2 ちいさなゆうしゃとべつせかい
勇者さまだ!勇者さまだ!勇者さまだ!勇者さまだ!勇者さまだ!勇者!勇者!勇者!勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者ゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャーーーー
そうだ、俺はーーーー
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紅かった視界が灰になった。
青みがかった灰色の空はずいぶん狭くなった。
土気色の建物の窓は曇り、何も映さない。
大通りを埋め尽くす人々が、皆こちらを見ていた。
何かに混乱した、懇願した、無数の目玉がこちらを見ていた。観ていた。視ていた。
「勇者さま……?」
小さな毒々しい赤のワンピースの女の子が言った。
ひゅっと音を立て、喉が凍った。
老人。老婆。女性。男性。青年。少女。少年。男の子。女の子。赤ん坊まで。みな、こちらを、見ていた。期待した。安心した。安堵した。不安な。信頼した。信奉した。懇願した。混乱した。空虚な。虚ろな。輝かしい。全てを分かったような。なにも分からないような。目が。目が。目が。
「勇者さまだ!勇者さまだ!勇者さまだ!勇者さまだ!勇者!勇者!勇者!勇者!勇者!勇者!勇者!勇者!勇者!勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者勇者ゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃゆうしゃユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシヤユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャユウシャー」
たくさんの声が、俺を殴りつけ、蹴りつけ、引きちぎって、ぐちゃぐちゃにする。
前も後ろも、右も左も分からない。
目がちかちかと点滅する。霜が降りているように。
思考が停止する。
呼吸が速くなっているのか、止まっているのかわからない。
立っているのか、座っているのか、それとも倒れているのかも分からない
今すぐここから逃げ出したい。
全てを放り出して消えてしまいたい。
しかし、それは許されない。
許さない。
ほら、出番だろ?
口角が自然に、不自然に笑った。
頬がつりあがり、視界が細くなる。
「俺が来たからにはもう安心だ!何も心配要らない!これまでに何が起きたのかを教えてくれないかい?」
俺は両手を広げてダンゴになって集まる人々を見つめた。
みな俺の言うことを一字一句聞き漏らさないよう、餌を待つ小鳥のような目でしんと静まり返っていた。
突如、濁流のように情報が頭に流れ込む。
人々がそれぞれの言いたいことを垂れ流し始めたのだ。
それを整理すると、こうだ。
ここにいる人々は、全員異界水晶でやってきたようだ。
他の世界に飛ぼうと思っていたが、なぜかこの世界に飛ばされてしまったらしい。
この世界から出るには、100階層あるダンジョンという名前の洞窟を、1000日以内に制覇しなければならないという。
そこには、モンスターと呼ばれる人を襲う魔物たちがいるときいたそうだ。
1000日以内に制覇出来ないか、この世界の人々のなかの1人でも死んだら、この世界は崩壊。
この世界の人々は皆魂と体が引き離されて死んでしまうらしい。
嘲笑が込み上げた。
全く違う自分になるはずが、自分はまた勇者になっている。
ほら、言えよ
「なるほど、わかった。俺が全てなんとかしてやる!任せてくれ!君たちには、死なないように細心の注意を払い、魔物が来ないこの空間で過ごしてくれ!必ずダンジョンを制覇してみせる!」
歓声が上がるなか、遠くの店内にかかる豪華な装飾の鏡と目があった。
中途半端にのびた黒髪に、ひと房だけ生えた白髪。
栄養失調により14歳にしては低い背は頼りない。
濃い隈が浮かんだ、男にしては大きな目は虚ろにこちらを見つめている。
少年は、勇者!勇者!という賞賛の罵声に見送られた。
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