っているのはBランクである教官三人だけだ


いったいどうなっているんだ!?



だが…、トラビスは希望を捨ててはいない


目の前のBランクと思われる女を殺せば、後はポッドで脱出できる

そうすれば逃げられるはずだ



トラビスは、サーベルを構える

こんな女一人に負けるわけがない



「…」


トラビスは、教官達と同時に飛びかかることにする



二人の教官に目配せした瞬間…



フィーナが、爆発のエネルギーを複数同時に展開して爆縮、中心の超高温高圧空間にプラズマを形成



シュンッ…!


「…なっ!?」



ビームとして発射、薙ぎ払った


熱線と化したプラズマに接触した教官の闘氣(オーラ)が爆発


教官が吹き飛び、同時に後ろに並んでいたポッドも爆発する



「スーラ!」


「キュイッ!」



エントランスに入ってきた女性が、肩に乗せていたスライムに声をかける

スライムは一気に膨張して大波となり、火災となったポッド、吹き飛んだ教官を飲み込んで消火した


「ミィ姉、スーラ!?」


「フィーナ、宇宙空間での火災は危険よ? この宇宙ステーションは騎士団で接収するんだから、壊しちゃダメだって」


「うん、ごめん。またラーズが見つからなくて、ついイライラ…」


「あ、地上で見つかったって。無事みたいよ!」


「はぁっ!?」



こうして、宇宙での制圧作戦は終わった

トラビスを含め全員を拘束、地上へと搬送した




・・・・・・




龍神皇国 ファブル地区


俺が入院している病室に、またセフィ姉が来てくれている


貴族だとか、騎士団の団長心得とか、凄く偉い人なのだがそんなことは関係ない


この美人が俺に会いに来てくれる

俺と会話してくれる

これ以上の価値があるだろうか?


綺麗だな…

可愛いな…


「宇宙ステーション、地上施設、本社。全ての制圧が終わったみたいね」

セフィ姉が言う


「そうか、良かった…」


あの施設が壊滅…

嬉しいが、実感が湧かないな


「セフィ姉、お願いがあるんだ」


「何かしら?」


セフィ姉が、リンゴを剥いてくれる

剣の達人だけあって、恐ろしい速度で切り揃えられる



「あの施設には、俺の仲間だったタルヤっていう被験体が冷凍保存されているんだ。最優先で保護をして欲しい」


「タルヤ…、女性?」


「うん。エスパータイプの被験体でノーマンだ」


「すぐにフィーナに伝えるわ。どういう関係なの?」


「仲間だよ。地獄みたいな、あの施設を一緒に生き抜いた。でも、途中でモンスターにやられて…」


タルヤ

一緒に戦っていくなかで、彼女は強くなった

その成長度合いは、俺の数倍にもなるだろう


恋愛とは違う

尊敬に値する女性だ


「そうだったの…。施設は全て制圧しているから、調査できるわ。安心して待っていなさい」


「うん…」


「この二年間、フィーナはずっとラーズを探すために頑張ってくれていたの。戻ったら、ちゃんとお礼を言って優しくしてあげてね」


「…そうだね」



胸が一杯になる


あの施設で散々手を汚してきた俺が…


俺なんかが…


ここまでしてもらえていいのだろうか





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