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閑話9 フィーナの決断

用語説明w

龍神皇国:惑星ウルにある大国。二つの自治区が「大崩壊」に見舞われ、現在復興中

クレハナ:クレハナ:龍神皇国の北に位置する小国。フィーナの故郷で、後継者争いの内戦が激化している


大崩壊:神らしきものの教団や龍神皇国の貴族が引き起こした人為的な大災害。約百万人に上ぼる犠牲者が出た


フィーナ:ラーズの二歳下の恋人。龍神皇国騎士団にBランク騎士として就職している。魔法に特化した大魔導師

ドース:クレハナのウルラ領の領主で、第二位の王位継承権を持つ。フィーナの実父

セフィリア:龍神皇国騎士団の団長心得。B+の戦闘力を持つ。ラーズの遠い親戚で、五歳年上の憧れの竜人女性



龍神皇国 ファブル地区


「ガウ…」


「フォウル、おいしい?」


フィーナが、小竜に肉を上げている


「フィーナ、シュークリームとエクレア食べましょ?」


「お茶も入ったぞ」


ラーズの両親で、フィーナの養親でもある、ディード母さんとパニン父さんがフィーナに声をかける


「うん!」


テーブルについて、和やかな団らんだ


しかし、どこか表情は暗い


「美味しい」

フィーナの頬が、お茶とシュークリームで緩んだ


「それ、セフィリアちゃんが教えてくれたお店なのよ」

ディード母さんはエクレアをチョイスした


「フィーナ、父さん達のことは気にしなくていい。辛くなったり、気分転換のためでも、気軽に帰ってきてくれ」

パニン父さんが、お茶を飲みながらフィーナに言う


「…うん。ごめんね、勝手なことして」


「フィーナ、謝ることは何もないわ。成人して、就職もして、もう自分の道を歩いているんですもの。自分で決めた道を行きなさい」

ディード母さんがは、フィーナを力付けるように言う



そんな両親を見て、フィーナは改めて感謝をする


フィーナが六歳で入学した騎士学園時代

学園は全寮制だったが、毎年の長期休暇ではラーズと一緒にこの実家に来ていた


当時は、まだフィーナはラーズのクラスメイトでしかなかった

それにも関わらず、フィーナをとても可愛がってくれた


フィーナは二年飛び級していて、ラーズよりも二歳年下だったため、余計可愛く見えたのかもしれない


クレハナの内戦や権力争いしか人間関係を知らなかったフィーナ

そんなフィーナに優しい家庭を教えてくれ、権力争いに巻き込まれるリスクがあるにも関わらず養子として受け入れてくれた両親


…そんなパニンとディードの両親の元から、フィーナは戸籍を抜く決意をしたのだ



「嫌になったらすぐに戻ってきていいんだからな」

パニン父さんが、もう一度繰り返す


「あなた、いい加減にして。フィーナの決心が鈍るでしょ?」


「いやいや、母さん。帰れる場所を確保することは…」


「あなたが寂しいだけだけでしょ」



二人の言い合いを見て、フィーナは微笑む


…オーティル家を出る理由は、ラーズを見つけ出すため

フィーナの実父であるドースが、何度かフィーナに伝えていたメッセージ


『フィーナ、…私は彼の居場所の手掛かりを持っている。教える条件は、龍神皇国の騎士を辞めてクレハナに戻って来ることだ。そして王位継承権を復活させ、クレハナを導く私の手助けをしてほしい。私はいつまでも待っている』



なぜ、ドースがラーズの居場所の手がかりを持っているのか?


シグノイアとハカル、二つの国を襲った大崩壊

この大惨劇には、神らしきものの教団と龍神皇国の貴族であるムタオロチ家が関わっていた

そして、これにドースが関わっていたのだ


ドースは、クレハナの覇権を争う内戦の当事者の一人

内戦を勝ち抜くため、独自に龍神皇国のムタオロチ家から兵器を輸入するという協力体制を構築した


この兵器を買うための資金は、ドースが主導する国営企業ブロッサムの資金を注ぎ込んだ

ブロッサムは、貿易、原子力、魔石精製などを扱う複合企業だ


しかし、このムタオロチ家がシグノイアとハカルで大崩壊を画策していたことが判明

これにはブロッサムの資金も流用されていた

結果として、クレハナの国営企業が他国への侵略行為に荷担してしまっていたのだ


当然、領主であるドースの責任問題が吹き上がった

ドースはすぐにシグノイアに謝罪に訪れ、戦災遺児に対しての贈答品を送った

そして、同様にハカルにも訪れたタイミングで大崩壊が起こったのだ



「フィーナ…」

「寂しいわね…」


パニン父さんとディード母さんは、寂しそうにフィーナとお茶をしている


心配してくれる人がいる

それだけで、力が出ることをフィーナは感じていたいる



ドースはハカル国内を飛行場に向けて移動中、独自に行動していたラーズと出会う

この時、ラーズは変異体因子の暴走が始まっており、体の一部が変異していた


これに気がついたドースは、たまたま知っていた変異体の研究施設の名刺をラーズに渡した

ラーズが早急に処置をする必要があることは、誰の目にも明らかだったからだ


その後、戦いの後にラーズが意識を失った後、縁の有ったヴァルキュリアがラーズを保護

この名刺を見て施設に持ち込んだのであろう、というのが一連の流れだ



そんなわけで、たまたまとはいえ、ドースはラーズが持ち込まれたという報告を受け取っていた

そして、この情報を使ってフィーナをクレハナに戻そうと考えたのだ




「フィーナ。クレハナに戻っても、あなたは私達の娘だからね」


「うん、ありがとう…」

ディード母さんがフィーナを抱き締める


「フィーナ、これをお守りに持っていけ」

パニン父さんが、フィーナに差し出す


「これ、ダマスカスのナイフ…」



ダマスカスナイフ


オーティル家に、ラーズの曾祖父の代から伝わるナイフ

ラーズに受け継がれたのだが、行方不明になった場所に残されておりフィーナが回収した



「フィーナもオーティル家の一員だからな。女の子にナイフもどうかと思うが、お守りだ」


「…ありがとう、パニン父さん。でも、私がウルラ家に戻るのはラーズを見つけるためなの。ラーズが戻ったら、また渡してあげて」


「フィーナ…」

パニン父さんが、戻るという言葉で震えだす


「ごめんね…、ずっと大好きだから」

フィーナがパニン父さんの胸に飛び込んだ




この決断を、フィーナはすでにセフィリアに伝えた


「フィーナ、早まらないで。まだ、把握している変異体の研究施設はあるのよ?」


「でも、私がクレハナに戻れば、確実にラーズの居場所が分かる。今、ラーズが無事なのかも分からないから…」


「フィーナ…」


セフィリアはフィーナを見つめる


セフィリアは、龍神皇国の騎士団の力を私的流用に近い状態で使ってまで変異体の研究施設を探している

実際に、四つの施設を特定して制圧した


だが、全て龍神皇国の国内での話だ

調査は続けており複数の施設を特定しているが、外国の領土までは簡単に手が出せない


それでも、秘密裏に強襲して一つの施設を制圧した

しかし、ラーズの発見は出来なかった


行方不明になって、もう二年

ラーズの安否が心配だ



「ごめんなさい、私の力が足りないばかりに…」

セフィリアがフィーナを抱き締める


「ううん、セフィ姉はたくさん探してくれた。次は私の番だよ」

フィーナが首を振る


「フィーナ…」


「それにクレハナのことは、いつか何とかしないといけないことだから」



フィーナは、未成年だった自分の身を守るためにクレハナを離れた

そして、王家から離脱した


しかし、それはクレハナの国民を捨てて逃げるという行為だ

更に、血の繋がったドースを見捨てるという行為でもある


フィーナは成人して、騎士として自立した


クレハナとドース…

王位継承権を持つ姫として、出来ることをやらなければいけない


その責任と向き合う決意をしたのだ



「…分かったわ、私もバックアップする。まずはラーズの救出。そして、クレハナの内戦の解決。やりとげましょう」


「…うん」




この数日後、フィーナはドースに王家に戻ることを伝えた

ドースは歓喜し、フィーナにラーズがいるであろう施設をすぐに伝えてきた



…結論から言うと、ラーズはその施設にいた


セフィリア達は、直ちに制圧の準備に取りかかる


こうして、ラーズが送り込まれた謎の施設は、大きな動きに巻き込まれることとなった


そして、フィーナの帰還はクレハナが大きく動く前兆となった



騎士学園

二章~30話 チャクラ封印練 参照

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 結論から言うと、ラーズはその施設にいた(過去形) ......考え過ぎかな?
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