冒険の旅3日目、アルベイン領主館での教育 気が付いたら周囲はみんな女性だった。
いやいや朝が来たけどなんだか釈然としない。
疲れてて結局俺は無意識で寝ちゃったみたいだけど・・。
朝、俺を抱き枕の様にしてた超絶美女(賢者様)が何食わぬ顔して朝食って。
それで結局、朝食の時に会話で年齢の話などを振ってみたんだけど
賢者様が500歳超えててそこから歳数えてないとか言い出したんだ。
ハイエルフは長命だって知ってたけど、邪神討伐経験3回だって話を聞いてあきれた。
見た目は20代前半だよ、異世界怖すぎるだろ。
実はハイエルフはかなりの長命種で数も少ない。
1000歳を超える人も普通にいるとかで、寿命とかは理解されていない。
そしてサリナさんもぶっちゃけビーストのクォーターらしいことを知った。
見た目は人なのに身体能力が高いわけだ。
そして寿命も人より長いらしい、一応年齢は見た目通りだからいいんだけどな。
ビースト族っていうのは、寿命が300歳くらいだそうだ。
何の動物が元になってるのかも影響があるという話で結構複雑らしい。
気になるサリナさんは、虎人の血が流れてるとのこと
満月の時が繁殖期になりやすくて、なんだか狼男を思い出した。
ちなみに魔族も平均寿命800歳は優に超えるらしい。
俺の母さんが、おばあちゃんじゃないことだけを祈ろうと思う。
そして寿命が長い種族と言うのは、子供が生まれることがすごく珍しくて
しかも他種族との混血が生まれる確率はさらに低くなるとのこと。
だから俺が生まれたのはかなり珍しい出来事みたいだ。
それと召喚者である勇者についても、女神の加護がある限り不滅の存在だという事。
要するに寿命がほぼ無いというか歳を取らないそうだ。
邪神討伐後に女神から解任されるか自分で帰るといえば帰してもらえるらしい。
ほとんどはある程度こちらに残ったら帰っていくんだけど、いろいろ理由がある。
残る人の多くは奥さんが出来て、その時に子供を作ってるんだ。
しかし自分だけがそのままなのに、奥さんが年取って死んだのを見てめげて帰る。
だよなー子供が、自分より年上の姿とか見るのも嫌だし。
人って誰でも死ぬの嫌だけど、200年とか過ぎたら心が先に壊れそうな気がする。
ドワーフやエルフとはまだ会ってないけど
寿命は500歳と600歳くらいらしい。
それで気になるドワーフの女性なんだが
オタクの俺としては、昔のロープレにあるドワーフ女性に髭があるのは嫌だ。
しかし髭もないし見た目は人とそれほど変わらないみたいで安心した。
身長が低くてがっしりした体格と言うのは、お決まりだと言える。
代わりにロリコン体系なんて言うのは、珍しい存在だと言う話だった。
そしてもう一つ気になるアールブという種族、魔族に対して天族とも言われる存在。
実は見たことある人がいない。
魔族に羽があるように羽があるらしくて、見た目が天使の様だというのだが
見たことがないから何とも言えないのが残念だ。
ハイエルフが美しいのだからそれの最上位ともいえるアールブは、さらに美しいのだろう。
原初の存在に最も近い人種だと言われてて寿命があるのかも不明だ。
さすが天使と言われるだけはある。
そして、エルフと言えば胸のあるなし論議がオタク界隈でささやかれる。
実物を見た俺が結論から言おう、人と変わらん。
大きいのもあれば小さいのもあるそうだし、一律一緒なんてあるかと言われた。
ハイごもっともです。
でー話は戻る、俺やサリナさんにみたいな混血は生まれにくくても、
この世界には一定数の混血がいてそれぞれの種族の特徴を併せ持っているみたいだ。
聞いた話では、むしろ混血種の方が優秀だと思った。
だけどヒューマンは混血が大嫌いで、人と亜人の混血など忌み嫌う存在らしい。
人主上主義かなとも思ったけど、逆に種族の生い立ちからコンプレックスの塊みたいだ。
だから優秀な混血種が見た目が人だというのが許せないということに繋がるみたい。
何だか前世のどっかにもこんな考えの人種がいた気がするのだが気のせいだと思いたい。
それもあって俺の両親の結婚というのは、人から見たら前例のない最悪の出来事でもある。
何と言っても勇者は、他の種族の英雄並みに優秀な人の代表だしな。
だったらその優秀な血を人に残して行けという感じなんだろう。
いきなりの脱線だったけど、朝食の時の話はこれでおしまい。
まだまだこれから聞きたいことや知りたいことが沢山あるからまた今度にしておくつもりだ。
そして俺の課題だが、午前中は剣術、午後は魔術、夜はその他の学術と言う詰込み教育だ。
二人が俺に付き合っている間のギルドが心配だけど、
結局、昨日会っていない副ギルド長が運営の実権を持っているらしい。
優秀な事務系の人だという話だった。
何か用があれば向こうから連絡が来るから気にしないって感じだったけど
昨日見た出来る人たちという姿とは違いすぎて、気が抜けた。
と言うことで今は素振りの練習中。
どうやら親父直伝の訓練ということで、やたら重い刀を振ってる。
これ、見た目が刀と言うか木刀なんだけど、
どうも比重がかなり重い金属がこの世界にはあるみたいだ。
握りの感覚を失わずに訓練するにはこの形状で重さがあるのが望ましいと聞いた。
でだ・・・もう既に腕が上がらない事態なんだ。
「サリナさん、もう腕が上がらないです。」
「とりあえず、訓練中は師匠と呼べ。」
「はいっ師匠!」
軍曹モードに入ってると怖そうだと思ってたけど、実は師匠モードだった。
まあ変わんないけどな。
「なら腕が上がるようになるまで、走れ。」
こんな感じで休みなく、これが駄目になったら回復するまでこれをしておけと言う。
そしてその間サリナ師匠はと言うと、俺より重い刀を軽く素振りしまくってる。
また、それが残像に見えるから恐ろしい。
しかし勇者様や剣士様は自分以上だというのだから、この世界はどうなっているんだろう。
「師匠っ、もう走れません。」
「なら素振りしておけ」
「いや、それもまだ厳しいです。」
「仕方ない、それなら腹筋してろ。」
とまあ、こんな感じだ。
そして今、身体中に力が入らなくて、
立つのがやっとのクラゲに等しい俺がいるのだが・・・。
「ここから剣技の訓練を行う」
「はいっ、師匠」
何でも変に力が入らないほうが、剣術を覚えるのにいいとかいう論法らしいけど
身体が動かないのはどうすればいいのだろう。
こんなこと考え付いた親父にも文句が言いたい。
そこでサリナ師匠が持っているのが筒に紐がついたやつだ。
訓練道具だというが・・実はこれ俺の記憶にある。
カンフー映画で師匠が弟子と繋がって動きを覚えるのに使ってたはずだ。
・・というわけで取り付けられたら、まさしくカンフー映画状態でした。
師匠と俺は棒でつながり、俺はいわゆる操り人形状態。
手首足首だけでなく腰やらまで、つながるという新設設計。
ひもで縛られてるから俺は何もできない、力も入らないしな。
でだ、師匠が動けば当然そのように俺も動く。
手が上がれば手が上がるし、腰が下がれば腰が下がる。
足が前に出れば足が前に出る。
親父め、あのカンフー映画見てたな。
これで憶えられるのかどうかは全く怪しいのだが、とりあえずなすがままだ。
「師匠っ、これいつまで続くんでしょうか?」
「一通りの型が終わるまでだ。」
剣術の型がこうも多彩で長くかかると思ってなかった。
とゆうか、縛られた紐が食い込んであちこちが痛いんだけどな。
そしてやっとの休憩。
そう、お昼時間だ。
昼食前に風呂に行けと言われて、賢者様に回復魔法をかけてもらった。
「いやーこれって極楽だな。」
もうサリナ師匠が隣で風呂に入っていても俺は動じない。
俺はスキル取得できないのだが、既に悟りの境地は会得した様だ。
さすがに精神年齢18歳だとぶっちゃけた俺のことを聞いてくれたようで
身体を洗ってくれることはなかったのがうれしかったり寂しかったりするが
それはそれでよし、一歩前進だ。
但し相変わらず子ども扱いなのは変わらない。
そして昼食のメニューは、サリナ師匠に言わせると
身体を動かしまくった後はひたすら肉なのだそうだ。
炭水化物一切なしで多少の野菜は箸休めにあるのだが、とにかく肉料理。
そしてこの肉だが、獣系魔物の肉だそうだ。
サリナ師匠が時間を見つけては狩りをしているらしい。
何でも普通の獣肉より魔素が多く混じっていて、身体にしみわたるという話だ。
要は血と肉と魔力が補えるという論法らしい。
これは親父のせいではなくビースト族の習わしでもある。
そして俺は気になっていた話をこの昼食の時間にも聞いてみた。
まずエルフは草食なのか?
いいや、目の前にいる賢者様は肉をバクバク食べているから聞くまでもない。
人と変わらんとか言われるだけだろう。
そこで少し質問の仕方を変えてみた。
前世の世界にあったみたいに宗教で食べていいものと悪い物とかないのかという話だ。
それとビースト族の中に草食系のウサギとかいないのかというのも聞いてみた。
まず、簡単な答えの方から
ウサギはこの世界では草食ではない・・・ハイ終わった。
だよなー、なんとなく気が付いてたよ。
きっと雑食で肉も喰らうんだろ。
魔物の一角ウサギは肉食べるからな。
それで思い出したんだが
前世だった時でも、ある島にいるウサギは、人がキャンプして残した焼肉を食ってた。
子供の頃の俺はそれが面白くて、自分が食うよりウサギに与えてたくらいだ。
草食系の動物が肉食ったらどうなるのかは知らんが
その島はそれでウサギが増殖してたから、案外平気なのかもしれない。
今となっては責任も持てないし知らんけどな・・。
ということでウサギ系の獣人はいるが、草食ではない。
元々ウサギ自体が草食じゃないからだとも言える。
でだ、じゃあ草食の獣とかはいないのか?
答えは、いないだった。
そこで馬も牛も草食じゃないのかと気づいた俺は、何を食うのか聞いたら、
なんでも食うから残飯を与えるそうだ。
いやーこれには、犬猫感覚過ぎて少し笑えた。
そこで犬猫の話を出したら、なんだそれと返された。
どうやら犬猫はいないのだろうか?
一応犬とはオオカミを飼いならしたもので、猫とは虎を飼いならしたみたいな感じだと伝えた。
そうしたらそういうのはテイマーだと言われた。
動物使いのスキル持ちなのだが、特に獣を狩りに使うことが多いそうだ。
テイマーのことは知ってたけど、そう素直に返ってくるとは思わなかった。
犬の獣人や猫の獣人などオタク心をくすぐりそうな存在が
無いと言われたようなものだから少しがっかり。
語尾にニャーとか付けて話したりする存在はこの世界ではいないようだとあきらめた。
そこでついでに言葉の違いはあるのか聞いた。
前世では国ごとに言葉が違ってたからだ。
答えはそんなものあるかだった。
神スペルが教えた言葉は一つしかないのにわざわざそれを変えたら不便だと言われた。
ハイおっしゃる通り、俺の前世の世界では言葉が不便でした。
そして本題でもある宗教系の話だ。
宗教で食べたらいけない食い物があるのか?
まず宗教だが、そういう考えや教えみたいなのはないらしい。
だよなーこの世界って女神さまが近いし、神話の世界と重なる存在が生きてるもんな。
だが種族ごとにひいきの女神様がいる。
まあ英雄物語で出てきたから何となく感じてた。
それぞれの種族に力を与えた女神様だ。
それとは別に、いわゆる3大女神というのは全ての人が認めているし
その上にいるスベル神なんてのも同じだ。
一応普通に神と言えばこの4人を示しているらしい。
そこで気になったのが聖女様のあがめる神
宗教団体っぽい聖道協会、聖道騎士とも同じだと言えるけどそれは何か?
速攻で返ってきたのは、すべての女神様でした。
一人が欠けても世界は成り立たないだろうと言われた。
神話に近い世界だし、確かにその通りだわ。
で・・聖道協会ってどこにでもあるのかと言えばそうでもない。
言わば聖女様専用機関、組織みたいなものだった。
前世の教会とは大違いなのは、宗教という概念がないからだと気が付いたよ。
神様と直接話せる存在がいたら、前世の世界なら詐欺者扱いだがこっちじゃ当たり前だとされてる。
だから聖女様を守り支える存在として聖道協会がある。
教会じゃなくて協会だもんな。
世界中からの支援で成り立ってる存在ってわけだ。
そして気になるのは聖女様は、人しかいないのかと言うことになる。
要するにヒューマン専用職かどうか。
聞けば聖女と言う存在は勇者を導く者とされるらしい。
よって、勇者召喚するヒューマンに聖女がいるのが当たり前。
対になる存在ってことも示すらしいけど・・。
じゃあオタク心として聖女様と勇者様って色恋に発展しないのか聞いた。
そしたら何故かすっげー笑われた。
だってさ、前世の世界じゃ定番路線だよ。
人が恋して愛し合うのに理論・理屈など無いし、
定番や決まりなどあるかと言うことで笑われたっぽい。
これだから子供は困ったもんだと、おかげで子供扱いがひどくなった。
そして笑われたところで昼食終了。
午後からは賢者様による魔法の授業だ。
いきなり座学なんだろうと覚悟してたら、
午前中と同じ訓練場でいきなり魔法をぶっ放された。
何の説明もなく魔法はこういうものだとか言い出して次々魔法を放つ賢者様。
おーい俺置いてかれてるよ。
やりたい事やらせておかないとおっかなそうだったからそのまま見てたけど。
どうやら同じ系統の魔法を違う方法で放ってた。
その後で説明しながらまた見せてくれたのだけど
「魔法の系統には、まず精霊魔法と術式魔法があります。」
という定番の話から始まった。
「何が違うのかと言えば魔法力の元が異なります。」
「精霊魔法は精霊の魔力を利用させてもらい。」
「術式魔法は自らの魔力を使います。」
うんうんこれはある程度知ってる。オタクだったしな。
「だから精霊魔法と言うのは自分の魔力が減らない利点があります。」
「でも、いいところだらけではないですよ。」
「行使するまでには、多くの制約があります。」
「まずはその魔法を扱える精霊との契約。」
「そして魔力は精霊自体の格によるものが大きいです。」
「格が高くなければ上位の魔法も行使できません。」
この辺りはオタクならある程度は理解する範囲だった。
「ここから更に、精霊を成長させる方法があるという話をしましょう。」
「魔法の威力を上げたり、新しい魔法を行使するためには」
「精霊の格、魔力を上げる必要があることは理解できましたよね。」
オタクとしては格上精霊と契約して、ハイ終わりという感覚しかなかったけど
精霊自体の力を上げる成長させるという考えは初めて聞いた。
「そこで必要になるのが自分の魔力です。」
ああ・・精霊魔法もやはり自分の魔力に関係することに変わりはないという事か。
「まず精霊との契約では、この魔力の相性が大きいのです。」
「それは行使者の魔力が精霊の力を引き出したり成長させる糧となるからです。」
言い方変だけど精霊用のエネルギータンクと言う役割でもあるんだな。
「半端に感じるかもしれませんが、ここから術式魔法の話も加わります。」
「魔力には色があり、魔法には得手不得手が存在します。」
「それは何かと言えば術式論理が精霊と重なることに由来します。」
「火水風土と言うのが精霊の基本です。」
「これは4大精霊を示しますね。」
「術式魔法もこの4つから構成されます。」
「となれば、必然的に火は水が苦手だということに気が付きませんか?」
「あー、火は水によって消せるというやつですね。」
「アイト君、正解です。」
賢者先生、これかなり優しい質問だから・・。
「これにより得意不得意というものが生まれ、これは精霊との契約などにも影響します。」
「基本的に魔法と言うのは、相性があり普通は1種類を扱います。」
「これをシングルマスターとも言います。」
「火系魔術師とか、水系魔術師とかいう方々です。」
「こういった個人の持つ魔力の特徴を色と呼んだりします。」
「特色っていう言葉がありますよね。同じように魔色と言われます。」
「これを知ることで自分にとって一番力が発揮できる魔法が理解できます。」
「要するに得意なものを伸ばすやり方です。」
「これが一番魔法職の近道なので、専門魔術師が存在するわけです。」
「では、他の魔法が使えないのか?って思ったりしますよね。」
賢者先生の授業はなんだか難しそうで理解しやすそうで
不思議だけど聞いて行くと分かってくる感じもする。
「答えは全て使うことが出来る。です。」
「ところが苦手な魔法はやはり成長しにくいですし、実は制御もしにくい。」
ほうほう、よくはわからんけど。
「魔力は体内の基幹から発します。」
「この魔色が出来る原因は、この基幹の構成に大きく影響します。」
「人によって魔色が異なるのは、この基幹の構成が異なるからと言うことです。」
「ですから魔力があればすべての魔法を行使できますが、上手く使えないものもある。」
「と言うことになります。」
「この基幹を魔法基幹とも呼びます。」
あー役割によって回路が異なるって感じなのかな。
「これは持って生まれたものが大きいのですが、この基幹自体も成長させることはできます。」
「但し、かなりの年月が必要になりますけどね。」
そこはすぐに理解した。
賢者先生はすごい年月をかけて、全ての魔法が扱えるようになってるってわけだ。
言わば体内回路を改造するのに時間をかけて行わなければ難しいと言う事なんだろう。
「ですが、先ほど言ったように持って生まれたものですから」
「基幹に個人差があり、他の人と異なって二つや三つでも容易にあつかえる」
「そういう存在もいると理解してください。」
「そういう方はダブルマスター、トリプルマスターと呼ばれます。」
「この二種類の魔法を容易に扱えるというのは、混合魔法への道になります。」
「火と風を使ったものとか、水と風を使ったものとか」
「同時に二種類以上の魔法を行使すると出来上がるのが、混合場法です。」
「これは単独上位の魔法よりワンランク上の魔法威力になります。」
「要するにレベル1の二種類の魔法で作った混合魔法は、」
「単独のレベル2魔法より威力が高いわけです。」
「こういう組み合わせが出来るのが、術式魔法の大きな特徴になります。」
「では同じ系統の精霊魔法に戻りましょう。」
「精霊魔法ではこのような混合魔法は出来ません。」
「精霊さん同士が困っちゃいますからね。ふふふ」
いきなり可愛い顔してもそこはニヤリとするだけに留めよう。
「先ほど話した魔法基幹によって、精霊が好むものが変わるのは理解できますよね。」
「火が得意な人は火の精霊となるのもこの基幹と精霊の相性です。」
「ですから術式と同じように、複数の精霊と契約できるという方もいるのです。」
あー賢者先生もそうなんだよな。
さっきぶっ放してた魔法を見て気がついたよ。
「高位の精霊と契約できるかどうかと言うのも、この基幹によります。」
「ですから魔法基幹を成長させたり、機能を上げるというのが魔法術師として最大の課題です。」
「はい、魔法の話はとりあえずここまでにしておきます。」
「そして、アイト君の課題ですが、この魔法基幹を成長させるという話になります。」
「はっ??」
「ふふふ、今だとまだ魔法使えないですよね。」
「ですからその間は、魔法基幹を鍛えておくのですよ。」
「ああ、そういう事なんですね。」
「ええ、封印が解けていくうちに魔法もすぐ使えるでしょう。」
「そうなったときに大きな差が生まれるのがこの魔法基幹ですから」
「かなり回りくどい話をしましたが、」
「魔法を覚えるのよりも魔法基幹を鍛える方が難しいですよ。」
「だって簡単に言えば精霊と契約したらすくに魔法が使えますし」
「術式覚えたらそれに匹敵する魔法が扱えるんです。」
「実はそこはそれほど大変でもないんです。」
「魔法基幹の力が大きいだけで」
「上位精霊との契約や、同じレベル1の術式魔法の威力に差が出ます。」
「魔法基幹が成長すると魔力も高くなりますしね。」
要は燃料タンクとエンジンってとこだな。
なら魔色ってのはガソリン、水素、電気の違いって感じかもしれない。
「それで先生。俺は何をすればいいですか?」
「はい、いい質問ですねー。」
うはー賢者先生の応対は優しすぎる。
「では、魔力とはそもそもなんだと思いますか?」
げっ難しいな。
「さっきの食事の時、魔素がどうとか話に出てましたけど」
「その魔素とかいうのは空気上にあって、それを魔法基幹に取り入れたら魔力になるとか?」
「はい、良い答えですね。」
「魔素というのは、魔力の素と言う意味に解釈すればわかりやすいです。」
「そして空気中にあるという話でしたが、空間に存在するものだと考えてください。」
「全ての物質にも含まれ、この世界の空間上に絶えず存在する物。」
むむむ。分子とか原子とかこの世界を構成するものの中に特徴があるのかな。
地球には魔法とかなかったから、そこの違いか・・。
たしかに空気とか水とか同じだしな、地球より余分に何かがあるってことだな。
「ですから、この魔素を基幹に取り込み、その後放出するを繰り返しましょう。」
「えーと、深呼吸をする感じでしょうか?」
「うふふ、近いですけど行うことを簡単に言えば、精神の集中と解放ですね。」
「肉体的に何かをするのとは違います。」
ほうほう、座禅とかしたらいいのかな。
「ではまず基礎訓練として、魔力を感じる所から行いましょう。」
「アイト君、私の手を握ってくださいね。」
「左右ともですよ。一度循環させてみましょう。」
「右手から左手へ」
「何か感じますか?」
正直超美形な賢者先生と手を握って近距離にいるだけでドキドキしてて感覚がわからない。
「気が付くまで繰り返しますからね。」
「何かをつかんでください。最初はとても感覚的なものです。」
いえいえ申し訳ないです。感じるのがとても感応的なものです。
俺のよこしまな心が悪いです。
気持ちが落ち着いてきたけど・・
おおっ、何だかあったかいのが流れるのが感じるな。
「何だが温かいものが流れます。」
「はい、よくできました。」
「そういった感覚的なものが多いですからね。」
「それでは次に流すのではなく送り込みます。」
「アイト君、手を離して下さいね。」
「私が、アイト君の頭の上に手を置きます。」
「そこから送り込んでみますよ。」
慣れてきたし今度は速そうだ。
「うーん、なんだか静電気みたいな感じでピリピリします。」
「はい、よくわかりましたね。」
「今のは送り込むことをしました。」
「自分で取り込むのとは少し感覚は異なりますが、感じるものは似ているはずです。」
「この感覚の感じ方も個人差がありますからね。」
「ですから精神を集中させて、取り込むイメージを膨らましましょう。」
「イメ―ジと言うのは魔法でもかなり大切になります。」
「あのーなんだか立ったままだと集中しにくいから座っていいですか?」
「ええ、いいですよ」
「最初は自分なりの方法を見つけてくださいね。」
「では今から1時間ほど自主訓練をしてください。」
「時間が来たらお知らせしますから続けていてくださいよ。」
「はい、わかりました賢者先生。」
こんな感じで、俺にとって苦手でかなり面倒臭そうな訓練が始まった。
あったかいのやピリピリした感じ
どこから取り込むのか考えたほうがイメージしやすいよな。
となるとやっぱ手の平か。
座禅スタイルで手のひらを上にして精神集中。
そしてイメージ。
うーん手の平で呼吸する感じ・・としかイメージできない。
これで流れた時の感覚と近いものを感じればいいよな。
そして1時間
最後の方はやっと指先にピリピリ感がしたけど・・。
単に痺れただけだったら、やり方失敗かな。
「はい、アイト君 時間ですよー。」
「今日はここ迄で終わりです。」
「続きはまた明日ですからリラックスしてください。」
「なんだかずいぶん緊張状態になってたみたいですから、方法とか考えたほうがいいですね。」
「あーやっぱり、そうだったんですね。」
「何となく違和感がありました。」
「焦っちゃだめですよ」
「自分を追い込むのはダメです。」
「どちらかと言えば寝ちゃうつもり位にリラックスしたほうがいいです。」
「はいっ、ありがとうございました賢者先生。」
賢者先生の授業って優しさがあふれてて癖になりそう。
でも戦闘とかになると豹変する人もいるからなぁ。
そして夕食の時間。
いつもの質問コーナーです。
実は本題の質問に入ろうかと思ってるんだよな。
まずは・・。
俺の両親は生きてるのかどうかだったけど
当然生きてるって話だ。
いやいや死んでるって思ってた。
だって生まれてすぐの赤ん坊を放置とか・・。
それについては、生きてはいるが手が離せない状況だということらしい。
何故封印されたのかは、俺の正体を隠すためだというのはわかってる。
ある意味隠密行動が必要なのだろう。
それで、その封印を解くために会う聖龍様の話を聞きたいところだ。
どこにいるのかと思えば、山の上・・って、いやそれは見当がついてるから。
普通に古龍が街の中や畑にいたら怖いわ。
どうやらここからさらに北へ向かうと大きな山があるらしい。
但しその山のどこにいるのかは不明だ。
まぁサーチがあるから問題はないとは思うけど・・・
っと思ってたら結界の中だから見つけるのは大変だってさ
サーチで見つかるとかありえないって言われた。
しかもその山は、魔素が多いから魔物も多いそうだ。
かなり危険な相手がいると想定する必要があるってことらしい。
魔素の問題だけじゃなくって邪神軍団も関係してくるからだ。
それでビビってたら、賢者様もサリナさんも
一緒に行ってくれると聞いて少しは安心した。
そして魔王母さんの話
これは育ててくれた母さんも聞いておけと言ってた
封印と密接してるかもしれないしな。
まず、一番気にしてたおばあちゃん説は無かった。
年が若いから賢者様が魔王ちゃんって呼んでるんだという感じだ。
しかも美人な賢者様が言うには美しい人だというので、それは大歓迎だ。
先代魔族英雄王の末娘さんで、一番魔力があるから魔王様になってたらしい。
現在の魔族の英雄でもある。
魔族領では早くから魔王様認定されていたことで
統治は安定していて政治などは優秀な側近がやっているみたいだ。
定番の四天王のような人たちもいるらしいからそのうち会うといいと言われた。
聖女様に続いて、会う人リストが増えた。
そして魔族と同じようにそれぞれの種族においても
種族英雄の兄弟や子供たちが代行で統治を行っているらしい。
ヒューマンだけが別だという感じだった。
そこが一番謎なので聞いてみたが、邪神の影響があると考えられている。
うん、そうだろうと見当はついてる。
だから聖女様が心配だったんだ。
しかし、聖女様が現在いるのはヒューマン領ではないという話。
何か心配してたのは取り越し苦労だったらしい。
勇者召喚の後で、身を隠すために移動したという。
何故そんなことになったのかは聖女様に聞けと言われた。
うーん、育ての母さんと同じですべてを話してくれはしないようだ。
これも何かの課題や試練で、封印と関係あるかもしれないから我慢することにした。
そして夕飯後は学習の時間。
って聞いてたから賢者先生だと思ったら違った。
えーっとなにこの幼女
「アイト君、今ギルドで副ギルド長をお願いしているララちゃんですよー。」
「いえ、ギルド長 ララシアとお呼びください。」
「あらあら、ララちゃんも領主館に住んでるんですけど昨日は紹介できなかったですからね。」
「ギルド長の残務整理で泊まり込みで仕事してたんです。」
「それとララシアですからね、アイトさん。」
「あのー、失礼ですがお子さんとかいうことはないですよね。」
「うふふ、アイト君。ララちゃんはこれでも成人ですよ。」
「ギルド長!これでもはないですよ。 ララシアはこれでも大人です!」
いやーこれでも・・に反応して自分でこれでもって言っちゃってるからツッコミたい。
俺も10歳で身長は低いけど、更に低いって・・。
賢者様曰くドワーフ族らしい、しかもかなり珍しいとされるロリドワーフだ。
これにはオタク心がたまらない。
どうやら、かなり以前から賢者様の従者だったらしい。
怖いから年齢を聞くのは、やめにしておく。
そして魔法具を作るのはこの人で、賢者様はその魔法具に魔力や術式を加えるのだとか。
ということは便利アイテムの製造者は、この人だったということだ。
他にもサリナさんの装備なども作っているとかでドワーフらしいといえる。
「ではアイトくん、このララシアが今日からお勉強の先生です。」
「ララシア先生と呼んでください。」
「はい、先生。」
「ララシアが抜けていますね。」
うはっ・・意外にめんどい人だ。
「はいっ ララシア先生 よろしくお願いします。」
「では、ララシアの研究室で授業を行います。」
「ついて来てください。」
ほお領主館の中ってまだ行ってないところ沢山あるんだよな。
研究室とかまであるとは・・。
「アイトくん、何きょろきょろしてるの?」
「いや、そういえば領主館の中って行ってない場所がまだあるんだって思いまして。」
「ふーん、領主館の中には図書室もあります。」
「ララシアは、基本的にそちらにいる事が多いです。」
自分のこといちいち名前で言うのが、余計に幼く感じてしまうんだよな。
「あとは、食事を作ってくれる人もいるけど」
「その感じだと会ってないでしょ。」
おおっと、いつも食事が勝手に出来上がってるから気にしてなかった。
当たり前だの事だよな。
「ええ、まだお会いしていないです。」
「では、ララシアが少し案内してあげましょう。」
「こっちが厨房になります。」
「あっ、ララシア様。」
「夕飯は大丈夫でしたか?」
「ええ、ララシアはギルドからの帰りにお外で食べてきました。」
「でもお仕事も落ち着いたので明日からお願いね。」
「はい、それはもうデザートもちゃんと準備しておきますです。えへへ」
「あら、よくわかってますわね。」
「それで、アイトくん この人が料理人のリアちゃんです。」
「初めまして、挨拶が遅れましたアイトです。」
「いつも美味しい食事をありがとうございます。」
「それはそれはご丁寧に、リアと言います。よろしくです。」
リアさんは小柄な女性の獣人なんだけど、待望のウサギさんだった。
まあ見た目は人と同じで耳と尻尾があるだけなんだけどね。
歳は聞かないようにしたが10代にしか見えない。
かわいい系だし、リアルバニーガールだから何か嬉しい。
しかし知らなかったとはいえ
食事の時の俺の質問を聞かれてたらすごく恥ずかしいな。
「リアちゃんはね、一流の料理人でもあるけど」
「Sクラス冒険者でもあるのよ。」
「えーっ、サリナさんに続いて二人目?」
世界でも希少なSクラス冒険者が二人もいるとかどうなんだろ。
「すごいですねーSクラスとか珍しいですよね。」
「ええ、ですが最近はあまり狩りに出てないですけどね。」
「賢者様のお食事を作るのが専門になっちゃいましたー。えへへ」
「Sクラスが珍しいとかいうけど、ララシアはSSクラスですよ。」
「は?!」
今何か聞きづてならない事を聞いた気がする。
「だからー、ララシアはSSクラスなの。」
「Sクラスよりさらに希少なSSクラスですか・・。」
「ええ、今は世界で3人しかいないわ。」
「ララシアと剣士ちゃんと聖女ちゃん」
ええーい、まてまて また聞き捨てならない話が出た。
剣士様はまあ納得できる。
ララシアさんは納得は出来ないが良しとしよう。
聖女様ってなに?!
俺のオタク知識だと聖女様は治癒魔法しかできなくて、ひ弱な設定なんだけど。
「あのー聖女様もなんですか?」
「えっ、何言ってるの・・・賢者様の弟子ですよ。」
「ヒューマンで最高位の魔法師じゃないですか。」
まてまて・・・くそっ聞いてないぞ
俺の質問になかったから教えてもらえなかったのか・・。
「知りませんでした。治癒師の方だと思ってました。」
「あら、治癒ならララシアの方が得意よ」
「ララシアは光魔法師でもあるもの」
「聖女ちゃんは4種の魔法が使えるけど光魔法は使えないわ。」
まてまてーい
俺のオタク知識にある設定がことごとく崩れて行くんだが・・。
確かにドワーフが治癒魔法設定だというのもオタク記憶にはある。
が、しかしだ・・どうにも納得がいかない。
「アイトくん、難しい顔してどうしちゃったの?」
「えっ、いや何でもないです。」
「SSクラスって3人しかいないんですね。すごいなーははは」
これは笑っておくしかないな・・。
「ええ、昔は3人でパーティ組んでたしね。」
「冒険者の指導してくれたのは賢者様よ。」
「だいたい賢者様は、世界で一人しかいないSSSクラス。」
「トリプルSマスターでもあり、全魔法が使えるエレメンタルマスターでもあるわ。」
は??・・いやいや、もう俺は驚かない。
動じない・・・のは無理だなこれ。
この領主館って、どんだけ防御力高いんだよ。
ひょっとしてこれも俺一人の為なのか・・そうなのか。
「ははは、ララシア先生 いろいろ教えてくれてありがとうございます。」
「あら、ララシアの授業はまだこれからよ。」
「ええ、そうですね。よろしくお願いします。」
もう考えるのは無駄だ。
色々知っただけで満足したことにしておこう。
「それじゃあ、リアちゃんまたね。デザートお願いよ。」
「はい、ララシア様おまかせくださいー。えへへ」
ウサギさんに少し癒された後、
俺は研究室へ案内された。
この研究室は領主館の地下にあって、室内は思ってたよりかなり広い。
天井も高いし・・。
しかも地下なのに暗い感じは全くせず、とても明るいのだ。
まあ光魔術師なら当たり前か。
ここは、いわゆる学者の研究室と言うより工房と言ったほうがいいな。
炉があったり鍛冶工具があるから装備とかはここで作られるようだ。
それとこれは何だろう?
「ララシア先生 これは何ですか?」
「はいはい、それはね符呪器っていうもの」
「装備やアイテムにいろんな効果を付けるための装置よ。」
「魔法具を作るのに使うんですね」
「そうよ、アイトくん、理解が早いわね。」
何となくRPGの世界観で理解したけど実物は初めてだ。
「でもここらにあるものは、見るだけならいいけど迂闊に触っちゃだめよ。」
「ララシアサマ、モドッタ。」
「ララシアサマ、カエッテキタ。」
「へっ!!なっなに?」
「アイトくん、大丈夫よ私の助手ゴーレムちゃんだから」
この小さいロボットがゴーレム?ってララシア先生と同じくらいの大きさか。
スペース映画に出てきそうな形なんだが・・R2とかなんとかだった気が。
しかも2体。
「すごいですね、話せるゴーレムとか」
「あら、アイト君 会話もできる人と見た目が変わらない子もいるわよ。」
えーっ、もうそんなのアンドロイドの世界じゃん
「今は図書室にいるわ、まぁ図書室ってララシアの書斎みたいなものだし」
「普段は領主館のお掃除をしたりしているわよ。」
「あーこんなに大きな屋敷なのにメイドさんがいないのは変だと思ってました。」
「興味があるなら呼んであげましょうか?」
「ええ、是非お願いします!」
うおーっ これは面白そうだ。
メイドアンドロイドとか絶対見てみたい。
シュッシュッン
「おわっ!」
「転送よ。私のところに一瞬で移動出来るわ。」
「ララシア様お帰りなさいませ。」
「ララシア様、何か御用がありますか?」
「ララシア様ー。お風呂入れたよー。」
「みんなご苦労様、呼んだだけだからしばらくしたら戻っていいわよ。」
気づくとメイドアンドロイドが3体いた!
そのうちの一体が何故か知らんが、幼女だ。
「すごい、見た目が人間と変わらないです!」
「ええ、こう見えてもララシアは、錬金術師。」
「エルダードワーフの錬金マスターなのよ。」
えっ何か聞いた事が無いものとかいろいろ耳に入った。
「えーと、エルダードワーフとは?」
「知らないの?エルフの上位がハイエルフって言うでしょ。」
「はい、賢者様がそうだと聞いています。」
「ドワーフの上位はエルダードワーフって言うの。」
只のドワーフじゃなかった!
どおりですごく優秀なわけだ。
「あのーそれで、錬金マスターとかいうのは?」
「錬金術ってわかる?」
「はい、それくらいでしたら何となく理解できます。」
「錬金術師の最高位が錬金マスター。」
「もともとララシアは錬金術で英雄様達を支援する存在なの。」
「そもそもハイエルフやエルダードワーフには、英雄が誕生しないわ」
「それはね。元々の種が高位種だから必要ないのよ。」
「最高位種と言われるアールブに一番近い種だって言われるわ。」
「だから見た目も違うでしょ。」
「はい、理解しました!」
他のドワーフとか見てないけど、ロリタイプと言うのがきっとそうなんだろうな。
この辺りは触れないでおこう。
きっと歳を聞いたら驚愕なんだろうな・・・やばいな異世界。
「そして、このゴーレムが作れるのはララシアだけよ。」
「本来は戦闘用なんだけど、汎用性能が高いから何でもできるわ。」
うわー戦闘メイド来たー!
でもちっちゃいのが一人いるけどな。
「ひょっとして英雄装備とか勇者装備とかもララシア先生が?」
「ええ、そうよ」
「それ以外に魔法具や薬も作るわ」
「すごいです!」
ララシア先生も賢者様並みの英雄クラスの超優秀な存在だった。
「それで、ララシアがアイトくんに教えるのがその錬金術なの」
普通の学習かと思ってら全然違ったー。
そうだよな文学とか数学とか学んでも仕方ないもんな。
「それは、ありがとうございます!」
錬金術とか楽しそうだ。
「それじゃ、ゴーレムを返す前に挨拶とか紹介だけしておくわね。」
「アイト君がこの屋敷にいるなら必要にもなるだろうし。」
「はいっ」
「まずこの子は、ファースト」
「近接戦闘特化型、呼び方はファスでいいわ。」
ふんふんポニーテールのメイドさんがファスね。
「次にこの子が、セカンド」
「射撃戦闘特化型、呼び方はセカでいいわ。」
はいはい、サイドテールのメイドさんがセカと。
「最後にこの子が、サード」
「汎用戦闘型、呼び方はサンでいいわ。」
小さいツインテールのメイドっ子がサンちゃん。
「あのー、この子だけ何故小さいんですか?」
「ええ、オプションパーツを装着するからよ。」
「それによって多彩な攻撃手段が生まれるの。」
「今のところ、ララシアの最高作品だわ。」
「一番強いし・・。」
へっ?この小さい子が一番強い??
パワードスーツみたいなものでも装着するのかな。
「ララシア先生、なんだかすごく気になります。」
「それじゃあ、お見せしましょう」
シュッパッ
「おおおおおお、大きくなった。」
これはまさしくロボだ、装着と言うより搭乗だな。
この部屋が広くて天井が高いというのはこの為だったんだ。
「わかりました、それで小型化しているんですね。」
某ロボットアニメ系でも汎用機が一番性能が高かったもんな。
「そうよ、アイトくん」
「前衛でも後衛でも支援でも何でもできるし、一番頑丈。」
「オプションパーツを変えたら飛翔も可能なのよ。」
オタクにとって夢のような世界だー!
「ララシア先生、すばらしいです。」
「ちなみにファスとセカが冒険者Aクラス相当で、サンはSクラスに匹敵するわ」
「おお、すごい」
領主館の防衛力がさらに高くなった!
確かSクラスというのは下級龍を単独討伐可能だったはず。
下級龍以下のワイバーンなんか空中戦で蹴散らしそうだな。
ここでいう下級龍と言うのは一般的にドラゴンと言われるものだ。
要するにSクラス冒険者とは、言わばドラゴンバスター称号者でもある。
ちなみにSSクラスともなれば、中級龍が討伐可能。
SSSクラスなら、上級龍といった具合だ。
これは古代龍を除けば、最高種のドラコンだとされる。
まあ神話級のドラゴンなんて格が違いすぎて神に近いから比べるのは無理だ。
なら邪龍とはどのくらいか?
格は劣るとはいえ古代龍に匹敵するらしいとは聞いた。
まぁ住処から外に出てこないのは同じらしいから国が消えることはない。
「錬金術を勉強したら、俺もこういうの作れますか?」
「あー、それは無理。」
「えーっ」
瞬殺返答だった。
「鍛冶スキルも上位まで行かなきゃならないし。」
「錬金術も最低でも上位クラスになる必要がなるもの。」
「それで作れても、やっと助手ゴーレムだわ。」
あーあれか、あれでも充分すごいけどな。
人間みたいなゴーレムは無理か。
「エルダードワーフの錬金マスターがかなり凄い存在だったことはわかりました」
「それがわかったのなら、ここまで時間かけたのは良かったかもね。」
「それで俺は何から教えてもらえるんですか?」
「まずは基礎中の基礎からよ。」
「調薬から始めるの。」
「薬草から回復薬作るとかですね。」
きっとRPG展開だなこういうのは
「残念、回復薬は魔力が調合に必要だから無理。」
「賢者様の魔法訓練が進まなければできないわ。」
おわっと、ダメ出しだった。
「最初は毒薬よ」
「えっ」
「毒薬は薬草を混ぜるだけでできるから調薬の訓練に最適なの」
「それと毒薬って聞くと驚くけど、そこからの派生がいろんな薬になるのよ」
「なるほど、毒も扱い次第で薬になるのか」
「そういうこと。」
「それに調合の配分量から混合する時の手順、撹拌時間など色々覚えることが多いわ」
化学の実験みたいな感じだな。
そういえば錬金ってそういうのがあった。
「今日はもう時間がないから、明日から調合などを実際に行います。」
「あーすみません 俺がゴーレム見たいとか言うから」
「いえ、錬金術の最終がこれだから、どっちにしても見せてたわ。」
「興味を持ってもらえただけでも今日の成果よ」
「ララシア先生の授業が楽しくなりそうです。ありがとうございました。」
「はい、じゃあさっきサンちゃんがお風呂入れたって言ってたから」
「入浴がまだなら入ってらっしゃい」
「ゴーレムたちに触っていれば居間迄瞬間移動できるから」
「えっそんなこともできるんですか」
「ええ、ゴーレムを帰すときの転送に便乗できるわ。」
「私はまだここでやることあるから・・・。」
「サンちゃん、アイトくんの手を握ってあげて」
「はい、アイトさま 手をつないでください」
なんだか恥ずかしい感じだ。
「それでは送ります」
シュッ
パッ
「おー本当に瞬間移動だ」
「酔うとかふわっとする感覚もないんだな」
「あら、アイト君 ララちゃんの授業は終わったみたいね」
「あー賢者様、錬金術の授業だったんですね。」
「ゴーレムの話とか聞かせていただきました。」
「あーそれでメイドちゃんと手を握ってるの」
おわっと手をつないだままだった。
「あはは、この人たちがゴーレムだとは思えないです。」
「このレベルのゴ-レムは、ララちゃんしかできないことだものね」
「これから先もメイドちゃんにはお世話になるから仲良くしてあげてね。」
「はいっ」
どうやら俺が旅に出るときの警護は賢者様とサリナさんだけじゃなくて
領主館メンバー全員らしい。
それ程、聖龍様のところへ行くのが困難だということが実感できた。
その時までにサリナさんもSSクラスを目指しているらしいし
俺もできる範囲で頑張らないといけないと思う。
SSSの賢者様、SSのララシア先生、SSに近いサリナさん
Sのリアさん、そしてメイド3人はSとA2人
こんなすごいメンバーに囲まれる俺って・・LV5のアリンコ。
なんてこと考えながら風呂に入ってるんだが
やっぱり賢者様とサリナさんが並んで入っているのが解せない。
よくよく考えたら俺以外はみんな女性だった。
しかも美女揃いで、前世だったらハーレム状態で喜んでただろうな。
そしてきっと今日も抱き枕にされると思いながら時は過ぎて行った。