もうすぐ体育祭
「よ〜し、もうすぐ体育祭ということで、このクラスでの役割を決めるぞ」
「「「お〜!!」」」
もうすぐ体育祭ということで、生徒達のテンションはいつもの何倍にも上がり、教室がいつも以上に騒がしくなる。
「もう体育祭か……」
「そうですね……」
「「はぁ〜」」
しかし、裕太と琴音の二人は運動神経が壊滅的に悪いため、いつもよりテンションが何倍も下がっていた。
「やぁ裕太くん、それと琴音さん」
「やぁやぁお二人さん。ため息なんかついてどうされたんですか〜?」
「体育祭だぞ……どうしてそこまでテンション上げられるんだ……」
「私は皆さんが楽しんでいるのならそれでいいんですが……」
「自分を偽るのはやめろ……本音は?」
「タイクサイナクナレ」
その元気のない裕太と琴音に、運動が得意で元気のある桜と大翔が嫌味を言いに来ていた。
いつもは敬語でしか話さない琴音が珍しく愚痴を言っていると、担任が口を開く。
「お〜い! せっかくの体育祭だ。楽しんでもらうことはいいんだが、そろそろ競技決めやるぞ〜」
騒がしくなってきたため、担任が一度、生徒達のテンションを落ち着かせ、競技決めが始まる。
「え〜まずは──」
生徒達が自分の出たい競技を決めていき、人気の競技はじゃんけんで決まっていく。
「それじゃあ次は、二人三脚!」
「「はい!」」
「おっ! 裕太、ようやく出る気になったか?」
「その代わりペアはこいつで」
「私もこいつがペアなら出る!」
「よ〜し、なら二人三脚は裕太と桜は決まりだな。他に二人三脚やりたい人〜」
裕太が唯一参加したいと思っていた競技である二人三脚に出る生徒が次々と決まっていき、次の競技へと進む。
「「はぁ〜、ですよね……」」
そんな中、ため息をつく二人がいた。
「まぁそうだろうとは思ったけど……」
「でもまさかこんなに堂々とあんなこと言うなんて……」
「あれ、絶対付き合ってるでしょ……」
「で、でも本人たちは違うって……」
「「はぁ〜」」
裕太と二人三脚に出たかった琴音と、桜と出たかった大翔は深いため息をつき、それぞれ上げようとした手を下げる。
「あと決まってないのは……琴音! なにか出たい競技は?」
「ありません」
「何かないのか?」
「ありません」
「え〜っと、何か一つだけでいいんだ……」
「ありません」
「……そ、そうか……まぁ琴音はいつも委員長として頑張ってくれているし、出たくないなら出なくてもいい。だが、出たほうがいいと思うぞ!」
担任はどうしても全員に何かしらの競技には出てもらいたかったため、琴音の鉄壁のディフェンスを崩そうと粘る。
「ありません」
「……よ、よし! これで全員の競技が決まったな! それじゃあ続きは明日のホームルームでやるから、休むなよ」
しかし、琴音からはロボットのように全く同じ言葉しか返ってこないため担任は諦め、今の会話をなかったことにした。
次回から体育祭が始まります。