1話
「うわー!めっちゃ映え!!」
大学終わりに香織は仲の良いひかりとおしゃれなカフェに来ていた。インスタでいい感じのカフェを見つけては巡るのが最近の二人のブームだ。
店員さんがテーブルの上に置いたプレートには、おいしそうなロコモコが乗っていた。
パシャパシャと写真を撮ってから、ひとくち口に運ぶ。
「ん~!おいしい~」
香織は左のほほを片手で押さえて、目をとろんとさせて頬張った。
5限のスペイン語の授業を頑張ってよかったと香織は心から思った。
「ひかりのパスタも美味しそう!!」
「一口交換しようよ!」
ひかりとは大学に入って同じクラスで、そこから仲良くなったのに、もう何でも話せる存在になっていた。
ロコモコとパスタを一口ずつ交換していると、ふと香織が口を開いた。
「そういえばさ、ひかりが気になってるって言ってた人どうなったの?」
「あー、平田君?」
「そうそう!この前遊びに行くって言ってたじゃん。」
「ね、、。気になってたんだけどね。なんか、、違ったかな」
ひかりは少し居心地悪そうに微笑んだ。
「まっじか。まぁ、次があるよ!ひかりはかわいいしさ、平田君よりいい人いるよ」
「うん!ありがとね」
にっこり微笑んだひかりを見て、香織は満足そうに笑った。
まぁ、こんないっちょ前に恋愛相談に乗ってる香織だが、彼女は生まれてこの方彼氏がいたことがない。
小中高女子校だった彼女は、同年代の異性と話す機会なんてないままに大学生になってしまったのだ。
初めのころは、大学にいる男の人にドキドキして意識しっぱなしだった香織。
飲まされそうになったお酒を代わりに飲んでくれたから、なーんて安直な理由でときめき所属しているテニスサークルの3年生の先輩に恋をしたが、何の行動も起こさないままに先輩に彼女ができ失恋してしまう。
しかし元々そこまで好きでなかったためあまり傷つくことなく、かといってそれから恋愛をすることなく、もう9月になってしまった。