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三章~19話 傷だらけの帰還

用語説明w

この施設:ラーズが収容された謎の変異体研究施設、通称「上」とダンジョンアタック用の地下施設、通称「下」がある。変異体のお肉も出荷しているらしい


ナノマシン集積統合システム:人体内でナノマシン群を運用・活用するシステム。ラーズの身体導入されているが、現在は停止措置を施されている


トラビス教官:施設の教官でBランク戦闘員。被験体を商品と割り切っている


タルヤを静かにポッドに乗せる

息はあるが、やはり意識は戻らない


その間に、オルバスが情報端末で帰還の連絡をしてくれていた


タルヤの怪我のため、丁寧にシートに座らせて、シートに体を預けさせる


タルヤが生きている内に戻ってこれてよかった…

オルバスは足を負傷、俺も身体中に大小様々な傷、肩に噛みつかれた傷がある

タルヤを助けるための強行軍だったが、やはり無理もあったな


改めてポッドの内装を見ると、空調の吹き出し口であるレジスターが十個ほどついている


…多くね?



「タルヤ、もうすぐだから死ぬなよ…」


俺はタルヤに声をかけ、静かにハッチを閉じた



「上」まで、どのくらいで着くのだろうか

早く治療を受けさせなければ…



「ラーズ、行こう」

オルバスが俺を呼ぶ


「ああ、分かった」


見ると、カブスはとっくにポッドに乗り込んでハッチを閉めていた


「オルバス、ありがとな」

俺はハッチを閉めようとしたオルバスに言う


「うん?」


「オルバスが冷静に声をかけてくれなかったら戻ってこれなかったかもしれない。助かったよ」


カブスを怒鳴りつけた時に止めてくれた

カブスとタルヤを体を張って守ってくれた

パーティ崩壊の危機を救ってくれた


「…それは間違いなく俺の台詞だ。帰りのモンスター、全部お前が倒したんだぞ? さ、早く帰って治療だ」

オルバスが笑う


「そうだな」


俺達もポッドに乗り込んだ



疲れた…

だが不安が俺の意識を覚醒させている


タルヤは助かるのだろうか?


いつもならすぐに眠くなるのに、今回は目が冴えている



「…」


そんなことはなかった



疲労の蓄積のせいか、異様な眠りに襲われる

俺は、静かに意識を手放すのだった…




・・・・・・




「…っ!?」


意識が戻る



ハッチが開けられ、俺は慌ててポッドの外に出る

ちょうど、ナースさん達がタルヤをうつ伏せで担架に寝かせているところだった


口には吸入機、回復魔法を使いながら点滴を行う

やはり、「上」の医療体制は整っている



「タルヤをお願いします! 背中の肩甲骨と背骨が…」


「報告を受けて体制は取っているわ。任せて!」


魚人のナースさんが力強く頷き、タルヤを乗せて担架が出ていった



その横では、オルバスとカブスが足を引きずりながらポッドを出てきていた


残ったエルフのナースさんが回復魔法をかけているが、二人の足の傷はほぼ塞がっていた

だが、さすがにオルバスの抉られた肉は戻っていない



「…ん?」


そう言えば、俺の傷もかなり塞がっているな

あのポッド、回復薬でも噴霧してるのか?



「あなたはかなりボロボロね…。一度医療室に来る?」

エルフナースさんが俺の傷を見て言う


「いや、大丈夫です。一刻も早く寝たいので…」


「そっか、疲れているものね」


俺は医療室を断り、回復魔法をかけてもらい、回復薬をもらって飲み干した


だが、本音はナノマシンシステムのためだ

停止溶液の注射を射たれないために、今日は遠慮したのだ


「三人とも、部屋に戻るのは少し待ってね。教官が向かっているはずだから」


ナースさんが言った直後、エントランスに誰かが入ってきた


「おお、よくぞ戻った」

トラビス教官だった


「タルヤが負傷しました」

俺は報告行う


「聞いている。ここの医療スタッフは優秀だ、任せればいい」


そう言って、トラビス教官は俺達三人の顔を見回す


「ラーズ、すまなかったな。レベルの差がある者と組ませて危機を招いてしまったようだ」


「え?」


教官からまさかの謝罪

どういうこと?


「お前は、次から暫くハンクとアーリヤと組ませる。それぞれ、各タイプのトップだ」


「各タイプの…、トップ?」


トラビス教官が頷く

「ギガントのトップ、鉄拳のハンク。エスパーのトップ、アイアンメイデンのアーリヤ。そして、ドラゴンのトップがお前、トリッガードラゴンのラーズだ」


「俺がドラゴンのトップ?」


何でそんなに評価高いんだ?

俺なんか、へルマンの足元にも及ばないのに


「そうだ。お前達三人が組めば、ダンジョン攻略は必ず成し遂げられるはずだ。他に希望者がいれば、パーティつけてやろう」


「はぁ…」


「お前達三人には大いに期待している。ダンジョン制覇を必ず成し遂げろ。近接武器だけであのダンジョンを制覇したともなれば、我らの評価は鰻登りだ」


トラビス教官の言葉が熱を帯びる


「そして、今回の反省をしようじゃないか」



…ゾクッ……!!



突然、プレッシャーが俺達にのしかかった


トラビス教官がサーベルを抜き、闘氣(オーラ)を纏ったのだ


「…G17、カブス」


「は、はい!」


プレッシャー震えながら、カブスが返事をする


「お前は基礎訓練からやり直しだ」


「…え!?」



基礎訓練


ステージ3に上がってすぐに受ける訓練

戦闘訓練の他に、教官との鬼ごっこ、拷問訓練を受け続ける地獄のような訓練だ


当然ながら、俺も二度と受けたくはない



「そんな、待ってください…!」


カブスが懇願しようとした時…



ドスッッ!


「ぎゃあぁぁぁ!」



カブスの叫び声が響く

教官のサーベルが、先ほど治療を受けた足の傷を抉ったのだ


そして、トラビス教官は軽々とギガントであるカブスの巨体を持ち上げる

闘氣(オーラ)で強化された怪力だ



ゴガァッ! ガラガラ…


「ぐはっ!?」



ボールでも投げるようにカブスはぶん投げられる

積み重ねられたポッドの塗料の一斗缶に直撃、いくつかの一斗缶から塗料が漏れ出した



「お前達のダンジョン内の様子を見た結論だ。…お前は失格だ」


「ひっ…ぐぅぅ……」

カブスが這いつくばって、涙を流しながら呻いた



「…」 「…」


俺とオルバスは、それを見守る



確かにカブスの動きは酷かった

だが、厳しく言ったところで改善するのだろうか?


向いていない

そんな環境に放り込むことに意味があるのか


そして、帰り道はこいつなりに頑張った

おかげでタルヤを連れて帰ることができたのも事実だ



「カブス、また戻ってこい」

「待ってるからよ」


俺とオルバスが声をかける


カブスは一瞬顔を上げるが…


「さっさと立て。お前達は次のダンジョンアタックに備えろ」

そう言って、トラビス教官がカブスを連れて行ってしまった



「…ラーズ、今回は助かった。また一緒になったらよろしくな」


「ああ、こちらこそ」


俺とオルバスは握手をして別れる



足がフラフラする

今回はよく生還できたと思うぜ…


部屋に戻ると、俺はダンジョンから持ってきた金属質の石を取り出すと、ベッドに横になる


分かっていたかのように、俺の左腕に違和感が生まれる

ナノマシンシステムが餌を求めて動き出しているのだ


俺は左手で金属質の石を握る

暫くするとカリカリと削るような音がし始めた



「…」


暫くこの音を聞いていると、また眠気が襲ってくる



…もうすぐ、ナノマシンシステムが使えるようになるかもしれない

検査対策で、またコアの上にビニールを挿入しておかないといけないな


眠い…


明日起きたらタルヤの様子を見に行こう


そんなことを考えながら、俺な意識の奥深くに沈んでいった


 




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― 新着の感想 ―
[一言] アーリヤ、ハンク、ラーズでタルヤ入れるとしたら4人だけどエスパー除いたドラゴンとギガント二番目に使える奴ら入れたら戦闘も楽になりそうだけどな、人数制限あるのかな?
[気になる点] ポットから出た時に目覚めるタイミングは描写から推測するに恐く同時、少なくとも普通の睡眠ではないね? ラーズがポッドの内装にやたらとレジスターが多いと感じている描写に意味がありそう。眠…
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