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おじいちゃんのサイバーキャノン砲

作者: 松本 豊


「ご、、権治郎、、ついに出来たぞ」


「おじいちゃん、、これがいじめっ子達を懲らしめる為の最強の道具なんだね。」


西暦20XX年の秋、家の庭に突如設置された特大の機械を眺めながら権治郎は呟いた。


小学生の頃、権治郎は生粋のいじめられっ子だった。ある日泥だらけで帰ってきた孫からいじめ被害を聞いた世界的発明家の権治郎のおじいちゃんは、これまで進めていた重要な発明品の全てをほっぽり出して孫の為にいじめっ子撃退兵器を研究する日々を送っていた。


そんな権治郎も今年で30歳の良い大人になっていた。しかしおじいちゃんの研究は続き、目の前にある巨大な装置がちょうど記念すべき100個目の発明品でおじいちゃんが最もその制作に時間をかけた最高傑作だった。


「で、おじいちゃん。これ何?」


「ふふ、名付けて、、"サイバーキャノン砲"じゃ!」


「サイバーキャノン砲、、」


権治郎にとって記念すべき80個目のサイバーキャノン砲だった。権治郎のおじいちゃんはすでに100歳を超えており、前作の名前を覚えられないのか兵器の名前は20個を超えてからサイバーキャノン砲で統一されていた。


「ふふ、、聞いて驚け権治郎、、。このサイバーキャノン砲をいじめっ子達に撃てば、、そやつは死ぬ」


「死ぬ!?そこまで求めてないよおじいちゃん!!」


このやり取りも記念すべき80回目だった。


「権治郎、、わしだって人殺しにはなりたくない。しかしな、、この世には死ぬべき人間がいる、、。それはワシの大好きな権治郎をいじめる奴じゃ、、、。」


「お、おじいちゃん、、!」

おじいちゃんの権治郎への愛が伝わる大好きなセリフだった。80回目でも目頭が熱くなる。


しかし、今回は1点だけいつもと違う所があった。


いつもはハンディタイプでガラクタだったサイバーキャノン砲だが、今回はとにかく形も違えばサイズも異常に大きかったのだ。


「それでこれはどうやって使うの?」


「これはな、、ここが開くんじゃ。」


おじいちゃんがリモコンの緑色のボタンを押すと側面の小窓が開いた。


「この中にいじめっ子の写真を入れれば、この機械にその者の情報が入力される、、次にこのリモコンの赤色のボタンを押せばその者に向かってレーザーが飛んで行く、、、で、そいつは死ぬ。」


もし本当にそんな事が可能であればこの人は完全なる世界規模の犯罪者であった。

しかし、おじいちゃんは早速この装置を使えと興奮しながら迫ってきた。


「ま、待って!分かった、今いじめっ子の写真を持ってくるから。」


自分の部屋に一時避難した権治郎は悩んでいた。


「参ったな。あの時いじめっ子だった法一郎君の写真なんて持ってないよ。」


しばらく机の中を漁っていると、自分の小学生時代の写真が出てきた。


「まぁ、おじいちゃんの遊びに付き合うだけだし、これで適当に誤魔化すか。」


写真を持つと庭へ戻って行った。


「お待たせおじいちゃん。これ、写真持ってきたよ。」


遠くから自分の写真を見せる。おじいちゃんは目が悪いため、これだけ距離を取れば写真の人間が誰かなど分かるはずがなかったからだ。


「ホォー、、そいつが憎っくき権治郎の敵か?思った通り、、頭の悪そうな憎たらしい顔をしておるわい。」


権治郎はこのサイバーキャノン砲をおじいちゃんに向けて撃ってやろうかと思ったが、踏み止まった。


「じゃあ、、ここに入れろ」


権治郎は指示通り写真を小窓の中に入れた。

するとサイバーキャノン砲が突如動き出し、激しい音と共に光り出した。


「情報の取り込み、、、レーザーの充電、、、完璧じゃ、、。権治郎!今じゃ赤色のボタンを押せ!!」


権治郎は言われるがままに赤色のボタンを押した。


(あれ?でもなんか、すごく本格的じゃないか!?)


サイバーキャノン砲の先端に強烈な光が集まる。


「権治郎見ておれ、、この光がお前の敵を焼き尽くす。地の果てまで逃げようともな。」


権治郎の心は強い恐怖心で溢れていた。中に入れた写真は自分の写った物だからだ。これが本物ならばこの光に焼き尽くされるのは自分になる。


「おじいちゃんちょっと待っ!!!!」


権治郎の叫びと同時にレーザーが激しい音を立てて天高く飛んで行った。


自分の死を悟り強く目を瞑っていた権治郎はゆっくりとその目を開けた。


「おじいちゃん、、あれ、、?レーザーは?」


「飛んで行ったよ。あの光がそうじゃ」


遠くに強烈な光の塊が見えたが、その光は突如として消えてしまった。


「消えたけど」


「そうじゃ、、あれは時空を超えたのじゃ。あれは対象が写真に写っている同じ時代まで遡り、その者を抹殺する。昨日撮った写真であれば昨日に、10年前であれば10年前に、、、時間はかかるが確実にな。」


ーーー5日後ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


100作目のサイバーキャノン砲の放ったレーザーがテレビのニュースを騒がせた次の日、おじいちゃんは静かに息を引き取った。遺言書にはこの装置の保管を願う文章が残されていたが家族は満場一致で邪魔という理由でサイバーキャノン砲の解体と処分を実施した。


あの日の出来事を思い出しながら、権治郎は湯船に浸かっていた。


(結局あのレーザーはなんだったんだろう?本当に時空を超えて過去の僕を抹殺しにいったのか?)


しかし、おじいちゃんも死んでしまった今その答えを知る事は出来なかった。


(まぁ、どう考えてもおじいちゃんの言ってた事なんて非現実的な話だったからな。気にしないでおこう。)


そう結論づけて浴室から出た権治郎は、入浴前タオルを準備し忘れていた事に気づいた。


「あ、いけね。伸子さーん!タオル取ってーー!」


しばらくすると奥から権治郎の妻伸子が小走りでタオルを持ってきた。


「また忘れたの!? はい、、って、あれ、、、あなた、、、?」



壁にまだ大量の水滴の残る浴室に権治郎の姿はなかった。



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― 新着の感想 ―
[一言] ちゃんとおじいさんの発明はうまくいってたんですね。 面白かったです。
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