愛と欲望の嫉妬
欲望は思った。恋愛とは神聖な物だ。
人は幼き頃、損得勘定を抜きにして恋に落ちる。相手を思い、相手の事だけを考える恋。
それは淡く、切なく、だが決して誰にも犯さない神聖なものだ。だが、どうだろう。人は歳を取るとともに穢れを纏う。
相手の年収だ。容姿の美醜だ。社会的地位だなんだと、損得で物事を推し量る。なんと醜いのだろう。
欲望は嘆いた。なぜ神は我を創り、我に人を穢させるのだろうか。
愛は考える。恋愛とはたぎる炎の様なものだ。
人は運命の相手を求め、恋に落ちる。自らが満たされるために、自らのことだけを考えた恋。
それは熱く、眩しく、達成するためならどんな障害にも果敢に挑む魂の叫びだ。だが、どうだろう。人は一度心が満たされると炎が消える。
慈しみだ。慈愛だ。平穏だなんだとうつつを抜かし、胸から湧き上がる情熱をいとも簡単に消してしまう。なんと虚しいのだろう。
愛は嘆いた。なぜ神は我を創り、我に人から熱を奪わせるのだろうか。
あぁ……神が憎い。
欲望は考えた。人をより純粋に清楚で神聖な者にする愛になりたいと。
愛は思った。人をより情熱的で泥臭く、熱狂的な物にする欲望になりたいと。
(この作品は以前、即興小説トレーニングにて作成したものです)