伊藤琴音 後編
「ここが保健室で……」
「…………」
「聞いてる?」
「ひゃい!? な、何でしょうか?」
裕太が話しかけると、琴音は驚きのあまり、変な声を出してしまう。
そしてその顔は真っ赤になっていた。
「……早く終わらせたいからちゃんと話聞いてよ」
「す、すみません……でも、その……手が」
「ん?」
そう言われてようやく、裕太は自分がずっと琴音の手を握っていたことに気づく。
「あ〜ごめんごめん、初対面で失礼だったな、もしかして痛かった?」
「い、いえ……別に痛くはなく、その……温かかったです」
「? まぁとりあえずそれはごめんな、はいこの話終わり、じゃあ次行くぞ」
「そ、そうですね、この後予定があるんでしたね、では急ぎましょう」
その後はスムーズに進み、案内は終了した。
「よし、案内終わり」
「あ、ありがとうございました」
「それじゃあまた明日」
「え? あ、また明日……」
琴音が言い終わる前に裕太は走って行ってしまった。
廊下に一人残された琴音は、裕太がいなくなったことで、何故か寂しい気持ちになっていた。
「何でしょう? 今日は暑いですね、それに動悸がします」
そう言う琴音の顔はまだほんのり赤いままだった。
(今日は病院に寄ってから帰りますか)
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