表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
104/394

三章 ~22話 ダンジョンアタック四回目2


地下四階層



「…安定している」

アーリヤが歩きながら口を開いた


珍しい

アーリヤもハンクもあまり無駄口は叩かないイメージだ


だが、少し気持ちが分かる

このパーティ、本当にめちゃくちゃ安定しているんだ


俺とハンクとアーリヤがそれぞれ二体ほどモンスターを倒せば、だいたい部屋のモンスターは全滅している

倒すのも早いため、挟み撃ちや囲まれたりというポジションの不利も今のところ起きていない


もし負傷したとしても、回復魔法を使えるリリアがいるため安心感がある



「できれば、この調子で深層まで行きたいけど、油断せずにじっくり行こう」


過去三回のダンジョンアタックは、全て仲間の負傷によって引き返している

そうなる前に、早めに戻る決断をすることが必要だ


「この先、モンスターよ。三体!」

リリアが前を指した



部屋の中にいたのは、二足歩行のドラゴン、オルトレイドスだ

ダチョウのような骨格で、ブレスは吐かずに牙での噛みつきを行う

ドラゴンの能力ランクで言えば、牙竜ランクだ


群れのボスと、メスや子供で構成される群れを形成する



ドゴッ!


ハンクの装具を付けた拳が、不用意に近づいた一匹の首を叩き折る



カシャーーーーン!


「グギャッッ!!」



そしてボスを中心に、二体のオルトレイドスを巻き込んで冷属性範囲魔法(小)が発動した


俺は無傷のオルトレイドスに流星錘を投げつける



スポーツなどを見ていると、激しい技や派手な動きは見栄えがよく印象に残る


だが、技を極めて行くと、地味で目立たない動きが増えていく

これは、地味で目立たない動きは動きが読まれにくく隙が小さいためだ


しかし、地味で目立たない動きの技は、かけるのが難しい


柔道で言えば、背負い投げや内股などの大技で一本が出ることはよくある

だが、足払いや小内刈りなどの動きの地味な技で一本を取ることはとても難しい


地味で目立たない技は、隙が無く出しやすい代わりにかかりにくい

基本技で相手を倒せるということは、まさに達人技が必要だということだ



俺はドラゴンタイプだ

ギガントのハンクのような豪快な攻撃力はない

アーリヤのような魔法力もない


俺の仕事は、二人の大技がリスクなく出せるようにすること

敵の位置を調整し、可能なら素早く仕留める

司令塔や陰から動く暗殺者の役割が理想だ



オルトレイドスが、跳びかかって牙をむく

ギリギリを躱しながら、喉をショートソードで切り裂く

すかさず、流星錘を頭にピンポイントで叩きつけて仕留める


俺が仕留めた時には、すでにボスはハンクとアーリヤに倒されていた




地下五階層


四階と五階の間の情報端末の前で一休みする



ここまでのペースは速かった

モンスターとの戦闘もそこまでない多くない

いい感じだ


「次が階層ボスよね?」

リリアが不安そうに尋ねる


「そうだ。俺達は一度戦っているから戦闘は任せろ。リリアは補助魔法を使ったら下がっていればいい。誰かが負傷したら回復しに来てくれ」

ハンクが言う



階層ボス、エイクシュニル

鹿型のモンスターで、角から水を滴らせ、水属性の魔法や特技(スキル)を使う


前回は勝つには勝ったが、ギガントのフアンが犠牲になった



「突進力があるモンスターだ。リリアはいざとなれば通路に逃げていい。…死なないようにね」


「が、が、頑張るわ」

リリアが真剣な顔で頷く


少し怖がらせてしまったが、もう仲間には死んでほしくない



地下五階に降りると、相変わらず水晶がキラキラと光っている



「…」


俺は、いくつかの水晶を拾ってポケットに入れる

大きいものを三つ、小さいものを五つ



…このダンジョンアタックが終わったら、試してみたいことがある

もちろん、脱出のための情報集めのためだ


「…水晶なんか拾ってどうするの?」

アーリヤが、そんな俺に聞いてくる


「タルヤが水晶がきれいだって言ってたから、持って帰ろうと思って」

とっさに口からでまかせを言う


「そうなの…? それなら私も一つだけ…」

アーリヤも一つ水晶を拾う


アーリヤって、こんなにいい奴だったのか?

出まかせを言った俺の心がチクリと痛む


「ありがとう。でも、タルヤは冷凍保存されちゃったからしばらくは渡せないよ?」


「うん…、いつか渡せればいい」


そんなことを言いながら、俺達は階層ボスの部屋の前までやってきた



「最初に俺が前に出る。ハンクはアーリヤの防御を最優先で考えてくれ」


「分かった。隙があれば俺も手を出す」


エイクシュニルの特技(スキル)による突進は、ギガントの体を簡単に貫いた

エスパーだったら即死だろう


全員の生き残りが最優先の条件だ


リリアが全員に防御魔法(小)をかける



中に入ると、前に倒したエイクシュニルとは別の個体がいた

ちゃんと、階層ボスも補充されるらしい

ダンジョンコアも、自分の免疫の維持のために必死に確保するんだろうな



エイクシュニルが立ち上がる


角を突きつけて警戒心をあらわにした



ハンクが前に立ち、その後ろにアーリヤが陣取る

リリアは部屋の入口付近で待機だ


エイクシュニルの突進

同時に水属性投射魔法を発動している


突進を大きく躱すと同時に、大きな水の塊が俺の所に飛んで来る


舐めるな、当たるわけねーだろ!


躱して前に出る

エイクシュニルが、また俺の方向に突っ込んできていたからだ



バシャーーーッ!!


「なにっ!?」



突然後ろから、波のような水の流れが俺の足を掬った

ひざ下くらいの水の高さだった


くそっ、投射魔法が地面に当たったら波を起こす効果を作ってやがったのか

鹿のくせに企みやがった!



「ラーズ!」

足を取られた俺を見て、ハンクが叫ぶ


だが、俺はドラゴンタイプだ

背中の触手に溜めた精力(じんりょく)を開放、テレキネシスで飛行能力を発動する



ビュオッッ!



飛び上がった俺の真下をエイクシュニルが通り過ぎる

同時に流星錘を投げつけて角に絡める



「ケェェーーーーー!?」


錘に付けられたフックが角に引っかかり、更に紐が角に絡む



紐を引っ張り、飛行能力の推進力でエイクシュニルに飛びつく


背中に乗られ、暴れるエイクシュニル

ロデオのように、背中で踊らされる俺



ゴキッ!

シャキキーーン!


「キィィッ!?」




動きが止まった隙に、ハンクの拳がエイクシュニルの顔面を捉え、後ろ脚をアーリヤの冷属性範囲魔法(小)が凍らせる


よろけたエイクシュニルの首を腕で抱え、俺はぶら下がるような体勢になる

同時に、流星錘の紐を左前足にかけ、引っ張って拘束



ゴッ!


ハンクの拳の衝撃と共に、右前足を刈るように押し倒す



「クゥゥゥッッ!?」


鹿への大外刈り、同時に左前脚の捕縛が完了

三本足では、もうあの機動力は出せないだろう



「仕留めろ!」


俺が叫ぶと同時に、ハンクとアーリヤが動く



ゴッ ガッ ドゴッ ガキッ!!

シャキキーン! シャキーーーン!!



顔面に拳のラッシュ

冷属性範囲魔法(小)を二連発で発動



…呆気なく、エイクシュニルが倒れた


ハメ殺す

これができないと、俺達の誰かが怪我をしているということ


無傷で勝てたのは僥倖だ








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ