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ですペア ~遺伝子工学型強化兵の苦悩~ 大魔導師、宇宙兵器、大妖怪、異世界騎士、神竜…即死級対象が多すぎる!  作者: ロロア
四章 宙(そら)は暗かった、惑星(ほし)は青かった、そして神(っぽいの)はいた
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閑話10 変異体の処遇

用語説明w

龍神皇国:惑星ウルにある大国。二つの自治区が「大崩壊」に見舞われ、現在復興中

クレハナ:クレハナ:龍神皇国の北に位置する小国。フィーナの故郷で、後継者争いの内戦が激化している


セフィリア:龍神皇国騎士団の団長心得。B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性

ピンク:カイザードラゴンの血を引く龍神皇国の貴族で、騎士見習い。カイザードラゴンのブレスを纏った特技スキルの威力は凄まじい

フィーナ:ラーズの二歳下の恋人。龍神皇国騎士団にBランク騎士として就職している。魔法に特化した大魔導師


龍神皇国 中央区

龍宮殿


竜宮殿とは、代々の皇帝が住む政治の中心の一つ



セフィリアは皇帝と首相に謁見し、変異体の違法研究施設の制圧経過についての報告を行っている


「調査の結果、全ての施設において非人道的な人体実験が行われていたことが判明しています」


「そうか、よくやった」

皇帝が言う



変異体は、強力なBランク以上の戦闘員を作るための素体となる

霊体を神格化する仙人と同じ、人体強化術の最高峰の一つだ


だが、完成率が極端に低く、龍神皇国の技術をもってしても安定した変異体化は実現していない



「…人道的な見地からの救出は結構だがね。一連の研究施設の破壊には莫大な資金がかかっているのは分かっているね?」

首相がセフィリアに言葉をかける


首相とは、選挙で選ばれた行政権のトップ

皇帝と共に国を動かす重鎮だ


「もちろんです、首相。今回の活動は、龍神皇国とって黒字と言える成果ですわ」


「ほう…、では聞かせてくれるかね」


「はい」


セフィリアは、龍神皇国のツートップに対して堂々と説明をする


皇帝の直系である龍神王の血を引くドルグネル家

カイザードラゴンの血を引くカエサリル家に次ぐ、貴族ランク二位の家柄だ


更に、あの大崩壊の黒幕の検挙、シグノイアとハカルの皇国への組み込み、騎士団長心得という役職


セフィリア以上の発言力を持つ者は、片手の指でも余るほどだ



「まずは、各施設の人体実験の研究資料。これだけで、我が国の変異体研究の十年分の価値があります」


「…人体実験の結果か」


「はい。そして、生きた被験体達です」


「彼らの処遇はどうするつもりなのかね?」


「まずは治療を行い、その後は監視のできる施設で生活をしてもらいます。これは、治療とデータ収集の二つが目的です」


「百人近い人数をか?」


「…おそらく、半数は一年以内に亡くなると予想されています。不完全で無理のある処置を施されており、非常に不安定な状況ですから」


「そうか…」



保護された被験体は、当然ながら変異体だ

各国に狙われ、拉致の危険性もあるため、一定期間は龍神皇国内の保護施設で生活をしてもらう


それに、変異体達の今後の変化は、龍神皇国とっても価値のあるデータとなる

更に、完成変異体となれれば騎士団での採用も検討する


貴重な変異体の複数確保

セフィリアの功績は大きい



「各貴族が、変異体を確保したいと手を挙げているが?」

ずっと黙って聞いていた皇帝が口を開く


「時期尚早です。正規に完成変異体と呼べる人間は数人しかおりません。ほとんどの者は経過観察が必要です」


「…そうか、分かった。伝えよう」



闘氣(オーラ)を使えない戦闘員は、最高でもCランクにしかなれない

変異体と言えども、闘氣(オーラ)を使うBランク戦闘員が相手では勝負にならないのだ


それにも関わらず、なぜ各貴族が変異体を求めるのか?

それは、強力な一般兵が手に入るからである


闘氣(オーラ)を使うBランク戦闘員は、強力な兵器と見なされる

自立する大量破壊兵器と同じ扱いなのだ


Bランク戦闘員が国境を越えるということは、国境の向こうにミサイルを撃ち込むこと、大魔法を発動させること、…これらと同義となる


だが、Cランク以下の一般兵の場合はそうではない

仮に敵国に侵入したとしても、ただ迷い込んだだけ、間違って入ってしまったと言い訳ができる

諜報活動を疑われることは確実だが、少なくとも他国への攻撃とは見なされない


有能なCランクは、使い所が多いという利点があるのだ

特にタフな変異体は諜報活動に向いている


そして、もちろん闘氣(オーラ)に覚醒すれば強力なBランクが手に入る可能性もある



「Bランク戦闘員となれる被験体はいないのかね?」

今度は首相が口を開く


「まだ確認できておりません」

セフィリアが答える


「では、彼らを肉として騎士たちに食べさせるしか…」


「データを精査した結果、完成変異体の肉体でなければ変異の確率は誤差の範囲でしか上がらないことが分かりました。ほとんどの者は完成変異体とは言い難く、不完全です」


「では、完成変異体と認められた者を肉にするのかね?」


「いえ、完成変異体と言える者の数が少なく、各貴族が争奪戦を始めかねません。しばらくは皇帝陛下のお力で禁止して頂きたく…」



変異体のBランクは通常のBランクよりも強力だ


・変異体が闘氣(オーラ)を習得

闘氣(オーラ)を使うBランク戦闘員が変異体となる

このどちらかで、強力なBランク戦闘員が手に入る


各貴族の目の色が変わることは間違いないだろう



「…うむ、それは構わない。だが、そなたが探していたという男はどうするのだ? 身内とはいえ、お主だけが完成変異体を手に入れたとなれば、文句も出よう」

皇帝がセフィリアを見る


「…ラーズは、変異体としてではなく、Cランクの戦闘員として私が雇用するつもりです。そこをご理解頂ければと」


「だが、実質は変異体を手に入れることと同じだろう?」

首相も言う


「ラーズの変異体因子については、カエサリル様とお話をしています。いずれ、我が皇国の力となるでしょう」


「ほう、カエサリル家の。…騎士団に入ったのは、ピンクといったかな?」


「はい。ピンクはまだ見習い騎士ですが、すでに最前線での戦闘を任されております」


「それは有望だな。ピンクが変異体として覚醒すれば、皇国はますます強くなる」


首相は、しょせん一般兵であるラーズの体を素材としてピンクに食べさせるつもりのようだ


完成変異体の肉体を錬金術により精製し、Bランクに取り込むことで変異体因子が発現する

これは、別に変異体が死ななければ出来ないわけではない


肉体や霊体の著しい欠損により、変異体本人に運動障害が残ったり、一生に一度しか素材にできないという制限はあるが、本人の命を助けることも可能だ


勿論、死んだ状態でも素材化は可能だが、生きた状態での素材の方が発現率は高い



「ふむ…、皇帝陛下、どうされますかな?」

首相が皇帝に伺いを立てる


「…此度の変異体についての全権をセフィリアに任せよう」


「ありがとうございます。皇国の力となることをお約束いたします」

セフィリアは膝まずいて頭を垂れた


「…して、セフィリアよ。そのラーズとやらに何をさせようと言うのだ?」


「まずは、大仲介プロジェクトを任せたいと考えております」


「なっ、大仲介プロジェクトだと!? 人選を決めたと言うのか!」

首相が慌てる


「はい」

セフィリアが力強く頷く


もう、何を言われても覆さない

青く美しい目がそう言っていた


「まずは…、とは、他にも何かあるのか?」

皇帝続きを促す


「はい。数年以内にクレハナで動きがあるはずです。これに従事を、と」


「どういうことだ? たかだかCランクが参戦したところで、何が出来るとも思えぬが」


「陛下。ラーズはあの大崩壊の生き残り、ムタオロチ家粛清への影の功労者です。そして変異体となったことで、更に実力を高めました。Cランクとはいえ大いに活躍することでしょう」


「ふーむ、そなたがそこまで目をかけておるとはな」


「はい。それに、ラーズはフィーナ姫と恋仲にございます。絆の力にてクレハナに風穴を開けたいと考えております」


「ほぅ、セフィリア。お主はリアリストだと思っていたのだが、ロマンチストな所もあったのだな」


「嫌ですわ、陛下。昔から、ロマンスは女を引き立てるものですのに」


セフィリアは、そう言って微笑んだ




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