表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/13

冒険の旅2日目 アルベイン冒険者ギルド  実は俺って大切な存在なのだろうか?

今は荷馬車の重量を最大限軽くして移動中。

この速度なら俺が走っても変わらないだろうと思えるほど速足だ。

商人さんも馬も走るのを頑張ってる。


馬にとっては単に走ってるだけの感覚だしな。

魔王母さんのアイテム、マジ神で超便利。


おかげで予定より早く到着しそうだ。

コブリンの団体との距離もかなり離れた。


「商人さん、予定通り衛兵と商人ギルドへの連絡は頼むよ」

「俺は冒険者ギルドに駆け込む。」

俺は迷っていたんだが覚悟を決めていた。

自分の存在アピールの為、両親の紋章を見せて意見力を高めてみるのだ。


やがてアルブヘインの門へ到着すると俺は馬車から飛び降りて

商人さんから聞いていた冒険者ギルドの場所へと向かって走った。


「おいっ坊主、検問がまだ・・。」

「あー行っちまった。」


知らなかったけど、大きな街だと入門時には身分証明とかしなきゃならなかったらしい。

しかしこの時はそんなことも知らなかったし、急いでた。

だいたい、身分証明なんてものも持ってない。


「お・・聞いてたとおり、あの建物がギルドみたいだな。」

街の中をすごい勢いで走る俺の姿に街の人はかなりびっくりしたいたみたいだが

そんなことをかまっていられない。


ギイ一ッ、ドカッ

「いてて、」

ギルドのドアに突っ込んだんだが何かとぶつかったようだ。


「何しやがる小僧、いきなり駆け込んでくるとか危ないじゃねえか。」


目の前にいたのは、どうやら冒険者で鉢合わせになったらしい。

向こうは数人が尻もちついて怒ってきた。


俺も尻もちはついたのだが全く痛くもかゆくもない。

「あーごめん、すごく急ぎの要件があって来たんだ」

「コブリンの団体がここを目指してる。」


本当に目的地がここかどうかはコブリンに聞かなきゃわからないんだが

移動方向からして間違いないと考えた俺は思ったことをそのまま伝えた。


「おいおい小僧、寝ぼけて夢でも見てたんじゃないのか?」

どうやら周囲にいる冒険者から笑われてしまったようだ。


「ギルドのお偉いさんとかに話したい。」

「お願い誰か教えて。」

俺は大声で叫ぶのだが、更に大笑いされてしまった。


「コブリンなんてここからかなり離れた森の中しかいないぜ。」


「しかも団体とか見たことね―よ。」


次々俺の言葉を制する冒険者達。

まあ10歳の子供が言っててもこうなるだろうことは予測してた。


だから職員みたいな人を見つけて直接話をすることにしたんだが・・。

「ガキが遊びに来てるんじゃねーぞ」

ありがちな冒険者登場です。


冒険者ギルドの王道だよなーこういうの。

だから完全無視。


「おいおい、無視してんじゃねーよ。出てけっていってるんだ。」

そして王道ルートに突入。

どうやら尻もちついた冒険者達が怒って絡んできたらしい。

人数は3人。

ありがちパターンっていうやつだ。


「いや、本当に危険だから急いでる。」

「謝るから。邪魔はしないで欲しい。」


「ガキが俺の言うことが聞けないのか、出て行けと言っただろ。」

はいはい、絡むパターンってやつだな。

この先殴り倒すまでがルートっぽいや。


「何をしているんですかっ!」

「大人のくせして子供に絡むのはやめなさい。」

「しかもギルド内でのいざこざは違反行為です。」

おっと職員らしいお姉さん登場。

正論で引き下がるパターンに発展するのかな。


「やや、姐さん失礼しやした。」

あー優しい系の人じゃなくて怖い系のお姉さんらしい。

おかげで冒険者が引き下がってくれたのは助かった。


「坊やさっき叫んでたけど、どういう話だったの?」

やっぱ10歳だと子ども扱いだよな。

一応中身は前世で18歳まで成長してたから

目の前のお姉さんとはさほど変わんない気もするが・・。


「コブリンの集団がこの街の方向へと向かっています。」

「しかも500くらいいるようなんです。」

「だから偉い人に伝えたくて・・。」


「へー。最近の子供はそういう遊びがはやってるんだ。」

いやいやお姉さん俺オオカミ少年じゃないですから。

嘘で騙して遊ぶなどするわけがない。


よって、予定通り仕方なく奥の手を使うことにした。

「まずこれを見てください。」

「これを見て、ちゃんとした人物であると証明できると思います。」


両親の紋章、特に魔王領であるから魔王様のは、効果が大きいはずだ・・・。


「これがどうしたって?」

がーん、反応なしパターンがきた。


「いや、だからこれ魔王様と勇者様の紋章。」

「それを所持している俺が嘘を言うわけがないって話だよ。」


「あなたが貴族の子供にも見えないし、これ本物かもわからないわ。」


「だったらわかる人に見せて話がしたい。」

さすがに、二人が両親だという話は迂闊に出来ない。

関係者アピールで何とかしたいわけだ。


「どうしても疑うのなら、賢者様の居場所を教えて。」

「その方が話が早い。」


「あー賢者様ねぇ、いまここにいるわよ。」


「えっ?!」

ギルドにいたんだ・・・。


「なんだ坊や知らなかったの?ギルド長は賢者様だっていうこと。」


「賢者様なら俺が嘘ついてるかどうかもわかるでしょ?」

「だから通してほしい。」


「ふふふ、嘘を見抜けるのは副ギルド長でもできるわ」

「ギルド長はめったに人と会わないから副ギルド長と会うしかないわね」

どうやら副ギルド長は何かのスキルかギフト持ちらしい。


「それでもいい。嘘じゃないと知ってもらうだけでも・・。」

「だからお願いです。とにかく急いでるんだ。」


「まぁ確かに坊やの必死さを見てると嘘っぽい感じはしないわね。」

「副ギルド長は二階にいるから、行ってみなさい。」


「おお、ありがとうございます!」

よし、とにかく一歩前進したぞ。

しかも賢者様への近道もわかった。


2階に上がってみると部屋が5つ、皆同じドアで見分けがつかないってやつだ。

俺の感覚だと奥の突き当りの部屋が偉い人。

っていうか・・・俺には便利アイテムがあった。


「索敵のアイテムを使えば、だれがどこにいるのかわかるんじゃないのか?」

サーチ稼働、ポチッと


全部屋使用中だな、この中で会うべき人は・・。

おっと!?突き当りの部屋って、賢者様だったりするのだが・・。

なんだ、このクエストがガンガン進む感じ。


いいも悪いも展開早すぎだろ、クソゲーかよ。


ガチャッ

「誰、こんなところでサーチの魔法を使うのは?」


「おわっ!!」

いきなりドアが開いて、俺のことがバレたみたいだ。

しかもそれが賢者様とか・・いきなりすぎて声が出ない。


「ふーん、あなたね。」

「その持ってるアイテムからサーチが飛んでるわ。」

「魔法具って知ってて使ったの?」


「あの、あの・・俺、賢者様に会えと言われてたんです。」

もうコブリンとかは頭から飛んでた。

とにかく会いたい人に会えたから頭が真っ白だ。


「まぁどなたかしら・・」

「とにかくお部屋におはいりなさい。」


「は、はい」

すげー緊張するわ、何か威厳みたいなのと、とんでもなく綺麗、美人。

ハイエルフ美人半端ねーわ。

うちの親父、なんでこの人になびかなかったんだろ。


あー魔王母さんごめんなさい。


魔王母さんを知らないからこんなこと言ってごめんなさい。

母さんは神様でした。


「じゃあそこに座って、アイト君」


「へっ?? 俺名前名乗ってないんだけど・・。」

早々の身バレ発覚でかなり焦った。


「私に直接会いに来る子供。」

「しかも黒髪で黒目」

「そして、そのサーチの魔法具は私が作った物なのよ。」


「おっと、じゃあこれ見せても問題ないですね。」


「うふふ、勇者様の刀と魔王様の腕輪ね。」

「実はその腕輪も私の魔法を使ってるわ。」

おっとー、陰の功労者登場ですよ。

この腕輪のおかげで本当に助かっています。


「賢者様に会えと父がいったものですから・・・。」

「それと聖龍様にも会わなきゃいけないらしいんです。」


「10歳になって封印を解く旅に出立ったことですね。」

「実は私はそれをこの場所で待っていたんです。」

マジ話が早いわーこの人かなり聡明でいろんなこと知ってるっぽい。

ていうか・・おれ


肝心な何か忘れてた気がする。

「あっ!賢者様すみません。」

「自分の話を先行しちゃったんですが、緊急な話がありまして・・・」


「はい、何があったの?」


「このアイテムでこちらに向かうコブリンの大軍を発見しました。」


「えっ! アイト君、数はどれくらいいたのかわかる?」


「たぶん500弱ぐらい」

「実はここへ来るまでの街道で2回襲われたのが全部で25体でした。」


「まぁ街道にまで出て来てたの?」

「アイト君って力を封印されてたのによく戦えましたね。」


「えー無我夢中と言うか・・・」

「って緊急防衛体制とか取らなくていいんでしょうか?」

「それを心配して急いで知らせに来たんですが・・。」


「今知らせを出したわ」


「へっ、いつの間に?」


「そっか、封印されてるから精霊とか見えないのね。」

「今、私の契約精霊が関係各所に連絡してるわ。」

「すぐに防衛体制が取れるはずよ。」


「ギルド長ってすごい権限があるんですねー。」

賢者様も凄いんだけど・・。


「まあ、私この街の領主ですしね。」


「!!」

「りょ、領主様でもあるんですか?」


「魔王ちゃんにお願いされたからね。」

あーうちの魔王母さんがちゃん付けなんだ。


「アイト君が動き出したら私が守るってタカオとの約束なのよ。」

「そこで、あまり近くはないけど、この場所に待機ってことになったの。」


タカオって言うのは俺の父親で勇者のことだ。

名前の様だが実は名字で、きっと親父のことだから日本名でそのまま告げたんだろうな。

名前と名字がさかさまの英語と同じ使い方をしなかったというオチだろう。


高尾彰っていうのが俺の知ってる剣聖の日本名だ。

そう、勇者召喚された俺の父親のフルネーム。

本当ならアキラって名乗るべきなのに、よくある日本人あるあるだよな。


「ではコブリンに心配もなく、俺の話が進められるんですか?」


「ふふ、今はそれは難しそうね。」

「まずはコブリンの団体さんを始末しなきゃ。」


ですよねー、ゆとりかましてた俺が悪い。

「コブリンが大量に出没するなんてことあるんですか?」


「最近魔物の動きが活発になってるわ」

「あなたの家の周囲は、私の防壁魔法で守ってるから大丈夫だったけど」

「それ以外の場所では魔物の発見率がどんどん高くなってる。」


「えっ、家の周辺って防壁されてたんですか・・。」


「ええ、近くの村までね。」

「生活に困らないようにって配慮よ。」

「その分、逆に少し危険ではあったんだけど・・。」


「は?魔物から守ってたのに??」


「ええ、どうやらそれが気づかれたみたい。」

「きっと何かあるんだって、動き出したのが最近の魔物の動きと関係しているわね。」


「それって・・実は俺と深い関係があるってことじゃ・・。」


「そうね、今回のコブリンの話を聞いて確信したわ。」

「アイト君の動きを察知して斥候を出しているようだもの。」


「あのーコブリンの大軍なんですけど・・。」


「ええ、その大軍が斥候の本隊ですよ。」

「邪神軍からいえば使い捨ての情報取得部隊でしょう。」


「俺の動きでコブリン500とか、まじやばいですよね。」


「まっその程度で済んでるんだからまだ過小評価されてるだけ安心ですよ。」

「本気ならワイバーン500にオーク1000とか来ても変じゃないから。」


「!!俺にそんな価値ないですよ。」

「全く能力もないし・・子供だし。」


「ええ、だから過小評価されてるってことになるの。」

「これも女神様からの助言なのだけどね。」


「アイト君、あなたは知っておくべきだわ。」

「勇者と魔王の子供であり、魂の召喚者であるあなた自身の本来の力。」

「それにすべての女神さまから加護をいただいているでしょ。」


「え・・何故それを??」

「それは聖女ちゃんから聞いたわ、彼女は女神と会話ができるのよ。」


「聖女様って勇者召喚で魔力を失ったとかいう・・。」


「いいえ、失ったわけではないわ。」

「彼女は女神の協力で魔力を失わないのよ。」

「私はそこに詳しくはないけど、それも女神さまの思惑なのかしらね。」


聖女様も半端ねーチートだということか。

どうなってるんだ両親の周辺にいた人達。


これでさらに上だとされる英雄王やら神話の古龍や精霊王とか・・・

ああ考えるのは無駄だな、俺はアリンコだった。


「!っ、そろそろ私の探知範囲に来たみたい。」


「コブリンですか・・俺に何か手伝えることは?」


「アイト君は、まだ表に出ちゃダメ。」

「とにかく今、あなたは聖龍様に会って封印を解くのが優先だわ。」

「それと封印は他にも沢山あるから心してね。」


「えー、はい?」

封印沢山とか只の人の日々がまだ続くってことか・・。

まあ魔王母さんのチートアイテム頼りで何とかなるならいいけどな。


「コブリン退治が終わったら、いろんな話を聞かせてあげるわね。」

「精霊がこの部屋に結界を張ったから、ここにいて待っててよ。」


「どれくらい・・になりますか?」


「そうねコブリン500ならキング含めても数分かしら・・。」


「へっ?」

賢者様スゲー、それワンパンってことじゃん。

道中でコブリン相手に俺ツエ―してたのが、むなしくなってきたわ。


そんなとんでもない人たちが束になっても封印しかできない邪神って何だろう。


トントン、ドアをノックした音だ。


「お茶を持ってまいりました。」

あー怖い系の職員のお姉さんだ。


「ありがとう、これから私が出動します。」

「お茶の冷めないうちに戻る予定にしていますから皆さんに伝えておいてください。」


「はいっわかりました。」

「ではいってらっしゃいませ!」


「ええ、行ってきます」シュッ


えっえっ・・今、賢者様消えたよね、ね。

このお姉さん目の前で消えたのに平気とか・・。


「あのー賢者様消えたみたいですけど」


「ああ、単に現地へ直接ワープしただけでしょう。」

「きっと賢者様の索敵に引っかかって場所を特定されたのですよ。」


「驚かないのですか?」


「それはもう慣れました。」

「私も賢者様にお仕えして結構立ちますからね。」


「賢者様のこと教えていただけないですか?」


「いいわよ、賢者様が戻るまで話し相手して上げましょう。」

「私が初めて賢者様に会ったのはこのギルドで冒険者登録した時。」

「ちょうど10年ほど前のことだわ」


「その時は賢者様がギルド長しているなんて知らなかったんだけどね。」

「駆け出し冒険者になった私は、剣の腕に自信があったの。」

「その時はソロの冒険者として有名になりたい強くなりたいだけを考えていたわ。」


「へー早くからお強かったんですね。」


「ええ、物心ついた時から剣術を習っていたの。」

「ある時、勇者様に会ってね。直接剣術を教えてもらったのよ。」


あー親父が召喚された頃なんだ。


「その時勇者様が持っていた刀があなたが持っていたものです。」


「えーそれ知ってたんですか?」


「試したみたいになってごめんなさい。」

「勇者様は弟子を取らない人だったから私は周囲から注目されたの」


確かに剣聖は日本でも弟子を取らない人だった。

孤高の剣士っていうのが俺にとってもあこがれだったんだ。

異世界でたった一人の弟子がこの人だと言うのは、なんだか感慨深いな。


「冒険者になってもその実力で私は上に上がってったわ」

「でもある日、勇者様は消えてしまった。」


「その時戻ってきたのが賢者様で、彼女がギルド長だったって知ったわ。」

「私はギルド長を責めたの、勇者様を見殺しにしたんじゃないかってね。」

「でも彼女はその頃、何も語ろうとはしなかった。」


「私は思ったわ、勇者の敵討ちが出来るほど強くなるってね。」

「そこから更に努力し続けた。」


「10代のうちにAクラス入り、しかもソロでね。」

「そして最年少で最短ってことで有名になり、剣姫って言われたわ。」

「だけど私は勇者様の敵討ちの為にさらに上のSクラスを目指していたの。」


「だからある時、最悪の依頼クエストを受けたわ。ワイバーンの群れの討伐。」

「誰も受けなかったAクラスでもパーティークエストと言われた依頼だったの。」


「ギルド長は反対したのよ。危険だってね。」

「でもギルド長に不信感があった私はそれを無視したってわけ。」

「ワイバーンの討伐は成功しかけてたんだけど、どうやら罠だったみたい。」


「私は知らないうちに邪龍の住処に誘導されてたの。」

「でも勇者様の仇の部下でもある邪龍を前にして、私は戦う決意をしたわ。」

「それが仇討ちのつもりでもあった。」


「ところが思ったより邪龍は強くて、撤退するしかなくなったの。」

「そこへ追い打ちをかけるようにワイバーンの群れがやってきたわ。」

「そう、ワイバーンは邪龍の部下だったって気が付いた。」


「その時、賢者様が現れて一瞬ですべてのワイバーンを消し去ったの。」

「それは本当の強者を見た思いだったわ。」

「そして賢者様は言ってくれた。よく頑張ったわねっ・・てね。」


「そこから私は賢者様に仕えることにしたってわけ。」

「まだ引退していないから現役だけどギルド職員としても働いてるのよ。」

「今は世界でも数が少ないSクラスの冒険者として、まだ上のSSクラスを目指してる。」

ああ・・だから冒険者がたじろいでたんだ。


「そして賢者様に信頼された私はいろんな話を聞けたわ。」

「あなたのこともね。」


「勇者様と魔王様のたった一人のお子さん。」

「見た目が勇者様の面影があって、初めて見たときびっくりしたくらいよ。」


「えーっと髪の毛と目が黒いくらいですけどね・・・」

顔とか親父の方が数倍いいもんな、日本人としても誇らしいほどの二枚目なんだよな。


「っと、どうやら賢者様のお帰りみたい。」


シュッ「ただいま戻りました。」


「ギルド長、おかえりなさいませ。」


「はやっ、本当に数分だった。」

それはいいけど賢者様が帰ってくるのに気が付くとか・・。

この人も相当な強者ってのがわかるよ。

世界でもわずかなSクラス冒険者、それもソロでっていうのはすごいことなんだろうな。


「あらー少しお茶が冷めちゃった。」

「仕方ないわね、結局コブリン千体くらいいたもの・・。」


「へっ?!賢者様・・いま何と」


「ええ、キングとクイーンがいてね。」

「それでジェネラルも多数いたみたい。」

「数えてないけど・・千ってとこかなと・・。うふふ。」


いやいやすごく簡単に言うけどコブリンでも千体とかやばいでしょ。

しかもキングとクイーンの揃い踏みとか・・。

俺、行かなくてよかったわー。

足を引っ張るだけの邪魔者確定だった。


「それじゃあ、しばらくは安心ですかね。」

俺はそれを聞いて安心したんだが・・。

返ってきたのは、とんでもないことだった。


「あれは斥候にしか過ぎないから次はもっと来るわね。」


でーっ、なんてこと気軽に言うんですか賢者様。


「とりあえずは街の周囲に結界張っておいたし・・」

「アイト君を少しは鍛えないとね・・外に出られないわ。」


はいはい自宅に続いて街での引きこもりですか。


「サリアちゃん、アイト君の剣技の先生をしてくれないかな。」

「魔法は私が先生ね。」


「あのー、俺封印解けてないから難しくないですかね。」


「ここに来たってことは、第一段階は解けてるってことですよね。」


「はい、その通りです。」


「なら人の何倍も頑張れば人並みにはなれるわ。」


なんだかスルッととんでも発言を聞いた気がするんだが・・・。

まるで重りをつけたままでも、それ以上に頑張れば多少何とかなるって感じですか。

「あのー人並って、どんな感じですか」


「うーん、そうね冒険者で例えるならDクラスってところかしら。」


「サリアちゃん、ちょうどいいからアイト君の冒険者登録と基礎説明してあげて。」


「かしこまりました。ギルド長。」

「では、登録の前に今ギルド長がおっしゃられたクラスの話からいたします。」


「まず、冒険者のクラスにはA~Gまでありまして・・。


「はいっ、先生質問です。普通はFまでではないんですか?」


「あらーアイト君よく知ってるのね。」


「いやーギルド長の賢者様に言われても・・。」


「では説明を続けます。」

げっサリアさんにぶった切られた。


「アイト様が言われるように正式にはFまでなんですが」

「救済処置としてGまで作られています。」

「これはFでの依頼失敗が続いた場合や怪我などによる長期の活動休止による失効の防止」

「そして、年齢不足の孤児たちなどの活動許可に与えられます。」


「アイト君は知ってるでしょうけど、冒険者は10歳以上限定。」

「でもね中には孤児になっちゃった子供達が食べるのに困るってこともあるから」

「特例処置として年齢に満たなくても簡単にお仕事が出来る仕組みにしてあるのよ。」


「ギルド長のおっしゃる通りです。」

「これはギルド長の発案で、この領内すべてに適応された処置になります。」


「さ・・さすが・・賢者様。」

優しい人で安心した。


「ええ、魔王ちゃんも大賛成してくれたわ。」

おおー魔王母さんもいい人そうだ。


「では説明を続けさせていただきます。」


「あっ脱線しまくりでごめんなさい。」


「このクラスに応じた依頼を受けることが可能なのですが」

「基本的には1つ上のクラスの依頼までなら受けることが可能です。」

うんうん、これならおれの知ってる話と同じだな。


「但し、上のクラスの依頼を受けるにはパーティーを組む必要があります。」

およよ、知らない設定来た。

「冒険者ギルドではパーティでの活動を推奨していますが、ソロ活動を否定はしていません。」

「あくまで安全確保の為と言うことになります。」


「もっとも低クラスの依頼は安全性を重視して設定してありますから」

「一つ上のクラスをソロで受けても間違いはないとは思われます。」

「依頼内容だけであれば・・・。」


「例えば薬草採集などの依頼は危険性が少ないでしょう。」

「しかしそこへコブリンが現れた途端、ソロだと一気に危険度が増します。」

「よって、パーティー推奨、ソロだとランク上の依頼が受けられないという処置になります。」


ほーギルドもいろいろ考えてるんだな。


「先ほどGクラスの話がありましたが、Gクラスはソロ活動が多い為」

「このクラスの依頼は街の中限定というのが基本です。」


「うふふ、この街は邪神領から遠いけど他の街では近いところもあるでしょ。」

「だから安全重視をした方式が採用されてるのよ。」


「あーこれも賢者様のアイデアだったりするんですね・・。」


「はいアイト様が言われるように、ギルド長の案です。」


「あらあら、魔王ちゃんが賛同してくれたからよ。」

「それに考えたの私だけじゃないことも多いわ。」


かーっ、強くて頭が良くて、しかも美人で優しいとか

俺この人に一生ついていきたいわ。


「そして、依頼についてですが」

「依頼ボードの掲載と言うのが基本になりますが、依頼主からの指名もあります。」

「また職員からの選定依頼や指名依頼というのもあります。」


「実はこういった職員からの依頼を受けることが一番クラスが上がりやすいのですが」

「それは冒険者に対して貢献度や信頼度が重視されてるということです。」

なるほど・・これも新しい方法か、強いだけで性格悪いっていう冒険者防止の為かな。


「お気づきになったと思いますが、強いけどランクが低い冒険者が発生します。」

「それは信頼できないからでもありますが、逆にこれを元にしてもめ事が発生する場合があります。」

「この場合ですが、やはり救済処置があります。」


「ええ、性格がよろしくなくても強い方も必要ですからね。」

「残念ですが生き残るためには強さも必要な、そういう世界です。」


「その場合の救済処置と言うのは、冒険者訓練の強制参加です。」


「ふふふ、サリアちゃんの訓練に出ると皆さんおとなしくなるんですよ。」

あー冒険者が姐さんって一目置いてたのは、それもあったのか。

要するに鬼軍曹ってやつだな、性根を叩きなおしちゃうあれだ。


「ギルド長が指名したら逃げることはできないですから・・。」

「逃げてもすぐに捕まえられますし・・。」


「あらあら、サリアちゃん、少し言いすぎじゃないかしら。うふふ。」

あれっ なんか怖いものが見えた気がする。


「はいっ、ギルド長はお優しい方です。」

あーなんか言わされた感一杯だよ。

サリナさん下手すぎる。


「ゴホン、さて依頼についてですが期限付きのものと期限がないものがあります。」

「当然ですが期限があるのものが優先依頼と言うことになります。」

「また、緊急依頼というものもあります。」

「場合によっては先ほどのコブリンのように全員参加と言うこともありえます。」


「他領においては戦争参加が緊急依頼にされる場合も多くありますが」

「この領内のギルドにおいてはそういった強制参加はありません。」

「不参加が多くて逃げてしまう人もいるのではと思われるかもしれませんが」

「基本自主参加でも、意外に参加者が多いのでそういった心配もないのが実態です。」


あくまでも冒険者の質の問題というわけだな。


「うふふ、お金沢山稼げるんですよ。」

賢者様-っ、その一言でブチ壊しだよ


「おほんっ ギルド長がおっしゃられるのは、傭兵制度というものです。」

「本来の冒険者の依頼クエストとは異なり、傭兵として参加する形に切り替わります。」

「よって、無給で強制参加などはあり得ません・・という話です。」


「お国の一大事に皆が協力し合うという姿勢に対して褒賞が出る制度などもあります。」

「もちろん傭兵ですから活躍すればそれなりに高額支給になりますし」

「その結果によってはギルドクラスの上昇もあり得ます。」


この世界ならではと言う感じなんだ。

「あのー、質問いいですか?」


「はい、どうぞアイト様」


「傭兵の話が出たので聞きたいのですが、傭兵ギルドは無いのですか?」


「よい質問ですね。」

「傭兵ギルドも存在しています。」

「但し、戦争が多くない領においては、冒険者ギルドが肩代わりすることも多くあります。」


「この領の場合がそれですね。」

「内乱などは無く、邪神領との戦いくらいでしたから・・。」

「そうなると基本、相手は人ではなく魔物です。」


なんかお茶が濁ったような感じがしたけど・・。


「あららーサリナちゃん、少し含みが入っていたわね。」

賢者様も気が付いてた!


「はいっギルド長、申し訳ありません。」


「いいえ、正直で良いですわ。」

「アイト君も気が付いたでしょ、最近はねヒューマン領が怪しいのよ。」


「えっ?それは・・・」

「確かヒューマン領内で内乱中だって聞きましたけど・・。」


「ええ、ところが内乱しているのに、他領にも飛び火してくるのですよ。」

「困った方たちですわ。」


「他領にまで攻め込んでくるということですか?」


「はいっ、アイト様が言われるようにビースト領とは戦端が開かれております。」

「またダークエルフ領にも先ごろ進軍があったと報告されました。」


「聖女ちゃんがね、とっても嘆いていたわ。」


「聖女様は大丈夫なんですか?できればいつかお会いしたいと思っているんですが・・」


「ええ、聖女ちゃんには聖道騎士団と剣士ちゃんがついてるから。」

「急に危険になることはまずないと思いますよ。」


「あーそうなんだ。剣士様どこにいるのかと思ってました。」


「うふふ、魔王ちゃんが心配してね。」

「聖女ちゃんって女神さんと交信できる人でしょ。」

「アイト君と同じように狙われるって、だから剣士ちゃんが守りについたのよ。」


「あーそれで、お二人だけは戻ってこられたという話だったんですね。」


「うふふ、そのとおりです。」

「アイト君は私が、聖女ちゃんは剣士ちゃんが守ることになったの。」

「二人とも女神様とのつながりが強いですからね。」


ふむふむ、いろいろ知ってくると邪神一派は相変わらず絶賛活動中で

ターゲットになりえるのが現時点で女神様に近いとされる聖女様と俺ってことか。


「そっ、それを私は大きな勘違いで・・。」

「敵前逃亡とか見捨てて逃げたとか思ってしまい・・すごく反省しています。」


「あらあら サリナちゃん 気にしなくていいわよ。」

「敵を欺くには、まず味方からと言う言葉があるでしょ。」

「私たちの行動の意味を分からないようにするために疑われるのは仕方なかったの。」


「ありがとうございます。ギルド長。」


「サリナちゃん。これで基本説明は、ほぼ終わりかしらね。」


「はいギルド長。後はアイト様の質問があれば受け答えします。」

「何か質問がありますでしょうか?」


「えーと質問ではないんですが、ここに来るまでに世話になった商人さんがいまして」

「そこへ行くという話になっていたんですが・・。」


「あらあら、アイト君。駄目ですね。今日からあなたは領主館です。」


「やっぱりそうですよね。」

「ですがそれを連絡しておかないと・・。」


「アイト様、どのお方ですか? こちらで連絡をしておきますが・・。」


「えーと、あらら名前を聞いてないや。」

「いろいろあって聞きそびれてましたー。」


「まあ、自宅の隣村とこの街を移動している商人さんなのですよね。」

「ならきっとボマーさんでしょう。」


「小さな娘さんが一人いらっしゃいました。」


「ならやはりボマーさんですわ。」

「サリナちゃん、連絡お願いね。」

「アイト君は今日から領主のお客さんになるってことでお願いよ。」


「はいっ、ギルド長。」


「それと忘れずに冒険者登録しておいてね。アイト君。」

「ギルド証は領地が異なっても基本的に身分証になるから役に立つわ。」


「あわわ、そうだったそれを気にしてて忘れる所だった。」

「身分証って必要だったんですね。」


「うふふ、ええアイト君。身分証見せずに街に入ったでしょ。」

「衛兵さんたち困ってたのよ。」


「えーすみません。急いでてそんなこと知らずに・・。」


「問題ないからいいわ、私の方で処理しちゃいましたしね。」


「まさか、さっきのコブリン退治の時、そこまで動いてたとか?」


「ええ、ついででしょ。」


「はーっ、申し訳ありませんっ」

とゆうか、そんな雑用まであの短期間に済ませてたってことだよな。

どれだけ優秀なんだこの人・・いやこのおかた。


そんなこんなで旅の2日目は終わりをつげ、俺は領主館へ泊まり込みで特訓らしい。


ギルド登録も終わり、少し早めの夕食を取った。


今日は疲れたし風呂入りてーっ。


「あーアイト君。お風呂入れておいたから入れるわよ。」

この人、マジ優秀!

俺の中での賢者様優秀レベルがどんどん高くなった。


さて、明日から何が始まるやら・・・。


って、サリナさん風呂に入ってきちゃだめでしょ!


「おお、アイト君も風呂だったか」

「貸しきりじゃなくなって悪いね」


いやー10歳だけどさ、中身は18歳の意識なんだよな。

さほど年齢が変わらない美人さんと混浴とか前世では全くなかったから動揺が激しいよ。


「あらあら、サリナちゃんも来てたのね。」

ってか、更なる強敵登場!?

超絶美人な賢者様と混浴しちゃうとか・・いかん意識が飛ぶ。


そこからの俺の記憶が本当に残念ながら、ほぼない。

気絶したとかのぼせたとかでもなく、頭真っ白。


美人さんに身体洗ってもらったらしいが、もう意識飛ばすの必死だった。


10歳でも男は反応しちゃうんだぞ!

もう聖人にでもならないとやっていけんわ。


もっと幼いときは母さんとも一緒に入ってたんだけどなー。

母さんも美人だったけど、そん時は前世の記憶やら意識がないからお子様モードだったし

でも今にして思うと罪悪感満載だわ。


中身18歳意識持ち宣言でもしておいた方がいいのだろうか・・。

そんなことを考えながら俺は夢の中に・・。


って・・おわっと。

賢者様?!なんで俺のベットにいるの??


新しい俺の苦悩はこれから始まりそうな予感だ。

マジ勘弁してください・・・。


女神様お助けをー。


「あらら、アイト君何か言った?」


「いえ、おやすみなさい。」


マジ勘弁ですっ。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ