第5話 光学術式
これまで尾行してきたニット帽の男。
それがトイレから出てきたのは、中年女性と小柄の少女。
体格と風貌からだと、怪しいのは中年女性【ヘルキャット01】の方であるが、目元が似ていたのは小柄の少女。
【勇者01】からの報告を受けた現本は、小柄の少女【フラミンゴ01】を本命と判断。
【フラミンゴ01】からのレストランへの予約を入れるスマホ通信を傍受し、先回りでレストラン内に応援の配置を完了させた。
【フラミンゴ01】がホテル1階の高級レストランに着いたときには、入口近くの赤子連れの夫婦も含め、私服の警視庁特別行動部外事課員らによって、レストラン内の監視体制も完成していた。
【フラミンゴ01】に顔を見られている【勇者01】は、レストランには入らずに、裏口がある細い路地に面した別のビル屋上に設置された監視拠点【高所固定03(春日部03)】のチームに合流し、レストラン近くの従業員用のホテル裏口付近【監視ポイント15(西新井15)】を監視する。
外国諜報機関による警察魔導無線傍受を警戒し、屋上まで電話線を引き入れ、有線電話を用い、通話内容もさらに暗号処理して、現本【立花】との通信を確保する。
<<春日部03から立花へ、西新井15、異常なし>>
<<立花、了解>>
路地と裏口周辺を監視し続けるが、時折、酔っぱらったサラリーマンが用を足してる。
<<立花から春日部03へ>>
<<春日部03です、どうぞ>>
<<フラミンゴ01が西新井15に向かった>>
<<春日部03、了解>>
裏口の扉が開き、中から従業員が一名、外に出てくる。ゴミを捨てているようだ。
【フラミンゴ01】は外に出てこない。
屋上から監視していた女勇者は、小さな魔法反応に気づく。
「光学系術式だ!」
【勇者01】は、すぐに裏口から死角になるビルの角からロープを使って、素早く地面に降りる。
ビルの角から路地を見ると、裏口付近を歩く小柄の少女の上に、斜めの透明な板が浮かんで、追随しているのががわかる。
低出力の魔導無線で、屋上の高所固定経由で現本に緊急連絡を行う。
<<勇者01から立花へ。光学術式を使用しているフラミンゴ01を確認、これより尾行を開始する>>
この回の光学術式については、漫画『攻殻機動隊』の光学迷彩よりももっと原理的な簡単な板状のものです。フラミンゴ01は、もし敵性勢力がいるとしたら、裏口を監視する場所はここだろうと事前に予想して、光学術式を使用しています。
>入口近くの赤子連れの夫婦
この1行は、NHKの名作『外事警察』へのオマージュです。