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冒険の旅6日目の頃、ヒューマン領、ボーステック  うごめく召喚者達  (魔神派の動向 短編外伝)

一行が聖女様に会うためにダークエルフ領へ到着する少し前の出来事。


ここヒューマン領の中心都市「ボーステック」では

エド城内の会議室に数人の男たちが集まっていた。


エドと言う名は召喚された一世代前の勇者が付けた名だ

そのまま江戸城なのだろう。


この世界ではこうした召喚者の行き来により文化なども

継承される場合もある。


そしてこの会議室では、よからぬ会話がされていた。


「これはこれは仲達殿」

「今回、面白い策をお考えなさいましたな」


「いや、これも道満殿の操りの術あればこそ」


「そんなことより我は戦いに出たいぞ」

「軍も編成したし、そろそろ大軍で蹂躙させてもらおう」


「俺も戦場に行きたい」

「敵の血で我が身が染まるときが最高の気分だ。」


「ジンギスカン殿は大陸制覇にかなり乗り気ですな」


「項羽殿の武力と仲達殿の知力があれば」

「この戦いは、勝ったも同然だろうて」

「しかも強化兵と魔物軍まであるのだからな」


「悪いが俺は戦争には興味がないから不参加だ」

「ただ強敵と相まみえたいだけだ」


「武蔵殿は我々とは異なるお考えじゃのう」


「ただ個の強さのみを追求したいからここにいる」


「武蔵、悪いが強さだけなら俺の方が上」

「俺を倒せるほど強くなってから、好きに言え。」


「ふむ、確かに項羽殿は強い。」

「だが戦い方が美しくはない。」


「戦いに美しいもくそもあるか」


「敵を蹂躙することこそ華ではないのか」

「我は項羽殿の戦い方は感心するのだが」


「武蔵殿は我々から言えば未来の御仁ゆえ」

「何やらお考えも違うのでしょう」


「そうですな、更に未来の御仁たちは」

「話していることや考えなどさっぱりわからん」


「どうやらその者達は我らとは異なる動きをしている様だしの」


「科学とかの力ですか・・」

「準備に時間がかかりすぎるのは何とも悠長ですな」


「火薬の力は魔法の力に匹敵する」

「それは俺の知る時代で見てきた。」

「更に後の時代のものならばもっと強力になっているであろう」


「武蔵殿は戦争に科学なるもの、」

「火薬の力を使いだした時代のお方だったな」


「魔法力で劣る人であっても魔法が使えなくても」

「女子供でも、あれがあれば兵士になる」

「個々の武力の違いとか、策略とかも凌駕してしまう」

「ゆえに俺は戦争にそれほど執着しなくなった。」


「武蔵殿は我ら同志の時間軸の中間点の御仁なのだな」

「しかしそれは気の弱さを現すときもある。」

「我らと行動を共にするより、未来の者といる方がいいと思うぞ。」


「ああ、いづれにせよ今回の策からは外れさせていただく」

「未来人ともやっていく気はない。俺は自由に修行の旅に出る。」


「ふむ、最終目的が同じなら問題はない」

「自由になされよ」


武蔵が部屋を退出した後、空気が変わる。


「道満殿、武蔵の道が外れた時はお主の操りの術を使え」


「わかっておりますとも、武蔵自身が望むように力を与えましょう」

「意識は無くなりますがな・・・」


「仲達殿、先行する獣人領への攻めは万全か?」


「ええ、道満殿の力を借り、手はずは整えました。」


「獣人領の騒動で他領からの意識がそちらに移ったら」

「ジンギスカン殿と項羽殿は本軍と共にダークエルフ領へ攻め入ってくだされ」


「小領主共が欲望で戦遊びをしていたのとは異なる。」

「真の戦さが始まるのじゃな。」


これは今までの小国家が勝手に小競り合いをしていた状況とは異なることを示す。

既にヒューマン領では統括した軍が編成されており、

魔物軍と言う新しい戦力を加えるに至っていた。


しかし、彼らはこの世界の理解が不足していた。

この時点では魔法というものの力をよく理解できていないのがわかる。


ヒューマン領内での内乱で勝ち組になったことが増長の原因かもしれない。

ただ、この時はこうして獣人領への囮である侵攻作戦が始まった。


もし仮に戦略通りにダークエルフ領へ攻め入っていたら・・・。

たぶん兵数と武力だけではどうしようもなくなっていただろう。


しかし、それすらも不可能にされてしまうほど

獣人領への侵攻作戦は微塵に粉砕され、失敗することになるのだった。


逆にそのおかげで地球と同じ戦い方が通用しないことを学習することになる。


そして、今だヒューマン領内の中心区では限られた抵抗勢力がいた。

領内全体でも勢力がいくつかに分断されている。


ここでは隠れて抵抗するしかなかった。

彼らは反乱軍として敵勢力と認定されており

他領の種族とは連携も取れず孤立している。


実はここに召喚者と思しき人物がいた。

「いやいや、これはいかんな」

何故自分がこの世界に来たのかも理解できない

「言えるのは、とても連中にはついていけんということだ。」


武蔵と同じく召喚者として歴史の中間軸ともいえる位置にいたせいか

自分たちから見て過去人とも未来人とも意志が合わず

道満の力を見て逃げ出してきたらしい。


「ありゃあ、かなり危ない御人じゃ」


本人達は知らなかったが、勇者召喚に魔神側が干渉できたように

女神側が今回の大量召喚に干渉した者達もいたのだ。


武蔵としても中途半端に干渉されているのだが

それは本人どころか誰にも分っていない。


そして一人悩んでいるこの人。

名前は坂本龍馬という。


召喚者には一貫したものがある

満足した結果が得られず無念を感じた者達。

特に生に執着した魂が死ぬ間際に生を与えられて転移している。


しかし記憶はほぼなく、執着した部分しか自我が無い

能力や思考は継承しつつも欲望にまみれた操り人形だと言える。


仲達と道満は敵対者を打倒する心が高く

項羽とジンギスカンは戦いを望み殺戮心が高い

対して武蔵は自身が強くなることを望んだ


ところで坂本龍馬は何を望んでいたのか

彼の望みは自由である。

ゆえに混沌の影響は受けなかった。


「わしゃ、ここから逃げ出せるのかのう」

「せっかく見慣れぬ地に来たというのに何もできんとは情けない。」

目新しいことや珍しいものに興味を示す龍馬だが

ここでは自由に身動きするのが大変だった。


龍馬には大した能力はない

確かに剣術皆伝だが、実はさほど得意でもない。

最低限、身を守れればいいと感じていたくらいだった。

武蔵や項羽と比べたら全く話にはならない程度だと言える。


現状は拳銃で身を守れるとはいえ、

それはこの世界においては平民とさほど変わらない。

脱出を試みてはいるものの、隠れて領外へ抜けるのは大変だった。


そんな時、仲達の策で事態が変わる。

ヒューマン領内で軍が移動しだしたからだ。

恐れていた召喚者達の半分は戦争の準備に追われ

この地においての警戒が薄くなっていった。


龍馬は空気を読む力に優れており

事態が動くのを察知して行動に出た。


「三十六計逃げるが勝ちとはこのこと」


ところが領境付近まで来たとき一人の召喚者と鉢合わせしてしまった。


「あーおんしは、武蔵殿」


「龍馬か、こんなところで何をしている」


「わしゃ、どうも連中と気が合わんから逃げておるところじゃ」

「悪いが目をつむって忘れてくれんかのう」


「ふふふ、相変わらず飄々としてとぼけた奴だ。」

「俺も奴らとは合わん。武者修行に出ると言って抜けてきた。」


何のいたずらなのか、偶然なのかこの二人はこうして共に旅に出る。


一方、仲達の策は速攻で敗れ

本命であるダークエルフ領を攻めるまでもなく作戦は中断された。


さすがに待ち受けられているところへ攻めに行くほど

ジンギスカンも項羽も、単なる戦バカではなかった。

危険を感じ取って引き返したのだ。

この辺りは戦巧者でもある。


これは館メンバーの力によるものだ。

もちろんアイトの力もある。


この後また召喚者達が、どのように絡んでくるのかは

誰にも予測はできないが、一枚岩で無い事だけは確かなようだ。


言えることは、ほんの少しの時間だけ平和が訪れたことだった。


ただ、彼らから見て未来からきたという召喚者

その動向は敵味方ともまったく不明のまま時は動き出した。







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