3話
火曜日の4限目、香織のクラスはスペイン語の授業中。
「Ola!今日は秋学期初めの授業なので席替えをします」
教授の一言で、歓声とブーイングが飛び交う。
香織は前から二番目の席だったため、心の中で席替えを喜んでいた。
先生から指名された席は一番後ろの席だったけど、周りは男の子しかいなくて香織は少ししょんぼりしていた。
経済学部の香織のクラスは男女比が7:3くらいで圧倒的に女の子が少ない。
しかし異性と積極的に関わろうとしない香織には男友達は一人もいないのだ。
「問3は松永さんと前田さんにお願いします。」
この授業は隣の人とペアで当てられるため、この日も香織はペアで当てられてしまった。
隣の席の前田君は背が高くて、黒い服に黒い髪、整った顔つきをしているもののなんかいつも不機嫌そうで、ちょっと、、、いやかなり話しかけずらかった。
「あの、、私はここの答えCかなって、、」
緊張しながらも恐る恐る話かけると、前田君は
「俺もそう思った」
とにこっと笑いかけてきた。そのギャップに香織は驚き、この人優しい人かも!と、少しだけこの席が好きになっていた。
「じゃ、俺が書いてくるよ。」
前田君はそういって席を立ってホワイトボードに書きに行って、香織はその後姿を見ながら人は見かけによらないな、としみじみと感じていた。