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三章 ~35話 脱出

用語説明w

この施設:ラーズが収容された謎の変異体研究施設、通称「上」とダンジョンアタック用の地下施設、通称「下」がある。変異体のお肉も出荷しているらしい


トラビス教官:施設の教官でBランク戦闘員。被験体を商品と割り切っている


俺の部屋に入って来たババァ


「…何の用だ?」

俺は、年配の女を抑える力を少しだけ弱める


ナノマシンシステムの変形を見られた

くそっ…どうするか


「…あんた、その背中の膜ってナノマシンシステムだろう? 停止してなかったのかい」

年配の女が言う


「ダンジョンアタックで成功していたから、最近は停止措置を取られていない。それより何の用だ?」

口からでまかせを言ってごまかす


「まさか、目を付けていたあんたが卒業までするとは思わなくてね。最後の様子を見に来たのさ」


「様子?」


こっちはお前の顔なんか見たくない

人が動けないのをいいことに気持ち悪い事ばっかりしやがって!



「それと、最後に体を見せてほしくてね。あんたの体は、本当にあたし好み…」


ドボッ!



こいつの気持ち悪さに、体が勝手に動いた

つい、腹に当て身を打ち込んでしまう


キモ過ぎる

性犯罪者は全員滅ぶべきだと本気で思う



女は簡単に意識を失った

こいつ一人でよかった…、油断大敵だ


俺は、ナノマシンシステムの膜の解除を試みる


早く!

早くしろ!


背中と触手の間に形成された膜が引っ込んでいく


隠し続けていたナノマシンシステム

理由は分からないが、ある程度動かせる!


…これは、あれだ

おそらく、ダンジョン深層にいたコカトリスの石化ブレスがきっかけだ


俺の腕の石化はいつの間にか解除されていた

ナノマシン群が石化を吸収し、ナノマシン群の素材になって活性化したんだ

同じような経験を大崩壊の戦いで経験した


有り合わせとはいえ、この膜があれば大気圏突入から生き残れるかもしれない



…さて、ナノマシンシステムを見られちまったこいつをどうするか


殺すか?

いや、人材は有効に使うべきだ


俺は、廊下に出て五感をフル稼働

女を担いで運ぶ


監視カメラの場所は把握しているつもりだ

…だが、見落としがあったら終わるな



着いた場所はエントランス

待ち合わせていた、ハンクとアーリヤが来ていた


「…ラーズ?」

アーリヤは、俺が担いでいる女を見ている


「ちょっといろいろあった。こいつを身代わりに使う」


俺は紐で女を縛り、猿轡をしてアーリヤのポッドである11番に突っ込む


出発までは、あと数時間だ

何回か頸動脈を締めて、気絶させ続けよう



「…ラーズ、人が」

アーリヤの言葉で、俺は素早くポッドから離れる


「お前達か、何をしているんだ?」


「…っ!?」


入って来たのはトラビス教官だった


まずい、ポッドを調べられたら終わる!

何でここに!?



「最後の別れをしていました。しばらく会えなくなるので」

ハンクがトラビス教官の所に行く


「そうか、やはり寂しいか」

トラビス教官が頷いた


「はい。アーリヤと離れるのもそうですし、ラーズもダンジョン制覇を成し遂げた仲間ですから」

無難な会話でお茶を濁すハンク


やるじゃん、ハンク!


「だが、あと数時間後には出発だぞ? 寝ておいた方がいいのではないか」

トラビス教官が言う


「もし問題が無ければ、残りの数時間をここで三人で過ごさせてもらえませんか?」

ハンクが頭を下げる


「…まぁ、お前達の成し遂げたことを考えれば、それくらいは許可しよう。だが、その前にちょっと来い」


「はい」

トラビス教官が、ハンクを連れて廊下に出て行った



「…アーリヤ、今のうちに空調のレジスターに布を詰めておこう。意識を失うわけにはいかないからな」


「…うん」



俺達はハンクの10番のポッドと俺の20番のポッドの中に入り、レジスターに布を詰めた

アーリヤの11番のポッドにはあの女を突っ込んでいるので、詰め物はしなくていい


ハンクとトラビス教官は、しばらくしたら戻って来た



トラビス教官は、俺の顔を見る

ハンクはアーリヤを見て、そして()()()()()()()()()()()()


「…?」


「…よし、話は終わった。後は、出発の時にまた会おう。ここで三人でいることは許可する」

トラビス教官が言う


「ありがとうございます」

ハンクがお礼を言う


トラビス教官は、片手をあげてエントランスから出て行った


「…何の話をしていたの?」

アーリヤがハンクに言う


「今までのお礼を言っただけだ。特に疑われてはいなかった」

ハンクが答える


ふぅ、焦った

バレなくてよかったぜ


「それで、どうする? 俺は、あの身代わりを定期的に失神させなきゃいけないから残るけど、お前達は二人で話して来たらどうだ? もう会えない可能性もあるんだから」

俺が二人に言う


大気圏突入、失敗の確率はかなり高い

そして、失敗 = 死別だ


「そうだな」 「…うん、ありがとう」

二人は、エントランスから出て行った



一人残された俺はエントランスを見回す


ポッド、情報端末、積み上げられている塗料の一斗缶

今のところ、いつもと変わらない


俺は塗料の一斗缶を見る

ポッド塗料と、ポッドに書かれた数字用の白い塗料の二種類があるようだ

毎回のように塗料を塗り直していたのは、大気圏突入の衝撃と高熱が理由か


このまま、無事に出発できればいいが

…さっきの態度が妙に気になる


戦場では、違和感を無視することは死に直結する

メメント・モリ…、自分の死を想像できていないからだ


…あまりやりたくはないが、念のためやっておくか

俺は一斗缶とハケを持ってポッドへ向かった




・・・・・・




出発の時間になった



トラビス教官が、最後に見送りに来た


「鉄拳のハンク、アイアンメイデンのアーリヤ、トリッガードラゴンのラーズ。お前達が活躍すれば、この施設は更に認められることになる。期待しているぞ!」


「はい」



トラビス教官の言葉を受けて、俺達はポッドに乗り込む

最後に、トラビス教官が俺の顔をじっくりと見た気がした


事前に話していた通り、ハンクが最後に教官と話して気を逸らす


アーリヤが乗り込むのに俺が付いて行き、一声かけてハッチを閉めてやる


俺は、気絶させた女を押し込めた、アーリヤの11番のポッドのハッチを閉めて、あたかもアーリヤが乗り込んだかのように見せかけた

アーリヤは、隙を見てハンクの乗る10番のポッドに乗りこんだ


そして、俺は20番のポッドに乗り込んでハッチを閉める

ハンクが、10番のポッドに向かうのが見えた




「…」


いよいよ出発だ

これが最後の脱出のチャンス


ポッドには窓がないため、外の情報が全く入らない



ゴゴン… ゴゴン…


ポッドがレールに引かれて動いていくのが分かる



PITの時計を確認

ストップウォッチの開始のタイミングを見計らう


宇宙ステーションからポッドが射出

それから約三分後にハッチを中から破壊して飛び出す


下手すると宇宙空間での脱出になるが、完成変異体は十分以上息を止めることができるため、問題は落下速度だけだ…、と信じる


あの教団に売られるくらいなら、宇宙で死んだ方がましだ



今のうちに、俺はナノマシンシステムを動かし始める

背中の触手からナノマシン群の膜を生成して、空気抵抗を受ける面積を広げる


軍時代に使っていた、ナノマシンシステムの感覚を必死に思い出しながら動かす

予想以上にナノマシン群が動き、背中の触手に集まっていく


…大気圏突入の恐怖に引っ張られるように、ナノマシン群が活性化しているのが分かる


生き残る最大のポイントは、飛行能力を発動するまでにどれだけ落下スピードを下げられるか


これには、隠し続けてきた俺の奥の手

触手に作り出したナノマシン群の膜での空気抵抗にかかっている



ゴゴゴゴン…!


突然、大きな振動と音がした



おそらく、宇宙ステーションからポッドが放出された

振動と加速度を感じた段階で、俺はPITのタイマー機能でカウントダウンを始める



浮遊感と加速を感じる



…俺達の脱出劇が始まった






変異体・被験体カルテ


氏名 ラーズ・オーティル

人種 竜人

二つ名 トリッガードラゴン

コード D03

タイプ ドラゴン

状態 完成

サイキック テレキネシス、飛行能力 ←NEW!!

得意戦闘 近接格闘術、サイキックボム ←NEW!!

得意武器 ナイフ、流星錘

備考

・五感の鋭敏化、斥候能力への特化 ←NEW!!

・トリガーが入ることでの暴走

・ナノマシンシステムのコアを移植済み(停止措置中)


三章ラスト、施設編終了になります

読んでいただきありがとうございます


やっと施設編終了、長かった…

(いや、この長さが必要だと判断したんですけども汗)


一日開けて、金曜日から四章を開始します!


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― 新着の感想 ―
[一言] 元々ラーズが乗る予定のやつの番号でも変えたのかな?
[一言] ......ですぺあ、死別、教団、うっ、頭が これバレてるやつやんw 間違いなく付け込まれてるやんww 脱出編に期待(大)
感想一覧
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