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プロローグ 主人公の旅立ち 大切な話?

これから長い話をします。


神話の話からです。


原初に誕生したのが創造神「スペル」であり、それが主神と言われる女神である。


創造神「スペル」により、一番最初に宇宙が作られた。

その後に大地が造られ、大地の女神「アスア」が誕生する。


創造神はその大地を照らすため光を作り、光の女神「ライア」が生まれた。

光の女神の誕生と共に双子の妹として暗の女神「ダクラ」が生まれ、光と影が出来た。

そして光の女神により太陽が、そして暗の女神により月が生まれる。


大地の女神「アスア」と光の女神「ライア」と

暗の女神「ダクラ」は、これにより世界の3大神と言われる。


やがて大地の女神「アスア」と光の女神「ライア」により、

自然の女神「ナスレ」が誕生すると風が吹き雲が出来た。


暗の女神「ダクラ」の力を借りて、自然の女神「ナスレ」は雨を作り、海を作った。

そこから海の女神「オーズ」が誕生した。

海が月の影響を受けるのは、「ダクラ」の影響だと言われている。


大地の女神「アスア」と自然の女神「ナスレ」は、協力して山を作った。

光の女神「ライア」の力により生命が誕生し、山に植物が生まれると

生命の女神「イリア」が誕生した。


多くの命は大地だけではなく海の中にも広がり、

世界中で新しい生物が生まれていくことになった。


やがて、3大神と言われる女神は、それぞれ自身の僕として龍を誕生させる。

これがエンシェントドラゴン(古龍)の誕生だと言われる。


光の女神「ライア」の僕は聖龍、暗の女神「ダクラ」の僕は暗黒龍、

大地の女神「アスア」の僕は地龍である。

これらは3大古龍と呼ばれている。


海の女神「オーズ」はそれを真似て海竜を産むが、

3大神のドラゴンとは格が異なる為、シーサーペントとも言われる。

海竜は空が飛べない代わりに海の中を飛ぶように泳ぐ。


これを見た自然の女神「ナスレ」は、龍ではなく精霊を産んだ。

この精霊たちは、火の精霊王、水の精霊王、風の精霊王、土の精霊王、

と呼ばれる4大精霊王である。


生命の女神「イリア」は、僕として自身の姿を投影した人を産んだ。

これが人類の始まりだとされる。


創造神「スペル」は人を見て喜び、言葉と創造力を人に与えた。

これにより言葉をスペルと言うことになる。


ところが人が増えると争いがおこり、それが続いたため

生命の女神「イリア」は死を産み、争いをやめさせようと考えた。


これに暗の女神「ダクラ」が力を貸し、寿命と死を司る死の女神「デイア」

を誕生させた。

ここから人は、死と寿命を持つことになった。


「これがこの世界の神話のお話です。」

「聞いていますか? アイト。」


「あー、うん。もう何度も聞いて覚えちゃった。」

いやー母さんの話長いし、同じこと繰り返されるから眠くなるのがつらいんだよね。


「えっ何か言いましたか?」


「い・・いや何も」

なんて鋭いんだろ迂闊なこと考えるのはやばいな。


「もうあなたも10歳になりました。」

「この世界では、一人前と言われる年齢になったのですよ。」


「えーはい。わかってるけどもう少し他のこと教えてよ。」

母さん俺に魔法とか戦う方法とか全然教えてくれないんだものな。


そう、この世界には魔法がある。

スキルやギフトなどもあって、俺は生まれた時から何も持っていない。

それどころかこの10歳になるまで何も教えてもらえていないんだよ。


「10歳になったら旅に出ると言う話はしましたよね。」


「うん。それも母さんから何度も聞いたし、心の準備も出来てる。」

何も知らないまま世界へ出て旅をしろと無茶言われたら忘れないでしょ。


「では、最後の話として大切なことを言います。」


「はい、母さん。」

なんだろ真面目な顔して珍しいな。


「実はあなたは私の子ではありません。」


「!?」

「な・・冗談でしょ」

マジ顔で言われると怖いよ。


「いえ、私は恩ある御主人様に仕えた単なるメイド」


「いや、それは聞いた事あるけど・・」


「あなたは、そのご主人様夫妻の子です。」


「はぁ・・いやいや」

「だって、母さんのご主人夫妻って、高貴な人たちなんでしょ。」


「ええ、旦那様は勇者様で奥様は魔王様です。」


「え!?はぁああ~?・・聞いてないよその話。」

精々どこかの貴族様の私生児くらいしに持ってなかった・・。


「あたりまえです。初めてするのですから・・。」


「いやいや、もっと前にしてよ! 神話の話とかより重要じゃん。」

「だいたい両親がそんなすごい人なのに、俺スキルとかもないんだけど・・。」


「あなたの力は封印されています。」

「アイトが普通の人として、ここまで生きていくために仕方がなかったのです。」


「どーゆーこと。ここまで話したなら全部教えてよ母さん。」


「なら神話時代の話から、後の英雄時代の話を思い出してください。」



神話時代から英雄の時代へ。

人は創造神から得た創造力により知恵を持ち、

それぞれ女神や精霊からスキルやギフトを得る方法を会得した。


これにより人類は様々に分かれて行ったのだ。


大地の女神「アスア」の力を強く受けた「ドワーフ族」

自然の女神「ナスレ」の力を強く受けた「エルフ族」

この種族は長命な種族でもある。


エルフの中でも更に光の女神「ライア」の力を強く受けた者は「アールブ」と呼ばれ

更に長命であると言われる。


そして「アールブ」と「エルフ」の間に出来たのが「ハイエルフ」である。


このエルフ族の中から生命の女神「イリア」の力を受けた者の中に「獣人」が生まれ

寿命は短くなったが、引き換えに身体力を持つことになった。

獣人は「ビースト族」とも呼ばれる。


一方で暗の女神「ダクラ」の力を得たエルフ族は、「ダークエルフ」となった。


そして「アールブ」が暗の女神「ダクラ」の力を得たものが「魔族」と言われる。

この為、純粋な「アールブ」は「神族」とも言われることになり、

これが「天使」の元になったとも言われるゆえんだ。


他にも海の女神「オーズ」の力を受けた「シーマン族」

本来なら女神の眷属であるはずの龍の力を受けた「リザード族」

などの人類もいる。


これらの恩恵を受けなかった人は生命力が乏しいが繁殖力を得て

これが「ヒューマン」となった。


「ヒューマン」は他種族と異なり、大きな創造力を持つという特徴がある。

これにより、どの人種族よりも文明を早く築き、繁栄していった。


ところがその繁殖力と創造力から同じ「ヒューマン」同士で戦争が発生し

その戦いの為に恨みや妬みを元にして混沌が生まれた。

「ヒューマン」の業から混沌が生まれ、この混沌から魔物が生まれることになる。


魔物とは生物が変化したものとされるが、その原因は混沌の力による。


神々はその混沌を抑えようと努力したのだが、

ついには混沌の中から邪神「ダークイン」が生まれてしまう。


邪神「ダークイン」は、「ヒューマン」の業から7つの大罪の力を得て

産まれた7匹の邪龍を従え、世界を混沌で満たそうと考えた。


実体化した邪神「ダークイン」に対して神々は直接力を行使が出来ず

各人種族の中から神が特に力を与えた英雄を作り出すことになった。


邪神討伐に立ち上がったのが、それぞれの種族の英雄達だ。


元々混沌の原因でもあり、大した力が無い「ヒューマン」だけは英雄が誕生せず。

創造神「スペル」の助けにより、勇者召喚と言う力を授けられた。


勇者はこの世界の理から外れた存在であり、「ヒューマン」でありながら

他の異世界から招かれたと言われ、他種族の英雄並みの力を持つと言われる。


邪神との戦いは長きにわたり、英雄たちの勝利に終わったが

滅することはできず封印するしかなかった。


その後、各種族の英雄が王としてそれぞれの種族をまとめることになり

「ヒューマン」もそれに倣って勇者を「英雄王」として国がまとまった。


「こんな話だったけど、母さんこれと何が関係あるの?」


「これは単なる物語ではなく、本当にあった歴史なのです。」

「そしてその時代から数百年ごとに、邪神は復活し、その都度、英雄が封印しています。」

「それが一番近い時代にも発生しました。」


「えええ・・マジ?! それいつ頃の話なの?」


「あなたが生まれた頃のことです。」


「いやいや、母さん。それなら、いま世界はどうなってるわけ?」

「それと俺の本当の両親とか、それに関係してくるのかな?」


「ここから先は、自分自身で知ることがあなたの力の封印を解く鍵になります。」

「ですから旅に出て、いろんなことを知りなさい。」


「アイト、私は乳母としてあなたを育てました。」

「あなたの封印を解くためには、10歳以上でなければなりませんでした。」

「これは女神様があなたを守るためだと言われています。」


「そこで私は普通の人として、あなたを育てることにしたのです。」

「そしてあなたに最初の道を示す者として指名されただけです。」


「いや、俺にとって本当の母さんだよ。」

「知らない両親より、ずっと俺の母さんだった。」


「アイトありがとう・・嬉しくて涙がでるわ。」


「いやこっちこそ育ててくれてありがとう・・母さん。」


「それではあなたの最初の目的を示します。」

「まずは、聖龍様をお探しなさい。」


「え・・それ最初からすごくハードル高いんだけど。」

「神話のドラゴンでしょ。」


「はい、何度も神話時代や英雄時代の話をしたのは、それが関係するからです。」


「いやいや、俺って何の力もないから只の人じゃないの?」

「っていうか・・戦い方も知らないし普通の人よりもっと力ないと思うんだけど。」


「ええ、ですからこれから第一の封印を解きます。」

「一気に記憶が戻るはずですから、心してください。」


「わわわ・・それホント」

「じゃあ少しは、戦う力が出せるのかな。」


「いいえ、私にできるのは記憶の開放だけです。」

「ですが第一の封印が解ければ、それなりにスキルの取得も容易になるでしょう。」


「まじですかー。いきなりっていうわけじゃないんだ。」


「では、封印の鍵を渡します。」

「これはあなたのお父様が所持していた剣。」


「親父の形見が鍵って・・しかも剣?。」


「ええ旅に出るのに丸腰では危ないでしょう。」

「ですから、剣が望ましいとお考えになったのかもしれませんね。」


「剣って、剣術教えてもらってないんだけど・・。」

「母さん基礎体力訓練しかさせてくれなかったし・・・。」


そう、俺は物心ついた時からずっと基礎体力を作る事しかしていない。

腕立てや腹筋などもやったけど、基本的には走り回ってばかりいた。


剣の素振りなどもしてないし、だいたい何をしてもスキルが取得できない体だった。

もちろん呪文なども無理、魔力がないのかと思ってたほどだ。


だから幼いときは、全くの凡人だと思ってすごく泣いてた。

いじめっ子などがいなかったからよかったけど、心が折れそうだったんだよな。


それが全て封印のせいだったとか・・。


「さあアイト、この剣を握りなさい。」

「そして念じるのです。我が記憶を解放せよ・・と。」


「あ、うん。やってみるよ母さん。」

これが親父の剣か、変な形だな・・これで敵と戦ったのかな。


「じゃ・・我が記憶を解放せよ!」

うわー、キーンってすごい耳鳴りがする。

あれれ・・目がぐるぐる回ってきた・・。


うーっ、やばいな、気が付くと周囲が真っ暗じゃん

ここどこ?家の居間にいたはずなんだけど・・。


「アイト、アイト・・・アイト!」


「!?誰、俺の名を呼ぶの」


「俺はお前の父親であり、異世界人だった。」

「ある日この世界の召還によって勇者として、邪神と戦う使命を受けた。」


「あ、あんたが俺の父親なのか」

段々目が見えてきたけど・・・少しまだ陰になって父さんの顔が見えないな。


「これからお前の記憶を解放する。」

「心しろ・・それを事実として受け止めるんだ。」


「ああ、わかった。覚悟はできてる。」

何か試練みたいのがあるんだろうとは予想はしてたし


・・・ってまだ周囲がぐるぐる

あ・・まぶしい 光が


「我は神である・・。」


何ここ、真っ白な世界だ。

じいさんがいるけど・・。

神って、あの神様の事なのか?


「おお、気が付いたか」

「わしは地球の神じゃ」


ナニソレ、地球って?!

あ・・あれ、俺地・・地球にいた気がする。

しかも日本人だった。


「お前さんは死んだのじゃ。」


そっか俺は日本人、令和時代生まれだ。

記憶では地震やら戦争やら、いろいろあったみたいだけどそれで死んでないんだよな。

「で・・神様、死因は何だったの?」


「ははは、忘れたのか、じゃあ少し話してやるとするか。」

「お前さんは不思議な奴でのう、表向きは日本の普通のオタクじゃった。」

「だが、一方で武道を嗜んでおったな。」


あ・・少し思い出してきた。

ああ、それなりに戦う技術も会得してたってことか・・。


世界連邦が改変され、日本はそれなりに変化したんだ。

俺はいわゆる諜報活動に従事したいとか夢みたいなことを考えていた。


「あるとき忍者とかの修行をしていたのじゃが・・」

「そこで滝行の途中で落石にあったというわけじゃ。」


諜報員目指して忍者とか・・俺、何やってるんだよ。

それで死ぬとか間抜けっぽいのが悲しい。

しかしおかげで記憶が戻ってきた。


「ああ、すべて思い出した。それで俺に何か用があると言う事なのか?」


「なら話を進めるかのう。」

「今、他の世界の神から応援を呼ばれておってのう。」

「ふつうは召喚の義というやつで人を送り込んでたのじゃが・・・」

「実は地球でもかなり多くの優秀な者が亡くなってしまったのじゃ。」


人材派遣かよ・・ってツッコみはせずに聞いておこう。

「で・・地球も人材不足になったと。」


「わはは、お主、察しが良いな。」

「でじゃ、魂を送って 向こうで再誕させる話なのじゃが・・。」


「ああ転生と言うやつだな。」

オタク生活をしてたからそういうのは知ってる。


「おお、話が早そうじゃ、それに選ばれたのがお前さんじゃ。」


いや、俺は出来ればもう一度日本人に生まれたいのだが・・。

異世界転生とかより現実思考優先だよ。

「却下!」


「わははは、面白い奴じゃ。」

「考えてることは筒抜けじゃから言っておくが、もう日本に生まれることはないぞ。」


「まじか・・」

やばいな神様だもんな、考え筒抜けだって何となく知ってたよ。

「じゃあ他国でも地球と言う線はないのか?」


「それも無理じゃな、既にお前さんの魂は異世界に飛んでおる。」


あー思い出してきた・・死ぬ間際に女神とかが現れてきた時の話だ。

生き返らせるっていう話だった気がしたんだが、異世界転生だったとは・・。

「何となく思い出したよ。神様はそれで俺に何の用だったんだ。」


「地球から出て行く者には、わしの加護を与える義務があるんじゃ。」

「じゃから一度は顔を出しておかんとな。」


「お、おう。土産みたいなものだな。感謝しておくよ神様。」

あーなんか頭の中でちかちかするのがあると思ったらこれがそうか・・。


「そうじゃ、それが知識の加護。」

「地球にいたお前さんの知識や経験を補完するものでもある。」


「それは、今までの記憶があるまま転生できると言うことだな。」

どうせ転生が決まってるなら少しでも役に立つ知識はありがたい。


「そのとおりじゃ、基本的に召喚者は記憶をもっていく。」

「転生者は魂になったら記憶をなくすのじゃが、その記憶をなくさないようにするものじゃ。」


「じゃあ、ありがたくいただいておくよ。」


「そろそろ魂が異世界につく頃じゃのう。」

「あちらの女神さんに協力してやってくれ。」


「ああ・・って、うわっ」

また周囲がぐるぐる、しかも何かに吸い込まれてる。


次は何だ?同じ白い空間のような感じだが・・。

「あなたは日本人の転生者の魂ですね。」

「約束の通り、生き返らせましょう。」


「あー今度は異世界の女神さんか。」

何だか忙しい日だなぁ。

生き返らせるって言って転生とかは詐欺の様な気もするが・・。


「それは大変申し訳なく思っています。」


わわわ、頭の中で考えると神様にはダダ洩れだった。

「いやいや、もう終わったことだし」

「それで何か俺にやるべきことがあるんだろ。」


「そうですが、それは誕生後にわかってくると思います。」

「強制をするべきものでは無いので、あなたが自らどうすべきか考え行動してください。」


「俺を必要としているはずなのに、実に気楽だけどいいの?」


「ええ、そうしないと利用される可能性もありますから。」


「なんだかずいぶん訳ありっぽい気がするけど・・。」


「私たち女神が関与していることを知られないようにするためですわ。」


「おわっ 気が付いたら周り女神様だらけじゃん。」

めちゃ嬉しいけど、これすぐにお別れの流れだよね。


「これからそれぞれの女神があなたに加護の種を植え付けます。」


「なに種って・・最初から何かの力があるわけじゃないのか?」

うわ―っ、7色の光に包まれた。


「必要な時に力が芽生えるようにするためです。」


「そんなに警戒しなきゃならない相手だっていうのか・・。」


「ええ、成人の召喚者ではなく単なる赤ん坊に転生するのです。」

「それなりに安全にしておかないと、生まれてすぐまた死亡とかいやでしょう。」


「あーさすがにそれはないわ。」

「次どうなるのか知れたもんじゃないし・・。」


「ええ、もし倒されたら魂が吸収されてもう戻らないですね。」


「はー?そんなやばい奴なんだ。」


「そろそろ時間です。」

「あなたはしばらくこれらの記憶をなくすでしょう。」

「時が来たらまた会える可能性もあります。」

「それまで生きていてくださいね。」


「う・・うん・・・ああ」

またぐるぐる回ってるけど・・最初の親父のところに戻ったようだな。


これ俺の記憶なんだよな・・・なんだか普通に会話してるんだけど。


「アイト、過去の記憶の世界から戻ったようだな。」

「俺もお前と同じ日本人だ。」


「ああ父さんは、勇者召喚者だったな。」

段々顔が見えてきたけど・・・おおっと

「うわ、父さん日本じゃかなりの有名人だったんだ。」


「ほう、俺のことを知っていたか」

「俺が召喚されたときは、この世界は既に切羽詰まった状態だったからな。」


「それで即戦力になる父さんが選ばれたという事か・・。」

「剣聖、令和の抜刀斉と言われた人物だったとはなぁ。」

俺、武道大好きオタクだったからこそ、その凄さを知ってるんだよな。


「ああ、だがこの剣に意識を残すことしかできなかった状況を考えてみてくれ。」

「そして続けざまにお前と言う転生者を準備しなければならなかった女神たちの苦悩も。」


「確かに数百年に一度の召還者の後にイレギュラーな転生者の俺が呼ばれるとか・・。」

この世界の歴史ではなかった話だ。


母さんから聞いた様々な歴史の話では、確かに勇者や英雄がその時々にいた。

当然勇者は召喚者だ。


しかしそれはあくまでも数百年単位で一人しかなかった。

「父さん、俺はこれからどうしたらいいんだ。」


「確かにお前は呼ばれた存在だ。」

「しかし、女神から聞いただろう・・時を待て、自ら考えろと。」


「それじじゃあ、今はまだその時ではないんだな。」

「だから封印とかややこしいことして、時間を待ちつつ準備させるという話か。」


「さすが俺の子だ、察しがいいな。」

「なら敵は邪神だということも気が付いているだろう。」


「神の力が及ばなかった相手だよな。」


「ああ、アイトよく聞け、邪神は既に俺たちが封印はした。」

「しかし封印は数百年ごとに切れる。」


「それで数百年ごとに召喚してるんだって聞いてるよ。」


「ああ、その通りだ。それは人の心に邪が残る為でもある。」

「それと、邪神討伐だけでは足りないんだ。」


「父さん、それどういうこと?」


「人の業から7つの大罪がうまれ龍になったのは知っているだろう。」

「その為、7匹の龍が生き続ける限り、人はその業から逃れられないのだ。」


「ああ、それなら邪龍をすべて駆逐しないといけないって話だな。」

父さんの話は分かるが・・邪神より強いってことは無いだろうに・・。


「ところがそれが難しい。」


「ひょっとして邪神より強いのか?」

いやいやラスボスより、眷属が強いというのはないよな。


「奴らは邪神が封印されている間にも力を蓄え続けているんだ。」

「しかも悪意をばら撒きながら・・。」

「ただそれだけじゃない、邪龍を全て倒すと邪神の更なる力が解き放たれる。」


「かーっ、燃料タンク的な役割もあるんだな。」

迂闊に退治するとかも難しいと言う話か。


「だからアイト、お前に判断を任せる。」

「力を蓄え、知識を得て最良の方法を見つけてくれ。」

「そして邪に飲み込まれるな、下手に力を求めると危険だと言うことを知れ。」


「ああ、なんとなくわかったよ。」

「で・・聖龍を探せと言うのは?」


「学ぶためだ、その為にまず力を手に入れろ。」

「聖龍には簡単に会えない。」


「父さん、力を封印しておいてそれはないよ。」


「まずは俺の仲間だった賢者を探せ。」

「お前の母親のことも知ることになるだろう。」

「これ以上は・・・時間が来た・・・さらばだ・・アイト。」


「ちょちょっ 親父。 賢者って誰?」

「何で俺の両親が死んでるの??」

かー消えちゃったか、しかし剣に意識残しただけで会話できるとかすげー世界だな。


「アイト、アイト・・気が付きましたか?」


「あれ、俺、なんだが倒れてたんだ。」

「ああ母さん、どうやら記憶は戻った。」

色々聞きたいことが多くて、めっちゃ複雑な気分だけど・・。


「ただ、親父が言うには聖龍に会うのは力がないと難しいから、その前に賢者に会えと言われた。」


「あら、それならハイエルフの賢者様の事かしら。」

「確かに勇者様のお近くにおられましたから。」


「それだ!母さん知ってるなら教えて。」


「今どこにいらっしゃるかまではわからないですね。」

「名前は・・確かエイリル様だったかと。」


「母さん、わかるのはそれだけ?」


「ええ、そうですね・・・まずは冒険者ギルドに行って情報を得たらどうでしょう。」

「かなり有名な方だと思います。」


ほほう、この世界にもそういう冒険者ギルドっていうのがあるんだ。


「それと必ず勇者様の剣と魔王様の腕輪をお持ちなさい。」


「えっ、腕輪とかまであるんだ。」


「ええ、力を封印されたあなたの役立つはずだとか、魔王様が言っておられました。」

「これですよ、はめてみてください。」


「うわっ、なにこれ。なんかが表示された。」

スキルボードとか言うやつかな。

これも何かの鍵になってたみたいだ。


アイト 10歳。 種族 ハーフロイド。

LV1 HP50 MP100 SP50 

所持スキル無し 呪文無し

所持アイテム

勇者の刀、攻撃力・俊敏性上昇 S

魔王の腕輪、防御力上昇 S


刀には光の魔法能力が含まれます。

腕輪に鑑定能力とインベントリー能力が含まれます。


「これらの能力を有効にしますか? YES/NO 」


「え・・これチートアイテムだったってことだな。」

「しかも勇者の剣じゃなくて、やっぱり刀だったんだ。」

「とりあえず、全部YESにしておこ。」


ポチっと・・。

「うわっ また何か開いた。」

「ああ、鑑定とインベントリーの中身かぁ。」


「これ、インベントリーの中にアイテムがぎっしりあるじゃん。」

「見た記憶もないけど、母親の愛を知ったよ。」

おおインベントリー内のアイテムの鑑定もできるみたいだな。


「とりあえず旅の荷物も入れて置けるし、これは助かる。」


「ありがとう母さん。これで明日から旅に出られそうだよ。」


「これらはあなたの御両親からの贈り物です。」

「私はそれを渡しただけ・・。アイト、感謝するなら御両親にも感謝しておきなさい。」


「う、うん。わかった。」

一応心の中で感謝しておこう。

それと俺の両親が意外に過保護だったというのは理解したよ。

ありがとう父さん母さん。



そして俺はその夜。

育ててくれた母親との別れで少し泣いた。



翌日の朝、ここから俺の冒険が始まることになる。


「LV1でスキルも呪文もないし、戦ったこともないけど・・。」

前世の記憶の補完で少しは何とかなりそうだし、まっやるだけやってみよー。


「じゃあ母さん。今までありがとー!」

「俺、全部の封印解いたら必ずまた会いに来るからね。」


「アイト気を付けて行くのですよ。」

「旅に出たら、本当の御両親のことも忘れずに知りなさいね。」


「うん、じゃあ行ってきます!」

まだ少し別れが悲しいけど、新しい何かが待ってる感じがするんだ。


「まずは一番近い村まで行ってみようか。」

俺たちが住んでいたのは森の中の一軒家だった。

付近にも同じように山小屋のような家はあったけど村と言えるほどの人もいなかった。


だから母さんは近くの村まで出かけてたんだ。


でも俺は家の周囲から全く出られなかった。


今になったら危険回避の為だったと分かるんだけど、母さんには本当に苦労かけたみたいだ。

「俺どこかの種族の英雄王になって、母さんを楽にするとか出来たらいいな・・。」


そんな夢みたいなことを考えながら俺はさほど遠くもない村を目指して歩いた。








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